トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2021年版 中小企業白書(HTML版) 令和2年度において講じた中小企業施策 第2章 事業承継・再生・創業等による新陳代謝の促進

第2章 事業承継・再編・創業等による新陳代謝の促進

第1節 事業承継支援

1.中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業(事業引継ぎ支援事業)【R2年度当初予算:75.1億円の内数】

後継者不在等の問題を抱える中小企業・小規模事業者に対し、各都道府県の各認定支援機関に設置されている「事業引継ぎ支援センター」において、事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行うとともに、M&A等によるマッチング支援を実施した。

2.経営資源引継ぎ・事業再編支援事業(経営資源引継ぎ補助金)【R2年度1次補正予算:100億円の内数】

中小企業の第三者承継時の負担である、士業専門家の活用に係る費用、及び経営資源の一部を引き継ぐ場合における譲渡側の廃業費用を補助した。

3.個人版事業承継税制【税制】

平成31年度税制改正において、個人事業者の事業承継を促進するため、2019年からの10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する制度を創設した。

4.法人版事業承継税制【税制】

平成30年度税制改正において、「法人版事業承継税制」を抜本拡充し、2018年からの5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象に、非上場株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除する特例措置を講じた。

5.中小企業・小規模事業者の事業再編等に係る税負担の軽減措置の創設【税制】

M&Aにより経営資源や事業の再編・統合を通じて事業の継続・技術の伝承等を図る事業者を支援するため、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて再編・統合を行った際にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減する。令和2年度税制改正において、適用期限を2年延長することとされた。

6.経営承継円滑化法による総合的支援

経営承継円滑化法には事業承継税制以外の支援策も盛り込まれている。民法特例においては相続人間の一定の合意により、遺留分に伴う相続紛争を防止した。金融支援においては事業承継に伴う各種資金ニーズに対応するための措置を講じた。

7.事業承継円滑化支援事業

全国各地で中小企業の事業承継を広範かつ高度にサポートするため、中小企業支援者向けの研修や事業承継フォーラムによる中小企業経営者等への普及啓発を実施した。

8.事業承継・世代交代集中支援事業(プッシュ型事業承継支援高度化事業)【R1年度補正予算:64億円の内数】

早期・計画的な事業承継の準備に対する経営者の「気付き」を促すため、各道府県の地域内の金融機関や商工団体等で構成する事業承継ネットワークにおいて、経営者に対するプッシュ型の事業承継診断による事業承継ニーズの発掘や地域の専門家派遣による支援等を実施した。また、事業承継時の経営者保証解除に向けた、専門家による「経営者保証に関するガイドライン」の充足状況の確認と目線合わせの支援等を実施した。

9.事業承継・世代交代集中支援事業(事業承継補助金)【R1年度補正予算:64億円の内数】

事業承継・世代交代を契機として、経営革新や事業転換に挑戦する中小企業に対し、設備投資・販路拡大・既存事業の廃業等に必要な経費を支援した。また、新規事業への参入を行う場合などには重点的に支援を行い、ベンチャー型事業承継・第二創業を後押しした。さらに、経営資源を譲り渡した事業者の廃業費用も補助した。

10.事業承継・世代交代集中支援事業(承継トライアル実証事業)【R1年度補正予算:64億円の内数】

後継者選定後に行う教育について、有効な内容や型を明らかにし、標準化を進めるため、後継者不在の中小企業が後継者の受入れを順次開始し、後継者教育を実施した。

11.小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、小規模企業者である個人事業主や会社等の役員が掛金を積み立て、廃業や引退をした際に共済金を受け取れる制度であり、いわば小規模企業の経営者のための「退職金制度」である。2020年12月末現在で151.6万人が在籍しており、2020年4月から2020年12月までの新規加入者は8.1万人に上った。

12.事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策【R1年度補正予算:64.0億円の内数】

事業承継時に後継者の経営者保証を可能な限り解除していくため、「事業承継に焦点を当てた「経営者保証ガイドライン」の特則」の運用を開始(2020年4月1日)。経営者保証解除に向けて、経営者保証コーディネーターによるガイドライン充足状況の確認や支援体制を構築したほか、事業承継時に一定の要件の下で、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設。また、専門家による中小企業の磨き上げ支援、経営者保証解除に関する金融機関との目線合わせへの専門家の同席支援等も実施した。

13.中小企業成長促進法

第201回国会で可決された中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律(中小企業成長促進法)では、事業承継の障壁である経営者保証の解除を支援するための措置を盛り込んだ。あわせて、中小企業が中堅・大企業に成長した後も一定期間は中小企業者向け支援を継続するみなし中小企業者特例制度や、日本政策金融公庫による海外展開支援、計画認定制度の簡素化の措置を盛り込み、事業承継による経営資源の円滑な引継ぎの促進や、計画認定制度、海外展開支援等を通じて、中小企業が成長を実現できる環境の整備を講じた。

第2節 創業支援

1.新事業創出支援事業【財政投融資】

中小企業基盤整備機構の全国10支部・事務所にマーケティング等に精通した専門家を配置し、中小企業等経営強化法、中小企業地域産業資源活用促進法、農商工等連携促進法に基づく事業計画の策定により、新事業に取り組む中小企業等に対して一貫してきめ細かな支援を行った。

2.新創業融資制度【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに事業を開始する者や新規開業して税務申告を2期終えていない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。

3.女性、若者/シニア起業家支援資金【財政投融資】

女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、新規開業しようとする者又は、新規開業しておおむね7年以内の者を対象に日本政策金融公庫が優遇金利を適用し、多様な事業者による新規事業の創出を支援した。

4.再挑戦資金(再チャレンジ支援融資)【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、新たに開業する者又は開業後おおむね7年以内の者で、事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込み等を評価することにより、再起を図る上で、困難な状況に直面している者に対して融資を実施した。

5.エンジェル税制【税制】

創業間もないベンチャー企業への個人による資金供給を促進するため、令和2年度税制改正により、対象となるベンチャー企業要件の緩和や、ベンチャー投資促進に寄与するクラウドファンディング業者の認定制度を創設した。

6.地域における創業支援体制の構築【税制】

地域の創業を促進させるため、産業競争力強化法において、市区町村が民間の創業支援事業者と連携して創業支援等事業計画を作成し、国の認定を受けた場合、計画に基づく創業支援を受けた創業者に対し、信用保証の特例、税制(登録免許税半減)等の支援を行うとともに、創業支援事業者に対し信用保証等の支援を行った。

7.中小企業・小規模事業者経営力強化融資【財政投融資】

日本政策金融公庫を通じて、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行った。

8.創業者向け保証

民間金融機関による創業者への融資を後押しするため、信用保証協会において、これから創業する者又は創業後5年未満の者等を対象とする保証制度を実施した。

9.ファンド出資事業(起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド)

民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小企業基盤整備機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図った。起業支援ファンドについては、累積出資先ファンド数124件、出資約束総額3,714億円、累積投資先企業数3,324社に至った。また、中小企業成長支援ファンド(中小企業経営力強化支援ファンドを除く)については、累積出資先ファンド数123件、出資約束総額9,505億円、累積投資先企業数1,810社に至った(両ファンドともに2020年12月末時点)。

10.経営革新支援事業

中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新たな事業活動を行うことで経営の向上を図ることを目的として作成し、承認された経営革新計画に対し、低利の融資制度、信用保証の特例等の支援策を通じ、その事業活動を支援した。

11.グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業【R2年度当初予算:13.0億円】

グローバルで成長するスタートアップのロールモデル創出に向けて、官民で連携し、海外展開を含むスタートアップの育成・支援を行う「J-Startup」プログラムを実施。本プログラムの一環として起業家等100名を対象とした人材育成事業等を行ったほか、政府調達における優遇や、ものづくり系スタートアップの量産化・事業化支援を行った。

12.わたしの起業応援団

女性の起業を後押しするため、地域の金融機関や産業・創業支援機関、女性に対するキャリア相談を行う民間事業者・NPO等を中心とした「女性起業家等支援ネットワーク」において各地で蓄積された女性起業家等への支援ノウハウを引き続き全国に普及すべく、各省関係者・自治体・女性起業家支援機関をメンバーとした「わたしの起業応援団」を設立。2020年12月には第1回関係者連絡会議を実施。また、支援者の育成のための研修等も実施した。

13.ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)【R2年度当初予算:9.0億円の内数】

産学金官の連携により、地域の資源と資金(地域金融機関の融資)を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型事業の立ち上げを支援するため、民間事業者等が事業化段階で必要となる初期投資費用(ハード整備)について、地方公共団体が助成する経費の一部に対し、交付金として交付した。

14.中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)【R2年度当初予算:0.2億円】

40歳以上の中高年齢者の雇用機会の創出を図り、生涯現役社会の実現を推進するため、40歳以上の中高年齢者が起業を行い、事業運営のための従業員を雇い入れる際に必要となる、募集・採用や教育訓練にかかる経費の一部を助成するとともに、起業後一定期間経過後に生産性向上が図れた場合に上乗せの助成金を別途支給する制度改正を実施した。