令和2年度において講じようとする中小企業施策
第4章 経営の下支え、事業環境の整備
第1節 取引条件の改善
1.下請等中小企業の取引条件の改善【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
サプライチェーン全体の取引適正化や付加価値向上に向け、2016年9月に公表した「未来志向型の取引慣行に向けて」に基づき、下請法関係法令の周知・徹底を図るとともに、産業界による下請取引適正化への取組をまとめた「自主行動計画」の着実な実行と取組業種の拡大を進めていく。また、下請Gメンによる下請中小企業へのヒアリング調査などによる取引実態の把握に努めていく。(継続)
2.下請代金法の運用【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
下請取引適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請法を執行する。公正取引委員会及び中小企業庁が親事業者等に対して書面調査等を実施するとともに、下請法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請法違反に関する情報収集を行い、下請法の厳格な運用に努める。(継続)
3.相談体制の強化と下請取引適正化【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
全国48か所に設置する「下請かけこみ寺」において、中小企業の企業間取引に関する相談に対応する。また、下請等中小企業の経営者や営業担当者が、親事業者の調達部門への価格交渉を行う上で必要な価格交渉ノウハウについて、個別指導やセミナー等を行う。下請法違反行為等を未然に防止するため、親事業者の調達担当者等を対象とした講習会を開催し、一層の周知を図るほか、全国で親事業者の取組事例等を紹介し、広く下請法等の遵守を呼びかけるシンポジウム等を開催する。さらに、親事業者と下請事業者の望ましい取引関係を構築するためのガイドライン(下請適正取引等のためのガイドライン。経済産業省、国土交通省、総務省及び農林水産省の所管18業種)について、全国で説明会を開催する。(継続)
4.下請取引あっせん、商談会による販路開拓支援【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
新たな取引先を開拓したい下請中小企業・小規模事業者に対して、販路開拓を支援するため、広域商談会を8会場で開催する。(継続)
5.親事業者等に対する下請事業者への配慮要請等【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
経済産業大臣及び公正取引委員会委員長の連名で、親事業者及び業界団体代表者に、下請法に基づく下請取引の適正化等について要請文を発出し、同法の周知徹底を図る。また、経済産業大臣名(他省庁所管の業界については主務大臣との連名)で、業界団体代表者に下請中小企業振興法に定める「振興基準」の遵守について要請する。(継続)
第2節 官公需対策
1.「令和2年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の策定及び周知徹底【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
毎年度策定する「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」において、国等の新規中小企業者をはじめとする中小企業者向け契約目標、中小企業者の受注機会の増大のために実施する措置等を閣議決定する。
また、基本方針を周知徹底するために以下の取組を実施する。
(1)経済産業大臣から各府省等の長、都道府県知事、全市町村の長及び東京特別区の長に対し、文書により「基本方針」の趣旨を説明するとともに、中小企業・小規模事業者の受注機会の増大に努めるよう要請する。(2)地方自治体に対する「基本方針」の周知徹底を図るため、説明会(官公需確保対策地方推進協議会)を全都道府県で開催する。(3)「基本方針」をはじめとした国の施策や調達に関する取組事例に関する情報共有を行い、国と地方自治体との連携方策を協議するための会議(都道府県中小企業者調達推進協議会)を開催する。(4)「官公需契約の手引」を作成し、国等の機関、地方公共団体等の機関及び商工関係団体等に配布する。(継続)
2.中小企業・小規模事業者の受注機会増大のための「官公需ポータルサイト」【R2年度当初予算:9.8億円の内数】
中小企業・小規模事業者が官公需に関する発注情報を入手しやすくするため、国等や地方公共団体がホームページで提供している発注情報等を中小企業・小規模事業者が一括して入手できる「官公需情報ポータルサイト」を運営する。(継続)
第3節 消費税率引上げ対応支援
1.消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業【R2年度当初予算:31.2億円】
消費税の円滑かつ適正な転嫁を行うため、全国に転嫁対策調査官を配置。併せて、消費税の転嫁拒否等の行為に関する情報を収集するため、公正取引委員会と合同で中小企業・小規模事業者全体に対して大規模な書面調査を実施するなど、転嫁拒否行為等の監視・取締りを行う。(継続)
2.商店街活性化・観光消費創出事業【R2年度当初予算:30.0億円】
地域と連携して魅力的な商業・サービス業の環境整備等を行い、インバウンドや観光といった新たな需要を効果的に取り込む商店街等の取組に対して支援を行う。(継続)
3.マイナポイント事業実施に伴うキャッシュレス決済端末導入支援事業【R2年度当初予算:20億円】
2020年9月から2021年3月までの期間、総務省において、マイナンバーカードを活用した消費活性化策を実施し、マイナンバーカードの普及やキャッシュレス決済の拡大を図りつつ、個人消費を切れ目無く下支えする。これに伴い、マイナンバーカードを活用した消費活性化策の効果を中小・小規模事業者にもしっかりと行き渡らせるため、経済産業省において、中小・小規模事業者のキャッシュレス決済端末等の導入を支援する。(新規)
第4節 資金繰り支援、事業再生支援
1.セーフティネット貸付【財政投融資】
日本政策金融公庫が、社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化を来たしている中小企業・小規模事業者等の資金繰りを支援する。(継続)
2.小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資)【財政投融資】
小規模事業者を金融面から支援するため、商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者に対して、日本政策金融公庫が無担保・無保証人・低利で融資を行う。(継続)
3.小規模事業者経営発達支援資金融資事業【財政投融資】
事業の持続的発展に取り組む小規模事業者を支援するため、小規模事業者支援法に基づく経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所による経営指導を受ける小規模事業者に対し、日本政策金融公庫が低利で融資を行う。(継続)
4.資本性劣後ローンの推進【財政投融資】
日本政策金融公庫が、新事業展開や経営改善に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、財務体質を強化するとともに、民間金融機関からの資金調達を円滑に図るため、自己査定の債務者区分の決定に当たり自己資本とみなし得る一括償還の資金(資本性資金)を供給することで、中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援する。(継続)
5.中小企業・小規模事業者経営力強化融資
日本政策金融公庫が、認定経営革新等支援機関による指導及び助言を通じ経営革新又は異分野の中小企業と連携して新分野の開拓等を行う中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援するため、必要な資金の貸付を行う。(継続)
6.信用補完制度を通じた資金繰り支援
信用補完制度により、〔1〕取引先の倒産、自然災害、取引金融機関の経営合理化等により経営の安定に支障を生じている中小企業・小規模事業者に信用保証協会が通常の保証枠とは別枠での保証の実施、〔2〕被災中小企業に対しては、現在(2019年12月末)、熊本地震や平成30年7月豪雨、令和元年台風第15号、令和元年台風第19号等にセーフティネット保証4号を発動しており、被害状況を調査の上必要に応じて2020年度においても継続して実施、また、東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象とした保証制度(東日本震災緊急保証)を2020年度も特定被災区域内において引き続き実施、〔3〕信用保証協会による複数の借入債務の一本化を通じて、中小企業・小規模事業者の足下の返済負担の軽減を図る借換保証や、経営者に事業改善の意欲があるにもかかわらず返済条件を緩和の実施による前向きな金融支援を受けることが困難な中小企業・小規模事業者を支援するため条件変更改善型借換保証についても引き続き2020年度も実施、〔4〕経営者保証の存在が経営の承継の支障となっているため、事業承継特別保証を2020年4月に創設し、わが国中小企業の課題である事業承継を推進する、〔5〕信用保証協会の利用者又は利用予定している創業(予定)者、経営改善や事業承継、生産性向上に取り組もうとする中小企業・小規模事業者に対して信用保証協会が地域金融機関と連携して、専門家派遣をはじめとした経営支援を実施し、資金繰り支援と一体となった支援を実施する。(継続)
7.認定支援機関による経営改善計画策定支援事業
借入金の返済負担等の財務上の問題を抱え、金融支援を伴う本格的な経営改善を必要とする中小企業・小規模事業者や、資金繰り管理・採算管理といったより早期の経営改善が必要な中小企業・小規模事業者の経営改善を促進するため、中小企業等経営強化法に基づく認定支援機関(税理士・公認会計士・地域金融機関等)が中小企業・小規模事業者に対して行う経営改善計画の策定支援やフォローアップに要する費用の一部(2/3)を負担する。(継続)
8.中小企業再生支援協議会【R2年度当初予算:75.1億円の内数】
各都道府県の商工会議所等に設置した中小企業再生支援協議会において、事業の収益性はあるが、債務超過等の財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者等に対し、窓口相談による課題解決に向けたアドバイスや、関係金融機関等との調整も含めた再生計画の策定支援を行う。(継続)
9.中小企業再生ファンド
事業再生に取組む中小企業への経営支援や資金供給等を実施するため中小企業基盤整備機構と地域金融機関、信用保証協会等が一体となって、中小企業の事業再生を地域内で支援する地域型ファンドや、広域的に支援する全国型ファンドの組成・活用の促進に取組む。(継続)
10.「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進等
「経営者保証に関するガイドライン」(2013年12月5日公表)及び「事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則」(2019年12月24日公表)の周知・普及、利用促進を図るため、相談窓口設置と、ガイドライン利用希望者への専門家派遣、弁護士・税理士等の支援専門家や事業者向けセミナーを実施する。また、広告等の広報活動も実施する。(継続)
11.金融行政における中小企業・小規模事業者に対する経営支援の強化等
金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)することを通じて、企業に有益なアドバイスとファイナンスを行うよう促す。(継続)
12.沖縄の中小企業金融対策【財政投融資:710億円の内数】
沖縄振興開発金融公庫を活用した沖縄の中小企業対策は、日本政策金融公庫が行う業務・取組について同様に行うとともに、沖縄の特殊事情を踏まえ独自の貸付制度を拡充する。(継続)
第5節 経営改善支援、再生支援の強化
1.(再掲)認定支援機関による経営改善計画策定支援事業
2.経営支援と一体となった高度化融資による設備資金の支援
工場団地・卸団地、ショッピングセンター等の整備、商店街のアーケード・カラー舗装等の整備などを行う中小企業組合等に対して、都道府県と中小企業基盤整備機構が一体となってその設備資金を長期・低利(又は無利子)で貸付ける。貸付けに際しては、事前に事業計画について専門的な立場から診断・助言を行う。(継続)
第6節 小規模事業者の持続的発展支援
1.(再掲)小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資)
2.(再掲)小規模事業者経営発達支援資金融資事業
3.小規模事業者支援法による経営発達支援計画の認定
小規模事業者支援法第7条に基づき商工会・商工会議所が小規模事業者の技術の向上、新たな事業分野の開拓、その他の小規模事業者の経営の発達に資する計画を市町村と共同で作成し、経済産業大臣が認定する。(継続)
4.(再掲)小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)【R1年度補正予算:3,600億円の内数】
第7節 経営安定対策
1.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)【中小企業基盤整備機構運営交付金の内数】
中小企業倒産防止共済制度は、取引先企業の倒産により売掛金債権の回収が困難となった場合に、積み立てた掛金の額に応じて無利子、無担保、無保証人で共済金の貸付けを行う制度を引き続き行う。(継続)
2.経営安定特別相談事業
経営の危機に直面した中小企業の経営上の様々な問題の解決に資するため、全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に「経営安定特別相談室」が設置されている。本相談室において経営安定に関する幅広い分野の経営相談が円滑に実施されるよう日本商工会議所及び全国商工会連合会の実施する指導事業等を引き続き支援する。(継続)
3.中小企業等強靱化対策事業【中小企業基盤整備機構運営交付金の内数】
2019年7月に施行された中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」等認定制度やBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)に基づき、優良事例や早期復旧事例等の周知・普及、及び計画の策定支援、また、防災・減災に係る指導人材の育成を実施し、中小企業の防災・減災意識の啓発、事業継続力の強化に向けた取組を促進する。(新規)
4.中小企業・小規模事業者自家用発電設備等利用促進対策事業
大規模災害時等に系統電力や都市ガスの供給が途絶した際に、生活必需品を扱う中小企業者等のために重要な中小企業・小規模事業者が事業の継続できる体制を確保するため、石油製品等を用いる自家発電設備等の設置に要する経費に対して、当該経費の一部を助成する事業に要する経費を補助する。(継続)
5.ダンピング輸入品による被害の救済【R2年度当初予算:1.1億円】
貿易救済措置のうちアンチダンピング措置は、他国企業から我が国に対するダンピング輸入により、国内産業が損害を受けた際に、国内産業からの申請に基づき政府が調査を実施した上で関税を賦課することにより、公正な市場競争環境を確保する措置である。2020年度も、国内産業からの申請を受け、国際ルール及び国内法令に基づき公正かつ適切に調査を進めていく。また、企業等への説明会やWTO協定整合的に調査を行うための調査研究を実施する。(継続)
第8節 財政基盤の強化
1.法人税の軽減税率【税制】
中小企業の年間800万円以下の所得金額に対する法人税率を、19%から15%に引き下げる措置。(継続)
2.中小企業投資促進税制【税制】
機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。(継続)
3.中小企業者等の少額減価償却資産の所得価格の損金算入の特例制度【税制】
取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間300万円を限度に、全額損金算入することができる措置(連結納税適用事業者及び、従業員500人超の法人を除く。令和2年度税制改正において、適用要件を見直した上で、適用期限を2年延長することとされた。(継続)
4.欠損金の繰越控除・繰戻還付【税制】
欠損金の繰越控除は、当期の事業年度に生じた欠損金を繰り越して翌期以降の事業年度(繰越期間:10年間の所得金額から控除することができる措置。また、欠損金の繰戻還付は、当期の事業年度に生じた欠損金を1年繰戻して法人税の還付を請求することができる措置。(継続)
5.商業・サービス業・農林水産業活性化税制【税制】
商業・サービス業等を営む中小企業が商工会議所等の経営改善指導に基づき設備を取得した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。(継続)
6.交際費等の損金不算入の特例【税制】
交際費等を支出した場合、〔1〕定額控除限度額(800万円)までの損金算入または〔2〕支出した接待飲食費の50%までの損金算入のいずれかを選択適用できる措置。令和2年度税制改正において、適用期限を2年延長することとされた。(継続)
7.中小企業投資育成会社による支援
中小企業投資育成株式会社において、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、株式、新株予約権、新株予約権付社債等の引受けによる投資事業及び経営相談、事業承継支援等の育成事業を実施する。(継続)
第9節 人権啓発の推進
1.人権教育・啓発活動支援事業【R2年度当初予算:1.9億円】
健全な経済活動の振興を促進するため、事業者を対象とした人権啓発のためのセミナー等の啓発事業を実施する。また、小規模事業者等が多く、特に重点的な支援が必要な地域又は業種に係る小規模事業者等の活性化のため、経営等の巡回相談事業及び研修事業を実施する。(継続)
第10節 経営支援体制の強化
1.中小企業連携組織支援対策推進事業【R2年度当初予算:6.9億円】
中小企業組合を支援する専門機関の全国中小企業団体中央会を通じて、経営革新・改善に取り組む中小企業組合等に対して、中央会指導員がサポートしつつ、その実現化に向けた取組を支援する。さらに、外国人技能実習生受入事業を行う中小企業組合(監理団体)等の事業が適正に行われるように支援を行う。(継続)
2.中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【R2年度当初予算:42.4億円】
〔1〕中小企業・小規模事業者等が抱える様々な経営課題に対応するワンストップ相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置し、一歩踏み込んだ専門的な助言を行うとともに、特に高度・専門的な経営課題に対応するために専門家派遣を実施する。〔2〕全国各地の有望企業群が取り組むグローバル市場も視野に入れた事業化戦略の立案や販路開拓等の経営課題に関するワンストップ相談窓口として、「グローバル・ネットワーク協議会」を設置する。(継続)
3.ローカルベンチマークの活用促進
ローカルベンチマークを活用した企業の事業性評価に基づく、経営改善や生産性向上に向けた取組みを引き続き推進する。具体的には、中小企業・小規模事業者支援施策との連携を強め、中小企業の方々に自ら進んでロカベンを活用したいと思ってもらえる仕掛け作りを行う。より便利で使いやすいローカルベンチマークを目指して、2020年4月よりオープンする中小企業向け補助金・支援ポータル「ミラサポplus」においても、事業者が気軽にメモ代わりに使えるよう、企業のマイページにローカルベンチマークが搭載されるなど、気軽に「経営の見える化」を行うことができ、事業者が各種中小企業施策にアクセスしやすくなるような環境整備にも努める。併せて、地域で実際にロカベンを活用してもらうために、中小企業や地域金融機関、支援機関との地方でのネットワーキングの仕組み作りを行う。(継続)