トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2020年版 中小企業白書(HTML版) 第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向 第3章 中小企業・小規模事業者の新陳代謝 第4節 まとめ

第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向

第3章 中小企業・小規模事業者の新陳代謝

第4節 まとめ

本章では、中小企業・小規模事業者の新陳代謝の観点から、存続企業・開業企業・廃業企業の労働生産性や、新陳代謝の促進につながる事業承継や起業に着目して分析を行った。

第1節では、我が国の企業数は長期的に減少傾向にあること、我が国の開業率・廃業率は国際的に見ると相当程度低水準であることが確認された。

また、企業の開業や廃業が、経済全体の生産性向上につながる新陳代謝として機能しているかについて分析した。その結果、廃業企業の労働生産性は開業企業や存続企業と比べて低く、企業の廃業は、経済全体の生産性向上に寄与する側面があることが分かった。一方、生産性の高い企業の廃業も一定程度生じていることが明らかとなった。また、存続企業の労働生産性を上回る開業企業も多く存在し、こうした企業の新規参入による生産性向上の効果が示唆された。

生産性の高い企業の廃業の背景には、経営者の高齢化と後継者不足があると考えられ、企業の貴重な経営資源を散逸させない事業承継の取組が重要性を増している。こうした点を踏まえ、第2節では、事業承継の実態について確認した。事業承継の形態としては、同族承継や内部昇格のほかに、外部招聘やM&Aなど第三者承継も有力な選択肢となりつつあることが分かった。こうした多様な事業承継を後押しすることは、企業の貴重な経営資源を次世代の意欲ある経営者に引き継いでいく上で重要である。

第3節では、我が国では起業家が減少傾向にあり、国際的に見ても起業活動・起業意識が低い状況にある中で、副業による起業家が増加傾向にあることやフリーランスといった従来の働き方によらない起業活動について見た。こうした起業につながる多様な働き方を後押ししていくことが日本の起業活動を促進する上で重要である。

事業承継や企業の開廃業といった新陳代謝を通じて、中小企業がこれまで培ってきた技術や人材を次世代に引き継ぎつつ、経済全体の生産性向上を図っていくことが、今後ますます重要となってくるといえよう。