第3部 小規模事業者の防災・減災対策

第2節 被災による小規模事業者への影響

1 小規模事業者が被災した際に生じる問題

第2節では、小規模事業者が自然災害によって受けた被害の実態などについて把握する。上記については、「小規模事業者の災害対応に関する調査3」(以下、「アンケート調査」という。)を用いて分析を行っていく。

3 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、2018年12月に商工会及び商工会議所の会員のうち、小規模事業者を対象に実施したWebアンケート調査(有効回答件数:商工会の会員4,700者、商工会議所の会員639者)

〔1〕小規模事業者が過去に被災した自然災害

第3-1-7図は、過去に事業上の損害を被った自然災害について確認したものである。アンケート回答者は「平成23年3月:東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)」により被害を受けたと回答する事業者が最も多く、次いで「平成30年7月:西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」、「平成28年4月:熊本地震」となっている。

第3-1-7図 被災により事業上の損害を受けた災害
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〔2〕自然災害が小規模事業者に与える損害

第3-1-8図は、前掲第3-1-7図で回答した災害時における事業上の被害内容を示したものである。これを見ると、「事務所・店舗の破損や浸水」と回答する事業者が最も多い。また、「販売先・顧客の被災による、売上の減少」及び「仕入先の被災による、自社への原材料等の供給停止」との回答も一定割合を占めており、自社の被災だけでなく、顧客や仕入先の被災を要因とした事業上の損害も数多く発生していることが分かる。

第3-1-8図 被災によって受けた被害の内容
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被災時における物的損失額を示す第3-1-9図によると、100万円以上の損害を受けた事業者の割合が5割を超え、1,000万円以上の損害を受けた事業者も1割程度存在する。

第3-1-9図 被災によって被った物的損失額
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第3-1-10図は、小規模事業者が過去に被災した災害別に、被った物的損失額を見たものである。いずれの災害においても、100万円を超える物的損害を被っている者が過半数を占めていることが分かる。

第3-1-10図 被災した災害別に見た、被った物的損失額
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第3-1-11図は、被災による営業停止期間を、物的損失額別に示したものである。損害額が大きいほど、「営業は停止せず」と回答した事業者の割合が低くなり、営業停止期間が長くなる傾向がある。建物・設備などの物的損害が、復旧に影響を及ぼしているものと推察される。

第3-1-11図 被災によって被った物的損失額別に見た、被害を受けた事業拠点における営業停止期間
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第3-1-12図は、被災による営業停止期間別に、被災3か月後における被災前と比較した取引先数の推移を見たものである。これによると、営業停止期間が長いほど、取引先数が減少する傾向にある。

第3-1-12図 被災による営業停止期間別に見た、被災3か月後における被災前と比較した取引先数の推移
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第3-1-13図は、過去に被災経験がある事業者の、被災3か月後における、被災前と比較した売上高の変化を見たものである。被災した事業者の42.5%で、売上高が減少している。また、売上高が減少した者における売上高の減少割合を見ると、3割以上と回答した者が半数近くを占めていることが分かる。

第3-1-13図 被災3か月後における、被災前と比較した売上高の変化
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第3-1-14図は、売上高が下がった事業者を対象にして、取引先数減少の有無別に、売上高が元の水準に戻るまでの期間を示している。被災して取引先数が減少した事業者では、横ばいの事業者と比べて、元の水準に戻るまでに半年超を要した事業者や、元の水準に戻っていない事業者の割合が高い。被災によって取引先が減少すれば、下がった売上高が元に戻るまでに時間が掛かる傾向が見て取れる。したがって、売上高を被災前の水準に維持するためには、取引先数の減少を防ぐ必要もあると考えられる。

第3-1-14図 被災による取引先数の減少有無別に見た、下がった売上高が元の水準に戻るまでの期間
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以上のとおり、自然災害による小規模事業者の被災は、物的損失に加えて、営業停止、取引先数の減少、売上高の減少などの事業上の影響をもたらすことが分かる。さらに、営業停止期間が長引くほど取引先数が減少する可能性が高まり、それにより、被災によって下がった売上高が元の水準に戻るまでの期間が長期化することを踏まえると、被災後における円滑な事業継続のためにも、営業停止期間を短期間に抑えることが重要と考えられる。

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