第2節 経営者参入に至るまでの課題
本節では、経営者参入に至るまでの実態と課題を明らかにしていく。
はじめに、経営者参入に至るまでの過程について、以下のように整理した(第2-2-26図)20。
20 経営者参入に至るまでの過程は多様であり、第2-2-26図の中でその過程を全て整理できるわけではないが、本章では同図に基づき、経営者参入に至るまでの課題について見ていく。

まず、現在経営者である者について、
〔1〕起業により経営者になった者(特に、起業から10年超経過していない者を「起業家21」という。)
〔2〕事業承継により経営者になった「後継経営者」
に分類した。
21 本節でいう「起業家」とは、本業で起業(フリーランスでの起業を除く)したことがあり、その事業を10年以内継続している者をいう。
次に、現在経営者でない者のうち、身近に継げる事業があり、その事業を継ぐ意思が僅かでもある者、すなわち今後、親族内承継や役員・従業員承継をする意思が僅かでもある者について、
〔1〕事業を継ぐことについて現経営者と合意がとれている「後継決定者」
〔2〕事業を継ぎたいと考えているがまだ合意はとれていない「積極的後継者候補」
〔3〕前向きではないが事業を継ぐかもしれないと考えている「消極的後継者候補」
に分類した。
最後に、事業を継ぐ意思が全くない者(以下、本節では「後継無関心者」という。)及びそもそも身近に継げる事業がない者について、
〔1〕起業に向けて準備をしている「起業準備者」
〔2〕起業する可能性のある「起業希望者」
〔3〕起業に関心のない「起業無関心者」
に分類した。
本節では「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査22」(以下、「経営者参入調査」という。)を基に、起業準備者、起業希望者、後継決定者、積極的後継者候補、消極的後継者候補に特に着目し、まず起業に至るまでの実態と課題、続いて事業承継に至るまでの実態と課題について、分析を行っていく(第2-2-27図)。
22 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が2018年12月に実施したアンケート調査。インターネットによるスクリーニング調査を全国の20歳以上69歳以下の男女18万人に対して行った。
調査方法はスクリーニング調査と本調査の2段階で行われており、スクリーニング調査で本調査の調査対象となる起業や事業承継をする可能性のある者、既に起業した者などの対象者を抽出し、本調査への回答者とし、5,853人から回答を得た。うち、本章では起業や事業承継をする可能性のある者2,931人の回答を主に利用する。
スクリーニング調査については、人口構成比に合わせるため、平成27年国勢調査を基に、性別、年齢階層別(35歳以下、36歳以上55歳以下、56歳以上)のバランスを考慮して配信している。
本調査については、起業準備者、後継決定者はスクリーニング調査で抽出した者全員に配信し、それぞれ790人、641人から回答を得た。また起業希望者、積極的後継者候補、消極的後継者候補は、スクリーニング調査で抽出した者のうち、それぞれ750人、250人、500人に絞って回答を得た。

1 起業準備者・起業希望者の概観
はじめに、「経営者参入調査」における、起業準備者・起業希望者について概観する。
〔1〕起業準備者・起業希望者の現在の勤務先
第2-2-28図は、現在会社員である起業準備者及び起業希望者の現在の勤務先の従業員数について見たものである。これを見ると、起業準備者、起業希望者ともに約4割が301人以上と回答しており、規模の大きい企業に勤めている者の割合が高いことが分かる。

〔2〕起業準備者・起業希望者が起業を検討している業種
次に、起業準備者及び起業希望者が起業を検討している業種について見たものが第2-2-29図である。これを見ると、起業を検討している業種はいわゆるサービス業に多いことが分かる。

〔3〕起業準備者・起業希望者の起業後の売上高に対する成長意向
第2-2-30図は、起業準備者及び起業希望者の売上高に対する成長意向について見たものである。本節では売上高を「短期間で拡大させる」者を「急成長型」、「中長期的かつ安定的に拡大させる」者を「安定成長型」、「拡大を意図しない」者を「事業継続型」と呼び、これを「起業後の成長意向」としてタイプ別に分析を行っていく。
