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流動資産担保融資保証制度 活用事例集(売掛金)

平成16年10月
中小企業庁
(社)全国信用保証協会連合会


本事例集は、流動資産担保融資保証制度の実際の活用事例をもとに作成したものです。


事例1 売掛債権を活用して原材料の仕入れ資金調達を行い、コストダウンを達成
事例2 売掛金の早期資金化を活用して仕入れ支払手段を変更し収益の向上を実現
事例3 将来の設備投資用の不動産を確保しつつ、掛け目の引き上げをきっかけに優良な売掛債権を活用
事例4 不動産担保不足の中、事業成長に伴う運転資金需要に根保証を活用して対応
事例5 取引拡大に伴う資金繰りを回収期間の長い売掛債権の活用で改善
事例6 対抗要件を登記とし、回収期間の長い売掛債権を活用して資金繰りを安定化
事例7 債権譲渡登記を利用して本制度を活用
事例8 地価の下落のため不動産担保に代わり売掛債権(未発生債権)を活用して資金調達
事例9 公共工事の延長に伴って生じた立替資金を未発生債権を利用して調達
事例10 大口の受注に際し未発生債権を担保として運転資金を調達
事例11 金融機関の支援により第三債務者の債権譲渡禁止特約を解除し、制度導入
事例12 保証協会の仲介により第三債務者の理解が得られ、本制度を活用



事例1:売掛債権を活用して原材料の仕入れ資金調達を行い、コストダウンを達成

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:A社
資本金:1千万円
従業員数:17名
業  種:食品加工業
売上高:3億円
借入金額:根保証18百万円
食品卸売業者 承 諾
事業の概要 A社は、平成4年に設立された梅の加工販売業者。地元では後発組で同業者との競争は厳しい状況にあるが、県下では数少ないバイオ技術による低温無添加の梅干加工を行い、近年、工場増床により生産能力を拡大した。
その後、売上4億円を目指し大手百貨店、スーパー等販売先の全国展開を視野に自社開発による冷凍食品を開発して商品バリエーションを増やし、新規取引先を開拓、営業に力を注いでいる状況であった。
本制度の活用 A社は、毎年原材料の仕入資金調達が必要であったが、担保として余力のある不動産が無いことから新たな資金調達が困難な状況にあった。金融機関に相談したところ、売掛債権を担保とする本制度を利用することにより新たな資金調達が可能になるとの説明を受け、本制度の利用を開始した。
開始に当たっては、当該取引金融機関と第三債務者との取引があったことからスムーズに交渉が行われ、結果として「異議なき承諾」を得て、借入することができた。
梅は豊作・不作により価格が影響されるが、本制度の利用により手元資金を厚くできたため現金一括仕入れによるコストダウンを図ることができた。
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事例2:売掛金の早期資金化を活用して仕入れ支払手段を変更し収益の向上を実現

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:B社
資本金:3百万円
従業員数:21名
業種:調剤薬局
売上高:4億円
借入金額:根保証25百万円
健康保険団体連合会
社会保険診療報酬基金
通 知
事業の概要 B社は、平成13年の設立と業歴は浅いが、近年の医薬分業の追い風に乗って、多店舗展開等の積極策が奏功し、売上は期を追う毎に増加中。ただし、増収の割に低収益体質から脱し切れず、薬品卸業者への支払手段の改善等を課題としてきたが、所有不動産の限界等から資金調達力が乏しいため、改善策の実施は思うに任せない状況にあった。
本制度の活用 B社は、取引金融機関に融資の相談をしたところ、本制度の利用をアドバイスされ、「根保証」方式で活用することした。本制度の利用により、売掛金の早期資金化が安定的、継続的に確保できるようになり資金繰りに余力を持たせることができるようになった。このため、仕入れ支払手段を現金に変更することが可能となり、これによってコストダウンによる収益面での向上が図られた。
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事例3:将来の設備投資用の不動産を確保しつつ、掛け目の引き上げをきっかけに優良な売掛債権を活用

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:医療法人C
資本金5千万円
従業員数55名
業種老人保険施設
売上高6億円
借入金額:根保証7千万円
健康保険団体連合会 承 諾
事業の概要 C法人は、平成8年設立の老人介護保険施設。高齢化社会が進展するなかで介護ニーズは年々増加し、業容も拡大中であるが、開業当初の設備投資のための借入残を抱えている。また、今後の事業としてグループホームの開設を計画しているが、固定費が大きいため、資金繰りに柔軟性を持たせたいニーズがあった。
本制度の活用 老人保健施設の特徴として、売上高が安定しており、常に同程度の介護給付等の債権を有していること、また、売掛先は健康保険団体連合会が殆どで経理事務上の管理も容易であることから、C法人は本制度に以前から関心を持っていた。
一方、取引金融機関は将来的な資金計画に関して、中長期的な運転資金の安定確保のために本制度を活用することにより、所有不動産を今後の設備投資のための担保として確保しておくようにとアドバイスしていた。
そこで、今般売掛債権の担保掛目が引上げられ、融資可能額が拡大したことから、これをきっかけに本制度を利用することとし、将来の投資に備え所有不動産を留保することとした。
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事例4:不動産担保不足の中、事業成長に伴う運転資金を根保証を活用して対応

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:D社
資本金1千万円
従業員数70名
業  種木材加工業
売上高14億円
借入金額:根保証1億円
住宅建築業者 承 諾
事業の概要 D社は建築用構造材のプレカット事業を行っており、年商は毎期増加中で、売掛金も毎期増加していた。事業の成長に伴って運転資金需要が増加し続けていたが、事務所自体が山間部に位置し、不動産担保による資金調達は難しい状況であった。
本制度の活用 D社は、保証協会に相談したところ、不動産担保によらない本制度の利用を勧められた。D社の制度利用に当たり、保証協会の扱店では支店長が対外信用力の高い取引先の住宅建築業者に説明、協力要請を行い、異議なき承諾を得ることができた。これによりD社では1ヶ月前倒しで売掛債権の現金化が可能となり、増加していた資金需要に円滑化に対応することが可能となった。
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事例5:取引拡大に伴う資金繰りを回収期間の長い売掛債権の活用で改善

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:E社
資本金5百万円
従業員数105名
業  種運送業
売上高12億円
借入金額:根保証8千万円
総菜製造業者
スーパー
運送業者
承 諾
事業の概要 E社は昭和41年に設立された一般貨物自動車運送業者。大手食料品製造業者、大手スーパーを主要受注先に生鮮・冷凍品等の輸送を行っている。
他社に先駆け、県南部でいち早く冷凍車輸送を始め、売上の約7割を占める大手取引先とも強固な取引関係を確立し、近年は、配送業務と構内作業をセットで受注するケースが増加している。
本制度の活用 取引の拡大に伴い人件費等の負担が増加し、また、設備資金や借入返済が必要であったが、受取は現金割合90%、売掛期間90日であるため、資金繰りの改善が課題であった。
このためE社は毎月の売上げが比較的安定していることから根保証で本制度の利用を開始した。この結果、回収期間の長い売掛債権を現金化することで手元流動性を高め、資金繰りの円滑化が図られることとなった。
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事例6:対抗要件を登記とし、回収期間の長い売掛債権を活用して資金繰りを安定化

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名:F医院
資本金7千万円
従業員数20名
業種医業
売上高3億円
借入金額:根保証15百万円
検診受注協会
健康保険組合
共済組合、等
登 記
事業の概要 F医院は、業歴30年の医業で、近年、診療所の移転を機に人間ドック、健康診断への特化を図り、事業収入は増加中である。しかし、最大の得意先に対する売掛債権の回収サイトが3ヶ月~6ヶ月と長く、資金繰りへの影響を抑えたいニーズがあった。
本制度の活用 資金繰りを安定化させるため本制度を利用することとしたが、F医院は売掛先に債権を利用していることが知られるのを避けることを希望した。このため、対抗要件を登記(通知留保)とし、第三債務者は最大の集団検診先のほか、診療報酬債権請求先である保険組合等、4先とした。
本制度を活用し、現在、資金繰りに頭を悩ますことなく、業況も安定的に推移中である。
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事例7:債権譲渡登記を利用して本制度を活用

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名G社
資本金1千万円
従業員数2名
業種水産物卸売業
売上高6億円
借入金額:根保証3千万円
水産食品製造業者、他1社 登 記
事業の概要 G社は、主に、寿司用の海老、穴子等を海外から輸入しているが、役員以外の従業員は2名の小規模企業で、社長が営業と経理を兼ねている。この数年の回転寿司ブームも追い風となり、業績は順調に推移しているが、季節性や漁獲量の波を受け、資金繰りはやや不安定な面がある。
本制度の活用 G社の売掛先は、営業努力の結果ようやく納品が可能になった優良企業であるが、取引歴は3年とさほど長くない。このため、G社は、売掛先に売掛債権の利用を通知することを避け、対抗要件は「登記」(通知留保)を選択した。G社には登記に関する知識も経験もなくは初めてで不案内だったが、金融機関と共同でスムーズに申請を行うことができた。
本制度の根保証により資金繰りも安定し、社長が経理に悩まされることなく、より営業に専念できる態勢となった。
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事例8:地価の下落のため不動産担保に代わり売掛債権(未発生債権)を活用して資金調達

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名H社
資本金75千万円
従業員数19名
業種産業用機械製造業
売上高5億円
借入金額:根保証6千万円
機械製造業者
鉄工業
承 諾
事業の概要 H社は平成4年設立の環境設備用コンベアの設計・製作を行っている企業。商品納入後、2ヶ月から3ヶ月の試用期間を経て代金回収となり、受注後、設計、製作からの期間を含め、回収期間が長期間に渡るため、手元資金を確保しておくことが課題であった。
本制度の活用 従来、不動産を担保に借入をしていたが、地価の下落により評価不足となったため新たな借入は難しい状況であった。
一方、代金の回収が長期間にわたり、従業員、下請業者への支払は毎月発生するため手元流動性を高めておきたいと希望していた。そこで本制度の根保証を導入し、かつ、未発生債権を活用することで受注段階で資金調達を行うこととした。これによって支払いと回収の大幅なタイムラグから生じていた経常収支比率の改善が図られることとなった。
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事例9:公共工事の延長に伴って生じた立替資金を未発生債権を利用して調達

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名I社
資本金1千万円
従業員数8名
業種土木工事業
売上高1億円
借入金額:個別保証4百万円
地方公共団体 承 諾
事業の概要 I社は、昭和51年創業、平成9年法人化した土木工事業者。官公庁からの受注を主体としているが、公共工事の減少により売上は減少傾向にある。
本制度の活用 地方公共団体から工事期間約2ヶ月の工事を受注していたが、工期が6ヶ月延長されたことにより、外注費等立替資金需要が発生した。工事契約では前受金、中間金等の支払いは一切無く完成後一括支払いとなっており、資金繰りに悩んでいたところ、金融機関から制度の利用を勧められた。
発注元である地方公共団体は、以前から制度利用に理解を示しており、本件について相談したところ、快く譲渡禁止特約の解除を承諾した。これによりI社は未発生債権を活用して本制度を利用できることとなり、先行支払資金の調達が可能となった。
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事例10:大口の受注に際し未発生債権を担保として運転資金を調達

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名J社
資本金49百万円
従業員数68名
業  種電気機器製造業
売上高9億円
借入金額:個別保証45百万万円
公益法人 通 知
事業の概要 J社は、業歴26年のダム等の制御機器開発製造業者。
過去の売上低迷時の赤字から繰越欠損を内包しており、一方、研究開発費等の先行支出が多く、資金繰りに余裕を持たせることが課題であった。
本制度の活用 今般、123百万円の受注成約にいたったが、経費先行から短期資金の調達が必要な状況となっていた。しかし、所有不動産は全て担保に提供済みであり、また、新たに担保に提供できる不動産はなく、追加借入れの方策を模索している状態であった。
資金繰り方策の検討をしていたところ、売掛金を担保として借入れが可能な本制度の存在を知り、金融機関に相談して未発生債権を活用して本制度を利用することとなった。これにより代金回収までの資金調達が可能となり、引き続き事業拡大に努力中である。
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事例11:金融機関の支援により第三債務者の債権譲渡禁止特約を解除し、制度利用

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名K社
資本金1千万円
従業員数26名
業  種冷凍食品製造業
売上高3億円
借入金額:根保証96百万円
食品卸売業者 承 諾
事業の概要 K社は、自社独自に冷凍食品を開発し、バリエーションを増やし新規取引先を開拓、営業に力を注いでいる状況であった。しかし、メイン取引先が自社工場に生産をシフトしたため、売上が激減するという事態に当面し、新規取引先の拡大による売上げ拡大が急務となった。
本制度の活用 K社の売掛金は現金受取であるが、入金サイトが3ヶ月と長かったため、早期に現金化することにより手元流動性を高め、これにより新規取引先の開拓を図る計画をたてた。
金融機関に本制度の利用申し入れを行い、手続きを進めていったところ活用予定の売掛債権に譲渡禁止特約が付されていたことから、第三債務者に対して解除を要請したが、スムーズに理解が得られなかった。このため、当該申込金融機関へ再度相談したところ、双方と取引があったことから当該金融機関の協力により特約解除となり、本制度を利用することが出来た。
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事例12:保証協会の仲介により第三債務者の理解が得られ、本制度を活用

借入企業 第三債務者(売掛先) 対抗要件
会社名L社
資本金3百万円
業員数7名
業種土木工事業
売上高2.5億円
借入金額:個別保証3千万円
土木工事元請会社 承 諾
事業の概要 L社は、昭和55年個人創業し、平成10年に法人化した道路・河川改修等を主体とする土木工事会社。相応の大口受注を確保しているが、下請工事が主体とあって、代金回収の大半が工事完成後という実態から、人件費・材料費等の先行支払資金の調達を中心に資金繰り緩和が課題であった。
本制度の活用 金融機関からL社の保証について保証協会に相談があり、協会から本制度を勧めたところ、L社は風評被害を懸念し発注元親会社の承諾を得ることに躊躇した。
このため、当該保証協会は、発注元の第三債務者が保証協会の卒業会社であったことから、同社代表者との面識を伝手に訪問して制度の趣旨等を説明し、協力要請を行った。この結果、当制度が理解され快く承諾が得られたため、個別保証方式での本制度利用が実現し、資金繰り緩和に繋がった。
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