(調査概要)
本年8月末から9月上旬にかけて、経済産業大臣の指示を受け、中小企業庁幹部が24道府県に出張し、地域の中小企業金融情勢について、中小企業団体、地銀や信金等の地域金融機関から聞き取り調査を実施したところ。
その概要は以下の通り。
(1)中小企業の感じる景況感・資金繰り
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多くの中小企業にとって、景気の底打ち感は感じられないのが実情。
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長期にわたる不況で、業種や業歴を問わず、倒産が増えている。その中で、老舗の企業の倒産の増加が目立つ。
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業況の改善が実感出来ない中、資金繰りの改善も実感できないと答える中小企業が多い。多くの中小企業がデフレ下でこれ以上の債務(借金)を増やすことに極めて消極的。比較的業況の良い企業は債務の圧縮に努めており、借入金返済に最大限努力をしている。
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業種を問わず、業況の二極化が一層顕著になりつつある。
(2)金融機関の貸出動向
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金融機関にとって貸出を増やしたい、業況の比較的良好な企業は財務リストラ(借入金の返済)に努めており、資金需要は減少している。他方、業況の厳しい企業の資金需要には金融機関はそのリスクの大きさから応えられていない状況にある。
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都銀あるいは上位地銀において、信用リスクに応じた金利引き上げの動きが目立つ。業況の良い中小企業には、貸出競争が行われ、むしろ金利の引き下げ競争が起きている。
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業況が非常に厳しい貸出先に対しては、倒産のリスクがあるために、金融機関は金利の引き上げに躊躇する傾向にある。このため、業況は決して良くないが、倒産懸念とまではいかないような中小企業で金利が引き上げられている。
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第2地銀や信金・信組と言った地域性の強い金融機関では、地域との繋がりも強く、いかに信用リスクに応じたといっても、一方的な金利引き上げに踏み切れていない。
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セーフティネット保証制度は、制度を評価する中小企業の声が多く、利用実績は順調に伸びている。引きつづき更なる拡充の検討を要望する声が多い。
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取引金融機関が破綻し、整理回収機構(RCC)に債権が売却された中小企業で、なお再建の見込みがある者に対しても、他の金融機関からの融資が得られず、資金繰り対策が必要との指摘もあった。
(1) 本年4月の定期性預金等の解禁を踏まえた動き
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本年4月の解禁を受け、1~3月期に定期性預金から流動性預金への移動が大規模に起こった。1,000万円以上の預金が減少し、以下の預金の増大が見られ、総量では変わらないとする金融機関が多い。4月以降は落ち着いている。
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一部金融機関からは、信用力に応じた金融機関間の移動が起こっていたという指摘があった。ただ、預貸率の低下、設備の低迷による長期資金需要の欠如もあり、長期資金の融資も含め、現在の貸出に影響を及ぼしているとの声はなかった。
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ペイオフ解禁に関して最もセンシティブなのは地方公共団体の動向であり、地方公共団体の資金の動きに、金融機関の懸念が強い。
(2)来年4月の全面解禁に向けた動き
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来年4月の全面解禁については、信金信組、中小企業団体から不安の声。預金移動、貸出態度の厳格化の恐れ等、漠然とした不安をもっているとの声が多い。
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経済情勢が良いときに全面解禁するべきではないかとの意見が地域金融機関、中小企業の双方から聞かれる。
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ただ、中小企業者の多くは預金者の立場から、借入金と相殺すれば問題がないといった理解をしている者も少なくない。ペイオフ解禁と貸出との関係についての問題意識は薄い。
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新型預金の導入については、コストがかかる、時間がかかる、下手をすると財務状況が悪いとの風評を招くとの理由から、消極的な評価をする金融機関が多い。まず利用者にとって使いやすい制度である必要があるとの声が強い。
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地域金融機関と都銀との合併・系列化に伴い地域金融機関の貸出姿勢が都銀の貸出姿勢に準じたものになり、地域の実情を反映しない与信体制になりつつあるという懸念が見られる。また、金融機関の再編・統合は、店舗削減等のリストラを通じて、中小企業への貸出姿勢の消極化につながるのではないかとの懸念も見られる。
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合併した都銀の今後の融資姿勢やサービスを懸念し、地元の地銀等にメインバンクを変更する中小企業が見られる。
(1)金融検査マニュアル中小企業融資編について
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大手金融機関にとっては、従来からある程度考慮していた点が明確化しただけとの声がある一方、中小金融機関からは、検査時の説明がやりやすくなったといった好意的な反応が見られる。
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ただ、全体的に今後の運用がどのように進んでいくか、注視する必要があるといった声が一般的。
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信用保証付き債権の条件変更に関する取扱い手引きが入った点については、条件緩和債権の基準が明確化したことで評価できるとした金融機関も見られた。
(2) 売掛債権担保融資保証制度
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金融機関や保証協会等の努力、累次の利用手続きの改正もあって、融資実績は増加してきているが、県の保証協会や金融機関によって熱意に大きな差があることも事実
(保証協会で熱心なのは、東京都、兵庫県、静岡県、北海道等の各協会など)。
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一層の活用のためには大企業等売掛先の理解(譲渡禁止特約の解除)、実務面での手続簡素化が必要との声がある。
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