生前贈与を活用したいのですが、どのように行えばよいですか?
生前贈与は、後継者への財産移転の方法のうち、オ−ナ−経営者の生前に権利
が確定されるため最も確実な方法であり、暦年課税制度と相続時精算課税制度
の2つの方法があります。
●暦年課税制度と相続時精算課税制度の概要
暦年課税制度と相続時精算課税制度の概要は次のとおりです。家族構成や財産構成によって、どちらが事業承 継にとって有利であるか判断してください。その際には、遺留分(Q8参照)の問題に十分注意してく ださい。
区分 | 暦年課税制度 | 相続時精算課税制度 |
---|---|---|
概要 | 暦年(1月1日から12月31日までの1年間)毎にその年中に贈与された価額の合計に対して贈与税を課税する制度 | 将来相続関係に入る親から子への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する課税制度 |
贈与者 | 制限なし | 65歳以上の親(父・母ごとに選択可) |
受贈者 | 制限なし | 20歳以上の子(兄弟姉妹ごとに選択可) |
選択の届出 | 不要 | 必要(一度選択すると相続時まで継続適用) |
控除 | 基礎控除額(毎年):110万円 | 特別控除額:2,500万円 (複数年にわたり使用可) |
税率 | 基礎控除額を超えた部分に対して 10%から50%の累進税率 |
特別控除額を超えた部分に対して 一律20%の税率 |
適用手続 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出し、納税 | 選択を開始した年の翌年3月15日までに、本制度を選択する旨の届出書を提出 |
相続時精算 | 相続税とは切り離して計算 (ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される。) |
相続税の計算時に精算(合算)される。 (贈与財産は贈与時の時価で評価される。) |
【相続時精算課税制度を活用するポイント!】
相続時精算課税制度を利用した場合の財産は、相続時ではなく贈与時の時価で評価されることとなります。 このため、相続財産である自社株式の価値が相続時に上昇していることが見込まれるような場合には、相続 時精算課税制度を活用した生前贈与を行うことが有効です。
【参考】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下の金額 | 10% | − |
300万円以下の金額 | 15% | 10万円 |
400万円以下の金額 | 20% | 25万円 |
600万円以下の金額 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下の金額 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 の金額 | 50% | 225万円 |
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下の金額 | 10% | − |
3,000万円以下の金額 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下の金額 | 20% | 200万円 |
1億円以下の金額 | 30% | 700万円 |
3億円以下の金額 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 の金額 | 50% | 4,700万円 |
●暦年課税制度と相続時精算課税制度との比較事例
オーナー経営者である父から後継者である子に対して、3年間に渡って2,400万円を贈与する場合を例にと って、暦年課税制度と相続時精算課税制度で行った場合を比較してみましょう。(法定相続人は、後継者で ある子1人とする。)
贈与時 | 贈与価額 | 暦年課税制度 | 相続時精算課税制度 |
---|---|---|---|
平成17年 | 800 | (800−110)×40%−125=151(注1) | 2,500−800=1,700(特別控除額の残) |
平成18年 | 800 | (800−110)×40%−125=151(注1) | 1,700−800= 900(特別控除額の残) |
平成19年 | 800 | (800−110)×40%−125=151(注1) | 900−800= 100(特別控除額の残) |
相続時 | 相続財産 | 上記贈与財産を含まないものとする。 | |
平成23年に 父死亡 <法定相続人 子供1人> |
7,600 | 7.600−(5,000+1,000)(注2) =1,600 1,600×15%−50=190(注3) |
7.600+(800+800+800)=10,000 10,000−(5,000+1,000)(注2)=4,000 4,000×20%−200=600(注3) |
贈与から相続 までに支払っ た税額 |
151+151+151+190=643 | 600 |
(注1)贈与税(暦年課税制度の場合)の税率・控除額(【参考】参照)
(注2)相続税の基礎控除額 5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
(注3)相続税の税率・控除額(【参考】参照)
【結論】この前提条件のケースでは、相続時精算課税制度の方が税負担が軽くなっています。
事業承継に関する税制
事業承継に関する税制は、中小企業庁発行の小冊子「上手に使おう!中小企業
税制48問48答(平成18年度版)」に載っています。
次のホームページから冊子の請求、ダウンロードができます。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/faq48/index.htm
生命保険の活用
生命保険はいわゆる相続税対策、相続税の「納税資金の準備」、「円満な財産
の分割」、「相続税の軽減」に役立ちます。特に財産の大半が自社株式や不動
産で売却や分割が難しい場合に有効です。
- 死亡保険の受取人を相続人にすることにより、相続税の納税資金を確保できます。
- 遺産分割協議を行う必要がありません。
- 死亡保険は受取人は1人でも複数でも可能ですので、受取人を指定することにより、財産分割のバランスをとることができます。
- 一定の契約形態の生命保険には、死亡保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があります。