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中小企業の会計に関する検討会 第7回ワーキンググループ 議事要旨

日時:平成23年7月28日(金)10:00~12:00
場所:経済産業省別館11階 1111会議室
議事概要:日本商工会議所荒井担当部長よりプレゼンテーションが行われた後、自由討議。WGにおいて検討すべき論点について意見交換を行った。


  • 全体的に句読点や言葉の統一が必要である。
  • 固定資産の減価償却に関して、公開企業では規則性が必要であると考えるが、中小企業においては、規則性は必ずしも必要ではない。減価償却をしなくてよい訳ではないが、規則性は相当の減価償却の典型的な例というだけであり、規則的な減価償却に限定するのはおかしい。取得価額と取得原価の使い分けについても明確にするべきである。
  • あくまでも相当な償却の一つが規則的な減価償却であるという書きぶりで記載する必要がある。
    各論と様式集の統一性についても検討する必要がある。規則的な減価償却は会計の根幹として通していただきたい。仮に、記載ぶりを緩和するとしても、あるべき論は規則的な償却であることを示していただきたい。

収益、費用の基本的な会計処理について

  • 収益と費用の対応を説明する部分で、売上原価に関して、当期の費用として計上するといい、期間対応させるという説明になっているが、売上との直接対応であり適切ではない。
  • 経営者に理解してもらいやすいものとするため、発生主義と費用収益対応の原則は項を分けて記載すべきではないか。また、総額主義の原則は本文から削除してもよいのではないか。 本文の文言について整合がとれていない箇所は修正する必要がある。費用収益対応の原則については一つの項目として記載する方がよい。総額主義の記載については実務においても留意するべきことであり、残す方がよいのではないか。

資産、負債の基本的な会計処理について

  • 資産の例示については検討が必要であり、棚卸資産もいれてはどうか。「されています」、「考えます」等の使い方を全体で統一すべきである。資産の例示の中に棚卸資産入れるべきである。

金銭債権及び金銭債務について

  • 「したがって、通常は、それらの額面で貸借対照表の資産に計上することが想定されます。」との記載における、「額面」は債権金額のことであろうが、その前段で「取得価額」で計上すると言っており、この記載は不要ではないか。 金銭債権に預金を入れた方がよいのではないか。
    また、「手形の割引高」、「手形割引額」等の表現は統一した方がよい。 受取手形、売掛金、貸付金などの金銭債権という意味で金銭債権という言葉が使われているので、預金は敢えて含めなくてもよいのではないか。
  • 「したがって、通常は、それらの額面で貸借対照表の資産に計上することが想定されます。」という記載は不要である。 金銭債権等の例示列挙は、本文に記載せず、解説で記載すればよいのではないか。

貸倒損失、貸倒引当金について

  • 「回収不能と見積もられる債権」というのは、全部貸倒のみを指すのか、部分貸倒も含まれているのか。 全部貸倒は貸倒損失であり、部分貸倒は貸倒引当金の問題であると認識している。
  • 企業の経理実務の中では、手形が不渡りになることで倒産と認識しており、そこから更に進んで破産申立等をすることを法的整理と認識している。「倒産など」とした場合、手形の不渡りも含まれるのかが明確でないため、法的整理に限定するのかどうかを明確にしておいた方がよい。
  • 手形の不渡りと、法的整理は別であり、分けて考えるべきである。

有価証券について

  • 取得原価と記載されているところは、他の記載と整合させ取得価額とするべきである。
  • 取得原価の部分は取得価額で統一したほうが分かりやすいのではないか。 会社法及び税法では「回復の見込みがあると認められる場合を除き」となっており、「回復の見込みがないと判断したとき」とは意味合いが異なる。 会計では回復の見込みが不透明な場合には評価損を計上し、税では回復の見込みが不透明な場合には評価損の計上を認めていない。中小企業にあまり時価評価を強要しないようにするという観点からは、「回復の見込みがないと判断したとき」という記載でよいのではないか。
  • 「大幅な債務超過など」の場合に評価損を計上するとあるが、中小企業が所有する有価証券のうち子会社や関係会社の株式については、それらの会社の財政状態を把握できることも多い。評価損を計上する場合の判断として、簿価純資産価額が取得時のそれと比較して2分の1未満になった場合などを考慮するべきではないか。
  • 回復不明の場合というのは判断がなかなかできないため、むしろ、回復の見込みが無いと明確に判断できた場合に評価損を計上するという規定の方が中小企業にはわかりやすいのではないか。
  • 社債に対する貸倒引当金計上と、有価証券の評価損計上の整合性について整理する必要がある。
  • 解説についてははっきりと記載した方がよい。曖昧な表現で誤解を招くのであれば、記載しないという方法もあるのではないか。
  • 中小企業は付き合いで非上場の取引先の株を持つことが有り、その場合、時価の把握は困難なことが多い。そのような株を取得する判断においても、相手の経営者の資産状況や相手企業の営業力等の決算書以外の判断要素も考慮しており、決算書のみで判断している訳ではない。有価証券の評価については、明らかに価値が無いと判断できる場合に評価損を計上するという記載の方が中小企業には分かりやすい。
  • これまでの議論の経緯から見ても、評価損を計上するということは、本文ではっきりと記載すべきである。
  • 本ワーキンググループで想定している中小企業の場合、一部の例外を除き、売買目的で有価証券を持つことはないと思う。また、売買目的以外の有価証券を保有している場合も、厳密な評価が難しいため、評価減は倒産など税務基準で損金算入が認められる段階で行うケースがほとんど。中小企業の場合は、「回復の見込みがないと判断したとき」の説明として、損金算入要件に該当した場合を例示するなど、客観的で簡便なものにしたほうがよいのではないか。
  • 中小企業の実務においては、法人税法上損金にならないものを評価損にするのは通常考えられない。金融機関が評価損については精査するため、中小企業が敢えて法人税法上損金にならない評価損を計上する必要はないのではないか。
  • 経営者に役立つものということであれば、決算書を入手するのは当たり前であり、実務でやっていないから評価損の計上をしなくてよいというのは理解できない。会社法で定められている計算書類の精神を意識しながらルール作成を行うべきである。
  • 中小企業の経営者にわかりやすくするという観点から記載ぶりを考える必要がある。勿論会社法の枠内で検討することが前提であるが、非上場株式の持ち合いなどが多く、時価評価困難な中小企業の実態も考慮するべきである。

棚卸資産について

  • 「時価が取得原価よりも著しく下落」という部分の取得原価のところは帳簿価額でもいいのではないか。実務的には個々の商品等ごとに把握することが難しいことも想定されるという記載は、経営者が棚卸資産を管理するという意味では敢えて記載しなくてもよいのではないか。
  • 実務的には個々の商品等ごとに把握することが難しいことも想定されるという記載は不要である。

経過勘定について

  • 金額的な重要性の乏しいものについては費用処理することも認められるという記載は、税法で損金として認められないこともあるので、記載しなくてよいのではないか。
  • 税法で全て否定されているわけではないので、記載しておいてよいのではないか。

固定資産について

  • 規則的な償却を前提としない相当な償却とはどのようなものを想定しているのか。
  • 規則的な償却でない相当な償却として稼働率に応じて償却する場合が想定される。稼働率に応じて増加償却を許容するような規定もある。
  • 中小企業には外部に投資家がいないので、必ずしも規則的な償却を求めなくてもよいのではないか。相当の償却の範囲内で経営者や税理士等がその償却の範囲を判断すればよいのではないか。
  • 決算書の信頼性を確保する観点から、災害等により著しく陳腐化した資産の評価損計上は強制的な記載にしてもよいぐらいである。また、固定資産の稼働率が大幅に下がった場合などは、規則的に償却をする方が実態に合わないという感覚もある。
  • 「毎期、規則的に減価償却を行うことが望ましいが、合理的な説明ができる範囲の償却を行うこともできる。」としてはどうか。

繰延資産について

  • 税法固有の繰延資産における「長期前払費用」の表示箇所については様式集に明示していただきたい。

引当金について

  • 退職給与引当金を全額計上ではなく、一定割合を計上するという記載は慎重に検討するべきである。中小企業でも退職給与の支給実績等があるのであれば、全額引当計上するべきではないか。
  • 退職給与引当金については過去の税法上の定めを鑑み、要支給額の一定割合を計上するということでよいのではないか。
  • 退職給与引当金の本文では「自己都合要支給額を基に」とし、解説で一定割合と例示する記載が、中小企業にとって最も分かりやすいのではないか。

外貨建取引等について

  • 決算期末における短期債権債務については期末レートによる評価を行わないのか。また、中小企業であっても為替予約を利用しているケースがあり、予約金額で計上すべきである。

純資産について

  • 資産の部と負債の部の差額を純資産というという説明では、経営の意思として資本政策を行う中小企業もあるため、違和感がある。
  • 本文において純資産の定義をしておくべきである。
  • 会社法上は純資産の定義はしていない。

注記について

  • 注記に関して、各項目を解説に落として、本文は簡略化してもいいのではないか。
  • 会社計算規則できていされているものについては、本文に記載しておいた方がよい。

様式集について

  • 担保設定に関して例示では設定額で書くのか簿価で書くのか不明。書き方をわかりやすいようにしていただきたい。
  • 販売費及び一般管理費は、人件費、家賃等の項目のみ表示すればよいのではないか。

総論について

  • 次回WGでは、総論について議論を行っていただきたい。総論については、第2回WGで基本的な考え方を提案させていただいているが、自社の経営に役立つこと、利害関係者への情報提供を行うこと、会計と税の調和を図ること、過重な事務負担をかけないこと等の観点から、検討していきたい。