日時:平成23年4月26日 10:00~11:40
場所:経済産業省別館5階 526会議室
議事概要:日本商工会議所の荒井担当部長よりプレゼンテーションが行われた後、自由討議。WGにおいて検討すべき論点について意見交換を行った。
議事要旨
- このワーキンググループの使命は昨年の懇談会・研究会の結果を踏まえ、会社法、会社計算規則が定めるところの「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の会計慣行」を中小企業の実態に合わせて作成することであり、あくまでも会社計算規則が優先される。それにも関わらず、実態に基づいた規則作りを重視しすぎていることによって、会社計算規則に明らかに抵触してしまっている部分がある。
- 有価証券、棚卸資産、固定資産は、資産の価値が著しく下落し、回復の見込みがない場合は評価損を計上しなければならないと会社法で定められているので、それには従うのが当然。中小企業の場合は時価が把握できないので、そのような規定は意味が無いというのであれば、価値が著しく下落しているか判断できないので、評価損を計上しないとすれば事足りる。
- 繰延資産については、「その効果が及ぶ期間にわたって償却」と定められており、均等償却が意図されがちだが、会社法では一定の期間以内の償却であることに留意する必要がある。
- ここでの議論はあくまで、会社法上の一般に公正妥当と認められる会計慣行、つまり、会社計算規則に準拠した範囲でのものと理解している。本日提示されている案は、中小企業の企業活動に関するテーマをほぼクリアされていると思う。そこで、本日提示されている案を会社計算規則と対比し、その上で、会社計算規則の内容がそのままでは、中小企業の経営者にとって理解しにくいのであれば、例示を示すなどの工夫をしてはどうか。
- 第一に経営者の役に立つ、第二に利害関係者に資するものをという趣旨からすると、経営者にとって重要な資金調達に関する金銭債務や借入金といった負債の項目はなぜ設けられていないのか。また、純資産に関しても経営者に自己資本の充実を促すという観点から記載していくことが必要である。
- 債権と債務というバランスを考えれば、金銭債権の項目は、金銭債権債務と記載すべきである。
- 固定資産の減価償却の「毎期継続して、規則的な償却」という表現は、会社法の記載に合わせて「相当の償却」とした方が中小企業にとって柔軟な対応がとれるのではないか。
- たとえ法律から逸脱していたとしても、中小企業の「実態」というのは「慣行」であり、その慣行を考慮した指針作りが求められているのだと思う。議論の進め方として、どこが会社計算規則に違反・逸脱しているのかを拾い上げ、討議するべきである。また、中小企業にとって記帳というのは重要であるから、記帳に関して最低限中小企業が行うべきルール作りをしてもいいのではないか。
- 外貨建取引、外貨建金銭債権債務が発生している会社は、ボリュームゾーンの中で考えると非常にわずかしか存在しない。外貨建取引の項目は将来のグローバル化のために設けていると考えられるが、実態とはかけ離れている印象がある。
- 新ルール作成の趣旨を見直すという意見があるが、金融機関は独自な判断基準から経営状況を判断しており、金融機関のための情報提供というよりは、経営者に役立つという視点を第一義として、税務申告に繋がるような指針を作るという方向で今まで議論されてきているはずではなかったのか。
- 引当金についてはプレゼンテーションの内容のままでいいと考えているが、外貨建取引については削除もしくは縮小等、今後議論を重ね調整していく必要がある。そして、株主資本等変動計算書、個別注記表についてはどう記載していくのかは今後決めていかなければならない。加えて、会社計算規則に記載されている原理原則については前書きで明示的に記載しておくことが重要である。また、金銭債権となっているところは金銭債権及び金銭債務と記載してはどうか。
- 明らかに会社計算規則に違反しているものに関しては調整が必要である。企業会計原則の扱いや記帳の問題は、今後総論や前書きで記載していくという理解でよいのか。
- 記帳は当然に会社法や会社計算規則が要求しているものであり、我々が新たに作るルールでは無く、前書き等に記載していく事項である。会計ルールは法律の条文や会社計算規則に記載されていないことを抽出していくものである。新ルール利用者の理解を促す意味で総論や前書きなどを作成してもよいのではないか。
- 金銭債務については負債の基本的な会計処理の中に含まれているため、全体のボリュームなど勘案して、記載していない。外貨建取引については、中小企業の国際化を進めていくこと、中小企業とはいえ今後海外との取引が増えてくることを意図して記載している。
- 外貨建取引について、全体のボリュームを勘案し外すことを考えてもいいが、その重要性からみて今この段階では外すことは納得できない。
- 外貨建取引については、今後の国際化の観点から記載しておく必要がある。企業の立場からすれば、「棚卸資産の評価ができない場合は評価損を計上する必要がない。」とはいえ、評価損に関する記載がある以上は評価できるかどうかという観点で検討の必要が出てくる。そのためのコストを考慮すると、評価損については記載しなくてもいいのではないか。ただ、明らかに価値がゼロに等しいという判断はしやすい。
- 為替予約やヘッジ会計を利用している会社はどの程度あるのか。
- 会社の考え方や取引の内容によるため、どの程度そのような会社があるのかは一概に言えない。
- 会社計算規則の規定を再現すべき部分とそうでない部分があってよいと思う。中小企業では、債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能な債権を貸倒損失として正確に計上できる者もいれば、できない者もいる。会社計算規則の規定を再現することによって、できない者にまでそれを強制するのはいかがなものか。
- 評価損を計上しても税務署に認められないことが多く、評価損の規定を明確にしておかないと税務署に説明ができない。棚卸資産が売れるか売れないか、時価がいくらなのかなど経営者が判断して評価損を計上するべきである。貸倒損失に関しても回収不能かどうか経営者の判断でやればいい。
- 中小企業の経営者が理解できるように、簡易かつ平易な表現で記載することを考えると、ヘッジ会計などは記載しなくてもいい。実際の税理士実務の中でも、ヘッジ会計はほとんど出てこない。
- 中小企業の成長に資するもの、経営の役に立つもの、経営の実態を把握するものを取り入れていくことが大切である。最低限、棚卸資産の時価を意識させることは経営の実態を把握するという点で大事なことである。
- 棚卸資産の評価損については、会社として時価の把握はできるが、税務当局に納得してもらうことが難しく、そのためにはコストもかかる。
- 会社計算規則を逸脱しない範囲で検討を行う必要があることは勿論である。そうした中で、ご提案は検討目的の趣旨を踏まえ中小企業の経営者が理解できるようにするという立ち位置に沿ったものであり、ここを議論の出発点として進めればよい。賞与引当金の記載で、現在は平成23年であるにも関わらず、平成10年度改正前法人税法の規定によるという表現はいかがなものか。
- 中小企業の経営に資するというのは、経営者が理解できるレベルの指針であればよいということではない。経営者は企業に対して責任を負うものであるから、会社のマネジメントに役立つ指針でなくてはならない。資産の価値が著しく下落した場合の処理は、経営者の判断として非常に重要である。固定資産や繰延資産の償却については、本来、会計上償却不足という概念は無く、経営者の判断で、「相当な償却」を行うということである。また、中小企業であっても、利害関係者が存するのであり、情報提供という観点からすれば、「法人税法上の償却限度額との差額」を脚注表示することも考えられる。
- 金融機関の審査は、これまで規則的な減価償却を前提にしており、減価償却をしていないとすればグレーな印象を受け、資産評価の検討に入るという手順になっていた。規則的な減価償却は少なくとも時間の経過による資産の劣化は計上されていると考えていた。「相当の償却」とする場合は資産価値についての何らかの注記が欲しい。
- 賞与引当金の計上について、平成10年度改正前法人税法の規定という表現は古くなって現実性が乏しくなっているので、実際には期間対応して計上していく必要がある。