日時:平成23年2月15日 16:00~17:30
場所:経済産業省別館9階 940会議室
議事概要:事務局より配布資料に基づいて説明の後、自由討議。ワーキンググループの設置や、ワーキンググループにおいて検討すべき論点などについて承認。
議事要旨
- 企業会計基準委員会(ASBJ)、中小企業庁のどちらの研究会も、中小企業の実態を踏まえ、成長や活力強化といった視点から、中小企業の経営者が理解できる会計の新しいルール作りや浸透させるための方策の必要性といった基本的な問題意識においては同じ。むしろASBJの非上場会社の会計基準に関する懇談会報告書(以下「懇談会報告書」という。)を深化させる形で中小企業庁の中小企業の会計に関する研究会中間報告書(以下「研究会報告書」という。)がまとまったのだから、両者を対立して考えず、共通点に着目して議論してほしい。また、両報告書ともIFRSの影響は受けない、安定的なものとするとしているのでその方向で検討してほしい。
- 新しい会計ルールは中小企業の実態に即していなければならないし、会社法431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の範囲内でなければならない。
- そもそも新しい会計ルールは、中小企業に強制適用できるわけではないので、数値目標で適用範囲を定めるのではなく、260万社の中小企業の経営者が、自らの会計ルールとして理解し、経営に活かせるようにすべき。また、新ルール策定後の普及、活用のあり方ついてもワーキンググループで議論してほしい。
- 研究会報告書は、懇談会報告書を踏まえたものと理解している。論点(案)には、両報告書の内容について、対立的な要素も併記されていると理解している。
- 記帳など実務的なことが困難な中小企業が多い。ワーキンググループの課題として、実務的な作業が困難な中小企業が新しい会計に取り組むことに対するサポートを考える必要がある。可能な限り簡易なものを作って「最低限これくらいはできる」というものを作るべき。また、簡易な会計ソフトを作って無償提供している国がいくつかあり、実務的に会計を活用できるレベルにするための支援機能や訓練機能が使えるようなものを政策として作ることが必要ではないかという点を挙げることができる。
- 研究会報告書と懇談会報告書には、そんなに差異がないと思う。注意すべきは、中小企業と一言でいっても、どこに着眼するかでかなりスタンスは異なってくる。どちらの報告書も、中小企業といった時、最大のボリュームゾーンを想定して新しいルールを作ったらどうかという趣旨だと個人的には思った。
- 企業の会計慣行が全て一般に公正妥当というわけでもないため、教育的側面もルールの中に盛り込まれていくことが必要ではないか。
- 平成14年の中小企業庁の「中小企業の会計に関する研究会」(以下、「平成14年研究会」という。)において、シングルスタンダードとするか、ダブルスタンダードとするかで平成14年研究会が収束せず、指針策定というニュートラルなところに落ち着いたことなど様々な経緯がある。具体的なルール作りにあたり、そうした諸々の問題を把握しておく必要がある。研究会報告書ではボトムアップとしている。その上で、共通認識持つ雰囲気作りが必要である。
- 結論が調和している懇談会報告書と研究会報告書の両方をベースに新しいルールを作っていくと理解しており、その点で異論はない。会計ルールは経営者にとっては読むのだけでも大変ということが課題であり、タスクはシンプルだと思うが、これをわかりやすいものにするのは難しい。量的な意味も含めて分かりやすいものとすべき。また、中小企業の範囲は広いため、ターゲットをどこに絞るかによって分かりやすさも変わってくる。平成14年研究会の報告書は良くできているが、今後作られるものはサポートとの一体性が重要。
- 策定したルールをどう普及させていくか、教育マニュアル的なものが重要で、それをルールに含めるのか、別立てにするのかも検討する必要がある。
- 適用対象について、中小企業と一口にいっても規模の格差が大きい。信用組合の取引先は従業員が4名以下の企業が多い。零細企業に会計を求めても実際は出来ない。零細企業について、どのように考えているのか。
- ルールは強制ではない。ボリュームゾーンの中小企業がなるべく使ってもらえるようにしてもらいたい。零細企業に絞ると、会計と言えないものになる可能性もある。ちょっと背伸びをして届くようなものを考えている。
- ボリュームゾーンを念頭にルールを作り、例えば零細企業に関係ない箇所は使わない。他方、最低限減価償却くらいはやるという整理にする。つまり、ある程度幅をもったルール作りをし、使ってもらえる箇所は使ってもらうということになるのではないか。
- 健全な中小企業を目指すことがこの検討会の目的だと思う。そのために、一番目に記帳の正確さが重要、二番目に仕訳をどうするか、三番目に経理実務を担当する人の育成が重要である。また、経営者自身も会計を理解する必要がある。
- 経営者や経理実務者に教育し、習慣化させるには基本実務を継続的にサポートする仕組みが必要である。その上で税理士や会計士といった専門家がバックアップする必要がある。
- 中小企業の経営者は時間的ゆとりがない。零細企業向けのルールは必要最低限なものにすべきで、具体的には税法をベースにして、そこに付加するものがあるのかどうかという観点で議論すべき。ここまでやれば何かあるといったインセンティブを与えるものであれば良い。
- 金融機関は、財務のみで中小企業が成長するかどうか判断していない。それ以外のところも見て総合的に判断している。
- 中小企業者にとって取り組みやすいルールにし、また活用にあたってのインセンティブを設けて、経営者が理解できるものにすべき。
- 税法をベースしたルール作りについて、元来は、税法が会計基準に寄っていくのが筋である。しかし、現在は会計が揺らいでいるので、税法が会計基準にどう寄り添って良いのかわからない状況にある。
- 中小企業の財務諸表作成は9割方税理士が行っている。従って、普及する対象という意味では税理士会や会計士協会も無視できないのではないか。
- 昨今の会計基準等の策定については、自分たちで使うものは自分たちで作るという流れになっている。本検討会における中小企業会計のルールづくりは、中小企業関係者が行っていくのが前提である。金融機関は利用者側、日商など中小企業団体は作成者側であり、メンバーを見る限りでは関係者が揃っているのではないか。仮に税理士が入っていなくても、あくまで税理士は作成者側なので包含されていると理解している。
- 適用対象について、親委員会で決めてワーキンググループにその内容で議論してもらうこととしてはどうか。懇談会報告書の適用対象は広くなっているが、研究会報告書はある程度限定されているように思える。
- 適用対象の範囲を定めることはあまり重要ではないと思う。中小企業の経営者に理解してもらいたいのは、会計処理ではなく、会計の考え方である。中小企業にはどういうステークホルダーがあるか考えるべき。規模が小さいから簡単な基準で良いという考え方ではないように思う。
- 座長の指摘されている適用対象の議論については、報告書で利害関係者の範囲などの属性に着目するという整理となっているという理解。また、公正妥当な会計慣行であるかどうかは、専門家でよく議論すべき。
- 適用対象を先に議論すべきとは思わない。中小指針との棲み分けを考える必要があるというくらいだと思う。中小企業の外枠は公開企業、大会社、会計参与会社を除く会社であり、中小指針が会計参与会社プラスαであれば、新しいルールの対象はマイナスαではないか。新しいルールを作っていく過程で、どこを対象にすべきか議論していけばよいのではないか。
- 今議論された内容が親委員会で理解されていれば問題ない。全体構成は、総論、各論、その他で良いか。
- 中小企業が会計を利用することが重要。その他にはどういうものが入るのか。
- 論点(案)の9ページのその他が、具体的な中身となる。
- 具体案が出来上がってくれば、これなら中小企業の経営者も自らの会計ルールとして理解できると思えるのではないか。最初から、対象となる中小企業のカテゴリーを考えなくても、ワーキンググループで総論も各論も具体的に議論することで、色々な問題が解消されると思うし、そうあるべき。この検討会やワーキンググループが策定した会計ルールを、中小企業が自らのルールとして受け入れて実行するところまでフォローしていくべき。ルールを作るところにも参画し、普及にも取り組んでいくのが責任だと思っている。
- 懸念しているのは、良いルールが策定されても現場で使われないこと。中小零細企業では、これまでの経験上なかなか難しい。ルール策定するだけでなく、その普及や活用へのインセンティブなど、サポートなしにはなかなか使われていかないことを踏まえて議論すべき。