トップページ 中小企業庁について 歴代中小企業庁長官 年頭所感 中小企業庁長官 平成23年 年頭所感

中小企業庁長官 平成23年 年頭所感

中小企業庁長官平成23年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

現在の中小企業の皆様をめぐる情勢は、統計上は、一部、回復の動きが見られるものの、昨今の円高の影響等により、経営現場の感覚としては、依然として非常に厳しいとの声をよく耳にいたします。

企業数の99.7%、雇用の7割を占める中小企業の皆様は、我が国経済の活力の源泉であります。昨年6月、中小企業政策の理念や我が国経済社会における中小企業の位置付け、政府が取り組むべき行動指針などについて、中小企業憲章として閣議決定を行いました。今後とも中小企業憲章の内容に則り、我が国経済を支える中小企業の皆様の活性化のため、政策を総動員して取り組んでまいりたいと思います。

なかでも、資金繰り支援は中小企業対策の根幹をなすものです。昨年11月に成立しました補正予算には、事業規模15兆円、総額5,600億円超の資金繰り対策を盛り込んだところであり、年度末に向けてニーズが高まる借換保証の推進や、セーフティーネット保証・小口零細企業保証等の100%保証の継続、日本公庫や商工中金による直接貸付の充実等、万全を期してまいります。

また、中小企業の皆様が、今、共通して苦しんでいらっしゃるのは「仕事がない」ということです。地域経済を活性化させるためには、地域の中小企業の皆様に仕事が行き届く施策を進めることが重要であり、先般成立した補正予算にも、経済全体が持ち直すことにより、中小企業の皆様にも仕事が波及するよう、延長した家電エコポイント制度や住宅エコポイント制度の促進策、学校等の施設の耐震化、高規格幹線道路等の社会資本整備などが盛り込まれております。また、官公需においても、昨年閣議決定をした過去最高の中小企業向け契約目標比率を達成するべく、中小企業の皆様の受注機会の増大を図っているところです。

中小企業の皆様にとっての経営課題の一つとして、人材の確保・育成があげられます。昨今、採用意欲の高い中小企業の皆様が若手人材の採用に苦戦している一方で、若年者の雇用情勢は厳しい状況が続いており、需給のミスマッチが生じております。中小企業における長期インターンシップ制度をさらに拡大するなどを通じて、地域経済の中で中小企業の人材をめぐる新たな社会的ルートを確立させ、ひいては中小企業自らが自律的に道筋をつけて雇用を確保できるよう取り組んでまいります。さらに、中小企業の皆様にとって重要な課題として、技術開発があげられます。我が国の産業の基盤であるものづくり中小企業の技術開発支援や、産学官連携による研究開発支援を通じ、中小企業の皆様の底力向上に取り組んでまいります。

また、中小企業の皆様も国内競争だけでなく、さまざまな分野で国際競争にさらされております。アジアを中心とする海外の需要を自らの成長に取り込んでいくことは、中小企業の皆様にとっても重要な課題であり、昨年岐阜で開催された「APEC中小企業大臣会合」においても、中小企業の発展のためには、グローバル市場へのアクセスの拡大が重要との認識で一致しました。中小企業の皆様の海外展開支援体制を強化するため、昨年10月には、経済産業大臣を長とした「中小企業海外展開支援会議」を立ち上げ、農水省やジェトロ、中小機構などの関係機関と連携し、地方経済産業局を中心としたきめ細やかな支援に取り組んでおります。さらに、海外展開のみならず、農商工連携を始めとする異分野の中小企業者の連携や地域資源を活用した新事業の展開支援など、意欲のある中小企業の皆様を伸ばすための支援策を重点的に実施してまいります。

中小企業の皆様をとりまく環境は、グローバル化の急速な進展や、人口減少など、大きく変遷しております。それに伴い、中小企業政策においても新たな課題が生まれており、省庁を超えた横串の政策が求められています。そのためにも、本年は、既存の概念や政策手段に囚われることなく、中小企業の皆様が金融機関との壁、人材との壁、海外との壁等、あらゆる壁を乗り越えて自律的に発展できる仕組みを作り、その実現に移す年にしたいと思います。

中小企業の皆様は、経済を牽引する力であり、社会の主役であります。中小企業の皆様にとって大きな飛躍の年となるよう祈念いたしまして、私からの新年の御挨拶といたします。

平成23年1月1日
中小企業庁長官
高原 一郎

>>歴代中小企業庁長官 年頭所感