平成22年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
米国リーマン・ブラザーズ社の金融破綻がもたらした悪影響が世界各地を襲ってから、一年半近くが経過しました。この間、金融システムの面では、欧米諸国よりも遙かに安定していた我が国ではありましたが、世界的な経済活動の急激な収縮に見舞われ、多くの皆さんが予想もしなかった苦境に陥りました。政府としては、先ず何よりも、1社でも多くの中小企業を守らなければならない、と決意の下、一昨年の秋以来、信用保証や政府系機関の機能を全開させ、50兆円近い規模での金融措置を発動しました。また、昨年には、かつてない規模で、ものづくり補助金や官公需の中小企業受注目標を設けるなどして、中小企業の「仕事づくり」を図ってまいりました。一方で、経済の収縮はそれまで過熱していた原油や原材料価格を鎮静化させ、昨年の5月頃から、経済も徐々に落ち着きを取り戻してきました。数字の上でも、倒産件数は、一昨年に比べると減少する月さえ出てきました。この間の中小企業の皆さんの、企業を守り、従業員を守るとの決意と経営努力のたまものと、改めて皆さんの筆舌に尽くしがたい御苦労に深く敬意を表する次第です。
しかし、内外の経済は予断を許さない状況を続けています。何と言っても、雇用情勢が厳しくなり、賃金も伸びない状況は、今後とも需要がなかなか回復しないのではないか、特に地域や中小企業にはその影響が強く残るのではないか、との心配をもたらします。我が国の産業、雇用、そして私たちの暮らしの支え役は、何と言っても中小企業です。そこで、政府は、12月8日に事業規模24.4兆円の緊急経済対策を決定し、補正予算案を提案する方針です。対策の中では、中小企業支援策が柱の一つとなっています。特に金融対策では、11月の臨時国会で金融円滑化法が成立しましたので、成立から4日後の12月4日から、早速、法を施行し、景気の波に襲われる中小企業の皆さんがこの法律を利用して、金融機関との間で、返済猶予などの条件変更がスムーズにできるようにする、また、補正予算が成立した暁には、一部の例外業種を除いては、全業種の方が利用できるようにする景気対応緊急保証を22年度末まで実施することとします。
また、雇用対策、仕事づくり対策の面でも、積極的に取り組みます。補正予算を活用して、この春の新卒の皆さんのためにインターンシップ事業を用意し、各地の中小企業で学んでもらう、また、22年度予算案が承認されれば、ものづくり中小企業の技術開発への取り組みを支援するなど、若い人材と中小企業を橋渡しする、あるいは我が国の産業競争力を支える「技術」を守ることに全力投球します。
たしかに、中小企業は、景気の荒波の影響を真っ先に受けますし、特に一昨年以来、それを乗り越えるためにそれまでの蓄えもかなり減らして、厳しい状況にある方も多いと思います。しかし、果敢な取り組み、スピーディーな対応、そして経営者の力と才覚が事業経営にストレートに直結するという、大企業には見られない強みもあります。政府は、金融面などでセーフティネットを用意し、同時に技術開発や販路開拓面でも全力で支援に取り組みます。
世界の人口は増え続けており、中長期的には世界市場は成長基調を強めるはずです。売り上げが伸び悩む時には、コストを減らして凌ぐ途もあります。受注をこなすことで手一杯の時には気づかなかった経営手法の見直しや改善のチャンスもあります。昨年、補助金を利用して試作品開発をした中小企業の方からは、従業員と一体となって自分達に何ができるのかを見つめ直す機会となり、これまで気づかなかった新たな可能性を発見したなどの声をいただきました。
中小企業の活気無くして、我が国の繁栄は有りません。皆さんと手を携えて、難局を乗り越え、振り返ってみたら、かつてない飛躍を遂げた年になった、平成22年をそんな年にすることを、皆さんと誓い合いたいと思います。
平成22年1月1日
中小企業庁長官
長谷川 榮一