静岡県静岡市 静岡呉服町名店街
商店街のトップランナー
一店逸品運動の発祥地。地権者も巻き込んだ長期的視野に立った商店街の賑わいづくり。
事業実施の背景

静岡呉服町名店街は、JR静岡駅から北へ徒歩10分程度の距離に位置する静岡市の中心商店街の1つである。県庁・市役所などの官庁や静岡赤十字病院、市立静岡病院などの総合病院に隣接し、買い物目的外の来街者も比較的多い。江戸時代の行灯をモチーフとした街路灯や、個性的なモニュメントが多く、車道との段差も解消されており、非常に歩きやすく、そして歩いて楽しい商店街である。
昭和30年代後半からの高度成長期に静岡市の中心市街地として活況を呈し、その後も従前の賑わいを保っている元気な商店街として今日に至っている。しかしながら、近年の雇用情勢の悪化やデフレ不況による景気の低迷、加えて、小売業界の業態間・地域間競争の激化等から、商店街を取り巻く環境は一層厳しさを増してきている。また、グローバル化・IT化の進展・規制緩和・少子高齢化の進行等の経済の構造変革と暮らしを取り巻く環境の変化の中で、静岡呉服町名店街が更に発展していくためには、商業者が結束を固め、組織力を最大限に活用し、多様化する消費者ニーズに適応した魅力ある事業を展開し、本格的な高齢化時代を迎える21世紀に対処していかなければならない。
事業の概要
現在運行している浪漫バス、コミュニティバス、低床バスなどの静岡市が進めるオムニバスタウン構想と連携した積極的な取組みを行い、人にやさしい商店街を目指している。
(1)一店逸品運動
専門店として生き残るために、仕入れ販売するだけでなく、各店舗がそれぞれの魅力のある商品を開発することを目的に、平成5年から始めたこの取組みは、各店舗での来店客とのやりとりを通して、独自商品を開発及び販売している。現在では、各店に話題の逸品が存在し、全国的にも注目される商品も多い。このような商品を生み出すことは、ニーズを知らなければならず、来店客とのコミュニケーションが不可欠である。
この運動では、来店客のニーズに敏感に対応できる感性を身に付け、自信をもって商品説明することが重要である。また、ユニークな点としては、他店舗の商品について、色々とアイデアを出し合いながら、逸品の完成度を高めるところにある。
(2)ランドオーナー会議
商店街のイメージを維持させていくためには、商店街のコンセプトにそぐわない店舗を出店させないことが必要である。家賃を下げて、コンセプトに合わない店舗を新規出店させると、そのために商店街全体のイメージが悪くなり、結果的に来街客の減少につながる可能性が高い。店舗のオーナーである地権者にも協力してもらい、今後の商店街の方向性についての共通認識を持ってもらうことが必要である。全国チェーンの飲食店が出店することにより、商店街の諸活動が機能しないケースが全国的に多く発生している。このため、呉服町では、地権者にも商店街活動を理解してもらうための会議を全国に先駆けて設置している。
(3)(財)日本ショッピングセンタ-協会への加盟
商店街の経営をさらに向上させ、SCの経営手法を取り入れるために、日本SC協会に加盟している。今後、SCのノウハウを活用して商店街の活性化・リニューアルを図ろうとしている。
事業の効果
一店逸品運動の成功から、静岡呉服町名店街の知名度がアップした。
ランドオーナーに街づくりへの参加を繰り返し呼びかけたところ、徐々にではあるが参加者が増えてきている。空き店舗が発生し、後継テナントを選定する際に、ランドオーナーと呉服町名店街にふさわしいテナントを誘導するよう協議する機会を持つことができるようになり、良好なテナントミックスの構築に向け、一歩を踏み出した形となった。
事業の課題
静岡呉服町名店街の通行量が減少傾向となっており、新たな対策を考える必要が出てきている。
ランドオーナー会議への参加者がまだ少なく、今後とも地道に協力を呼びかけていく必要がある。
テナントミックスの構築に当たっては、ランドオーナーの協力が不可欠であるが、テナント料の引き下げ等ランドオーナーに不利な条件を承諾しなければならないケースが出てきており、どこまで依頼すべきか迷うことが多くなっている。