神奈川県横浜市 元町エスエス会
元町ブランドを追求し続ける取組み
都内や近隣商店街との競争激化、みなとみらい線の開通など周辺環境が変化する中、独自の事業展開で元町ブランドの地位を確固たるものに。
事業実施の背景
JR京浜東北線石川町駅、みなとみらい線元町・中華街駅の東側に位置する約600メートルの商店街で業種構成はファッション関連がほとんどである。店舗1階部分を後退させ、敷地内を歩道に提供するなど全国に先駆けたユニークな歩行者空間を生み出す他、路上駐車帯を設けるなど道路整備にも力を入れている。これらの整備については西欧文化と日本文化の交接点をコンセプトに、照明等にも同一のコンセプトを活かし、街全体の統一感を高めている。
元町は、開港以来、西洋文化の進取によって日本の商業を牽引してきた歴史を持つ商店街である。「ハマトラ」ファッションを生み出す等、ヨーロッパ調のセンスの良さを特徴としており、メインイベントである「チャーミングセール」には横浜のみならず首都圏からも多くの人々が訪れる著名な商店街となっている。
商店街の中核である元町SS会は有能な若手経営者が多数所属し、強固な結束を誇る組織であり、これまでも第一期の壁面線後退(1955年から)、第二期の舗車道整備(1985年から)等、常に次代のニーズを見越した、元町の独自性を追求した環境整備やソフト事業の展開により、繁栄を継続している。
しかし、近年、都内(渋谷、原宿、青山、六本木等)、や市内の競合商店街(横浜西口、みなとみらい地区)の発展により、厳しい競争環境に置かれている。
こういった中で、念願のみなとみらい線の開通(平成16年)により、渋谷方面からの直接的なアクセスが確保される等格段の利便性の向上が図られたが、反面、東京方面やみなとみらい地区への来街者の流出も懸念されるため、オリジナリティあふれる魅力アップを目的とした第三期の街並み整備を行った。
事業の概要

21世紀の元町スタイルを創造するために、人の心に訴える街、美しい街並みの創造といったテーマで以下の整備を実施した。
(1)歩いて楽しい回廊づくり
- 1) 美しい回廊をつくる。
- ・路上設置物の数を極力減らす。
- ・独自の「コの字」壁面を強調する。
- ・突き出し看板の撤去。(看板は軒下に誘導)
- ・長い通りにリズム感を出す。
- 2) 季節感のある通りをつくる。
- ・樹木や花など自然の要素を取り込む。
- ・季節ごとのイベント、色や音の導入。
- 3) 夜も楽しい通りをつくる。
- ・夜の印象を明るくする。
(2)ホスピタリティのある街
- 1) 疲れない商店街をつくる。
- ・快適に休める公共スペースを増やす。
- 2) 顧客への本物サービスを徹底する。
- ・買い物案内、商品手配、配達。
- ・女性や子どもへの対応。
- 3) わかりやすい商店街を。
- ・案内サインの適切な配置。
- ・交差点・入口をもっと目立たせる。
- 4) 安全で快適に歩ける商店街をつくる。
- ・バリアフリーを徹底する。
- ・通り全体の必要な明るさを確保する。
- ・路上設置物の数を極力減らす。
上記のための、主な施設整備は以下の通りである。
- ・エントラス空間の整備
- ・パサージュの設置
- ・照明の整備
- ・植栽の整備
- ・ストリートファニチャー(案内板等)の設置
- ・路面改修、歩行者帯整備
- ・電線の地中化 等
事業の効果
・第三期工事が開始されるとともに、みなとみらい線が開通した平成15年度にはクレジットカードの売上高は大幅に増加した。16年度は、同線の開通熱がやや冷めたこともあり、やや低下したが、工事や新線の開通前の14年度に比べれば、大きく増加している。
・周辺案内サインの設置や交差点部分の整備、車道改修・休憩スペースの設置・街路樹設置等によって、山手、中華街、山下公園等の周辺地域との回遊性や安全性・快適性の向上に繋がっている。
・軒先灯・足下灯・ボラード照明の設置によって、集客力の弱い夜間ショッピング環境の充実に繋がっている。
事業の課題
充実した商店街組織を持ち、ハード整備やソフト事業展開等において、申し分のない運営を行っているが、昼間に比べ、夜間の来街者が少ないという課題がある。
ファッション専門店等物販店の閉店時間が早いことが主要因であり、商店街組織においても、この改善のため、平日の夜間時間帯へのOLの集客方策の検討等を行っている。しかし、一番の解決策である閉店時間の延長は、二交代制への転換など各個店への大きなコスト増をもたらすことになる。各店舗の経営状況が良好であり、特段の危機意識を抱いていない中で、意識転換を推進していくことはなかなか難しいといった状況がある。