トップページ商業・地域サポート商業・物流支援がんばる商店街77選まちづくりと一体となった商業活動:九州豊後高田市内8商店街 

がんばる商店街77選

にぎわいあふれる商店街アイデア商店街まちづくりと一体となった商業活動

大分県豊後高田市 豊後高田市内8商店街

「昭和」をキーワードによみがえった商店街
商店街に元気を取り戻そうと行政・商工会議所・商業者の3者が協力し合い「昭和」をキーワードにまちの再生へ向けた共同作業を展開。

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商店街を中心に各種イベントを開催

豊後高田市内8商店街
(豊後高田昭和の町)

新町1丁目商店街、宮町商店街、新町2丁目商店街、稲荷商店街、中央通り商店街、駅通り商店街、銀座街商店街、中町商店街

所在地
大分県豊後高田市
会員数
8商店街136商店
商店街の類型
地域型商店街

事業実施の背景

観光客でにぎわう商店街の様子

大分県豊後高田市は、「仏の里」として名高い『国東半島(くにさきはんとう)』の西部に位置し、豊かな自然と温暖な気候に恵まれている。10万人の商圏を持つ市内商店街は、市の中心部を流れる桂川によって2分され、西側に6商店街、東側に2商店街があり、それぞれが江戸時代から昭和30年代にかけて、県北地域の商業の中心地として栄えた。

しかし、昭和30年代以降、人口は減少し続け、昭和40年の宇佐参宮鉄道の廃線やモータリゼーションの進展による人の流れに変化が起こったことなどから、中心商店街も急速に衰退。かつての賑わいも「昔話」となり、ついに、「商店街を歩くのは人よりも犬や猫の方が多い」、「鉄砲を撃っても人にあたらない」とも表現される様相となる 。

衰退したまちの再興への道を模索する中、商工会議所を中心とした「豊後高田商業まちづくり委員会」が立ち上がる。繰り返し行なわれる検討会議の中で、活性化へのテーマを「中心市街地」と決定。市街地の古代から近代に至る歴史の調査から始まり、その時間・空間軸を1枚の地図に組み込む「豊後高田市ストリート・ストーリー」を作成。既存の市街地、その歴史的背景、まちづくりの先例といったそれぞれの要素を考慮し検討する中で、古くて不便だとばかり思っていた既存商店街が、実は歴史と伝統のある昭和の姿をとどめた魅力があることがわかり、全国的にブームになりつつあった「昭和」がこのまちのテーマであることを確信する。

「昭和」というテーマの決定後は、行政・商工会議所・商業者の三者一体で1年をかけて「まちなみ実態調査」を実施。徹底したまちの分析から既存商店街の建物の約7割近くが昭和30年代以前のものということが判明。歴史を振り返る中で市が最も元気であった昭和の商店街再生に向けた取組みが始まる。

事業の概要

昭和ロマン蔵(駄菓子屋の夢博物館)

(1)昭和にちなんだ4つのキーワード

まず「昭和の建築再生」として、各商店のパラペットを外し、以前の看板をむき出しにすることで昭和の街並みを再現。次に「昭和の歴史再生」として、各店に伝わる珍しいお宝を一店一宝として展示。そして、「昭和の商品再生」として、その店自慢の商品販売を実施、そして最後にお客さんと直接対話し、ふれあうことによる昭和30年代と変わらないおもてなしをする「昭和の商人再生」といった4つのキーワードでまちづくりが進められた。

(2)核施設の整備

空き店舗を活用したチャレンジショップや店舗の修景等に加え、商店街に隣接する巨大な米蔵を改修し、まちの拠点施設「昭和ロマン蔵(ぐら)」として整備、同蔵内に10万点を超える古いおもちゃを展示する「駄菓子屋の夢博物館」をオープンした。この博物館の館長であるおもちゃコレクター小宮裕宣氏については、商工会議所関係者が福岡県へ何度も足を運び、口説き落とした。まさに「企業誘致」ならぬ「人材誘致」である。また、「昭和の町」のシンボルマークでもある黒崎義介画伯の絵本原画を展示した「昭和の絵本美術館」もオープン。さらに、国東半島の食の情報発信施設として観光バスの団体客も収容可能な和食レストラン「旬彩南蔵(しゅんさいみなみぐら)」を整備。メニューの監修や設計は著名な専門家が手掛けた。

(3)商店街でのイベント

商店街では、「街並みめぐり」や「おかみさん市」といった自主イベントを開催している。この勢いは若者にも波及し、「昭和の町音楽祭」を生み出し、文化面にもにぎわいの相乗効果を生み出している。

(4)観光まちづくり株式会社

このにぎわいを継続し、市内全体に波及させるため、「豊後高田市観光まちづくり株式会社」を設立した。「昭和の町」におけるマネジメントを行い、会社の利益は、まちづくりへと還元し、「昭和の町」及び地域観光の「質」を維持できる仕組みの構築を図っている。

事業の効果

年間5万人の観光客を見込んでスタートした「昭和の町」だが、メディアに多く取り上げられたこともあり、予想をはるかに上回る25万人を超える観光客が訪れ、奇跡的に商店街に活気がよみがえり、商店主にも笑顔が戻った。同時に、全国から年間100件以上の視察が来るようになり、商店主らは、観光客・視察団体と市内のお客の対応に大忙しである。

事業の課題

(1)増加する観光客への受入体制として、土産品の開発、駐車場等の整備、商店主の高齢化による各商店の継続等

(2)「昭和の町」として、観光客にも、地元消費者にも愛される商店街・まちづくりの推進