鳥取県境港市 水木しげるロード周辺商店街
「鬼太郎」の妖怪オブジェで観光スポット化
街内の歩道沿いに境港出身の水木しげるの人気アニメ「鬼太郎」に登場する妖怪オブジェを設置。観光客が多く集まる「魅力的な妖怪ワールド」を演出。
事業実施の背景

境港市は、古くから天然の良港として、漁業を中心に栄えてきた。人口は約3万8千人。市の主な産業は水産業、アジ・サバ・イワシといった多獲性魚のほか、夏場のクロマグロなど水揚量・金額ともに全国有数の漁港である。特に、ベニズワイガニは全国一の水揚げを誇っており、この水揚量の多さを背景に水産加工業の集積度が高い地域である。
商店街は、明治35年頃から、境港駅からお台場に通じる町筋に開店し、次第に店舗を増やしながら、本町商店街、松ヶ枝町商店街、銀座商店街、新道商店街の4商店街に発展し、商業の中心として繁栄してきた。
しかしながら、交通体系の変化、大型小売店の進出、消費者ニーズの多様化、商店主の高齢化など社会状況の変化により、昭和40年から50年をピークに売上げが減少し、閉店する店舗が急増するなど商業機能の空洞化が危惧されていた。
このような状況の中、商店街活性化策の一つとして平成元年から「緑と文化のまちづくり」をテーマとして、人に優しく、人々に親しめる快適な街づくりを進めていた。この事業の一環として境港市出身の著名人の方々からの提言がきっかけとなり、「鬼太郎」「妖怪」をキーワードとし、妖怪オブジェを商店街歩道に設置する「水木しげるロード」構想がまとまっていった。
事業の概要

当初の計画は、観光客を対象としたものではなく、地域住民を商店街へ誘い込む事業として整備したものであるが、いざ、ふたを開けてみると、そのユニークな発想がテレビ等マスコミに多く取り上げられ、その結果多くの観光客が訪れる県内でも有数の観光スポットへと育っていった。これも、ゲゲゲの鬼太郎を始めとする妖怪たちが、お年寄りの方から子供たちまで幅広い年齢層に受け入れられる証しであり、妖怪のブロンズ像を見て、触れることにより、それぞれストーリーが浮かんでくる、愛される存在であったからこそである。
現在、市内には、水木関連事業の集大成として、水木しげる氏が世界中から集めた妖怪コレクションや独自に制作したオブジェの展示など、妖怪の世界を展示や映像で紹介した「水木しげる記念館」や延長800メートルの商店街沿いに、妖怪ポケットパーク、ブロンズ像119体、レリーフ5基、絵タイル8枚を設置した「水木ワールド」が広がっており、年間の観光入込客は85万5千人を数えている。
事業の効果
(1)観光や文化等の情報発信拠点を形成
「水木しげるロード」が完成後、住民による「鬼太郎」「妖怪」をテーマとした新しいまちづくりの取組みが行われはじめた。水木しげる氏のファンクラブである「ゲゲゲのしげる会」、水木しげるロードの自主的な清掃活動、防犯活動を行う「水木ロードを育てる会」、鬼太郎音頭を作り、それに踊りを振り付けし、普及活動やPR活動を行っている「鬼太郎音頭保存会」、水木しげるロードの商業振興を行っている「水木ロード振興会」など、多くの組織が結成され、「水木しげるロード」の活性化の取組みが行われている。
(2)観光入込客の増加と空き店舗の減少
水木しげるロード」がオープンした翌年(平成6年)の入込客数は、28万人余であったが、昨年(平成17年)は過去最高の85万5千人を超えるなどロードオープン時の3倍を超える入込客数を数えている。これに伴い観光対応型店舗の出店が相次ぎ、空き店舗解消が進んだ。
このように「水木しげるロード」整備が地域の街づくり、コミュニティづくりに果たした効果は賑わいの創出のみならず多方面に及んでいる。
事業の課題
(1)二面性を持った商店街
「水木しげるロード」が整備され、観光客で賑わう商店街が創出されるようになったが、このことをきっかけに境港の商店街は二つの顔を持つようになった。
一つは、従来からの地元消費者を主な顧客とする地域密接型店舗であり、もう一つは新しい観光客向けの店づくりに特化した観光対応型店舗である。
商店街は観光客によって、賑わいの回復と店舗全体での売上げ増大効果をもたらしているが、一方では妖怪ブロンズ像のある商店街とない商店街では、通りの賑わいも、店づくりも違いがあるなど、二極化をもたらしている。