兵庫県神戸市 神戸市内11商店街等
震災の街から「食」の街へ
「お好み焼」や「ぼっかけ」をきっかけとした「食のまち」として活気が復活。修学旅行生受け入れ等、様々なソフト事業に注力。
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神戸市内11商店街等
(株式会社神戸ながたTMO)
新長田1番街商店街、新長田駅前商業協同組合、新長田本町筋商店街、大正筋商店街、西神戸センター街、六間道商店街、六間商店友和会、腕塚食材商業協同組合、久二塚商業協同組合、虹彩商業協同組合、丸五市場事業協同組合
- 所在地
- 神戸市
- 会員数
- 11商店街等330店
- 商店街の類型
- 近隣型商店街
事業実施の背景

JR新長田駅南側の商業ゾーンは、昭和20から30年代は神戸の副都心として位置づけられ、近くの工場で働く社員やその家族の買い物の場として賑わい、商業力も強かった。その後、地下鉄の延伸等の影響により、多くの住民が郊外ニュータウンに移転して高齢化率が高まるなど、徐々に空洞化が進んだ。そのような中、平成7年に阪神・淡路大震災が発生し、街は壊滅的な打撃を被った。ピーク時には24万人までいた長田区の人口は震災後10万人にまで減少した。震災復興事業が動き出したものの、大正筋商店街では約90店あった店が10店ほどまでに激減するなど、商店街活動ができない状況になっていた。そのため、平成12年に「地域のために一緒に頑張ろう」と若手が集まって出来たのが「アスタきらめき会」という任意団体である。アスタの「アス」は、「私たち(US)」と「明日」を意味し、「街(タウン)」の「タ」と合わせた名称である。そして、この時のメンバーが中心となって平成13年6月に3セクTMOの「株式会社神戸ながたTMO」が設立された。
TMO事業としてエリア内におけるお店の紹介をするため、「新長田南地区商店街マップ」を作成した際、長田の街における特徴は何か探ってみた所、このエリア内にお好み焼き屋が70軒以上あった。兵庫県は大阪(3800軒)に次ぎ約2800軒(平成5年調べ)と、全国第2位のお好み焼き屋の集積地で、県内一の集積地が長田区であるため、「宇都宮の餃子」のように、「長田のお好み焼き」というイメージを浸透させ、「食によるまちづくり」を目指そうと考えた。
事業の概要
(1)新長田ネット展開事業
長田には「お好み焼き」以外に「そばめし」がある。これは、工場で働く女工さんが、手軽に食事を済ませるため、焼そばを細かく刻み、御飯と混ぜて炒めたもので、地元では結構人気メニューとなっている。地域の特徴をよりアピールするため、「お好み焼き」と「そばめし」のマップを作成し、地域住民や来街者に配布することにした。特に「そばめし」については「そばめし発祥の地」とのサブタイトルをつけてマップ作成を行った。また、TMOのホームページを作成し、新長田のお好み焼屋の紹介やおいしいお好み焼きの食べ方の紹介等を行った。
(2)「社会体験学習のまち新長田」推進事業
近年は修学旅行に体験学習が求められるようになってきており、単に観光するだけではなく、福祉やボランテイア等を通じて地域とのふれ合いが要求されている。この事業において「商人体験」を実施し、お店の手伝いをしてもらいながら、商売の楽しさを知ってもらおうという企画である。また、その前提として、神戸・長田がどのような街であり、震災後どのように立ち直ってきたのかを修学旅行生に教えるカリキュラムが盛り込まれた。そのために作成されたパンフレットが「新長田復興物語」である。また、社会体験学習を受け入れるためのメニュー作りや体制作りを行い、毎年多くの修学旅行生を受け入れている。
事業の効果

新長田ネット展開事業の成果としては、新長田を「お好み焼きのまち」「食のまち」として売り出すことができた。また、そこから「ぼっかけカレー」も生まれてきた。これはテレビ番組で他の商店街とオリジナルカレーの対決をすることになったのがきっかけで、元々お好み焼きの具として使用している牛スジとコンニャクをカレーにかけた。この地域では上からぶっかけることを「ぼっかける」といっているので、名前を「ぼっかけカレー」にしたのである。この「ぼっかけカレー」は大変好評で、TMOと地元の食品メーカーとの共同開発で商品化された。また、「ぼっかけカレー」に続いて、「ぼっかけカレーラーメン」「ぼっかけ丼」「ぼっかけコロッケ」等、次々と新メニューを生み出していった。また、これらの「ぼっかけメニュー」を取り扱っているお店のマップ(「ぼっかけ食べ歩きマップ」)を作成し、来街者へのアピールを行うことができた。
また、ガイドブック等で新長田が「食のまち」として紹介され、遠方からもお客様が来るようになった。TMOが企画開発した商品も収益を上げている。また、商店街内において空き店舗が発生しても、すぐに埋まるようになった。
受け入れ事業についても、TMOの収益事業の1つとなっている。
事業の課題・反省点
お好み焼きのまち」や「ぼっかけ」をより一層定着させ、新商品の企画・開発も積極的に行うなど、「食のまち新長田」のイメージアップを図っていく(地元企業との共同開発でお好み焼き用の「長田ソース」を開発した)。これらの商品のアピールを通して、より新長田の街を知ってもらうことができると期待している。また、「食」を街のシンボルにしていくため、「食のまち」を目指す市町村等との連携を図り、「食」のネットワークを築いていくことが課題である。