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がんばる商店街77選

にぎわいあふれる商店街アイデア商店街まちづくりと一体となった商業活動

京都府京都市 京都市伏見区商店街

豊富な地域資源を活かしたまちづくり
伏見港、伏見城、寺田屋等の史跡や酒蔵など、地域資源が豊富。地元商店街や地域住民等との連携強化により、これらの資源を活かしたまちづくり。

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伏見夢百衆(外観

京都市伏見区商店街
(株式会社伏見夢工房 (TMO))

伏見大手筋商店街、伏見風呂屋町商店街、納屋町商店街、油掛商店会、竜馬通り商店街、中書島繁栄会、中書島柳町繁栄会

所在地
京都府京都市
会員数
7商店街等340店
商店街の類型
超広域型商店街

事業実施の背景

十石舟

伏見は豊富な地域資源に恵まれているにもかかわらず、これまでこの資源を地元であまり意識していないのが現状であった。そのため、まちづくりの機運を高めるには、これらの資源をいかに地域住民にアピールすることができるかが必要と考えられた。その前提として、これからまちづくりを行おうとしているTMO組織・?伏見夢工房に関して、地域住民や出資者以外の事業者の認識がまだまだ低く、その啓発が急務で本事業を通じて理解を得る必要があった。そのため、地域資源である「十石舟」の運航事業や「酒と蔵」をテーマとした事業展開を図り、これらの事業を通して地域住民等へのコンセンサスの形成を図ることになった。また、観光と商業の一体化によるまちづくりを図る必要性があった。

事業の概要

(1)十石船の運行等、観光スポット整備事業

まちづくりについて、地域住民等の合意形成を図るため、地域資源の1つである十石舟の運航を行った。十石舟とは、江戸時代に運航していた運搬舟のことで、当時、伏見は港町で賑わっており、その趣を現代に復活させようとの試みである。また、地域インフォメーションセンターの運営を行い、タウンマップ等を設置して周辺の観光スポットの回遊を図った。

伏見というと酒どころ、水どころといったイメージがあるが、十石舟の運航している川は、以前はドブ川であった。10年前より定期的に清掃を始めるようになったものの、地元の人たちはそのような取組みには無関心で、平気で川にゴミを捨てていた。しかし、十石舟が運航するようになって地元の人もゴミを捨てなくなった。このように、十石舟の運航によって「郷土愛づくりの街の資産」を大切にするという意識付けをすることができた。だんだん川もきれいになり、今では河川敷に桜の木300本、あじさい紫陽花1680本(平成18年には全3068本)紅葉80本(平成18年には全205本)、ユキヤナギ600本の植樹を行ったり、ライトアップによる夜間運航を行うなど、さまざまな取組みを行っている。江戸時代の風習にちなんで、「くらわんか舟」(飲食物の販売を行う舟)の運航も検討している。

(2)酒蔵を活かした集客施設整備事業

酒と酒蔵をキーワードにして商業と観光をミックスし、地域住民との合意形成を図りながら地域の活性化を目指した。この事業と並行して地元の大手酒造メーカーの協力を得て旧本店を改装し、「伏見夢百衆」の整備を行い、伏見の土産品・清酒の販売や喫茶、周辺地域の観光案内を行った。この伏見夢百衆の場を活用してクラシック蔵音楽会や日本酒アラカルト蔵講習会等を開催し、地域住民の理解をより深めた。

(3)回遊性を高めるためのパスポート事業

地元商店街や飲食店等と連携を図り、豊富な観光資源と商業施設等との回遊性を高めるため、パスポート事業を実施した。また、1868年の鳥羽伏見の戦いから137年目を迎え、家内安全、平和祈念して「137年の祈り」事業を実施した。

事業の効果

(1)十石船の運行等、観光スポット整備事業

株式会社伏見夢工房に対する地域住民の理解も深まり、コンセンサスの形成に繋がった。また、十石舟は、地域特有の歴史と文化に根ざしたものとして、小中学校の地域学習・教材の1つとなった。十石舟の乗船客を商店街に誘導するため、500円の買い物券を配布しているが、利用率は高いようである。

(2)酒蔵を活かした集客施設整備事業

伏見夢百衆に地域インフォメーションセンターの役割を兼ねさせたことにより、地域の情報発信基地として、中心市街地の集客力向上と地域の活性化が図れた。

(3)回遊性を高めるためのパスポート事業

中心市街地の7つの商店街と連携することにより、商業ゾーンへの集客力向上と活性化につながった。また、これらの商店街に加盟していない個店も本事業に参加したことによって、商業ゾーンを面的に捉える足がかりを見いだすことができた。パスポート事業参加者も2万3500人(目標達成率156%)に達し盛況であった。

事業の課題・反省点

観光と商業が一体となったまちづくりを推進していくことが今後の課題である。伏見大手筋商店街や納屋町商店街、竜馬通り商店街等では、さまざまな事業を展開しており、なかでも伏見大手筋商店街は、ソーラーアーケードの設置や銀行POSの導入、事業協同組合による駐車場の運営、「あてらの会」(おかみさん会)による「個店クリニック」(接客サービスの向上)など、全国でも先進的な取り組みを常に行っている商店街である。

また、竜馬通り商店街も近年はファサード事業や学生との連携等により、注目を集めている。今後は、これらの事業を1商店街としてではなく、各商店街が連携し、さらには地域住民をも巻き込んで、面として活性化を図ることが求められている。

また、地域資源との連携を図り、いかに来街者を回遊させ商店街に引き込むかが課題となっている。そのため、酒蔵・伏見町家等を生かしたまちづくりの推進や十石舟の船着き場における「伏見茶屋」の設置等を検討している。このような活動をとりまとめるためには常に街全体を眺めながら、各関係機関等の調整を行う必要があり、このような役割として?伏見夢工房は期待されている。今後はこのような役割を果たしていくためにも、地域内外への幅広いPR活動、人材の確保等、サポート体制の充実が重要である。