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がんばる商店街77選

にぎわいあふれる商店街アイデア商店街まちづくりと一体となった商業活動

滋賀県長浜市 株式会社黒壁

空洞化した街に「ガラス」で観光客200万人
第三セクター「黒壁」が民間主導でガラス事業を展開。都会から帰ってきた若い後継者が家業に専念しながら、伝統文化「長浜曳山祭り」を愛し、継承。

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ガラス館

株式会社黒壁

創立
平成元年4月11日
資本金
4億4千万円
所在地
長浜市元浜町
店舗数
13店舗
業務内容
国内ガラス工芸品の展示販売海外アートガラス輸入、展示販売ガラス工房運営、オリジナルガラス制作販売
食堂喫茶の運営
まちづくり文化に関する情報、資料収集提供

事業実施の背景

長浜は秀吉がはじめての城持ち大名になった地で、また大河ドラマ「功名が辻」の「山内一豊」は三代目の長浜城主である。当地は「楽市・楽座」で知られるように、430年の間商業の街として栄えてきた。特に、地場産業として高級絹織物「浜縮緬」が長く当地の地域経済を支えてきたが、和装の衰退と共に業界も縮小していった。

また、昭和50年代に入りモータリゼーションの発達、大資本のショッピングモールの郊外進出などにより、中心商店街は急激に疲弊していき、商店主は高齢化し、シャッター通りとなっていった。かつては、湖北地域15万人の商圏を誇っていた商店街は、月間わずか約4,000人の来街者となり、日曜日の午後1時間にメイン通りを「人4人と犬1匹」しか通らなかった。当然、市民の悩みはこうした経済の衰退によって生活が脅かされることであるが、それだけでなく、秀吉の時代から護り継がれてきた豪華絢爛な子供歌舞伎を曳山と呼ばれる山車の上で演じる「曳山祭り」の継続が困難になることが問題となっていた。

さらに追い討ちを掛けたのが、昭和60年代初めにカトリック教会の郊外移転に伴い、旧黒壁の建物が売却され、その跡地にマンションの建設計画が持ち上がったことである。この建物は、明治33年に国立第百三十銀行長浜支店として建てられその黒漆喰の洋館である外観から「黒壁銀行」として親しまれ、その後、明治銀行、専売公社、カトリック教会に姿を変えながら街の賑わいを見つめ続けてきた。この街のランドマーク的な建物が取り壊されると聞き、当時の市役所職員が危機感を持って、地元の財界人に相談を持ちかけた。

そこで立ち上がったのが、青年会議所OBを中心としたメンバーで、貸しビル業、ホテル業、金属加工業、建設業、倉庫業などの様々な業種の企業家達である。当初、土地、建物の買戻しと修復資金等で1億3千万円の資本金(長浜市 4千万円、民間8社 9千万円)で第三セクター「株式会社 黒壁」がスタートした。建物は確保できたが、事業として何をするかが未だ決まらない。何度か役員会を重ねるうち、初代社長から「ガラスを作っている所には沢山の人が集まる。ガラスをやろう」との提案で、役員がヨーロッパに行き、超一流のガラス文化に感動し、長浜で本物のガラス事業を展開することとなった。

事業の概要

吹きガラス

こうして、平成元年7月1日、黒壁一号館黒壁ガラス館、二号館スタジオクロカベ(オリジナル工房)、三号館ビストロミュルノワール(レストラン)からなる黒壁スクエアが誕生した。その後、NHKで紹介され、観光客、特に女性が口伝えで広めたこともあり、来街者が順調に増加した。

観光客の増加に伴い、ガラス館の横を走る北国街道の古い民家を借り受け、ガラスにかかわる直営店を増やし「北国街道」を「ガラス街道」として展開していった。平成4年には、江戸時代からの醤油の製造卸の商家を譲り受け、ヨーロッパ各地で買い付けたアンティーク美術品を商家の佇まいに展示した国内唯一のガラス美術館をオープンした。こうして、単なるガラスの物売りではなく、本物のガラス文化を発信することに心掛けてきた。平成15年には、それまでの黒壁のガラス技術の集大成としてオリジナルブランド「リフレクションクロカベ」を発表した。黒壁の理念は、「お客様に常に新たな感動を与える」ことであるが、今では、来街者が年間200万人を迎え、そのうちリピート客が40%強を占めるまでに至っている。

事業の効果

黒壁オープン当初は、地元商店街は冷ややかな目で迎えていた。しかし、年々増加していく観光客にシャッター通りのシャッターが徐々に開き、今では黒壁スクエア300メートル四方にシャッターの閉まった店はほとんど無くなった。黒壁直営店の年間売上げは6億円から7億円であるが、地元に落とす経済効果は30億円とも言われている。

黒壁来街者推移
平成元年:9万8千人
平成3年:34万5千人
平成5年:73万7千人
平成10年:162万3千人
平成15年:217万7千人

事業の課題・反省点

これからの課題として3点挙げられる

1)今まで、ガラス文化を基軸としながら、増加するリピート客に新たな感動を与えるべく、万華鏡展、美術館特別展、フィギュアミュージアム誘致等仕掛けをしてきたが、順次企画をしていくことが資金的にも大変である。

2)第三セクターということで、これまで出資金以外一切行政の補助を受けていないが、事業拡大とともに、運営資金の調達コストの負担が大きくなってきている。

3)創業17年と若い企業であり、構成するスタッフも非常に若い。磐石な経営体質にすべく人材育成等が今後の課題である。