長野県長野市 株式会社まちづくり長野
中心市街地活性化へ、行政・TMOが切る口火
緊急性のある地域、事業を優先し、活性化へ行政・TMOが協働。活性化計画事業の具現化に行政・TMOが動けば民間が動く。
事業実施の背景
・長野市では平成10年に冬季オリンピックが開催され、新幹線、高速道の整備が進み、平成11年には中核市へ移行するなど都市の基盤整備が進んだ。
・長野市の中心市街地は、善光寺の門前町として歴史的な蓄積を持ち、さまざまな便益を提供しその中心を担ってきたが、一方で、車社会への移行が急速に進み、郊外への人口流出に伴う都市機能の移転やロードサイドへの大型店出店が進行。中心市街地の商業機能の衰退が問題となってきた。
・平成12年、中心市街地の核店舗であった地元百貨店、大手総合スーパーが相次いで撤退し、中心市街地の空洞化が深刻化。
・平成13年に長野商工会議所がTMO構想協議会を設け検討、平成14年2月、大手流通業OBをタウンマネージャーとして招聘。同年3月にTMO構想が認定された。平成16年5月には、株式会社まちづくり長野がTMO認定を受け、中心市街地活性化に向けた本格的な取組みを進めている。
事業の概要

(1)空洞化の深刻な中央地域の大型空き店舗の後活用と地域再生
- 【もんぜんぷら座】
- ・平成12年12月に大手総合スーパーが撤退。ビル会社は後継テナントを誘致しようとしたが難航し、長野市が平成14年8月に中心市街地活性化策を進める目的で土地と建物を取得した。
- ・後利用計画について、市民の声として公共的施設と商業施設の複合的活用の要望が高かった。周辺住民には高齢者が多く、街中から食品スーパーが消え日常生活品の購入に苦労するとの声があり、地元住民等5610名による食品スーパー開設の陳情書が市に出された。
- ・長野TMOは、ビル1階に食料品店を計画。平成15年4月に全国でも異例のTMO直営店「TOMATO食品館」をオープンした。
- ・ビル地下1階、2階、3階部分は、子育て支援や市民活動支援の施設とし、平成15年6月にグランドオープン。商業機能と公共機能が複合した中心市街地賑わいの核施設として活用されている。
- 【長野銀座A-1地区再開発】
- ・平成12年7月に地元百貨店が撤退。景気低迷、百貨店退店という状況で従来あった再開発計画が動けなくなっていた。
- ・学識経験者、市民代表等からなる「長野中央地域まちづくり検討委員会」での検討など、百貨店跡地を含めた新たな再開発構想が持ち上がり、地元放送局の信越放送(SBC)が跡地への進出を決定。
- ・施設愛称は「TOiGO」(トイーゴ)。商業施設、公共施設、放送施設として、平成18年8月に完成予定。敷地面積約6640平方メートル、4階建ての銀座棟、10階建てのSBC棟からなり、道路を挟んだ南側へ駐車場(長野銀座D-1地区再開発事業)も整備中。
(2)善光寺門前で空洞化した商店街の再生
- 【ぱてぃお大門 蔵楽庭(くらにわ)】
- ・善光寺門前の大門町には、活用されていない土蔵、立派な庭を備えた空き家屋が多くあった。これらの地域資源活用による商店街の活性化と善光寺拠点を支える新しい魅力拠点の形成を図るために、テナントミックスによる新たな商業施設を設置する「ぱてぃお大門整備事業」が計画された。
- ・コンセプトは「小さな旅気分を味わえるまち」。
- ・観光客重点から市民生活者も訪れる施設を目指しバティオ(中庭)を中心に面的に整備。インテリアショップ、レストラン、カフェ、土産物店など20店舗が出店している。
(3)空き店舗後活用(TMO)
- 【楽茶れんが館】
- ・明治時代末期の馬車引き会社の建物として建てられた当時流行の煉瓦造りの西洋館であり、平成3から14年は長野市物産館として利用されていた。
- ・利用者減少に伴い物産館の閉鎖が決定。歴史と趣きのある建物を有効利用するため、TMOが後活用。「信州そば米」「長芋」を使った善光寺門前にふさわしい『楽茶御膳』、手作りケーキなど季節と地元らしさをアピールした料理を提供している。
事業の効果
・行政、TMOが口火を切ることで、大型店撤退による中心市街地衰退に歯止めがかかり、空き店舗への出店(平成15年度以降、市の空き店舗補助金利用実績28件)、マンション建設(平成15年度以降、施工済6棟277戸、施工中1棟50戸)、シネコン進出(平成18年6月オープン予定)など民間投資も進んでいる。
・都市ストックを活用して街の魅力を高めることで、居住者増加、賑わい回復の傾向が出始めている。
事業の課題
・行政、TMO、民間(住民、地権者、商業者など)のさらなる協働体制の強化。
・「TOMATO食品館」、「ぱてぃお大門」、「楽茶れんが館」の事業定着。
・TMOの財政的、組織的基盤強化。ソフト事業推進。