長野県飯田市 株式会社飯田まちづくりカンパニー
市民、企業、行政が連携したまちづくり
「街の機能再編」「定住人口の増加」「商業の活性化」等による特色あるまちづくり事業を、市民、企業、行政のパートナーシップのもとに展開。
事業実施の背景
飯田市の中心市街地は、「丘の上」とも呼ばれる天竜川の河岸段丘上に位置し、橋南、橋北、東野の3地区で構成されている。商店街が縦横に発達し、1970年代までは、総人口約19万人の広域商圏として、何でも揃う唯一の場所としての地位を誇っていた。しかし、面積が狭く地価の高い市街地から郊外への人口流失が進み、近年にはロードサイド型の商業集積が郊外バイパスを中心に形成された。このような中、商店主達が危機感を抱き、平成2年から活性化のための検討会を頻繁に開いて話し合い、「商業の振興だけでは、もはや街を活性化できない」という考えに至り、「暮らしを支援するまちなか居住」が中心市街地再生のテーマとなった。以後、市民、企業、行政のパートナーシップのもとに様々な取り組みを展開している。
事業の概要

(1)市街地再開発事業
・橋南第一地区市街地再開発事業(平成13年竣工)
商業機能、交流機能、住宅機能を併せ持つ地上10階建てで、高度化資金を活用。また、市営駐車場(80台)を隣接させ利便性が高い。1階には地元スーパーマーケットを中心に生花店やレストランなどがあり、2階、3階に、歯科医院、ハローワークプラザとともに、市役所の機能を一部移転した「飯田市りんご庁舎」が入居し、住民票や税証明等の交付や手続きが行える他、市民サロンや会議室を市民が利用。4階から10階は、14種類の間取りの都市型住宅(42戸)が造られ、ほぼ即日完売となった。
・橋南第二地区市街地再開発事業(平成18年竣工予定)第一地区の北側に隣接し、店舗、業務、住宅、金融機関、川本喜八郎人形美術館、駐車場で構成され、平成16年に工事着工。
・堀端地区優良建築物等整備事業(平成19年竣工予定)店舗、健康福祉、ケア付き高齢者賃貸住宅、住宅により構成。平成18年に工事着工。
(2)りんご並木三連蔵整備事業(平成12年竣工)
歴史的建造物であるりんご並木の三連蔵を市が取得・改修し、一般に開放。市民や観光客の交流拠点となっている。
(3)テナントミックス事業(平成15年竣工)
第一地区の隣接地にTMO株式会社飯田まちづくりカンパニーが空き店舗を取得し、テナントビルを建設、7店舗が入居。1区画が小スペースのため、大半が起業家の出店。
(4)福祉サービス事業(平成14年竣工)
TMOがケア付き高齢者共同住宅「アシストホームりんご」(6世帯)を建設、賃貸。
(5)一店逸品運動事業
NPOいいだ応援ネットイデアが、個店の個性化を図り、まちの商業の魅力を高めるために、平成16より、継続事業として運動を展開している。参加店30店舗。
(6)チャレンジショップ事業
大規模リニューアルを行った駅前SCの4階の一部をNPOが借り、5区画のチャレンジショップを運営。卒業店が商店街の空き店舗に出店している。
(7)まちなか音楽・映画鑑賞事業
「街をもっと楽しくしよう」という思いを持つ若者が中心の市民団体IIDAWAVEが、屋外ライブ(月1回)や音楽コンテスト、映画の名作鑑賞会などの事業を会員制で実施。会員数は200名で、事務局をTMOが担う。
(8)商店街環境改善活動事業
電線地中化が行われた駅前中央通商店街では、名称を"ガーデンズ"に改称し、市民の庭となることをコンセプトに、リサイクルステーションの設置や、地域ぐるみ環境改善活動「南信州いいむす21」にも参加している。
事業の効果
市街地の整備と商業等の活性化の連携による複合的再開発事業による拠点形成に取り組み、商業、業務、住宅、文化交流、公共公益といった都市機能の集約化が図られ、りんご並木、駅前を中心に若者によるNPO、ボランティアグループの活動も起こり、まちに新たな賑わいが生まれている。
事業の課題
再開発事業を中心としたインフラ整備が整いつつあり、今後は、より魅力溢れる都市空間にグレードアップさせるために、りんご並木を中心とした新たな商業核と駅前SCを中心とした商業核の機能強化を行い、魅力あふれる商業・サービスを再構築していく一方で、従来それ程重視しなかったまちなか観光事業を、市、南信州観光公社、民間事業者と連携して推進する。また、NPOが展開している一店逸品運動や経営指導を、より多くの商店に広め、個店の強化が必要となっている。