青森県青森市 青森市新町商店街
「福祉対応型商店街」を目指して
コンパクトシティ構想の下、にぎわいあふれる「福祉対応型商店街」に向けた取組み。
事業実施の背景
新町商店街はJR青森駅から1キロメートルほど広がる商店街で、青森市の中心市街地として発展してきたが、昭和63年の青函連絡船の廃止により駅前からの人通りが急減した。
また、モータリゼーションの進展や居住人口の郊外シフト、病院や図書館といった主要集客施設の移転なども中心市街地の衰退の一因となっていた。
こうした中、新町商店街では、「商店街に訪れる顧客にとって何が一番望ましいのか」ということを検討し、「人と緑にやさしいまちづくり」というコンセプトのもと「福祉対応型商店街」という理念を形成した。
その背景には、商店街は商業者単独では生き残れないという危機感と、商店街は商業者だけのものではなく、訪れる人すべてのものであり、半公共的福祉施設であるという意識があったためである。
そのため、自分のためだけでなく地域のためという視点を持ち、地域と連携していくことが重要だと再認識して各種事業を構築している。
事業の概要

(1)一店逸品運動事業
・商店街の個店の魅力向上のため、商品政策(マーチャンダイジング)を導入
・お店回りツアーによる消費者へのダイレクトな個店PR
・観光客にも人気の逸品カタログ作成 など
(2)行政・NPO等との連携事
・小さな子供を持つ両親が「まちなか」に子連れで過ごせる空間(子育て支援施設「さんぽぽ」)を運営(市から委託/子育て支援グループ等と連携)
・道路を活用し、NPO等約50団体と連携する「しんまちふれあい広場」を実施
・新町商店街を含む中心7商店街が共同で宅配サービス事業実施。(集配作業等でNPO等と連携) など
(3)タウンモビリティ事業など
・商店街の移動をスムーズにする電動スクーターや買い物カートなどの無料貸出サービス
・26カ所(約3,000台)の駐車場で利用できる共通無料駐車券
・バスカードなどと交換できる縄文スタンプ事業など
事業の効果
(1)商店街の魅力の再発見
一店逸品運動、特にお店回りツアーにより、日常的に利用する消費者に直接商品をPRすることで、商店街の魅力が再認識された。
また、商店街の各個店においても、自信を持ってお客様に薦める商品を検討する中で、売り手視点から買い手視点での商品構成を進めるきっかけとなった。
(2)来街の利便性向上
子育て支援施設運営により、利用者から、「商店街に足を運ぶきっかけになった」等の意見もあり、これまで来街動機が少なかった新たな層の顧客が開拓されつつある。
また、共通無料駐車券システムにより、商店街の課題である「駐車場」が確保でき、来街利便性が向上した。
(3)「まち使い」をすすめる交流の場の創
NPOなどの各種団体と連携することで、「障害者」や「高齢者」等の来街機会が増えるとともに、NPOの事務所が商店街内に開設されるなど、多様な交流が生まれた。
(4)組合の垣根を越えた意識の醸成
一店逸品運動の取組みに他の商店街の店舗が参加するなど、組合の垣根を越えて地域の活性化に対する意識が醸成されつつある。
事業の課題
(1)事業の自立化
国や市からの補助期間は限度があるため、事業の継続には「事業採算の確保」が最大の課題であり、必要経費に見合った収入の確保を検討する必要がある。
(2)商店街全体への波及
各種事業の展開により来街者は増加しているが、商店街の一部エリアでのみ滞留しているため、商店街全体へ波及させる仕組みが必要である。
(3)連携体制の一層の強化
地域団体等とのより一層の連携強化により、商店街の「まち使い」を進め、両者にメリットのある関係を構築するとともに、協働して活性化に取り組む必要がある。
(4)広報活動の強化
消費者への直接PRや広報誌・ホームページ等での広報活動を行っているが、更なる認知度の向上のため、有効な広報活動の展開が望まれる。
(5)その他、各事業における課題
採算の確保、対象者の拡大、個店の参加体制強化等