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がんばる商店街77選

にぎわいあふれる商店街アイデア商店街まちづくりと一体となった商業活動

熊本県熊本市 上乃裏通り

木造古家の活用で「古さと新しさが融合」
民間事業者が、所有者及び出店者のニーズをマッチングすることで、木造古家の再生・活用を実現。新たな魅力で街を再生。

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魅力ある商業集積

上乃裏通り

所在地
熊本市
会員数
100商店
商店街の類型
地域型商店街

事業実施の背景

繭蔵を改装したビアレストラン

熊本市の中心商店街・上通から東へ約100メートル離れた「上乃裏通り」は、車1台がやっと通れるような路地裏で、以前は、老朽化した築100年以上の木造建物が多く、商業地としての価値は低い地域であった。また、「防犯地域」「準防犯地域」のために、鉄筋建てが建直しの条件となり、所有者は、新築コストがかかるため、古い建物を放置するか、取り壊して駐車場にして活用していた。

このような中で、1987年、県内から移築してきた「繭蔵」を改装したビアレストラン「壱乃倉庫」がオープン、古い蔵を活用した独特の食空間が評判となった。これを契機に、中心商店街に比べ地価や賃料が安いこともあり、若者を中心に上乃裏通りへの出店ニーズが高まり、この改装を手掛けた工務店経営者は、多くの若者たちから創業の相談を受けるようになった。また、工務店経営者は、古い建物が次々と取り壊され、「古いもの」や「裏通りの魅力」が失われていくことを危惧して、所有者に「建物を捨てるのではなく、再生すること」を働きかけた。所有者からの再活用に関する依頼も増えていった。

事業の概要

旅館跡リニューアル

工務店の経営者が、所有者及び出店者の双方に利益をもたらすため、それぞれ個別・詳細に打合せを行い、最も適した手法により再生を実現している。

借地で旅館業を営み経営不振から廃業を覚悟した経営者の場合は、資金面の目途をたてるために、段階的に改修することで再生を実現。建物を壊すと収入の道が絶たれたが、旅館跡には、レストランや衣料品店など5店が入居。毎月の賃料収入を生み出す「優良資産」へと再生されている。

所有者は、駐車場よりも多くの家賃収入が見込めるようになり、また、新築よりも建築費が割安なため、比較的安い賃料の設定が可能となる。

また、出店者に対しては、工務店経営者が、出店コスト削減のために、デパートの改装などで発生した廃材・什器等を無償で提供するほか、経営面についても指導・助言を行い、お金は無くともやる気のある若者の出店をサポートしている。

事業の効果

1987年のビアレストランのオープンを契機に、所有者、出店者を巻き込む「面」としての「大きな」波及を実現した。現在は、古い民家や旅館など70の木造建物がお洒落に再生され、自然発生的に、飲食店、古着屋、雑貨店、ブティックなど約100店舗が集積。通り全体として、「古さと新しさが融合した独特の雰囲気」のある空間を形成している。

事業の課題

上乃裏通りでは、古い木造建物を再生することで、中心商店街に比べると比較的安い賃料での入居が可能となり、自然発生的に若者などの個性的な店舗が集まってきた。しかしながら、最近は、通りの価値が高まってきたことから、古い建物を取り壊して新たなテナントビルに建替えるケースも出てきている。今後も、通りの雰囲気を維持し、魅力ある店舗の集積を図るために、建物の保全について、所有者の理解と協力を得るための仕組みづくりが課題となる。