佐賀県佐賀市 NPO法人子どもの本屋ピピン(呉服町名店街)
呉服町名店街にNPOと市が協力して店舗を設置
空洞化が著しく進む中心商店街の空き店舗へ店を誘致するにあたり、進出するNPOと市の職員が協力して店舗改装を実施。
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NPO法人子どもの本屋ピピン
(呉服町名店街)
- 所在地
- 佐賀市呉服元町7-18
- 沿革
- 2003年3月子どもの本専門店として開業
- 2006年5月13日移転オープン
- 店舗数
- 41店舗
- 商店街の類型
- 地域型商店街
事業実施の背景
佐賀県内唯一の、子どもの本の専門店を運営していたNPO「ピピン」が、拠点としていた住宅街の店舗から立ち退きの通告を受けたため、佐賀市の街づくり推進課に相談に来た。
街づくり推進課では、子どもの本を専門に扱う本屋を誘致することは、中心市街地の活性化に大いに貢献すると判断し、空き店舗の家主との交渉を行った。
結果として、街の活性化に非常に協力的な家主と出会うことができ、極めて安い賃料での交渉が成立し、「ピピン」が中心市街地に進出することになった。
事業の概要

(1)手作りの店作り
もともと、子どもたちに良質な本を提供したいという思いで立ち上げたNPOであったため、店舗の改装費用等に費やす経費は持っていない。相談を受けた職員は、店舗の改装を手伝うことにした。
補助金を使っての空き店舗対策もいいだろうが、労力を提供する形の空き店舗対策事業もあっていいだろうと考えた。
たまたま、大工仕事が得意な職員がいたということもあって、店舗の改装作業が始まった。
(2)店づくりがつくる、街のコミュニティ
実際に、店舗の改装を始めてみると様々な効果が目に見えて出てきた。まず、手伝いを頼んできた「ピピン」のスタッフも一緒に作業を始めた。
補助金をもらって建設業者を使った場合、こうはいかなかっただろう。
次に、街づくり推進課の職員が店舗の改装をやっているということで、商店街の人たちが、次々に現場を訪れた。
(3)「ピピン」に期待する街づくり
みんなの手によって、「ピピン」は、平成18年5月7日に引越しを終え、13日にオープンした。街なかに出てきた「ピピン」は、子どもの本の専門店としてだけでなく、中心市街地のマンションに住みながら街なかを歩かない若い親子と街との出会いの場として、中心市街地のお年寄りと子どもたちとのふれあいの場として、そして子どもたちの成長を見守る場所として活躍してくれると期待されている。
事業の効果
(1)やればできる
今回の事業において、職員やNPOの奥さんたちが特殊な技能を持っていたわけではない。みんなが持っていたのは、何とかしたいという気持ちだけである。
(2)人のネットワーク
店舗の改装をするにあたって、昨年10月に合併したばかりの町の森林組合から、地元産の木材を安価で提供してもらった。
街づくりにおける人のネットワークの重要性を痛感した。
(3)地域コミュニティの拡大
「街づくりは人づくりから」とよく言われる。今回の事業を通じて、中心市街地から、いつのまにか地域コミュニティが消えてしまっていたということに気づいた。人が集まる理由も、きっかけもなくなってしまっていたのだ。こうした中、行政の職員が街の人と一緒になって何かに取り組むことが、地域コミュニティの再生に貢献し、ひいては活性化の足がかりになるということがわかった。
(4)地域連携の拡大
「ピピン」を誘致した空き店舗は、佐賀市の中心市街地の中でも最も空洞化が著しい地域にある。市では、隣接する道路を沿道の人々の協力を得て、3年がかりで歩きたくなる道路のモデルケースとして整備してきた。当初は反対者が多かったこの地区の人たちが、今では「ピピン」の開業を心待ちにしているという。道路のモデルケースとしてだけではなく、地域コミュニティ拡大のモデルケースとしても期待したい。
事業の課題
(1)事業に対する理解
行政というと、金は出すが、労力は出さないのが普通。ましてや、朝から作業服で大工仕事をすることと「街づくり」を関連付けるのは、内でも外でも、まだ若干違和感があるようだ。
行政内部や街なかで、こうした行動への評価が得られるには、もうしばらく時間がかかるかも知れない。
(2)郊外大型店対策
佐賀市の中心商店街の空洞化は、尋常ではない。平成12年、平成15年の大型店の立地に続き、平成18年中にも大型店がオープンする予定があり、中心商店街は壊滅的な打撃を受けると思われる。