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がんばる商店街77選

にぎわいあふれる商店街アイデア商店街まちづくりと一体となった商業活動

岩手県奥州市 株式会社黒船

蔵の街・音・水・緑による回遊性・個性の創出
蔵を活かした「黒船百年計画」、民間主導によるガイドラインに基づく街づくりの推進により、全国で唯一無二を目指した街づくり。

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蔵町モールの様子

(株)黒船

所在地
奥州市
資本金
9,910万円(平成18年4月現在)
会社の類型
100%民間のまちづくり会社
江刺商工会議所

事業実施の背景

岩手県奥州市江刺区「岩谷堂(いわやどう)」地区は、商人の街として、また旧江刺市の中心市街地として長く栄え、その機能を充分に発揮してきた。その名残として100棟を超える「蔵」が市街地に存在している。

しかし、都市計画事業により市街地の再構築を図っていくなかで、歴史的に貴重な財産である「蔵」が取り壊されていき、また、平成5年にテーマパーク「歴史公園えさし藤原の郷」がオープンし、年間約20万人の観光客が訪れるようになったものの、多くは中心商店街を通らず、商店街の低迷が続いた。

そのような状況を打開するべく、江刺の現状を憂える若手経営者11名が中心となって、街づくり会社「(株)黒船」を立ち上げた。

(株)黒船では、江刺の財産として数多く残る蔵に着目し、この歴史的建造物を後世に残し、活用し、人を呼び込みたいと考え、街づくりガイドライン「黒船百年計画」を提案し、数多く残る「蔵」を活かそうと考えていた市内商店街を覚醒させ、街の再生に向けて本格的な取り組みが始まった。

事業の概要

黒壁ガラス館

(1)蔵を活用した街づくりの推進

ガイドラインを元に、蔵を活かした街づくりを先導的に推進している。

取り組みの中で、街づくりの核となっているのがガラス製品販売とガラス工房からなる「黒壁ガラス館」である。平成10年4月に滋賀県長浜市の(株)黒壁が出店し、平成14年4月から(株)黒船が直営している。

当施設を中心に、民間でも蔵を活用した店舗が次々と開設され、蔵の町並み形成が進められている。

なお、この動きと連携し、回遊性を創出する歩行環境を整備した歩行者専用道路「蔵町モール」の整備や、ステンドグラスを取り入れた街路灯整備、「音」をテーマとした街づくりの取組等、民間の動きに官も連動して街づくりを行っている。

(2)TMOと連携したイベントの実施

 蔵を活かした町並みの中心にある「蔵町モール」を舞台に、TMOとの連携により賑わいの創出のために各種ソフト事業を展開している。

・「蔵まち市」(年間1、2回)
周辺商店街とも連携し、蔵の町並みを散策しながら買い物が楽しめ、同時に郷土芸能やアトラクション、園芸市等が行われている。
・「水曜市」(毎週水曜日)
新鮮な野菜や手作り品を安価で販売している。個店の逸品運動としても位置付けられている。
・「おらほの祀り」(毎週日曜日)
鹿踊や神楽、剣舞、村歌舞伎等郷土芸能の公演を行い、市民から好評を得ている。

事業の効果

蔵を活かした街づくりの進展

これまでも「蔵」を活かしたいと考えていた潜在者の意識を覚醒させ、本格的な取り組みが始まることにより街にインパクトを与える事が出来た。

観光客の取り込み

蔵を活かした回遊性のある街づくりを展開することにより、年間20万人を集める藤原の郷を中心とした観光に一段と厚みが加わり、観光客の増加とともに、街なかへの観光客の取り込みも期待されている。

補助事業ではない独自事業の継続的実施

TMOを中心に関係機関と連携し、補助金に頼らないイベント事業を継続的に実施したことにより、市民にとって新しい風物詩としてイメージの定着がみられる。

新たな店舗等の創出

これまで商店街の中心部に位置しながら製造卸業のみの店舗が小売部門を設けたり、商店街で「クーポン券」発行活動が行われるなど、個々の商業活動、商店街としての活動が活発化してきている。

事業の課題

蔵の活用は、現在123棟(平成17年4月現在)のうち、全体の約1割程度にとどまっている。補修改修費用は坪100万円から200万円かかり、資金的な面から年間1棟程度の活用しか出来ず、所有者の高齢化も加わり今後の対応が大きな課題となっている。

また商店街の活性化事業は従来、個店、個々の商店街により実施されてきたが、それぞれの個性を活かしながらも、中心商店街全体を見据え、ビジョンを共有して、着実なアクションを起こしていかなければならない。

そのためには、中心市街地をひとつのテーマパークとして捉え、歩いて楽しく、面白い、気持ちが良い、生活してみたい街並みに生まれ変わらせる必要がある。

江刺区の持っている歴史や文化資源を大事にしながら、他都市に真似のできない、特徴のある街づくりを進めることが重要である。