平成23年度において講じようとする中小企業施策 

第1章 中小企業を幅広く支援する

第1節 資金繰りの円滑化
 我が国の中小企業を巡る資金繰りの状況は、資金繰りDI等の指標は2010年度当初から持ち直しの傾向にあり、東日本大震災が発生する直前には、リーマン・ショック前の水準まで改善するなど、マクロ統計上は改善しつつあった。しかし、震災が発生した2011年3月は、大幅に悪化していることから、引き続き、資金繰り支援に万全を期す。
 具体的には、信用保証について、「借換保証」や条件変更を推進するほか、小規模企業向けの小口保証(100%保証)を継続するとともに、特に業況の悪化している業種に属する中小企業者を対象とする「セーフティネット保証5号」については、2011年度上半期の対象業種を48業種とする予定だったが、2011年東北地方太平洋沖地震による影響を踏まえ、同期の対象業種を原則全業種である82業種にして運用する。また、融資についても、借換えや条件変更の推進に加え、(株)日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という)による「セーフティネット貸付」等について継続して実施していく。
 さらに、経済情勢の変化に対応して、中小企業の新たな資金ニーズを的確に捉えるとともに、個々の中小企業者の事業実態や信用リスク等を適切に判断し、保証・融資を推進する。
 加えて、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下「中小企業金融円滑化法」という)の期限が1年延長されたことも踏まえ、引き続き、金融庁と連携し、民間金融機関等における中小企業金融の円滑化を促す。

●具体的施策●
1.信用補完制度の実施【2011年度予算:852.0億円】
 条件変更や借換保証の推進、小規模企業向けの小口保証制度の実施、特に業況の悪化している中小企業者向けのセーフティネット保証の実施及び創業者向けの保証制度の実施により、中小企業者の資金繰り支援について万全を期す。(継続)(p.311参照)
 
2.セーフティネット金融の推進
 社会的、経済的環境の変化等により一時的に業況が悪化している中小企業者の資金繰り支援に万全を期すため、引き続き、セーフティネット貸付を実施する。特に、業況悪化等の理由により、金利が3%以上となってしまう者に対しては金利を減免する。(継続)(p.311参照)

3.金融機関等による貸付条件の変更及びコンサルティング機能の発揮の促進等
 中小企業金融円滑化法については、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律の一部を改正する法律が、2011年3月31日に施行されたことを踏まえ、2011年度末まで継続する。またこれに併せて、次のような運用面の改善を図る。
・金融機関が、貸付条件の変更等と併せて借り手に対する経営相談・指導、経営再建計画の策定支援といったコンサルティング機能の発揮の促進
・金融機関に義務付けられている開示・報告資料の大幅な簡素化(2011年5月末に東日本大震災の被災地域にある金融機関等向けに更なる弾力化を実施)
 こうした取組により、東日本大震災の影響を受けている場合を含め、金融機関の中小企業者等に対する金融の円滑化を促進するとともに、検査・監督を通じて、金融機関が、貸付条件の変更等を行うに際し、借り手に対する経営相談・指導、経営再建計画の策定支援といったコンサルティング機能を十分に発揮することで、中小企業者の経営や返済能力の改善等につながる、という流れの定着を図る。(継続)(p.311参照)

4.貸付条件の変更等の推進(継続)(p.311参照)

5.流動資産担保融資保証制度の推進【2011年度予算:813.0億円の内数】(継続)(p.311参照)

6.劣後ローン貸付の推進【2011年度予算:360.0億円】(継続)(p.311参照)

7.マル経融資制度【財政投融資】【2011年度予算:36.0億円】
 2010年度に行った貸付限度額の引上げなどの拡充事項について、2011年度末まで延長する。(継続)(p.312参照)

8.小規模企業設備資金導入制度(設備資金貸付・設備貸与)【財政投融資】(継続)(p.312参照)

9.中小企業投資育成株式会社による投資(継続)(p.312参照)

10.貿易保険が付保された中小企業の輸出代金債権の流動化促進(継続)(p.312参照)

11.沖縄の中小企業対策【財政投融資】(継続)(p.312参照)


第2節 財務基盤の強化
 中小企業の多様で活力のある成長発展を支援するため、経営基盤の強化等の観点から、きめ細やかな税制面の支援を引き続き行う。
 また中小企業の財務基盤の強化や生産性の向上等を図るための措置等を2011年度税制改正大綱に盛り込んだ。


第3節 下請取引の適正化
 親企業に比べて弱い立場にある下請中小企業に不当なしわ寄せが生じることがないように適正な取引を推進するため、引き続き不公正な下請取引を取り締まるとともに、法律違反を未然に防止することで下請中小企業を守っていく。
 このため、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請代金法」という)の厳格な法運用に努めていく。
 また、新たな取引先を開拓したい下請中小企業に対しての受発注情報の提供、商談会開催を通じた販路開拓支援等の事業を行い、下請中小企業の振興を図る。

●具体的施策●
1.下請代金法の運用強化
 下請代金法に基づく書面調査や立入検査を引き続き実施する。また、2011年度は経済産業省の下請代金検査官定員を84名から98名に増員し、同法の執行体制を強化する。(継続)(p.313参照)

2.相談体制の強化と下請取引適正化に関する普及啓発【2011年度予算:6.0億円の内数】(継続)(p.314参照)

3.下請中小企業の振興
〔1〕下請取引あっせん、商談会による販路開拓支援【2011年度予算:0.5億円】(継続)(p.314参照)
〔2〕下請事業者への配慮要請等【2011年度予算:6.0億円の内数】(継続)(p.315参照)


第4節 事業再生・事業承継への対応
 中小企業の事業引継ぎの支援を実施するため、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(以下「産業活力再生特別措置法」という)の一部を改正する法律案が第177回通常国会において成立し、2011年5月25日に公布された。具体的には、事業を引継ぐ中小企業者に対する金融支援や、行政庁の許認可承継の円滑化支援を実施するとともに、地域の中小企業支援機関において、事業の引継ぎに関する中小企業の相談に応じられるよう措置する。
 また、中小企業の事業再生支援については、引き続き中小企業再生支援協議会を通じ、企業再生に関する知識と経験を持つ常駐専門家が、中小企業の事業再生に関する相談を受けて課題解決に向けたアドバイスを実施するとともに、再生のために財務や事業の抜本的な見直しが必要な企業に対して、常駐専門家と中小企業診断士、公認会計士、弁護士等の外部専門家とで編成される支援チームにより、財務面・事業面についての調査(デューデリジェンス)等を行い、再生計画策定と金融機関との調整を支援していく。また、産業活力再生特別措置法による中小企業承継事業再生計画の認定制度についても、引き続き事業再生支援策の1つとして推進する。
 さらに地域経済の活力維持や雇用確保の観点から、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「経営承継円滑化法」という)に基づく支援(民法特例、金融支援、税制措置)及び事業承継制度の普及啓発等による中小企業の事業承継の総合的な支援を、引き続き実施していく。
 なお、税制措置については、経営承継円滑化法に基づく認定等の運用状況等を踏まえ、その活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について引き続き検討を行う。

●具体的施策●
1.地域中小企業の事業引継ぎ円滑化支援
 中小企業の事業引継ぎが円滑に行われ、地域経済の自立的発展と雇用の拡大に寄与することを目標として、産業活力再生特別措置法を通じて47都道府県に設置されている産活力再生特別措置法に基づく支援機関の業務に、現行の再生支援に加えて、事業の引継ぎに関する仲介支援業務を追加し、支援体制を強化する。あわせて、事業を引継ぐ意欲ある中小企業に対しては、金融支援や許認可承継の円滑化支援といった措置を講じる。(新規)

2.中小企業再生支援協議会【2011年度予算:42.0億円】(継続)(p.315参照)

3.中小企業承継事業再生計画(第二会社方式)(継続)(p.315参照)

4.中小企業再生ファンド(継続)(p.315参照)

5.経営承継円滑化法による総合的支援(継続)(p.316参照)

6.事業承継円滑化支援事業【中小機構交付金】(継続)(p.316参照)

7.事業承継融資【財政投融資】(継続)(p.316参照)

8.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)【税制】(継続)(p.316参照)


第5節 人材・雇用対策
 中小企業におけるインターンシップや、インターネットを通じたマッチング支援、ジョブカフェにおける採用意欲のある中小企業の掘り起こしなどの採用意欲のある中小企業と若年者の雇用ミスマッチを解消するための取組や、中小企業における人材・中小企業の支援人材を育成するための研修事業等を引き続き実施する。
 また、雇用保険の一般被雇用者数が5人(中小企業は2人)以上かつ10%以上増加等の要件を満たす企業に対し、増加した雇用保険の一般被保険者1人当たり20万円を税額控除することができる税制措置を講じる。
 その他、景気の変動その他経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合における失業の予防や雇用の安定を図るため、休業等又は出向を行うことにより労働者の雇用維持を図る事業主に対して、雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)を支給する。

●具体的施策●
1.新卒者就職応援プロジェクト(継続)(p.317参照)

2.中小企業魅力発信・採用力強化事業【2011年度予算:3.0億円】
 大学生と中小企業の雇用ミスマッチを解消するため、産学協働教育を通じた大学生に対する中小企業の魅力発信、インターネットを通じたマッチング、合同就職説明会等を実施する。(新規)

3.ジョブカフェ事業(継続)(p.317参照)

4.合同就職説明会(継続)(p.317参照)

5.実践型研修事業(継続)(p.317参照)

6.中小企業大学校における人材育成事業【中小機構交付金】(継続)(p.317参照)

7.労働者の雇用維持対策【2011年度予算:3,927.0億円】(継続)(p.318参照)

8.中小企業の活力をいかした新たな雇用機会の創出支援【2011年度予算:32.9億円】
 中小企業が新成長戦略における成長分野等のうち、人材面の支援が真に必要な分野(健康、環境分野及び関連するものづくり分野)への創業・異業種進出に伴い労働者を雇い入れた場合のほか、これらの分野の事業を営む中小企業を構成員とする団体が雇用管理の改善の取組を行った場合についての助成等を行うことにより、雇用機会の創出の担い手である中小企業における人材の確保、魅力ある職場作り等を引き続き支援する。(継続)(p.318参照)

9.地域再生中小企業創業助成金【2011年度予算:16.7億円】(継続)(p.318参照)

10.雇用促進税制【税制】
 雇用保険の一般被雇用者数が5人(中小企業は2人)以上かつ10%以上増加等の要件を満たす企業に対し、増加した雇用保険の一般被保険者1人当たり20万円を税額控除することができる税制措置を2011年度税制改正大綱に盛り込んだところである。(新規)


第6節 経営安定対策
 今後も中小企業の経営環境が厳しいと予測される中、中小企業の経営の安定を図るため、(独)中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という)が運営する中小企業倒産防止共済制度と小規模企業共済制度の着実な運営と推進を行う。
 また、経営の危機に直面した中小企業の経営上の様々な問題の解決に資するため、引き続き全国の主要な商工会議所及び都道府県商工会連合会に設置されている経営安定特別相談室による相談事業が円滑に実施されるよう日本商工会議所及び全国商工会連合会を通じて支援するとともに、災害等の緊急時に事業の中断を最短にとどめ早期に事業復旧を図るため、中小企業BCPの普及やBCPに基づく防災施設整備に対する低利融資を実施する。

●具体的施策●
1.中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済制度)【中小機構交付金】
 第174回通常国会において成立し、2010年4月21日に公布された中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律(平成22年法律第25号)について、共済金の貸付限度額の引上げ、償還期間の上限の延長及び早期償還手当金の創設等の措置を施行し、セーフティネット機能の強化を図るとともに、引き続き、制度への加入促進や共済金の貸付けを着実に実施する。(継続)(p.319参照)

2.小規模企業共済制度【中小機構交付金】(継続)(p.319参照)

3.経営安定特別相談事業【2011年度予算:24.3億円の内数】(継続)(p.319参照)

4.中小企業BCP普及の促進(継続)(p.319参照)



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