平成22年度において講じた中小企業施策 

第5章 東日本大震災に係る中小企業対策

 2011年3月11日に発生した東日本大震災への対応として、地域の経済や雇用を支える中小企業への支援を、2011年5月2日に成立した2011年度一次補正予算等も活用して、実施している。今年度の中小企業白書においては、2011年5月末時点までの対策について記載する。

第1節 資金繰り支援

●具体的施策●
1.既往債務の返済条件緩和等
 日本公庫、商工中金及び信用保証協会において、返済猶予等既往債務の条件変更、貸出手続の迅速化及び担保徴求の弾力化等について、被災中小企業者の実情に応じて対応。民間金融機関に対しては、震災当日から、金融担当大臣等より、中小企業金融円滑化法の趣旨を踏まえた貸付条件の変更等への積極的な取組等を繰り返し要請し、民間金融機関も、被災中小企業者の実情に応じ、既往債務の条件変更や貸出手続の迅速化などに尽力。

2.日本公庫、商工中金における返済条件緩和の遡及適用
 今般の地震災害等の影響で既往債務の延滞が生じている場合で、返済猶予の申出が遅れた場合でも、返済期日に遡及して返済猶予に対応すること、また、提出書類の簡素化や契約手続の迅速化を行うことで、被災した中小企業の負担軽減を実施。

3.信用保証協会による返済期日延長等
 審査書類の簡素化や契約手続等の迅速化、返済期日経過後の期日延長や返済方法の変更等を通じた、被災中小企業等の負担軽減を信用保証協会に要請した。

4.リースの支払猶予・契約期間延長等
 リース事業者に対し、被災地の中小企業者からリースの支払猶予や契約期間の延長等の申込みがあった場合には、柔軟かつ適切に対応するよう要請を行った。

5.災害復旧貸付及びその金利引下げ措置の実施
 日本公庫及び商工中金が、取引事業者を含む被災中小企業者に対して、運転資金又は設備資金を別枠で融資する災害復旧貸付を実施した。また特段の措置として、貸付後3年間、借入額のうち、1,000万円を上限として基準金利から0.9%の金利引下げを実施した。

6.「東日本大震災復興特別貸付」制度の創設【2011年度一次補正予算:1786.0億円】
 日本公庫・商工中金による、直接又は間接に被害を受けた中小企業等を対象とした、新たな融資制度を創設し、必要な融資枠を確保するとともに、貸付期間、据置期間、金利引下げ措置等を大幅に拡充した。また、地方団体等を通じ、要件に該当する中小企業者に対して利差補給を行って無利子とするための基金を新たに創設。

7.マル経・衛経融資の貸付限度額・金利引下げ措置の拡充
 日本公庫による、小規模事業者向け無担保・無保証人による低利融資(マル経・衛経融資。貸付限度額1,500万円)について、震災の直接又は間接的に被害を受けた一定の小規模企業に対し、貸付限度額の拡充(別枠1,000万円)、金利引下げ措置(基準金利からマイナス1.2%)を実施。

8.災害関係保証の実施
 直接的に被害を受けた中小企業者に対して、信用保証協会が一般保証とは別枠(セーフティネット保証とは同枠)で保証を実施した(100%保証。保証限度額は無担保8,000万円、最大2億8,000万円)。

9.セーフティネット保証(5号)の対象業種の拡大
 特に業況の悪化している業種に属する中小企業者を対象とする「セーフティネット保証5号」については、2011年度上半期の対象業種を48業種とする予定だったが、2011年東北地方太平洋沖地震による被害の影響を踏まえ、同期の対象業種を原則全業種である82業種にして運用することとした。

10.「東日本大震災復興緊急保証」制度の創設【2011年度一次補正予算:3,209.0億円】
 震災により直接または間接的に被害を受けた中小企業者を対象に、既存の一般保証や災害関係保証、セーフティネット保証とは別枠の東日本大震災復興緊急保証を新たに創設した。

11.小規模企業者等設備導入資金貸付等の償還期間延長
 小規模企業者等設備導入資金貸付制度及び小規模企業設備貸与制度について、特定の被災地域における既往貸付金・新規貸付金等の償還期間を2年延長した(7年以内→最長9年以内)。

12.原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」
 東京電力福島第一原子力発電所事故の被災区域から移転を余儀なくされる中小企業等が、福島県内の移転先において事業を継続・再開し、雇用を維持するために必要な資金について、中小機構を活用して無利子・無担保で最大20年間の長期融資を行う特別支援制度を福島県と連携して創設した。

13.小規模企業共済の共済金の早期支給等
 中小機構が実施する小規模企業共済について、共済契約者が行方不明のため共済金の支給ができず、資金繰りに窮する配偶者等の申出に対し、掛金総額の一定割合を早期に支給する環境を整備した。また、今般の災害により被害を受けた場合や計画停電等により売上げが急激に減少するなどの共済契約者に対し、低利の貸付制度(直接罹災者については無利子)を発動するとともに、共済掛金納付や一時貸付金返済の猶予、共済金支払の迅速化等の措置を講じた。

14.中小企業倒産防止共済の貸付事由の追加等
 中小機構が実施する中小企業倒産防止共済について、災害によって不渡処分が猶予された場合や取引先(債務者)が死亡又は行方不明等となり、債務者自らでは債務整理手続を行うことが困難な場合について、共済金の貸付けが受けられるよう省令を改正した。また、今般の災害により被害を受けた者に対し、共済掛金納付や共済貸付金返済の猶予、共済金支払の迅速化等の措置を講じた。
(注)震災当日の金融担当大臣・日本銀行総裁連名による要請を踏まえ、当分の間、全手形交換所において、震災により呈示期間が経過した手形の交換持出等や、不渡りとなった手形・小切手の不渡報告への掲載等の猶予を実施。

15.建設業における金融支援の拡充
(1)地域建設業経営強化融資制度の拡充
 建設企業の資金調達の円滑化を一層図るため、建設企業が公共工事発注者に対して有する工事請負代金債権について未完成部分を含め流動化を促進することなどを内容とした地域建設業経営強化融資制度について、施工中工事の被災に伴う損害額や災害廃棄物の撤去等(がれきの処理等)に係る債権を対象に追加した。
(2)下請債権保全支援事業の拡充
 下請建設企業等の債権保全及び資金調達の円滑化を一層図るため、下請建設企業等の有する債権の保全を促進する下請債権保全支援事業について、ファクタリング会社に対し保証債務の履行の積極的対応を要請する一方、被災地域における工事及び災害廃棄物の撤去等(がれきの処理等)に係る債権の買取りを新たに実施するとともに、被災地域における災害廃棄物の撤去等に係る債権を保証対象に追加した。


第2節 工場・商店街等の復旧への支援

●具体的施策●
1.中小企業組合等協同施設等災害復旧事業【2011年度一次補正予算:154.8億円】
 被災地域の中小企業等が一体となって進める復興事業計画(都道府県が認定)に不可欠な施設の復旧・整備や、事業協同組合等の組合の共同施設・設備の復旧に対して、国と都道府県が連携して補助。また、被災した商工会、商工会議所の施設等の復旧事業を国が補助。

2.被災地域産業地区再整備事業【中小機構交付金】
 中小機構が、東日本大震災により大きな被害を受けた地域において、仮設店舗・仮設工場等の整備を実施。また、具体的な要望を把握するため、中小企業庁、東北経済産業局及び中小機構の職員を被災地域に派遣し、自治体や中小企業団体から具体的ニーズを調査した。

3.施設・設備の復旧・整備に対する貸付け
 被災した組合等による工場団地の施設整備等に対する中小機構と都道府県の貸付け(高度化貸付)について、据置期間の延長や都道府県・事業者の負担割合の縮小等の拡充を実施。また中小企業組合等協同施設等災害復旧事業に係る復興事業計画の認定を受けた事業者や、中小機構が整備した仮設店舗・仮設工場等に入居する事業者等に対し、中小機構と都道府県が協調して資金の無利子貸付を行う制度を創設。また、電力需給対策として、事業協同組合等や組合員に対し、省エネ・新エネ・自家発電等の設備導入資金を貸し付ける制度を創設。

4.高度化貸付の債権放棄・償還猶予・返済期限の延長
 中小機構と都道府県が行う、組合等による工場団地の施設整備等に対する貸付け(高度化貸付)について、整備した施設・資産が被災するなどにより事業継続が困難になった事業者に対し、債権放棄や償還猶予、返済期限の延長を迅速に行うことを都道府県知事及び中小機構に要請した。

5.商店街振興実践事業【2010年度予算:4.0億円】【2010年度補正予算:2.0億円の内数】・商店街実践活動事業(商店街災害復旧・アーケード撤去等事業)【2011年度一次補正予算:4.0億円の内数】
 被災した商店街の施設の補修やがれき等の障害物除去に対して2010年度及び2011年度当初予算において補助を実施。
 また、2011年度補正予算においてアーケード等の撤去や破損規模が大きい施設の修繕等に相当程度期間を要する取組に対して補助を実施。


第3節 雇用面での支援

●具体的施策●
1.被災者への就職支援
 被災者の就職を支援するため、合同就職説明会を被災地等にて順次開催するとともに、新卒者就職応援プロジェクトの受入企業のうち、被災地域の新卒者等の雇用に積極的な企業のリストを随時公表。
 また未内定者や内定取消しにあった新卒者等と中小企業をマッチングする「ドリームマッチプロジェクト」(中小企業採用力強化事業)において、被災地域の新卒者等に対し配慮をする求人情報を発掘・集約。私服での面接や、電話面談も可能等の被災学生を支援する条件の求人情報を検索可能にした。

2.雇用調整助成金
 東日本大震災の影響に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の雇用を維持するために休業等をした場合、休業等に係る手当相当額等の負担相当額の2/3(中小企業の場合は4/5)を助成。
 さらに、東京都を除く災害救助法適用地域に所在する事業所の事業主について、支給要件緩和等の特例措置を講じた。

3.雇用保険失業給付
 震災による事業所の損壊や東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に事業者が位置することにより、事業所が休止になり休業を余儀なくされた場合、激甚災害の指定に伴う雇用保険の特例により、賃金を受けることのできない労働者に対し、離職していなくても、失業給付を受けることができるよう措置。

4.被災者雇用開発助成金の創設
 東日本大震災による被災離職者及び被災地域に居住する求職者の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上雇用することが見込まれる労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する被災者雇用開発助成金を創設した。


第4節 税制面での支援

●具体的施策●
1.被災事業用資産の損失の特例
 2010年分の事業所得の金額等の計算上、被災事業用資産の損失を必要経費に算入することを可能とした。この場合において、青色申告者については、2010年分の所得において純損失が生じたときは、被災事業用資産の損失も含めて、2009年分の所得への繰戻し還付を可能とする措置を講じた。また、被災事業用資産の損失による純損失について、繰越可能期間を5年とするなどの措置を講じた。

2.震災損失の繰戻しによる還付
 2011年3月11日から2012年3月10日までの間に終了する事業年度において、法人の欠損金額のうちに震災損失金額がある場合には、その震災損失金額の全額について2年間まで遡っての繰戻し還付を認める措置を講じた。

3.被災代替資産等の特別償却
 2011年3月11日から2016年3月31日までの間に、〔1〕被災した資産(建物、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両)の代替として取得する資産、〔2〕被災区域内において取得する資産(建物、構築物、機械装置)について特別償却を認める措置を講じた。
 なお償却率は、2014年3月31日以前に取得した場合、建物・構築物について15%(中小企業者等は18%)、機械装置・船舶・航空機・車両について30%(中小企業者等は36%)、2014年4月1日以後に取得した場合、これらの2/3の率である。

4.指定地域の土地等の評価に係る基準時の特例等
 大震災前に取得した財産に係る相続税・贈与税で震災後に申告期限が到来するものについて、指定地域内の土地等及び一定の非上場株式等の価格を大震災後を基準とした評価額とするとともに、その申告期限の延長を認める措置を講じた。


第5節 経営支援・広報相談体制の強化

●具体的施策●
1.特別相談窓口等の設置
 全国の日本公庫、商工中金、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、中小機構支部及び経済産業局に特別相談窓口を設置した。また、ジェトロでも、緊急相談窓口を設置するとともに、ホームページ上に各国の輸入規制、放射線量測定検査機関等の情報を提供。また特許庁内に、震災の影響を受ける知的財産について、手続等に関する相談の専用窓口を設置し、知財総合支援窓口(各都道府県に設置)と密に連携しつつ、相談に応じた。

2.中小企業電話相談ナビダイヤルの実施
 東日本大震災を受け、どこに相談したらよいのか困っている中小企業のために、一つの電話番号で最寄りの経済産業局につながる「中小企業電話相談ナビダイヤル」を設置し、土日・祝日も含め受け付けた。

3.被災した建設企業のためのホットラインの開設
 経営・資産状況の把握、債権債務関係の再整理や中長期的な経営計画の策定等について中小企業診断士・弁護士等の専門家が相談に応じる被災した建設企業のためのホットラインを開設した。

4.復旧・復興のための支援専門家派遣【2011年度一次補正予算:9.9億円】
 中小機構が被災地(盛岡市、仙台市、福島市)に支援拠点を設置し、専門家派遣や中小企業からの相談対応を実施。また、商工会や商工会議所において、窓口相談や巡回相談等を実施し、必要な相談員を派遣。

5.被災地における出張相談会(金融相談)の開催
 日本公庫、商工中金、信用保証協会が、被災地(青森県、岩手県、宮城県、福島県等)に出張し、中小企業からの金融相談を受け付ける出張相談会を実施。

6.広報体制の強化
 中小企業庁をはじめ、政府等が行う東日本大震災に関する支援情報を中小企業関係機関に一元的にメールで配信(2011年5月末までの配信実績は16回)するとともに、関係機関に対しては、地方組織、会員、取引先等広く中小企業者に情報提供することを要請した。

7.「中小企業向け支援策ガイドブック」等の配布
 被災した中小企業者向けの資金繰り、雇用、税制等の各種支援策を分かりやすくまとめた「中小企業向け支援策ガイドブック」をver1、ver2に続き、事業用施設の復旧・整備支援等2011年度一次補正予算事業を盛り込んだver3(総印刷部数44万3,000部)と2011年度一次補正予算で拡充・強化された支援内容を1枚にまとめたチラシ(40万枚)を作成し、被災地域をはじめ全国の中小企業支援機関、金融機関等に配布し、広く中小企業者に周知した。


第6節 その他の対策

●具体的施策●
1.東日本大震災中小企業対策連絡協議会の設置
 全国的に多数の中小企業に深刻な影響が生じている現状を踏まえ、必要な中小企業対策を検討・実施していくため、政府と中小企業関係機関が、中小企業の被災状況や、被災中小企業救済に係る取組状況、今後取り組むべき施策の在り方等について情報共有と意見交換を実施した(会長:経済産業大臣政務官)。2011年3月22日に第1回、3月31日に第2回を開催。4月13日の第3回、5月16日の第4回には金融庁、厚生労働省、農林水産省、国土交通省や関係業界団体等も出席。

2.官公需における被災中小企業の受注機会の増大
 今般の災害による影響を受けた中小企業者に関して、官公需における一層の受注機会の増大を図るため、東日本大震災の影響を受けた中小企業者に対するきめ細かな相談対応や発注情報の積極的な提供を行うことや、2010年度内の履行が困難となった契約について繰越し等の措置を必要に応じて講じることを各府省等に要請した。また、2011年度一次補正予算での復旧事業等における被災地域等の中小企業者の受注機会の増大に努めるよう各府省等に要請した。

3.親事業者への被災中小企業への優先発注等の要請
 2011年4月22日に、親事業者(約22,000社)に対して、今般の震災の影響を受けている下請中小企業について、できる限りこれまでの取引関係を継続することや優先的に発注することなどを要請した。あわせて東京電力福島第一原子力発電所事故に起因した風評に惑わされず、科学的・客観的根拠に基づき適切に取引を行うことも要請した。

4.貿易円滑化事業費補助金【2011年度一次補正予算:6.7億円】
 風評被害による物流の停滞を防ぎ貿易の円滑化を図るため、政府による風評被害対策の一環として、国が指定した検査機関が行う輸出品に係る放射線量検査の検査料を補助した(中小企業への補助率は9/10)。

5.NEXIによる対応
 NEXIでは、2011年4月11日に、被災者対策として、罹災した中小企業を対象とした〔1〕保険契約諸手続の猶予、〔2〕被保険者義務の猶予・減免、〔3〕被保険者の経済的負担の減免を発表。また、風評被害への対応として、放射能汚染を理由とした貨物の輸入制限・禁止等による損失のうち、新たな規制が導入されて輸入が制限又は禁止されるケースや仕向国政府による違法又は差別的な対応を受けるケース等貿易保険によりカバーされる具体的事例を公表。また、相談窓口をNEXI内に設置し、貿易保険未加入者も含め、風評被害に関する相談等に応じた。

6.知的財産の手続に関する救済措置
 震災の影響により、特許出願の審査請求や特許料の納付等の手続を期間内に行うことができなかった場合に、申請により、2011年8月31日まで手続期間の延長が可能となるよう措置した。また、外国出願等の手続についても、海外の知的財産庁に救済措置を要請し、45の国と地域が特例措置を実施した。

7.電力需要抑制対策節電サポート事業【2011年度一次補正予算:37.0億円】
 夏場の深刻な電力の需給ギャップを解消するため、削減ポテンシャルの大きい小口需要家に対して、専門家が個別に訪問し、業務実態に応じた節電方法等の説明を行うとともに、節電行動計画の策定を促すなど、節電の徹底を実施。

8.外国政府・産業界向け説明会の開催
 経済産業省、外務省、ジェトロ等の関係省庁及び機関が連携をし、震災を受けた日本経済の現状や東京電力福島第一原子力発電所事故に関する最新情報等に関する説明会等を外国政府や外資系企業向けに実施してきている。2011年5月31日現在、12か国・地域、15都市での説明会を始め、各国で様々な機会を捉え情報発信に努めている。国内では東京、大阪でそれぞれ開催している。



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