第3部 経済成長を実現する中小企業 

3 国内における事業機会の取り込み

 第2項では、我が国の中小企業のうち、国際化に取り組む中小企業の現状と国際化に成功している中小企業の要因について分析を試みた。一方で、中小企業が国外からの事業機会を取り込んでいくためには、国内にいながら国外から流入してくる様々な経営資源等を、自らの成長に取り込んでいくことで発展を遂げていく方法も考えられる。
 第3-2-41図は、我が国の中小企業の国内における国外とのつながりについて、国外への財・サービスの販売・提供の有無別に示したものである。国外に財・サービスを販売・提供する企業は、「海外から輸入を行っている」、「外国企業や外資系企業と関わりがある」と回答する企業の割合が高いが、国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも、「海外から輸入を行っている」企業が23.5%、「外国企業や外資系企業と関わりがある」企業が9.1%存在する。
 
第3-2-41図 国内における中小企業と外国との関わり
〜国外に財・サービスを販売・提供している企業は、「海外から輸入を行っている」、「外国企業や外資系企業と関わりがある」と回答する企業の割合が比較的高いが、国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも、23.5%が「海外から輸入を行っている」、9.1%が「外国企業や外資系企業と関わりがある」と回答している〜


第3-2-41図 国内における中小企業と外国との関わり
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 また、第3-2-42図は、前掲第3-2-41図に示したようなつながりを持つことが、中小企業にどのような効果をもたらしたかについて示したものであるが、「日本国内での取引先が増えた」、「費用削減につながった」といった売上面、費用面での効果に加えて「国外市場の情報や海外ビジネスノウハウが蓄積された」、「国外で財・サービスを販売・提供可能になった」、「新製品開発につながった」等の様々な効果を享受していることが見て取れる。
 
第3-2-42図 外国と関わりを持つことによる中小企業への効果
〜国内で外国との関わりを持つことで、「日本国内での取引先が増えた」、「費用削減につながった」といった売上面、費用面での効果に加えて、「国外市場の情報や海外ビジネスノウハウが蓄積された」、「国外で財・サービスを販売・提供可能になった」、「新製品開発につながった」等の様々な効果を享受していることが見て取れる〜


第3-2-42図 外国と関わりを持つことによる中小企業への効果
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 この結果は、中小企業が国内において国外とのつながりを持つことにより中小企業の成長に資する可能性があることを示している。以下では、国外から流入してくる様々な経営資源等の取り込みについて、輸入、訪日外国人、外国人人材、外資系企業の動向と我が国の中小企業に与える影響について見ていく。

●輸入の動向
 まず、中小企業の輸入の動向について見ていく。第3-2-43図は、中小企業の輸入額の地域別の割合であるが、1997年度以降アジアからの輸入額の割合が最も高く、足下でも増加傾向にある。
 
第3-2-43図 中小企業の輸入総額に占める地域別割合
〜1997年度と比較して、北米、ヨーロッパからの輸入割合が減少する一方で、アジアからの輸入割合が増加している〜


第3-2-43図 中小企業の輸入総額に占める地域別割合
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 輸入を行うことで得られる効果について見ると、6割を超える中小企業が「売上原価を引き下げることができた」を挙げる一方で、「商品の品揃えを増やすことができた」、「商品・材料・部品を安定的に仕入れることができた」、「商品の品揃えに独自性を出すことができた」を挙げる中小企業も2〜3割存在しており、「特に効果はなかった」と回答する中小企業は約5%にとどまる(第3-2-44図)。
 
第3-2-44図 輸入を行ったことによる効果
〜6割超の企業が「売上原価を引き下げることができた」に加えて、2〜3割の企業が「商品の品揃えを増やすことができた」、「商品・材料・部品を安定的に仕入れることができた」、「商品の品揃えに独自性を出すことができた」と回答しており、「特に効果はなかった」と回答する企業は約5%にとどまる〜


第3-2-44図 輸入を行ったことによる効果
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 それでは、輸入を行う中小企業は、どのような課題に直面しているのであろうか。第3-2-45図は、輸入を行う中小企業が直面する課題について示したものであるが、輸入を行う中小企業のうち6割を超える企業が「納期の管理」、「品質管理が困難」、「為替変動による調達費用の変化」といった様々な課題に直面しており、「特に課題は感じていない」と回答する企業は約5%にとどまる。
 
第3-2-45図 中小企業が輸入を行うに際して直面する課題
〜約6割の企業が「納期の管理」、「品質管理が困難」、「為替変動による調達費用の変化」等の様々な課題に直面しており、特に課題は感じていないと回答する企業の割合は約5%である〜


第3-2-45図 中小企業が輸入を行うに際して直面する課題
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●訪日外国人の動向
 次に、訪日外国人の動向について見ていく。第3-2-46図は、訪日外国人の推移を示したものであるが、震災前の2010年は前年から増加し過去最高を記録した31

31 2011年3月には、東日本大震災の影響により訪日外国人が大幅に減少した。前掲第1-2-19図を参照。

 また、2010年の訪日外国人の上位5か国・地域の国籍別内訳は、アメリカを除く4か国・地域は全てアジア所在の国・地域であることが分かり、特に中国からの訪日外国人数が増加傾向にあった。
 
第3-2-46図 訪日外国人数
〜訪日外国人は、2009年に減少後、2010年は増加し過去最高を記録し、特に、中国からの訪日外国人数が増加傾向にあった〜


第3-2-46図 訪日外国人数
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 次に、訪日外国人と宿泊事業所との関係について見ていこう。第3-2-47図は、延べ宿泊者数を規模別に示したものである。中小事業所の延べ宿泊者数全体に占める外国人宿泊者の割合は、大事業所に比べて低いが、震災前は、中小事業所の外国人延べ宿泊者数は増加傾向であったことが見て取れる。
 
第3-2-47図 事業所規模別の延べ宿泊者数
〜中小事業所の延べ宿泊者数全体に占める外国人宿泊者の割合は大事業所に比べて低いが、震災前は、中小事業所の外国人延べ宿泊者数は、増加傾向にあった〜


第3-2-47図 事業所規模別の延べ宿泊者数
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 他方、外国人宿泊者を受け入れている事業所と、受け入れていない事業所で定員稼働率32を比較したものが第3-2-48図であるが、事業所の規模を問わず、外国人宿泊者を受け入れている事業所は外国人宿泊者を受け入れていない事業所と比較して、定員稼働率が高いことが分かる。

32 当該期間における延べ宿泊者数/総収容人数(収容人数×期間)×100にて算出される。

 
第3-2-48図 外国人宿泊者の受入の有無による定員稼働率の比較
〜外国人宿泊者を受け入れている事業所では、事業所の規模を問わず、外国人宿泊者を受け入れていない事業所と比較して定員稼働率が高い〜


第3-2-48図 外国人宿泊者の受入の有無による定員稼働率の比較
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 この結果は、宿泊事業所の規模を問わず、外国人宿泊者を受け入れることが定員稼働率を高める可能性を示唆している。

 
事例3-2-17 外国人観光客を受け入れることで再生した家族旅館

 東京都台東区の澤の屋旅館(従業員5名)は、1949年に現館主である澤功氏の義母が客室数8室で創業した旅館である。
 同旅館は、設立当初から修学旅行客を中心に宿泊者数が増加する傾向にあり、1961年には客室数を16室に、1968年には客室数を24室に増築するなど、経営は順調であった。
 しかし、ユニットバス付きのビジネスホテルの台頭や修学旅行先の多様化等により、1970年頃から客足が減少し業況が悪化し始めた。客室の数を減らすなどの様々な取組を行い経営努力を続けたが、1981年には赤字に転落、1982年には3日連続で宿泊客数が0になることもあり、旅館の存続が危ぶまれ始めた。
 こうした中で、同業者に相談したところ「日本人観光客が駄目なら外国人観光客を受け入れたらよい。」とアドバイスを受けた。澤館主は、当初「日本人に受け入れられないような小さな和式旅館が外国人観光客に受け入れられるか。」と半信半疑であった。しかし、アドバイスを受けた旅館を見学した際に、自らの旅館とほぼ同じ規模・設備も同じであるのにもかかわらず、外国人観光客で溢れ活気に満ちているのを目の当たりにし、外国人観光客の受入れを決意した。
 1982年に、外国人観光客を受け入れた後、外国人と日本人の文化の違いから様々な苦労を経験したが、外国人観光客のために費用を掛けて特別な取組を行っているわけではなく、部屋を掃除した際に枕の上に小さな折り鶴を置くなど、日本の文化を自然に伝えつつ、自然体で一つ一つの課題に対応していった。
 この結果、富裕層を中心に外国人観光客の客足が増加し、3年目には客室稼働率は90%を超えるようになった。以来客室12室の当旅館に客足が途絶えることはないが、顔が見える経営を大切にしたいと考えており、規模を大きくすることは考えていない。
 澤館主は、「外国人観光客にとって、宿は手段であって目的ではない。外国人観光客は旅の目的に応じて宿泊先を選んでおり、富裕層だからといって必ずしも高級ホテルに宿泊するわけではない。山が見られる地域であれば山を、雪が見られる地域であれば雪を売りにすればよい。あくまで、あるものを自然体で提供していくことが大切である。」と話す。
家族で外国人観光客を見送る風景


 それでは、中小企業が外国人観光客に対して自社の財・サービスを提供するに当たって感じる課題について見ていく。第3-2-49図を見ると、外国人観光客に対して自社の財・サービスを提供するに当たって感じる課題として「言葉の問題がある」を挙げる中小企業の割合が最も高いが、その他に「目に見えない自社の財・サービスの良さを伝えることが難しい」、「文化が異なり、自社の財・サービスを観光客の需要に合わせることが難しい」を挙げる中小企業もそれぞれ約2割存在する。
 
第3-2-49図 外国人観光客に対して自社の財・サービスを提供するに当たって感じる課題
〜約4割が「言葉の問題がある」を挙げるほか、約2割が「目に見えない自社の財・サービスの良さを伝えることが難しい」、「文化が異なり、自社の財・サービスを観光客の需要に合わせることが難しい」を挙げている〜


第3-2-49図 外国人観光客に対して自社の財・サービスを提供するに当たって感じる課題
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 他方、第3-2-50図は、外国人観光客が国内に訪れることによる事業機会を取り込むための中小企業の取組について示したものであるが、現在は「既存の財・サービスについて、外国語のメニューを作る」、「外国語の自社ホームページを作り、自社や自社の財・サービスをPRする」といった比較的容易に行い得ることに取り組む割合が高い一方で、今後は「外国人観光客に対応できるよう、自社の従業員を教育する」、「外国人観光客に対応できるよう、人材を新たに確保する」、「従業員向けに外国人観光客応対マニュアルを作る」のほか、「外国人観光客向けに新たな財・サービスを開発する」に取り組もうとする割合が高くなる。
 
第3-2-50図 外国人観光客の訪日による事業機会を取り込むための取組
〜現在の取組としては、外国語のメニューや説明書、ホームページの作成が多く、今後の取組としては、外国人観光客向けの従業員教育や従業員確保が多くなる〜


第3-2-50図 外国人観光客の訪日による事業機会を取り込むための取組
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 この結果からは、外国人観光客が国内に訪れることによる事業機会を取り込むに当たって、今後はグローバル化に対応した人材の確保が重要であることが示唆される。

●外国人人材の動向
 次に、中小企業の外国人人材の活用の状況について見ていく。第3-2-51図は、社内に事業のグローバル化に対応できる人材がいる中小企業の割合を示したものであるが、国外に財・サービスを販売・提供していない中小企業のうち7割を超える企業でグローバル化に対応できる人材がいない一方で、国外に財・サービスを販売・提供している企業では約3割、国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも1割以上の企業で、外国人人材を雇用していることが分かる。
 
第3-2-51図 社内に事業のグローバル化に対応できる人材がいる中小企業の割合
〜国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも、1割以上の企業が外国人を雇用している〜


第3-2-51図 社内に事業のグローバル化に対応できる人材がいる中小企業の割合
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 また、外国人人材の職種について見ると、国外に財・サービスを販売・提供している企業では、販売職、国外に財・サービスを販売・提供していない企業では、技能職・労務職の割合が最も高い。また国外に財・サービスを販売・提供している企業では、管理職や専門職を雇用する割合が、国外に財・サービスを販売・提供していない中小企業と比較して高く、高度人材の活用が進んでいることが見て取れる(第3-2-52図)。
 
第3-2-52図 外国人人材の職種
〜国外に財・サービスを販売・提供している企業では、販売職として雇用される外国人人材の割合が最も高く、国外に財・サービスを販売・提供していない企業では、技能職・労務職として雇用される外国人人材の割合が最も高い〜


第3-2-52図 外国人人材の職種
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 また、中小企業において、外国人人材を活用するために必要と感じることを示したものが第3-2-53図であるが、外国人人材の有無にかかわらず、「外国人に日本の職場環境・文化について学ぶ機会の提供」を挙げる中小企業の割合が高く、文化が異なる中で、外国人人材に日本について知ってもらう取組が重要であると感じていることが分かる。
 
第3-2-53図 外国人人材を活用するために中小企業が必要と感じる取組
〜外国人人材の有無にかかわらず、「外国人に日本の職場環境・文化について学ぶ機会の提供」の割合が最も高い〜


第3-2-53図 外国人人材を活用するために中小企業が必要と感じる取組
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●外資系企業の動向
 最後に、外資系企業の動向について見ていく。まず、第3-2-54図は、対内直接投資の国際比較であるが、2009年には、我が国への対内直接投資額は世界で第26位の119億ドルであった。また、我が国の対内直接投資の対GDP比は、他の国と比較して低く、対外直接投資と比較しても低い水準であることが分かる。
 
第3-2-54図 対内直接投資の国際比較
〜2009年には、我が国への対内直接投資額は世界で第26位の119億ドルであった。また、我が国の対内直接投資の対GDP比は、他の国と比較して低く、対外直接投資と比較しても低い水準である〜


第3-2-54図 対内直接投資の国際比較
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 また、我が国の外資系企業数及び常用雇用者数について示した第3-2-55図を見ると、2001年から2006年までの間に外資系企業数は減少している一方33で、外資系企業における常用雇用者は増加しており、外資系企業の約9割が中小企業であることが見て取れる。

33 なお、経済産業省「外資系企業動向調査」を用いて、2006年度以降の外資系企業数(操業中)を見ると、2006年度は2,665社、2007年度は2,948社、2008年度は2,763社と推移している。
 
第3-2-55図 外資系企業の数と常用雇用者数(非一次産業)
〜外資系企業の数は、2001年から2006年までの間に減少しているが、常用雇用者数は、増加傾向にある〜


第3-2-55図 外資系企業の数と常用雇用者数(非一次産業)
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 他方、我が国の中小企業も、外国企業や外資系企業と様々な関わりを有している。第3-2-56図は、前掲第3-2-41図で見た外国企業や外資系企業と関わりを持つ中小企業の具体的な関わり方を示したものであるが、「外資系企業と国内で取引がある」が73.5%、「外国企業や外資系企業と共同開発を行っている」が29.3%を占め、中には「外国企業や外資系企業から出資を受けた」、「外国企業や外資系企業からM&Aを受けた」という回答も見られる。
 
第3-2-56図 国内における外国企業や外資系企業との関わりの内容(外国企業や外資系企業と関わりがある中小企業に占める割合)
〜「外資系企業と国内で取引がある」が73.5%、「外国企業や外資系企業と共同開発を行っている」が29.3%を占め、中には「外国企業や外資系企業から出資を受けた」、「外国企業や外資系企業からM&Aを受けた」という回答も見られる〜


第3-2-56図 国内における外国企業や外資系企業との関わりの内容(外国企業や外資系企業と関わりがある中小企業に占める割合)
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 以下では、外資系企業との国内取引、外資系企業の研究開発、外国企業及び外資系企業からの出資の状況について見ていく。

●外資系企業との国内取引
 まず、外資系企業の企業活動とそれに伴う我が国の中小企業への影響について見ていく。外資系企業の国内販売額34及び国内調達額35を示したものが第3-2-57図及び第3-2-58図である。外資系企業の国内販売額、国内調達額は、規模を問わず増加傾向にあり、外資系企業は、我が国内での事業活動を活発化させていることが見て取れる。

34 国内販売額=売上高−輸出高。
35 国内調達額=仕入高−輸入高。
 
第3-2-57図 外資系企業の国内販売額
〜企業規模を問わず、外資系企業の国内販売額は増加する傾向にある〜


第3-2-57図 外資系企業の国内販売額
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第3-2-58図 外資系企業の国内調達額
〜企業規模を問わず、外資系企業の国内調達額は増加する傾向にある〜


第3-2-58図 外資系企業の国内調達額
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 このように、外資系企業が国内での事業活動を活発化させる中、我が国の中小企業は外資系企業が国内に進出してきたことによる事業機会を取り込むためにどのような取組を行っているのであろうか。第3-2-59図によると、「特に取り組んでいない・今後取り組む予定はない」中小企業の割合が最も高いが、外国人観光客が国内を訪れることによる事業機会を取り込むための取組と同様、現在は「外国語の自社ホームページを作り、自社や自社の財・サービスをPRする」、「既存の財・サービスについて、外国語のメニューや説明書を作る」といった比較的容易に行い得ることに取り組む割合が高い一方で、今後は「外資系企業に対応できるよう、自社の従業員を教育する」、「外資系企業に対応できるよう、人材を新たに確保する」に取り組むとする割合が高くなる。
 
第3-2-59図 外資系企業の国内への進出による事業機会を取り込むための取組
〜中小企業は、外資系企業が国内に進出してきたことによる事業機会を取り込むための取組として、現在は、外国語のホームページやメニュー、説明書の作成といった比較的容易にできるものの割合が高いが、今後は、人材面の取組を行う企業の割合が増加する〜


第3-2-59図 外資系企業の国内への進出による事業機会を取り込むための取組
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●外資系企業の研究開発
 次に、外資系企業の研究開発について見ていく。第3-2-60図及び第3-2-61図は、外資系企業とその他の企業を比較した場合の売上高研究開発費比率36及び研究施設を所有している企業の割合を示したものであるが、規模にかかわらず、外資系企業は、その他の企業と比較して売上高研究開発費比率が高く、研究施設を所有している企業の割合も高いことが分かる。

36 売上高研究開発費比率=研究開発費(自社研究、委託研究)/売上高×100。
 
第3-2-60図 売上高研究開発費比率
〜企業規模にかかわらず、外資系企業は、その他の企業と比較して売上高研究開発費比率が高い〜


第3-2-60図 売上高研究開発費比率
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第3-2-61図 研究施設を所有している企業の割合
〜企業規模にかかわらず、外資系企業は、その他の企業と比較して研究施設を所有している企業の割合が高い〜


第3-2-61図 研究施設を所有している企業の割合
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 このように研究開発に熱心な外資系企業や外国企業と連携し、国外からの新しい技術を導入することにより、我が国の中小企業のイノベーションが促進されることが期待される。
 
事例3-2-18 外国企業との連携により技術及びノウハウを習得し業種転換、技術転換に成功した企業

 大阪府東大阪市の株式会社COMFORT LAB(従業員8名、資本金1,000万円)は、フットケア製品やサポーターベルト等の健康関連製品の製造・販売を行う企業である。
 同社は、当初の事業である溶接ガス関連製品の製造・販売の先行きが明るくないと考え、健康用の靴の中敷きをアメリカから輸入し販売を開始したところ、数か月で類似製品が出回るようになり、単純な輸入販売に限界を感じるようになった。そこで、アメリカの企業から健康用品の製造に関する技術を学ぼうと考え、アメリカの企業の靴の中敷きのOEM生産を開始し、健康用品に関する技術・ノウハウを積極的に蓄積するようになった。
 この取組を嚆矢として、オーストラリア、ニュージーランド、フランスの企業とも積極的に連携し、様々な健康用品に関する技術・ノウハウの蓄積を進めるとともに、自社で国外の技術に改良を加え、独自の商品開発を行うようになった。また、ある程度の販売量が見込めるようになると、中国や台湾に業務提携先を求めて、国外で、現地の協力の下で製造拠点を設立し、製造・販売するようになった。このように、同社は、経営の国際化を段階的に進めた結果、現在では売上高の約3分の1を国外が占めるようになった。
 同社の椋本満社長は、「国外では、やる気と事業計画をきちんと示せば、大企業であっても取引を開始してくれる。零細企業は、国内で取引先を探すのみならず、国外の大手企業と取引をすることで、不足する経営資源を補えるのではないか。」と言う。
アメリカの企業と共同で開発した成果により完成した靴の中敷き
 
事例3-2-19 外国企業との技術提携を行うために起業され、その後も技術提携により更なる成長を続ける企業

 大阪府和泉市のテクノロール株式会社(従業員110名、資本金2,500万円)は、印刷用ゴムローラー等の製造・販売を行う企業である。
 同社は、西脇宏会長が、前職で経験したアメリカの企業との印刷用樹脂ロールの共同開発を行うために、1980年に起業した企業である。
 貿易に関するノウハウの蓄積を図るとともに、印刷会社や印刷機メーカーからの生の声を集めて積極的に製品開発を行うことで技術力を高め、新製品開発を続けてきている。
 また、インターネットを活用することや国外の展示会にも積極的に参加することで、国外との結びつきを深め、ドイツの企業とも技術連携を行うようになった。同社は、樹脂ゴムに関して高い技術力を持つ一方、連携先のドイツの企業は、合成ゴムに関して高い技術力を持っていたため、技術提携契約を締結しお互いの技術を学び合うことで社内の技術力を向上させている。現在では、同企業から技術供与を受けた製品が売上の約3割を占めており、同社の主力商品の1つとなっている。
技術提携先のドイツの企業とドイツの展示会に出展する風景(中央がドイツの企業の製品、その左側が同社の製品)
 
コラム3-2-3 特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案

 アジア新興国の経済成長に伴い、我が国の市場規模が相対的に縮小していること、アジア各国が外国企業の誘致支援策を強化していることから、我が国からグローバル企業の撤退が相次いでおり、我が国はアジアにおける国際的な事業活動拠点としての地位を喪失しつつある。
 そのため、政府では、2011年2月に特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案を閣議決定し、国会に提出した。
 同法案は、研究開発事業や統括事業37といった高付加価値をもたらす拠点の我が国への立地を促進するため、主務大臣の認定を受けたグローバル企業が国内で新たに研究開発事業又は統括事業を行うために設立する法人に税制上の支援措置を講ずることが規定されている。

37 二以上の法人(これらの法人の本店又は主たる事務所が所在する国等の数が二以上であるものに限る。)のそれぞれの総株主等の議決権の過半数を取得し、又は保有することにより、当該二以上の法人が行う事業の方針を策定するとともに、当該二以上の法人に対する出資その他の当該方針の実施を確保する事業その他の当該二以上の法人が行う事業を統括する事業をいう。

 同法案では、新規に設立される法人の規模が中小企業である場合には、研究開発事業の成果に係る特許料の軽減や、中小企業投資育成株式会社において、資本金3億円超の部分について株式及び新株予約権の引受け、保有を認め、資金調達を支援するなど追加的な措置が講じられている。
 同法案が成立することにより、高付加価値をもたらすグローバル企業の国内への立地が促進され、就業機会が創出されるとともに、我が国の中小企業との連携による新製品や新技術の開発が期待される。


コラム3-2-3 特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案の概要



●外国企業や外資系企業等からの出資
 さらに、中小企業による外国から流入してくる経営資源の活用の仕方として、中小企業が外国企業や外資系企業等からの出資を受けることが考えられる。第3-2-62図は、外資系企業になった理由を規模別に示したものであるが、「単独で新規設立」した企業の割合が最も高く、「合弁で新規設立」した企業が続くが、中小企業においては約1割、大企業においては約2割の企業が「合併・買収(M&A)」により外資系企業になったと回答している。
 
第3-2-62図 外国投資家の株式又は持分が3分の1を超えた事由
〜「単独で新規設立」した企業の割合が最も高く、「合弁で新規設立」した企業が続くが、中小企業においては約1割、大企業においては約2割の企業が「合併・買収(M&A)」により外資系企業になったと回答している〜


第3-2-62図 外国投資家の株式又は持分が3分の1を超えた事由
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 また、第3-2-63図は、1995年度以降のM&Aにより外資系企業となった中小企業の件数を示したものであるが、1995年度以降M&Aにより外資系企業となった中小企業の件数は増加する傾向にあったが、2005年度をピークとして現在は減少する傾向にある。
 
第3-2-63図 M&Aにより外資系企業になった中小企業数
〜M&Aにより外資系企業になる中小企業の数は、1995年度以降増加傾向にあったが2005年度をピークとして減少する傾向にある〜


第3-2-63図 M&Aにより外資系企業になった中小企業数
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 それでは、外国企業及び外資系企業から出資を受けることについて、中小企業はどのように感じているのであろうか。第3-2-64図を見ると、国外への財・サービスの販売・提供の有無にかかわらず、半数を超える中小企業が「抵抗があり、今後も全く考えていない」と回答しており、多くの中小企業で外国企業や外資系企業からの出資を受けることに抵抗感を感じていることが分かる。一方で、国外への財・サービスの販売・提供の有無にかかわらず、2割を超える企業では「抵抗はない」と回答している。
 
第3-2-64図 外国企業や外資系企業からの出資に対する中小企業の考え方
〜国外に財・サービスを販売・提供しているかどうかにかかわらず、半数以上の企業が「抵抗があり、今後も全く考えていない」と回答している〜


第3-2-64図 外国企業や外資系企業からの出資に対する中小企業の考え方
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 また、外国企業や外資系企業からの出資に抵抗を感じる理由について示したものが第3-2-65図であるが、「日本企業とは異なる経営・管理手法面に不安がある」ために抵抗を感じる中小企業の割合が最も高いが、4〜5割の中小企業では、「実態が分からず、漠然とした不安がある」ことから、外国企業や外資系企業からの出資に抵抗を感じていることが分かる。
 
第3-2-65図 外国企業や外資系企業からの出資に抵抗がある理由
〜「日本企業とは異なる経営・管理手法面に不安がある」と回答する中小企業の割合が最も高いが、4〜5割の中小企業は、「実態が分からず、漠然とした不安がある」と回答している〜


第3-2-65図 外国企業や外資系企業からの出資に抵抗がある理由
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 他方、外国企業や外資系企業からの出資を受けることは、中小企業の新たな発展に資する可能性がある。第3-2-66図は、2000〜2004年度までのいずれかの年度において、外国資本比率が0%超となり、一度外国資本が導入された後は継続して外国資本比率が0%超である企業(以下「外資導入企業」という)と、1995〜2008年度まで継続して外国資本比率が0%の企業(以下「国内企業」という)、同中小企業(以下「国内中小企業」という)の労働生産性を比較したものであるが、外資導入企業は外国からの出資を受け入れる前から、国内企業、国内中小企業と比較して労働生産性が高く、外国資本を受け入れた後の労働生産性の伸びも国内企業、国内中小企業と比較して高い傾向が見られる。この結果は、外国企業や外資系企業から出資を受けることで、中小企業の生産性が向上し得る可能性を示唆している38

38 外資導入企業の従業者数は、外国資本を受け入れた後も国内企業、国内中小企業と同様の動きを示すことから、労働生産性の伸びは付加価値の増加によるものであると考えられる。付注3-2-9参照。

 
第3-2-66図 外資導入企業及び国内企業、国内中小企業の労働生産性
〜外資導入企業は、それ以外の企業と比較して、外国資本を受け入れる前において、労働生産性が高い傾向にあり、外国資本を受け入れた後の労働生産性の伸びも高い傾向にある〜


第3-2-66図 外国人人材の職種
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 我が国の中小企業では、外国企業や外資系企業からの出資に抵抗を感じる割合が高いことを示してきたが、外国資本の受け入れによる成長の可能性もあることから、外国資本を受け入れることのメリット・デメリットを正しく認識して、その是非を判断していくことが重要であると考えられる。

●経済連携
 ここまで、国外に財・サービスを販売・提供することや国内にいながら事業機会を取り込むことを見てきた。一方で、我が国では、2010年11月9日に「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定し、「国を開き」、「未来を拓く」ために、世界の主要貿易国との間で、世界の潮流から見て遜色のない高レベルの経済連携を進めるとしている。
 そこで、最後に国外との経済連携の進展により、人材・物資・資金の往来が増加していくことに関する中小企業の意識について見ていく。まず、第3-2-67図は、経済連携の進展が自社に対してどのような影響があるかについて、国外に自社の財・サービスを販売・提供している中小企業と、そうでない中小企業を比較したものであるが、国外に財・サービスを販売・提供している企業では、「良い影響」、「どちらかといえば良い影響」を合わせて5割以上が良い影響があると回答している。また、国外に財・サービスを販売・提供していない企業では、5割以上が「どちらともいえない」と回答する一方、「良い影響」があると回答する企業も約3割存在している。
 
第3-2-67図 国外との経済連携の進展による中小企業への影響
〜国外に財・サービスを販売・提供している企業では、5割以上が良い影響があると回答。国外に財・サービスを販売・提供していない企業は、5割以上が「どちらともいえない」と回答する一方、良い影響があると回答する企業も約3割存在する〜


第3-2-67図 国外との経済連携の進展による中小企業への影響
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 また、経済連携の進展によるメリットについて中小企業がどのように感じているかについて示したものが第3-2-68図であるが、国外に財・サービスを販売・提供している企業は、「新たな海外販路開拓」、「関税撤廃や貿易手続の円滑化による費用削減」と回答する企業の割合が高いが、国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも、約6割がメリットがあると回答している。
 
第3-2-68図 国外との経済連携の進展により想定される自社のメリット
〜国外に財・サービスを販売・提供している企業は、「新たな海外販路開拓」、「関税撤廃や貿易手続の円滑化による費用削減」と回答する企業の割合が高いが、国外に財・サービスを販売・提供していない企業でも、約6割がメリットがあるとしている〜


第3-2-68図 国外との経済連携の進展により想定される自社のメリット
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 これらの結果から、経済連携が進展することにより、自社にどのような影響があるかについてより具体的に示すことで、経済連携への理解を深めていくことが重要であることが示唆される39

39 中小企業白書(2010年版)p.195では、APECに参加する国・地域の間で関税が撤廃されたと仮定した場合の我が国のGDP変化率の推計を行っており、貿易の自由化を推進することが、中小製造業にとってもプラスの影響をもたらすとの試算結果がある。

 以上では、国内における事業機会の取り込みとして、輸入、訪日外国人、外国人人材、外資系企業の動向と、我が国の中小企業に与える影響について見てきた。我が国の中小企業はこうした取組を行うことにより、国際化を行わなくても国外からの事業機会を取り込むことが可能となる。東日本大震災の影響により、我が国の中小企業は、現在大変厳しい状況にあるが、今後、国内外の経済のシームレス化が進展していく中で、我が国の中小企業が一層拡大、多様化する事業機会を確実に取り込むことにより、我が国の経済成長を実現していくことが期待される。
 
コラム3-2-4 APEC40中小企業大臣会合

40 アジア太平洋地域の持続可能な発展を目的としたフォーラムをいう。2011年3月時点において、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、アメリカ、ベトナムの21の国及び地域が参加している。

 2010年10月2日、3日、我が国はAPECのホストエコノミーとして、分野別大臣会合の一つであるAPEC中小企業大臣会合を、岐阜県岐阜市で開催した。中小企業大臣会合の日本における開催は、第一回会合が大阪で行われて以来16年ぶりで、この会合に併せて、中小企業シンポジウムや中小企業国際見本市も行われた。
 同会合では、中小企業が繁栄と雇用の重要な源泉であり、技術革新の重要な担い手であるとの認識の下、「中小企業とアジア太平洋:二つのエンジンによる経済活性化戦略」をテーマに、(1)中小企業の置かれた現状分析、(2)今後2、3年の発展及び(3)2020年までを俯瞰した政策の方向性について議論が行われた。
 議論の結果採択された共同閣僚声明41の中では、(1)高成長が期待される分野への中小企業の参画を促進する戦略・行動計画を策定・提示すること、(2)中小企業の世界市場へのアクセスを強化するための具体的な取組を行うこと、の重要性が認識され、これらの努力を進めることにより、アジア太平洋地域において、生活に密着した分野から最先端技術を開発し駆使した分野まで、小規模企業から中規模企業までの活力のある多様な中小企業群を生み出すことが目標とされた。特に、中小企業の世界市場へのアクセス強化に関して、以下の3つの取組を岐阜イニシアティブと呼んで進めることとなった。

41 2010年APEC中小企業大臣会合の共同閣僚声明の全文(日本語・仮訳)は中小企業庁のホームページを参照。http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kokusai/download/101003APEC-SMEMM-J.pdf

〜岐阜イニシアティブ〜
 (1) APECワイド及びグローバル一村一品モデルによる、それぞれの国内または地域内の資源を活用した高付加価値産品の開発及びグローバル市場への販売展開の支援。
 (2) APEC中小企業展示会モデルや展示会情報共有基盤等のAPEC市場開放活動による、アジア太平洋地域の中小企業に開かれた展示会の推進。
 (3) APEC中小企業CEOネットワーク等の国際的な研修・交流プログラムを立ち上げることによる、中小企業の人的つながりの拡大・強化。
 また、2011年のAPEC中小企業大臣会合は、貿易大臣会合と同時期の5月21日にアメリカのモンタナ州ビッグスカイで開催された。2011年会合では、昨年日本で合意された中小企業の高成長分野への参画と世界市場へのアクセスを引き続き進めることが確認されるとともに、「岐阜イニシアティブ」に関しては、我が国から、昨年10月以降、(1)一村一品運動に関するベストプラクティス調査及びセミナーの実施、(2)国際展示会情報の共有及び中小企業支援型展示会モデルとなる中小企業総合展の開催、(3)中小企業経営者交流事業の実施、という形で具体的に進捗していることを報告し、その実行の重要性が確認された42

42 2011年APEC中小企業大臣会合の共同閣僚声明の全文(日本語・仮訳)は中小企業庁ホームページを参照。http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kokusai/2011/download/110521APEC-SMEMM-J.pdf

 経済産業省では、これらの取組を推進し、我が国の中小企業が自社の持つ財・サービスを国外に販売・提供できる環境を一層整備していく。



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