第3部 経済成長を実現する中小企業 

2 中小企業の国際化23のための取組及び国際化に成功する中小企業の特徴

 中小企業は、国際化に当たってどのような取組を行っているのか、また、その中でも、国際化に成功する中小企業は、どのような特徴を有し、どのような取組を行っているのであろうか。本項では、中小企業の国際化のための取組を示すとともに、国際化に成功する中小企業の特徴を示していく。

●国際化を行う中小企業が現地で販売・提供する財・サービスの内容
 まずは、国際化を行う中小企業が国外で販売・提供する財・サービスの内容について見ていく。国外で販売・提供している主要事業24の内容について、日本で販売・提供するものとの差異を示したものが第3-2-29図であるが、地域の別にかかわらず、日本で販売・提供する財・サービスと同じものを国外でも販売・提供していると回答する中小企業の割合が約8割である。他方で、現地に合わせて作り替えていると回答する企業が約2割、新たに企画・開発していると回答する企業も約5%存在している。

23 本項でいう国際化とは、p.258で挙げた1. 直接輸出、2. 間接輸出、3. 直接投資、4. 業務提携を行うことに加え、p.263で挙げた1. 越境取引、3. 業務上の拠点、4. 自然人の移動をいう。なお、サービスの輸出のうち、2. 国外消費については、第3項で分析を行う。
24 本項でいう主要事業とは、中小企業が国外で販売・提供する財・サービスのうち、最も売上が大きい財・サービスをいう。

 
第3-2-29図 国外で販売・提供する財・サービス
〜アジア、アメリカ又はヨーロッパともに、約8割の企業が日本で販売している財・サービスと同じものを国外で販売・提供していると回答している〜


第3-2-29図 国外で販売・提供する財・サービス
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 また、日本で販売・提供している財・サービスと同じ財・サービスを国外で販売・提供する理由について示したものが第3-2-30図であるが、「日本と同じ財・サービスであることが評価される」と認識している企業の割合が高く、特にアジアではその傾向が強い。一方、「現地の需要や嗜好が日本と同じで、変える必要がない」と認識している企業も2〜3割存在している。
 
第3-2-30図 日本と同じ財・サービスを国外で販売・提供する理由
〜アジア、アメリカ又はヨーロッパともに、「日本と同じ財・サービスであることが評価される」と認識している企業の割合が高く、特にアジアではその傾向が強い〜


第3-2-30図 日本と同じ財・サービスを国外で販売・提供する理由
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 次に、主要事業と、現地で競合する財・サービスとの関係について見ていく。第3-2-31図は、中小企業が国外で販売・提供している主要事業の品質について、現地の競合する財・サービスと比較した水準を示したものであるが、アジアでは約8割、欧米では約7割の企業が、現地で競合する財・サービスと比較して品質は高いと認識しており、品質が低いと認識している中小企業の割合は極めて低い水準にとどまっている。
 
第3-2-31図 現地の競合する財・サービスと比較した品質水準
〜アジアでは約8割、アメリカ又はヨーロッパでは約7割の企業が現地の競合する財・サービスと比較して高い品質であると認識している〜


現地の競合する財・サービスと比較した品質水準
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 また、第3-2-32図は、中小企業が国外で販売・提供している主要事業の価格について、現地の競合する財・サービスと比較した水準を示したものであるが、アジアでは6割超、欧米では5割超の中小企業が現地で競合する財・サービスと比較して高いと認識している。
 
第3-2-32図 現地の競合する財・サービスと比較した価格水準
〜アジアでは6割超、アメリカ又はヨーロッパでは5割超の企業が現地の競合する財・サービスと比較して「大幅に高い」又は「若干高い」価格であると認識している〜


第3-2-32図 現地の競合する財・サービスと比較した価格水準
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 以上の結果から、多くの中小企業は、日本と同じ財・サービスであることが評価される、又は現地の需要や嗜好が日本と同じで、変える必要がないなどの認識の下、国外で日本と同じ財・サービスを展開し、現地の市場の競合製品と比較して高品質・高価格の財・サービスを販売・提供していると考えられる。

●主要販売先が重視する嗜好と市場シェアの確保状況
 次に、国外で主要事業を展開するに当たって、現地の主要販売先がどのような嗜好を有しているかについて見ていく。第3-2-33図によると、現地の主要販売先は、「機能・性能の高さ」、「価格の安さ」、「きめ細やかな対応」、「納期の短さ」、「ブランド等の感性的な価値」、「対象国・地域の文化・嗜好との親和性」を「とても重視する」、「やや重視する」と認識している企業の割合が高い。その中でも、アジア、欧米ともに、現地の主要販売先が「機能・性能の高さ」を「とても重視する」、「やや重視する」と認識している企業の割合が9割を超えており、現地市場のニーズとしても、我が国の中小企業は販売・提供する財・サービスに品質の高さを求められていると認識していることが見て取れる。
 
第3-2-33図 現地の主要販売先が重視する嗜好
〜アジア、アメリカ又はヨーロッパともに、現地の主要販売先は、機能・性能の高さを重視すると認識している企業の割合が最も高い〜


第3-2-33図 現地の主要販売先が重視する嗜好
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 続いて、現地市場における中小企業のシェアの確保状況について見てみよう。第3-2-31図で見たように、我が国の中小企業が供給する財・サービスが高品質であり、現地市場のニーズも品質の高さを重視することから、我が国の中小企業は現地市場においてシェアを確保できていると推測される。
 しかし、第3-2-34図を見ると、現地における市場シェアを「確保できている」と認識している企業は、アジア、欧米ともに、2割に満たない。
 
第3-2-34図 市場シェアの確保状況
〜アジア、アメリカ又はヨーロッパともに、市場シェアを「確保できている」と認識している企業は2割に満たない〜


第3-2-34図 市場シェアの確保状況
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 それでは、現地の販売額の動向はどうであろうか。第3-2-35図によると、「大幅な増加」と回答する中小企業は1割に満たない水準であり、我が国の中小企業は現地での販売を伸ばすことに苦労していることが分かる。
 
第3-2-35図 現地における現在の販売額の傾向
〜アジア、アメリカ又はヨーロッパともに、「大幅な増加」と回答する企業は全体の1割に満たない〜


第3-2-35図 現地における現在の販売額の傾向
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 さらに、今回の震災で発生した原子力発電所事故により、日本から輸出される製品に対して放射線関連の検査や輸入の禁止等の規制措置を採る国・地域25もあり、現地での販売活動に困難が伴うことも想定される。日本政府としては、各国・地域の関係当局や産業界が過剰に反応し、科学的根拠に基づかない不当な措置を採用しないよう、〔1〕国内外での説明会の実施や新聞等のメディアへの投稿等を通じて、正確な情報を提供するとともに、〔2〕必要に応じて、首脳会談や閣僚会談の機会を利用して、ハイレベルで個別に働きかけを実施している(放射線量検査費用の補助についてはコラム3-2-2参照)。

25 外務省の調査結果によれば、2011年3月31日時点で少なくとも50の国・地域で規制措置が採られている。主要国・地域の輸出入関連措置については、外務省「東日本大震災主要国・地域の輸出入等関連措置(5月30日までに判明分)(順不同)」を参照。http://www.mofa.go.jp/mofaj/saigai/pdfs/yusyutunyuu_soti.pdf

●シェア確保企業の特徴と取組
 このように、我が国の中小企業にとって厳しい状況が続いているが、国外市場で、「シェアを確保できている」と回答した中小企業(以下「シェア確保企業」という)は、「拮抗している」、「確保できていない」、「分からない」と回答した中小企業(以下「シェア非確保企業」という)と比較して、どのような特徴を有するのであろうか。まず、第3-2-36図は、中小企業が主要事業を国外に販売・提供する際の現地における情報収集の取組を示したものである。シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して、総じて現地の情報収集に取り組んでいる割合が高い。特に、アジアでは「現地企業からの情報収集」、欧米では「現地市場の視察」、「現地の市場調査」といった項目で差が見られる。
 
第3-2-36図 シェア確保企業とシェア非確保企業の現地での情報収集の取組の比較
〜シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して「現地企業からの情報収集」、「現地市場の視察」、「現地の市場調査」といった現地での情報収集の取組を行う割合が高い〜


第3-2-36図 シェア確保企業とシェア非確保企業の現地での情報収集の取組の比較
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 他方、第3-2-37図は、シェア確保企業とシェア非確保企業で、前掲第3-2-33図で見たような主要取引先が重視する要素について、「分からない」と回答した割合を比較したものであるが、シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して、「分からない」と回答する割合が低く、現地の主要販売先のニーズをより綿密に捉えている割合が高いと考えられる。
 
第3-2-37図 シェア確保企業とシェア非確保企業の主要販売先の嗜好の各項目に対する理解度の比較
〜シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して現地の主要販売先の嗜好の各項目について「分からない」と回答する企業の割合が低い〜


第3-2-37図 シェア確保企業とシェア非確保企業の主要販売先の嗜好の各項目に対する理解度の比較
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 これらの結果から、中小企業が国際化を行うに際しては、事前に市場の動向を把握し、現地の動向を踏まえた国際化を行うことが、現地の市場シェアを確保する上で重要な要素であることが示唆される26

26 ものづくり白書(2010年版)p.59では、新興国市場では、自社が対象とする顧客層を明確に設定し、その顧客層のニーズに合致した製品を投入することが重要であるとの分析結果がある。

 次に、国外で販売・提供する主要事業の強みと弱みについて見ていく。第3-2-38図は、中小企業の国外で販売・提供する主要事業の強みについて示したものであるが、シェア確保企業、シェア非確保企業ともに、「機能・性能の高さ」を挙げる中小企業の割合が最も高く、差もあまり見られない。この点は、現地での競合する製品と比較して高品質の財・サービスを国外市場で販売・提供しているという結果とも一致する(前掲第3-2-31図)。一方で、「顧客対応」、「ブランド力」は、アジア、欧米ともに、シェア確保企業とシェア非確保企業で大きな差が見られ、現地でシェアを確保するための鍵となっていることが見て取れる。また、アジアでは「価格の競争力」と「納期の短さ」、欧米では「高級感」と「希少性」が高く、市場に応じてシェア確保企業の強みが異なっている。
 
第3-2-38図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の強みの比較
〜シェア確保企業、シェア非確保企業ともに、「機能・性能の高さ」の割合が最も高いが、シェア確保企業はシェア非確保企業と比較して、「顧客対応」、「ブランド力」の割合が高い。また、アジアでは「価格の競争力」と「納期の短さ」、アメリカ又はヨーロッパでは「高級感」と「希少性」の割合が高く、市場に応じてシェア確保企業の強みが異なる〜


第3-2-38図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の強みの比較
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 また、第3-2-39図は、自社の財・サービスの付加価値を高めるために中小企業が行う取組を示したものであるが、シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して「顧客情報の管理・関係構築」、「緊急時対応・支援」といった販売・提供する財・サービスの付加価値を高める取組を行う割合が高い。
 
第3-2-39図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の財・サービスの付加価値を高める取組の比較
〜シェア確保企業は、シェア非確保企業と比較して「顧客情報の管理・関係構築」や「緊急時対応・支援」といった付加価値を高めるための取組を行う割合が高い〜


第3-2-39図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の財・サービスの付加価値を高める取組の比較
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 この結果は、単に高品質の財・サービスを販売・提供するだけではなく、販売顧客への対応や、顧客との関係構築、高品質な財・サービスのブランド化といった要素が、現地における市場シェアを確保するための重要な要素となり得ることを示唆している27

27 中小企業白書(2009年版)p.99では、ヒット商品に関する分析を行っているが、中小企業は、技術力だけでは、同業他社との差別化を決め手とすることは難しく、「儲ける仕組み(ビジネスモデル)」、「ブランド力」、「企画提案力」といった要素を差別化の要素に加えられるかが重要である可能性が示唆されるとの分析結果がある。
 
事例3-2-13 自社の製品を販売するためのホームページを自ら開設し海外販路開拓に成功した企業

 東京都立川市の株式会社メトロール(従業員95名、資本金4,000万円)は、CNC28工作機械及び産業機械用の「精密位置決めスイッチ」を製造・販売する企業である。

28 Computer Numerical Control の略で、機械の動作にコンピュータで数値制御をかけること。

 同社の松橋卓司社長は、特定の企業・業界に依存することなく、世界中の多種多様な企業・業界へ費用を掛けずに自社製品を販売したいと考えていた。
 1998年には、英語のホームページを立ち上げ、その後、国内外のインターネット検索エンジンで関連用語が検索された場合、検索結果の上位に表示されるサービスを利用し、国外の企業向けに、クレジットカード決済で同社の製品を購入できる体制を構築したページを立ち上げた。この結果、余り費用を掛けずに自社の製品が多くの国の企業に知られるようになるとともに、決済の手法が簡便であるということもあり、国外から試験的に購入されるようになり、国外への直接輸出が軌道に乗り始めた。あわせて、国外の展示会に積極的に参加し、自社製品を宣伝することで認知度を高め、現在では、売上高の6割を直接輸出が占め、60以上の国・地域に、商社を介さず自社製品を直接販売している。
 松橋社長は、「国外の多くの企業は自国内の市場が大きくないため、世界を相手に商売するのは当たり前。日本の中小企業も、国外に製品を積極的に販売していくべきだ。」と話す。
英語版ホームページ
 
事例3-2-14 販売代理店を活用して、国外でもきめ細やかなサービスを提供する企業

 長野県須坂市のオリオン機械株式会社(従業員600名、資本金1億円)は、酪農用機械及び産業用機械等の製造・販売を行う企業である。
 同社は、酪農用機械に用いられる真空技術や冷凍技術を応用して、真空ポンプ、産業用冷水機や、圧縮空気除湿乾燥機を製造するとともに、事業所向けのジェットヒーターを製造している。
 同社は、1970年代にジェットヒーターの輸出を開始し、自社製品の販売に当たっては、販売網のみならずサービス網の構築にも熱心に取り組んできた。特に、主力製品の一つである産業用冷水機のアメリカでのアフターサービスについては、代理店にサービスエキスパートと呼ばれる専門知識を保有する専門家を配置すると同時に、補用部品を常時在庫している。また、アメリカの大手エアコンメーカーと提携し、修理や保守・点検を行う場合はサービスエキスパートが顧客に一番近いエアコン修理業者に指示を出して急行させ、部品を現地に送って迅速に対応できる体制を構築している。さらには、中国においても現地法人を通じたサービス網を構築している。こうした取組が顧客から評価を得て、同社の製品は他社メーカーよりも価格は高いが順調に販売額を伸ばしている。
アメリカにおけるサービス網
 
事例3-2-15 中小企業の優れた環境技術を国内外に販売するホームページを運営する企業

 東京都国立市の株式会社エコトワザ(従業員3名、資本金870万円)は、国内外に居住する外国人に対して日本の優れた「エコロジーの知恵」を紹介し、環境に配慮したライフスタイルを提案するポータルサイト運営、雑誌発行を行う企業である。ポータルサイト内では、日本各地から出品された環境配慮型製品のオンラインショッピングを行っている。
 同社が運営する英語の通信販売ホームページ「GreenJapan.com」は、月当たり約1万件のアクセス数がある。その内訳は、国内と国外からそれぞれ半々であり、国外からのアクセスは、オーストラリアやアメリカを始め、カナダ、イギリス、シンガポール、香港等の多岐にわたる。製品の購入者は個人が多いが、国外のバイヤーからのまとまった発注もある。
 同社のポータルサイトに掲載される製品は、畳素材のトートバッグ、リサイクル鉄を素材とした鉛非含有のフライパン等の環境への負荷を抑え、技術的にもデザイン的にも優れた製品である。「日本各地に伝わる匠の技や知恵と心のこもった手仕事、エコロジーの発想から生まれた最新技術を世界に広めることで、地球環境への負荷を下げる。」という同社の企業理念に共鳴した中小企業が製品を出品している。同社の大塚玲奈社長は「外国語が負担になって外国人向け販売に心理的な壁を感じてしまう企業は少なくないが、自社で外国語対応が難しいのであれば翻訳や通訳の専門家の力を借りればよい。中小企業にとって海外展開は簡単ではないことには違いないが、取引先が国外であるというだけで、基本的なビジネスの進め方は国内市場と大きく異なることはない。」と言う。
同社の運営するポータルサイト「eco+waza」
 
事例3-2-16 株式会社エコトワザのポータルサイトを通じて、環境対応型の製品を国外に販売する企業

 大阪府泉南市の山陽製紙株式会社(従業員49名、資本金3,000万円)は、各種クレープ紙及び加工品の製造・販売を行う企業である。
 同社は、和歌山特産の「南高梅」の梅干し加工業者から廃棄物として大量に出る種を炭化させて紙に漉き込み、消臭や脱臭、調湿、更には環境ホルモンの吸着に優れた性質を持つ「梅炭クレープ紙」を開発し、販売を行っている。
 同社の販売先は、国内の事業者が中心で、国外や個人を想定していなかったが、創業間もない株式会社エコトワザから声を掛けられ、企業理念に共感したことから、同社のポータルサイトに「梅炭クレープ紙」を掲載し、国外を視野に入れた取組を行うようになった。当初は、販売に苦労したが、株式会社エコトワザから、「顧客層を明確にするため、靴の脱臭という点に絞って商品を紹介した方がよい。」とのアドバイスを受け、実行に移したところアメリカの企業から引き合いが来るようになった。炭を使った環境対応型製品は、国外では珍しく、消臭等の機能性やリサイクル素材100%という分かりやすさもあって、現在では海外バイヤーからも注目されているという。国外との取引となると、多くの中小企業が外国語に不安を持つが、「外国語での電話やeメールは、株式会社エコトワザが対応してくれるので、国外とのやりとりに言葉の壁を感じないで対応することができる。また、輸出や取引の手続に対しても的確なフォローをしてもらえるので安心である。」と言う。
梅炭クレープ紙を用いた靴の脱臭剤「エコクック」


 続いて、主要事業の弱みについて示したものが、第3-2-40図である。シェア確保企業、シェア非確保企業ともに、「価格の競争力」を弱みに挙げる中小企業の割合が最も高いが、シェア確保企業はシェア非確保企業と比較して、「価格の競争力」を弱みと感じる割合が低いことが分かる。
 
第3-2-40図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の弱みの比較
〜シェア確保企業、シェア非確保企業ともに、「価格の競争力」を弱みに挙げる割合が最も高いが、シェア確保企業はシェア非確保企業と比較して「価格の競争力」を弱みと感じる割合が低い〜


第3-2-40図 シェア確保企業とシェア非確保企業の自社の弱みの比較
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 この結果は、シェア確保企業は「価格の競争力」という弱みを補う他の強みによりシェアを確保している可能性が示唆される。また、シェア確保企業では、「価格の競争力」を弱みとして挙げる割合がシェア非確保企業と比較して低いことから、市場シェアを確保するために、現地市場に合わせた価格を設定している可能性もある。
 以上の結果をまとめると、我が国の中小企業の多くは、日本と同様の財・サービスを国外で販売・提供しており、その財・サービスは、現地の競合製品と比較して高品質・高価格の財・サービスである傾向にある。他方、国際化を成功させるに当たっては、事前に市場の調査を十分に行い、現地の主要販売先の嗜好を見極めることが重要であることが示唆される。さらに、品質が高いことのみをもって国際化を行うのではなく、適切な顧客対応を行うことや自社製品のブランド化を図ることなどが国際化に成功する際に必要であると考えられる。前掲第3-2-22図及び第3-2-27図で示したように、近年、繊維工業や食料品製造業等の生活関連型の製造業の輸出企業及び飲食店・宿泊業や小売業の直接投資企業の数が増加しているなど、中小企業の国際化の動きが現地の消費者向けに財・サービスを販売・提供する業種にも多様化していることから、今後、現地の嗜好に合わせて財・サービスを販売・提供することがますます重要になってくると考えられる。震災の影響により、我が国の中小企業にとって厳しい状況が続いているが、中小企業は自らの強みと現地市場の嗜好を把握して国外からの事業機会を着実に取り込んでいく必要がある。
 
コラム3-2-1 広がる中小企業海外展開支援の取組

 我が国の中小企業の海外展開を支援するため、経済産業省では、2010年10月に経済産業大臣を議長とする「中小企業海外展開支援会議」を立ち上げ、金融庁、財務省、農林水産省、金融機関等の関係機関と連携し、各地方経済産業局を中心にきめ細かな海外展開支援を行う体制を整備している。
 各地方経済産業局では、海外展開支援に係る一元的な相談窓口を設置するとともに、(独)日本貿易振興機構(以下「JETRO」という)貿易情報センターと(独)中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という)支部との情報共有を通じて、3機関のいずれに相談しても同様の支援を受けることが可能な体制を構築している。
 支援体制の中核を担うJETRO及び中小機構では、既に海外展開に取り組む企業だけでなく、これから海外展開を目指す中小企業の新たな海外展開を支援するため、両機関で密接に連携して、海外展開の準備段階から契約締結段階までを一貫して支援している。具体的には、中小機構では、経営支援の観点から、海外展開戦略策定支援や商品紹介の外国語対応支援等の海外展開に向けた準備支援のほか、多数の外国人バイヤーが訪れる国内見本市への出展支援等を行っている。一方、JETROでは、国内外の広範なネットワークを活用して、海外展示会への出展支援や海外バイヤーの招へい等による商談機会の提供、国外市場等に関する各種情報の提供、外国企業とのマッチング支援等を行っている。
 さらに、金融機関による支援も拡大している。中小企業の海外展開支援のため、(株)日本政策金融公庫の融資制度の一つである「海外展開資金」の拡充に加えて、本邦金融機関が国際協力銀行(以下「JBIC」という)と連携し、中小・中堅企業の現地法人が地場金融機関から融資を受けやすくする観点からJBICが地場金融機関に融資等を行い、本邦金融機関は地場金融機関に保証を供与するなど資金面での支援策を拡充している。さらに、情報提供・相談面での支援として、地場金融機関に設置した日本企業担当窓口(ジャパンデスク)に職員を派遣することも検討している。(株)商工組合中央金庫もJETROと業務協力の覚書を締結し、国内外の店舗に海外展開相談窓口を設置している。
 同会議では、中小企業の海外展開を更に促進するため「中小企業海外展開支援大綱」を取りまとめており、今後とも各省庁及び関係機関との連携の下、中小企業の海外展開支援に積極的に取り組んでいく。
 他方、新興国市場においては、富裕層や中間所得層に加えて、低所得者層29も、将来成長し得る市場として獲得が期待される。経済産業省は、2010年10月に、中小企業も含めたBOPビジネスを総合的に支援する仕組みとして「BOPビジネス支援センター」を設立するなど、関係機関と連携しながら、日本企業等によるBOPビジネスの促進を目指している30

29 1人当たり年間所得が、3千ドル以下の低所得階層をBOP(Base of the Economic Pyramid)層という。中小企業におけるBOP ビジネスについては中小企業白書(2010年版)p.161参照。
30 具体的な取組は、「BOP ビジネス支援センター」を参照。https://www.bop.go.jp/

 
コラム3-2-2 放射線量検査費用の補助

 第1部第2章で見たとおり、原子力発電所事故の影響により我が国の中小企業が輸出を行う際に、放射能非汚染証明を求められる事例が出てきている。検査を要求される品目は、農産品のみならず鉱工業製品にも及んでおり、中小企業者からは一回当たりの費用負担が大きいとの声も聞かれる。
 このような状況の下、政府では、2011年度第1次補正予算において、国が指定した検査機関が行う輸出品に係る放射線量検査の検査料について一定率の金額(中小企業:9/10、大企業:1/2)を補助することで、風評被害による物流の停滞を防ぎ貿易の円滑化を図ることとしている。


コラム3-2-2 放射線量検査費用の補助



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