第2部 経済社会を支える中小企業 

3 課題と対応

 これまで、中小小売業の位置付け、商店街の来街者向け・地域住民向けの取組を見てきたが、以下では、我が国中小小売業を取り巻く環境の変化について分析を行い、生活を支える中小小売業がその変化にどのように対応しているのかを見ていく。

●中小小売業を取り巻く環境の変化
 第2-1-65図は、小売業の年間商品販売額と売場面積の推移を示したものであるが、売場面積は一貫して増加している一方、年間商品販売額は1999年から減少に転じている。
 
第2-1-65図 小売業の年間販売額及び売場面積
〜売場面積が増加している一方、年間商品販売額は1999年から減少に転じている〜


第2-1-65図 小売業の年間販売額及び売場面積
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 こうした小売業の年間販売額の減少及び売場面積の増加には、店舗の規模によって傾向に違いはあるのであろうか。第2-1-66図は、売場面積別に1997〜2002年及び2002〜2007年までの小売業の年間販売額と売場面積の変化を示しているが、小売業の年間販売額は、売場面積500平方メートル以上の事業所で増加し、売場面積500平方メートル未満の事業所で大幅に減少している。
 一方、小売業の売場面積でも、売場面積500平方メートル以上の事業所で増加し、売場面積500平方メートル未満の事業所で大幅に減少している44

44 2002〜2007年の売場面積当たりの販売額を見ると、500平方メートル以上の事業所では、11.4%減少し、500平方メートル未満の事業所では、3.2%の減少にとどまっている。しかし、ここでは、国内需要が収縮する中で、中小小売業の置かれた厳しい状況を示すために、売場面積当たりの販売額ではなく、近年500平方メートル未満の事業所で減少している年間販売額と売場面積に着目して分析を行っている。
 
第2-1-66図 売場面積規模別の小売業の年間販売額及び売場面積
〜売場面積500平方メートル未満の店舗は、販売額、 売場面積ともに大幅に減少している〜


第2-1-66図 売場面積規模別の小売業の年間販売額及び売場面積


 また、市区町村別に見ると、第2-1-66図で示した小売業の年間販売額と売場面積が、売場面積500平方メートル以上の事業所で増加し、売場面積500平方メートル未満の事業所で減少しているという傾向は、いずれの市区町村でも見られ、人口減少により需要規模が収縮する中で、売場面積500平方メートル未満の事業所は、販売額、売場面積ともに大幅に減少している。この現象は、一部地域ではなく、今回の被災地域も含めて、全国的に進行している(第2-1-67図)。
 
第2-1-67図 市区町村別の売場面積別の小売業の年間販売額及び売場面積
〜人口減少により需要規模が収縮する中で、売場面積500平方メートル未満の事業所は、販売額、売場面積ともに大幅に減少している〜


第2-1-67図 市区町村別の売場面積別の小売業の年間販売額及び売場面積<


 このように、全体としては、小売販売額が減少し、売場面積が増加する中でも、売場面積500平方メートル以上の事業所では販売額、売場面積ともに増加傾向、売場面積500平方メートル未満の事業所では、販売額、売場面積ともに減少傾向にあり、中小小売業はとりわけ厳しい状況にあるといえる45

45 1997〜2002年の500平方メートル以上の売場面積の著しい増加は、2000年に大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律(第二種大規模小売店は500平方メートル以上)が廃止されたことの影響もあると考えられる。

●消費者、商店街、商店街事業者の意識
 ここまで、中小小売業を取り巻く環境が厳しさを増していることを見てきた。以下では、こうした環境変化の中で、商店街事業者、商店街が、消費者のニーズをどのように把握しているのかを全国商店街調査を用いて見ていく。
 まず、消費者は、買い物に日頃どのような場所、方法を利用しているであろうか。第2-1-68図を見ると、消費者が最もよく利用する店舗は、10分圏内のコンビニエンスストアが約8割を占め、30分以内の大型店舗や量販専門店舗、インターネット販売・通信販売が約5割を占める一方、商店街は10分圏内でも3割に満たない。
 品目別に見ると、食料品と衣料は大型店舗、家電と家具は量販専門店舗、サービスと飲食はその他の店舗の割合が高い。商店街の割合が高いのはクリーニング・修理サービス、理容・美容サービスで25%前後、続いて飲食が16.5%となっている(第2-1-69図)。
 
第2-1-68図 日頃利用する買い物場所及び方法
〜「10分圏内のコンビニエンスストア」が81.1%と特に高い。以下、「10〜30分圏内の大型店舗」と「10〜30分圏内の量販専門店舗」の約5割に次いでインターネット販売・通信販売も45.6%と高い〜


第2-1-68図 日頃利用する買い物場所及び方法
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第2-1-69図 品目別の主な購入場所及び方法
〜食料品と衣料は大型店舗、家電と家具は量販専門店舗、サービスと飲食は他の店舗の割合が高い〜


第2-1-69図 品目別の主な購入場所及び方法
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 次に、消費者は、日頃の買い物で、商店街と競合する場所をどのように認識しているのであろうか。第2-1-70図は、商店街の競合環境を示したものであるが、「大型店舗」、「他の商店街」、「コンビニエンスストア」、「量販専門店舗」と競合していると答える割合が高い。また、「大型店舗」、「量販専門店舗」、「インターネット販売・通信販売」では、消費者の競合認識の方が高くなっている。
 以上の結果から、消費者は利便性、購入品目等を勘案して広い選択肢の中から最も効用の高い買い物場所を利用しており、商店街以上に商店街の競合環境を厳しいと考えていることが分かる。商店街は、この現状を踏まえ、消費者が商店街に何を求めているかを一層的確に把握し、対応していく必要があると考えられる。
 
第2-1-70図 競合環境
〜「大型店舗」、「量販専門店舗」、「インターネット販売・通信販売」では、消費者の競合意識の方が高くなっている〜


第2-1-70図 競合環境
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 続いて、第2-1-71図は、今後5年間の消費者のニーズや関心の変化について、消費者、商店街それぞれの認識を比較したものである。これを見ると、消費者、商店街の双方で安全・安心、環境、健康へのニーズ・関心、インターネット販売・通信販売ニーズが今後増加すると認識していることが分かる46。一方で、地元店舗や近所での買い物への関心については、商店街の認識では、減少するという割合が比較的高く、商店街の危機感が反映されている一方、消費者の認識では、増加するという割合が高く、消費者が商店街に期待していることがうかがえる。

46 中小企業白書(2010版)p.31〜33では、主力製品等の単価変動及び単価の低下割合を示し、デフレの影響が中小企業にも及んでいるとしている。付注2-1-13付注2-1-14を参照。

 また、両者の認識の相違を見ると、「宅配・出前のニーズ」、「店員との対話等の人との触れ合いへの関心」、「説明や案内等の買い物支援ニーズ」では、消費者がニーズや関心が増加すると回答する割合が商店街と比べて低く、総じて消費者は商店街が認識するほど、人によるサービスへのニーズや関心は高くならないと認識していると考えられる。こうした状況を踏まえ、商店街は、消費者が求める商品や買い物場所を的確に把握して取り組んでいく必要がある。
 
第2-1-71図 消費ニーズや関心の変化(今後5年間)
〜地元店舗や近所での買い物への関心については、商店街の認識では、減少するという割合が比較的高く、商店街の危機感が反映されている一方、消費者の認識では、増加するという割合が高く、消費者は商店街に期待していることがうかがえる〜


第2-1-71図 消費ニーズや関心の変化(今後5年間)
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 次に、商店街の商品、サービス等の強みと今後強化すべきものについて見ていく。
 第2-1-72図によると、商店街は、「理容・美容サービス」、「飲食店」を強みと認識している割合が高く、消費者は、「生鮮食品」、「総菜・パン」を強みと評価している割合が高い。今後強化すべきものについては、商店街では、「生鮮食品」、「総菜・パン」の最寄品への認識が高くなっている。一方で、消費者では、「家電製品」、「家具・家財」、「自転車・自動車」の買回品を強化すべきという割合が商店街、商店街事業者と比べて高くなっており、商店街の買回品へのニーズも見て取れる。
 
第2-1-72図 商店街の商品、サービス等の強みと今後強化すべきもの
〜商店街は理容・美容サービス、飲食を強みとし、消費者は生鮮食品、惣菜・パンをより高く評価している。今後は商店街、消費者とも生鮮食品、惣菜・パン、飲食が高い〜


第2-1-72図 商店街の商品、サービス等の強みと今後強化すべきもの
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●商店街の課題と対応
 これまで、消費者は、商店街が認識している以上に、大型店舗や量販専門店舗、インターネット販売・通信販売等と比較して、買い物場所や方法を選別しており、今後は、商店街が、最寄品以外の商品・サービス等も強化すべきであると考えていることなどを見てきた。以下では、今後10年程度を展望した場合に、商店街は何が課題となり、どのような対応が必要になってくるのかについて商店街、商店街事業者、消費者の認識を見ていく。
 第2-1-73図は、今後10年程度を展望した商店街の課題を示したものであるが、商店街は経営者の高齢化47や店舗、商店街の老朽化といった内部的課題の認識が高いのに対し、消費者は、大型店舗やインターネット販売・通信販売との競合や商圏人口の減少といった外部的課題への認識が相対的に高くなっている。また、空き店舗の増加を課題と認識している割合が消費者で最も高くなっており、商店街、商店街事業者以上に、消費者が空き店舗の増加を商店街の課題として強く認識していることが分かる。被災地域でも、これらの課題に加えて、商圏人口の減少や空き店舗の増加といった課題がより深刻化することが懸念される。

47 付注2-1-15参照。
 
第2-1-73図 今後10年程度を展望した商店街の課題
〜今後の課題は、商店街は経営者の高齢化や店舗等の老朽化を挙げる割合が高いが、消費者は空き店舗の増加、大型店舗やインターネット販売・通信販売との競合を挙げている割合が高い〜


第2-1-73図 今後10年程度を展望した商店街の課題
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 こうした課題への対応策としては、商店街・商店街事業者・消費者いずれも「魅力的な店舗の充実」が最も高い割合となっており、各店舗が充実することによる集客力の向上が重要という認識が一致している。また、商店街では「商店街内部の担い手の育成」の割合が高く、消費者では「客層に応じた顧客ニーズの把握と対応」、「地域住民の顧客の維持、取り込み」、「地域独自の商品、サービスの販売」が比較的高い割合を占めている(第2-1-74図)。
 以上の結果から、震災後の厳しい状況の中にも、商店街が維持・発展していくためには、担い手の確保・育成により、商店街内の高齢化という内部課題に対応しつつ、消費者のニーズを的確に把握し、対象を明確にして地域住民の需要を着実に取り込んでいくことが必要である。
 
第2-1-74図 商店街の課題への対応策
〜課題への対応策は、魅力的な店舗の充実を挙げる割合が高く、消費者では、地域住民の顧客の維持・取り込み、客層に応じた顧客ニーズの把握と対応、地域独自の商品・サービスの販売を挙げる割合が高い〜


第2-1-74図 商店街の課題への対応策
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 本章では、中小企業が経済的、社会的に重要な存在であり、東日本大震災でも、我が国のサプライチェーンを担い、地域住民の生活を支えるなど中小企業の重要性が再認識されたことを見てきた。続く第2章では、急速な景気後退や深刻化する構造的課題の中で、産業、生活の基盤である中小企業の良さを守る取組として、中小企業金融対策、雇用対策、事業引継ぎ、事業再生、地域密着型金融等について見ていく。

事例2-1-20 夜市を開催して新規出店を支援することなどによりにぎわい再生に成功した商店街

 群馬県館林市のたてばやし下町通り商店街は、同市の玄関口である館林駅から徒歩8分の県道沿い330メートルの商店街である。同商店街は、1988年からの県道拡幅工事を機に廃業店が増え、1993年に43店あった組合の商店数が30店を下回り、空き地と駐車場が増加し、徐々ににぎわいを失いつつあった。
 同商店街は、にぎわい再生に向けて模索を続ける中で、視察した近隣市のナイトバザールをヒントに、夜市に取り組むこととした。商店街を中心に、県や市、商工会議所、市民ボランティアが参加して「たてばやし下町夜市実行委員会」を設立し、2004年10月から毎月第三土曜日に「下町夜市」を開催し、現在7年目を迎えている。
 夜市開催の翌週には、出店者間で勉強会を開催し、先輩店が新規出店者に指導を行っており、紅茶店とジェラート店が商店街内で出店に至った。チャレンジ出店への希望者は、多数に上るため、出店審査を行っており、まちなか再生や商業振興への姿勢も重視している。
 毎月の開催日には、市の広報車によるアナウンスが行われるとともに、小学校、保育園で案内が配付され、市を挙げて様々な協力が行われている。夜市には、地元の高校のブース出店、大学生等のボランティア参加も含め、様々な世代、立場の人々が参加する地域ぐるみのイベントとして活況を呈しており、商店街がコミュニティ再生をリードしている。
「下町夜市」の様子

事例2-1-21 商店主の収益、雇用確保のために、数々の地域密着事業を展開する商店街

 東京都足立区の東和銀座商店街は、JR 亀有駅から徒歩約7分、約500メートルの距離にある商店街である。同商店街の周囲には住宅街が広がり、長らく地元住民の生活を支えてきたが、同商店街から1キロメートル圏内に大手スーパーが数多く立地したこともあり、いつしか商店街は徐々に衰退し、いずれ同商店街は消えてしまうのではないかと危機感を持つようになった。
 そうした中で、1990年に東京都から隣接区に新設する病院の売店とレストランの事業委託の募集があり、地元の商店街として取り組みたいと積極的に手を挙げ、委託事業実施のために、組合員の約半数の出資を得て、株式会社アモールトーワを設立した。
 同社は、この病院での売店とレストラン事業の経験を基に、区立小学校の給食事業に展開したところ、主婦達が自分の子供達の給食を調理することが好評で、小学校のほか、保育園、福祉施設と次々と受託施設を増やし、現在は20を超える施設の給食を担っている。
 また、同社は、独居老人の増加を心配した社会福祉協議会の要請を受けて、安否確認を兼ねた老人給食宅配事業を実施している。この事業単独では、採算割れであるが、事業の重要性を認識している地元の人々が催事の際の弁当やパーティ料理等を同社に発注することで、給食事業全体としては、黒字を確保している。
 同社は、「自分達の街は自分達が良くする。」という考え方の下、200名を超える商店街メンバーを始め、地元の人々を雇用しながら、非営利の事業会社として数々の地域密着事業を展開している。
老人給食宅配事業の盛り付け作業の様子

事例2-1-22 商店街の個性発揮と大型店との連携による活性化を目指す商店街

 岡山県岡山市の表町商店街は、JR 岡山駅から徒歩約13分、約1キロメートルの市街地に位置し、天満屋を中心に広がる広域を対象とする商店街である。
 同商店街では、郊外の大型店の増加や岡山駅の周辺地域の開発により競争が激化したことで、空き店舗数の増加、来街者数の減少が続いていた。そこで、天満屋、岡山ロッツ、クレド岡山等の周辺大型店との共同事業を行うことで、商店街単独だけでなく「商店街エリア」として活性化する取組を行っている。
 同エリア内の商店街店舗及び大型店でのバーゲン期間統一や天満屋との共通商品券事業等の共通事業を行うほか、2011年3月からは、天満屋専用のクレジットカードであった「てんまやモアカード」を、商店街連盟負担により商店街の約200店でも決済できる共通カード事業も実施している。
 同商店街では、これらの共通商品券事業や共通カード事業を収益事業として実施し、得られた収益を販売促進事業の原資としている。これらの事業の企画は、大型店の関係者も含む事業推進委員会において決定している。
 近年では、こうした商店街エリア全体での取組が、表町商店街のイベント展開等の他の取組ともあいまって、集客アップが実現している。
表町商店街で使える天満屋カード

事例2-1-23 住民との対話から環境整備、イベント開催、宅配サービス等を行い、空き店舗が減少した商店街

 島根県浜田市の紺屋町商店街は、JR 浜田駅から約1.2キロメートル離れた徒歩約15分の市街地に位置する商店街である。
 同商店街では、浜田高速道路開通を契機として競合店が増加し、経営者の高齢化により空き店舗が増加するなど、衰退が進んでいた。また、1993年に実施した近隣住民を対象とするアンケートでは、近隣住民に対する認知度、知名度が低いことや環境面、サービス面等への不満が明らかになった。同商店街では、これを受け「人にやさしい対話のある街」を目指し、環境改善、サービス改善、空き店舗の減少に取り組むこととした。
 まず、環境改善では、県や市の助成を受け、街路のカラー舗装、レトロ調の斬新なデザインの街路灯に更新した。サービス改善では、「商店街近代化講習会」を毎年実施し、各店舗の能力と意識の向上に努めている。さらに、土曜市、綱引き大会、食の市を始めとしたイベントを月に1回実施し、紺屋町商店街が市民に浸透するきっかけとなった。現在、近隣の幼稚園、保育園の園児の絵を商店街に飾る「未来のピカソ展」が、近隣の21の全ての保育園が参加する大好評のイベントとなっている。
 こうした積極的な取組の結果、近年では出店希望者も多くなり、15年前に15店舗あった空き店舗が現在は2店舗に減少した。さらに、小学校や商業高校からの視察を受け入れるとともに、大学の大道芸部によるイベントを行うなど、地域に密着した商店街として発展し続けており、伝統文化や地域の核としてかけがえのない役割を担っている。
「未来のピカソ展」表彰式
 
コラム2-1-9 買い物弱者

 我が国では、特に過疎地や郊外部の大規模団地を中心に、買い物のための場所や移動手段等日常生活に不可欠な機能が弱体化している地域が増加し、日常の買い物が困難な、いわゆる「買い物弱者」が増加している。経済産業省では、その数を600万人と推計している。
 背景にあるのは、少子高齢化と人口減少である。国立社会保障・人口問題研究所によれば、日本の人口は今後下降して行き、2010年には1億2,712万人であるが、2030年には1億1,522万人、2050年には9,515万人になると予測されている。地域によっては人口減少が毎年1%単位で進む地域もある。地域全体の人口が減る中では消費額は落ち込み、高齢者中心の社会になると今までのような自動車を中心とした店舗立地はより難しくなる。
 こうした環境変化は、商業の経営の観点から整理すれば、地理的商圏の大幅な縮小や店舗当たり売上高の大幅な縮小と捉えることができる。これまで買い物弱者が多く分布している地域は、余りビジネスには適さない地域であると考えられてきた。しかしながら、近年、買い物弱者の潜在的な需要を新たなフロンティアと捉え、〔1〕IT や物流効率化による事業効率向上の徹底、〔2〕全国のチェーン展開と地場密着を高度に融合する、〔3〕地域での多様な事業主体による連携やリソースの共有等の方法により、先進的な対策が進みつつある。
 買い物弱者の多い地域で起きている問題は、日本全体が少子高齢化していく中で、我が国の将来の課題を先取りするものでもある。マクロレベルで売上が減少する場合でも、早期に高度なビジネスモデルを検討することで、売上・利益の増大等が可能になるケースもあると考えられる。
 経済産業省では、一昨年より「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」を開催し、これまで全8回の検討を行ってきた。今春には、先進事例と工夫ポイントをまとめた事例集48を発表した。

48 2010年12月に公表された買い物弱者に関して、事業者等による対応の先進事例集とその工夫のポイントをまとめた「買い物弱者応援マニュアル」(第1版)に、更に全国の先進事例を募集し、拡充した追補版(第2版)を2011年5月30日に公表した。

 買い物弱者の問題は、人口減少や高齢化、これらに伴う売上高の大幅な減少すら、事実やすう勢を直視・分析することにより、事業の高度化等の手法を用いた利益の拡大が可能になるという事業構築上のヒントになるものと期待される。
 
コラム2-1-10 被災地の地域経済を支える企業及び企業群

 第1部第2章でも見たように、津波被災地域では、産業や生活の基盤が失われるほどの壊滅的な被害を受け、漁業及び漁業から派生する食品加工業等の産業に大きな影響が生じたが、こうした被災地域の経済も、本章で見たとおり、中核的な役割を担う中小企業及び商店街により支えられている。
 ここでは、石巻都市雇用圏(石巻市、東松島市、女川町)を例として、企業の取引に着目して、地域経済の取引構造について見ていく。コラム2-1-10図〔1〕は、帝国データバンク「SPECIA」に収録されている石巻都市雇用圏の企業が供給元となっている企業2,285社について、取引関係が密な企業同士に分類したものである。水産加工業、建設業、漁業を営む企業群が存在し、各企業群には、地域の取引の中核的な役割を担う企業が存在することが見て取れる。

コラム2-1-10図〔1〕 石巻都市雇用圏における企業の取引構造
〜震災で被害を受けた地域の経済も、中核的な役割を担う企業及び企業群により支えられている。石巻都市雇用圏を例に、企業の取引に着目して、取引関係が密な企業同士に分類すると、水産加工業、建設業、漁業を営む企業群が存在し、各企業群には、地域の取引の中核的な役割を担う企業が存在することが見て取れる〜

コラム2-1-10図〔1〕 石巻都市雇用圏における企業の取引構造

 次に、コラム2-1-10図〔2〕によると、石巻都市雇用圏に存在する35の企業群のうち、上位3つの企業群で、企業数が約400社、従業員数が約8,700人、売上高が約4,550億円となっており、企業数、従業員数、売上高のいずれも、石巻都市雇用圏の5〜6割を占めている49。また、上位3つの企業群の業種は、水産加工業、建設業、漁業となっており、企業群及び企業群の中核となる企業は、地域経済の中で大変重要な役割を果たしていることが分かる。

49 津波被災地域では農林漁業の企業の割合が約1%、漁業の就業者の約2%である(前掲1-2-4図)。なお、本分析では、石巻都市雇用圏外に本社が存在する事業所が含まれていないなどの制約がある。

コラム2-1-10図〔2〕 石巻都市雇用圏の主な企業群内の企業数、従業員数、売上高
〜石巻都市雇用圏に存在する35の企業群のうち上位3つの企業群で、石巻都市雇用圏の企業748社、雇用1.7万人、売上高7,570億円の5〜6割を占めており、企業群及び企業群の中核となる企業は、地域経済の中で、大変重要な役割を果たしている 〜

コラム2-1-10図〔2〕 石巻都市雇用圏の主な企業群内の企業数、従業員数、売上高

 このような地域経済の実態を踏まえ、企業活動や地元雇用の観点から、地域経済の核となる企業及び企業群に限られた政策資源を集中投入し、被災地域の経済を早期に復興していくことが重要である50

50 政府では、こうした地域経済の実態を踏まえ、地域復興の核となる企業グループ支援を行っている。コラム1-2-1参照。




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