第2部 経済社会を支える中小企業 

2 商店街の取組

 これまで、中小小売業が地域需要の担い手及び地域コミュニティの拠点として地域生活を支え、地域の経済社会に貢献し、今回の震災でも重要性が再認識されたことを見てきた。
 それでは、中小小売業は、地域需要に応え、地域の経済社会に貢献するためにどのような取組を行っているのであろうか。

●来街者向けの取組 
 まず、商店街の実施する来街者向けの取組について見ていくことにする。来街者向けの取組として、商店街は約7割が「イベント・共同宣伝事業」や「アーケード、街路灯、トイレ等の設置・管理」を実施している。消費者は、いずれの取組でも、有償でも利用を希望する割合は2割に満たないが、無償を含めると、約7割が「ポイント・スタンプ事業」、「駐車場・駐輪場の設置・管理」、「情報発信」、「アーケード、街路灯、トイレ等の設置・管理」を希望している(第2-1-56図)。
 
第2-1-56図 商店街の来街者向けの取組
〜来街者向けの取組として、商店街は約7割が「イベント・共同宣伝事業」や「アーケード、街路灯、トイレ等の設置・管理」を実施。消費者は、いずれの取組でも有償でも利用を希望する割合は2割に満たないが、無償も含めると、約7割が「ポイント・スタンプ事業」、「駐車場・駐輪場の設置・管理」、「情報発信」、「アーケード、街路灯、トイレ等の設置・管理」を希望している〜


第2-1-56図 商店街の来街者向けの取組
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 それでは、商店街はどのようにして消費者のニーズを把握しているのであろうか。
 商店街の顧客ニーズの把握方法を見ると、「イベント等を通じた顧客との交流」の割合が最も高く、次いで「各店舗間の意見交換」、「自治会等を通じた住民との交流」、「行政等からの情報収集」となっており、ほとんどの把握方法において、過去5年間で来街者数が増加した商店街の方が、過去5年間で来街者数が減少した商店街より実施割合が高く、積極的に情報収集を行っている傾向があることが分かる(第2-1-57図)。
 また、ニーズ情報の活用方法を見ると、過去5年間で来街者数が減少した商店街では、「特に活用していない」の割合が最も高いが、来街者数が増加した商店街では、「商店街での事業、サービスの改善」、「各店舗での事業、サービスの改善」、「商店街での新たな事業、サービスの実施」の順に高い割合になっており、収集した情報を活用して、新たな事業等の実施や既存事業等の改善を行っている割合が高いことが分かる(第2-1-58図)。
 
第2-1-57図 顧客ニーズの把握方法
〜過去5年間で来街者数が増加した商店街の方が、積極的に情報収集を行っている傾向がある〜


第2-1-57図 顧客ニーズの把握方法
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第2-1-58図 ニーズ情報の活用方法
〜来街者数が増加した商店街では、「商店街での事業、サービスの改善」、「各店舗での事業、サービスの改善」、「商店街での新たな事業、サービスの実施」の順に高い割合になっている〜


第2-1-58図 ニーズ情報の活用方法
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 以上、商店街の顧客ニーズの把握方法とその活用方法について見てきた。それでは、商店街は、このようなニーズ情報を基にどのような取組を行っているのであろうか。
 第2-1-59図は、魅力ある店舗を集めるための取組について示しており、「各店舗所有者による取組」が36.5%で最も高く、次いで「各店舗の魅力向上のための勉強会等の実施」が32.3%となっており、商店街全体での取組よりも各店舗の取組が主体となっていることが分かる。
 また、商店街に魅力ある店舗を集めるための課題を見ると、「情報の収集」、「協力者の確保」が約5割を占めており、情報不足が大きな課題となっていることがうかがえる(第2-1-60図)。
 
第2-1-59図 魅力ある店舗を集めるための取組
〜「各店舗所有者による取組」が36.5%と最も高い。次いで、「各店舗の魅力向上のための勉強会等の実施」が32.3%となっている〜


第2-1-59図 魅力ある店舗を集めるための取組
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第2-1-60図 魅力ある店舗を集めるための課題
〜「情報の収集」、「協力者の確保」が約5割を占めており、情報不足が大きな課題となっている〜


第2-1-60図 魅力ある店舗を集めるための課題
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 これまで見てきたように、商店街は様々な来街者向けの取組を実施しており、消費者の利用希望も相応に高い。また、来街者が増加している商店街ほど積極的に顧客ニーズの把握と活用に取り組んでいる傾向にある。
 したがって、積極的に情報収集を行って消費者ニーズを綿密に捉え、商店街及び各店舗がその情報を活用して商店街の魅力向上に取り組めば、より来街者を増やせる可能性があると考えられる。

事例2-1-18 半径300メートルを対象にした徒歩圏マーケットを推進する商店街

 熊本県荒尾市の中央青空企画は、荒尾市中央商店街の若手商店主が中心となって作られた企業組合である。
 同商店街の周辺地域では、人口流出や高齢化により、商店街が衰退したことで、日々の買い物場所の確保に悩む高齢者が増加していた。そこで、2005年5月に商店街の空き店舗を利用した農産物直売所「青研」を開店したところ、口コミで評判となり、高齢者を中心に徐々に利用客が増加した。
 青研では、農家や商店主が出荷した商品を店舗に置き、売上の15%を企業組合が徴収する形態をとっている。青研の店舗周辺住民を対象に行ったアンケート調査で青研の認知度を聞いたところ、店舗300メートル以内の住民に対する認知度が非常に高かったことから、「半径300メートル以内の徒歩圏マーケット」と名付けられ、取組を進めている。
 同組合は、「できるだけお金をかけないで、リスクを抑えること」にこだわり、身の丈の事業を行うことに徹している。全国で競争できるような事業ではなく、地域でお金が回るような事業の仕組みづくりに取り組んでいる。
「半径300メートル以内の徒歩圏マーケット」出典:経済産業省資料

●地域住民向けの取組
 地域住民向けの取組として、商店街は約7割が「お祭り、地域文化継承」や「集客イベント」を実施しており、人を集める取組に注力していることが分かる。一方、消費者は、有償であっても、4人に1人が「送迎バスや福祉タクシー等の運行」や「学校や老人施設向け給食サービス」、「行政窓口の代行サービス」を希望しており、無償も含めると、9割以上が「清掃・美化」や「防犯」を希望している。このことから、消費者は、商店街に従来の集客取組のみならず、福祉サービスや景観・治安の維持といった幅広い取組を期待していることがうかがえる(第2-1-61図)。
 
第2-1-61図 商店街の地域住民向けの取組
〜地域住民向けの取組として、商店街は約7割が「お祭り、地域文化継承」や「集客イベント」を実施。消費者は、有償であっても、4人に1人が「送迎バスや福祉タクシー等の運行」や「学校や老人施設向け給食サービス」、「行政窓口の代行サービス」を希望しており、無償も含めると、9割以上が「清掃・美化」や「防犯」を希望している〜


第2-1-61図 商店街の地域住民向けの取組
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 商店街がこうした取組を行う際の連携・協力団体としては、「自治会、町内会」が約7割と最も高く、続いて「商店街の個店」が6割強となっている。一方、課題を見ると、「協力者の確保」、「人材の確保」がそれぞれ約6割と高くなっており、商店街の人手不足の深刻さがうかがえる結果となっている(第2-1-62図、第2-1-63図)。
 
第2-1-62図 地域住民向け取組を実施する際の連携・協力団体
〜「自治会、町内会」が約7割と最も高く、続いて「商店街内の個店」が6割強となっている〜


第2-1-62図 地域住民向け取組を実施する際の連携・協力団体
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第2-1-63図 地域住民向け取組を実施する際の課題
〜「協力者の確保」、「人材の確保」がそれぞれ約6割と高い〜


第2-1-63図 地域住民向け取組を実施する際の課題
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 それでは、商店街が地域住民向け取組を実施するための人材を確保するにはどうすればよいのであろうか。第2-1-64図は、商店街の地域住民向け取組への消費者の参加経験と希望を示したものである。これを見ると、総じて参加経験と比べて参加を希望する割合が高く、消費者の潜在的な参加意欲の高さが見て取れる。項目別に見ると、「お祭り、地域文化継承」、「集客イベント」、「特産品、名物づくり」の順に参加希望の割合が高い。
 前掲第2-1-62図によると、一般市民との連携・協力は15.6%にとどまっているが、商店街が消費者の参加意欲を適切に把握してサービスを実施すれば、広く消費者の参加により、地域住民向けの取組が充実されるとともに、消費者の商店街への関心も高まるのではないだろうか43

43 事例2-1-19を参照。

 
第2-1-64図 商店街の地域住民向け取組への参加経験と希望
〜「お祭り、地域文化継承」、「集客イベント」、「特産品、名物づくり」の順に参加希望の割合が高い〜


第2-1-64図 商店街の地域住民向け取組への参加経験と希望
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 ここまで、商店街の地域住民向けの取組について見てきたが、地域住民の幅広いニーズと潜在的な取組への参加意欲を的確に捉え、自治会、町内会のみならず一般市民との連携を密にして取組をより一層充実させて、商店街が地域コミュニティの担い手として、地域住民の生活の利便を高める試みを支援することにより、地域と一体となったコミュニティづくりが促進され、商店街の活性化につながることが期待される。
 
事例2-1-19 子どもからお年寄りまでの多世代が集い地域コミュニティの中心を目指す商店街

 愛媛県四国中央市の川之江栄町商店街は、JR 川之江駅から徒歩2分の約100メートル離れた市街地に位置する商店街である。四国中央市では、大王製紙株式会社、ユニ・チャーム株式会社等の大企業が立地するなど製紙業が盛んで、製紙産業に従事する子育て世代が多いものの、転勤族が多く地元に愛着が少ないことが課題であった。
 こうした中、同商店街では、2004年に情報発信基地としての「四国中央ドットコム」を空き店舗を利用して立ち上げ、1階を地域情報や個人やグループの情報発信のほか、高齢者に向けた教室を随時実施するスペースとし、2階を子育て世代に向けた子育てスペース「にこにこルーム」とした。
 さらに、NPO 等の地域団体に委託し、子育て世代を対象として市内の託児所、病院・公園等を掲載した「子育て支援マップ」、高齢者を対象として回診できる病院等を掲載した「シニアマップ」を作成するなど、対象を絞った事業も実施している。
 現在、四国中央ドットコムは、子育て世代から高齢者までの地域コミュニティの核となっているほか、子育てスペースは隣県の徳島県・香川県からの利用もあり商店街来街者の新たな層を獲得している。
 同商店街では、売上拡大だけを目的とするのではなく、商店街が住民にとって生活の一部となることで結果的に商売繁盛することを目指している。また、地域団体のネットワーク作りを行う役割も担っている。
「四国中央ドットコム」での幅広い世代の交流
 
コラム2-1-8 地域商店街活性化法

 中小企業庁では、商店街の組合(商店街振興組合、事業協同組合等)が地域住民のニーズに応えて実施する商店街活性化の取組を、各経済産業局で認定の上、支援している。

●支援対象となる商店街活性化の取組例
 * 空き店舗を活用したチャレンジショップ、アンテナショップ
 * 地域資源を活用したイベント、ブランド開発
 * アーケード、コミュニティ施設(子育て支援施設や高齢者交流施設等)

●主な支援措置の内容
 * 「中小商業活力向上補助金」の補助率が最大2/3
 *  商店街のアーケード、広場、街路、共同店舗の整備等に対する無利子融資(高度化融資:従来の都道府県からの融資に加え、市区町村からの融資を新設)
 * 小規模商店が設備・機器を取得する際の無利子融資
 * 空き店舗の敷地等遊休土地の譲渡を促す税制措置(土地譲渡所得の1,500万円特別控除)



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