第2部 経済社会を支える中小企業 

1 中小小売業の位置付け

●地域を支える中小小売業
 第2-1-44図は、市区町村人口規模別に販売額に占める中小小売店の割合を示したものであるが、中小小売店は、小売販売額の約7割を占め、人口規模が小さい市区町村では、その割合が高く、中小小売店がその地域の消費を支えていることが分かる。
 
第2-1-44図 販売額に占める中小小売店の割合
〜中小小売店は、小売販売額の約7割を占め、人口規模が小さい市区町村では、その割合が高い〜


第2-1-44図 販売額に占める中小小売店の割合
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 中小小売店の販売額の品目別の割合を見ると、人口規模が小さい市区町村では、飲食料品や石油ガス類といった割合が高く、中小小売店が生活必需品の供給を担っている(第2-1-45図)。
 
第2-1-45図 中小小売店の品目別販売額の割合
〜人口規模が小さい市区町村では、飲食料品や石油ガス類といった割合が高く、中小小売店が生活必需品の供給を担っている〜


第2-1-45図 中小小売店の品目別販売額の割合
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 第1部第2章で見たとおり、今回の震災で津波により大きな被害を受けた地域でも、小規模な都市雇用圏が多く、中小小売店が地域住民に生活必需品を供給していたと考えられる。以下では、こうした地域を支える中小小売店の一つである商店街の現状を見ていく。

●商店街の現状
 第2-1-46図は、小売業の年間販売額、事業所数、従業者数のうち、中小小売店の一つである商店街が占める割合を示したものである。いずれの項目でも、商店街は全体の約4割を占めており、重要な担い手であることが分かる。
 
第2-1-46図 商店街の経済的地位
〜商店街は、小売業の年間販売額、事業所数、従業者数の約4割を占めている〜


第2-1-46図 商店街の経済的地位


 ここからは、商店街の現状を「全国商店街調査31」の結果を中心に見ていく。

31 中小企業庁委託により(株)三菱総合研究所が実施。2010年11月に商店街8,053か所、商店街事業者530人、消費者3,120人を対象に実施したアンケート調査。 回収率は商店街22.4%、商店街事業者25.8%。消費者は、インターネットを活用したWeb調査で、男女の年齢5階層(20歳代、30歳代、40歳代、50歳代、60 歳以上)、北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄の6地域ごとに、回答数が均等になるように計3,120人に実施した。東日本大震災前の調査 であることに留意が必要である。

 第2-1-47図は、商店街を商圏の範囲に基づき、近隣型商店街32、地域型商店街33、広域型商店街34、超広域型商店街35、その他の5つに類型した割合とその立地環境を示している。これによると、近隣型商店街が54.9%、地域型商店街が34.6%で合わせると約9割を占め、地域に密着した商店街が多い。また、立地環境を見ると、「市区町村内の拠点の1つ」が52.1%と最も高く、次いで「その他のまちなか」が26.2%となっており、約9割の商店街が拠点又はまちなかに立地していることが分かる。

32 ここでいう近隣型商店街とは、最寄品(食料品、日用雑貨等)中心で徒歩又は自転車等により買い物を行う商店街を指す。
33 ここでいう地域型商店街とは、最寄品及び買回品(ファッション関連、家具、家電等)の店舗が混在し、近隣型商店街よりもやや広い範囲から、徒歩、自転車、バス等で来街する商店街を指す。
34 ここでいう広域型商店街とは、百貨店、量販店等を含む大型店舗があり、最寄品より買回品が多い商店街を指す。
35 ここでいう超広域型商店街とは、百貨店、量販店等を含む大型店舗があり、有名専門店、高級専門店を中心に構成され、遠距離から来街する商店街を指す。
 
第2-1-47図 商店街の類型、立地環境
〜近隣型商店街が54.9%、地域型商店街が34.6%で合わせると約9割を占め、地域に密着した商店街が多く、約9割の商店街が拠点又はまちなかに立地している〜


第2-1-47図 商店街の類型、立地環境
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 次に、商店街では、どのような財やサービスを販売・提供しているのであろうか。商店街の営業店舗の有無を示した第2-1-48図によると、物販店舗では、惣菜・パン、生鮮食品、お米・お酒、衣服・ファッション用品の割合が高く、サービス店舗では、理容・美容サービス、クリーニング・修理サービスの割合が高く、買回品36よりも最寄品37を中心に販売・提供している。

36 買回品とは、ファッション関連、家具、家電等の店舗を回って比べて購入する商品をいう。
37 最寄品とは、食料品や日用雑貨等の日頃頻繁に購入する商品をいう。
 
第2-1-48図 商店街の営業店舗の有無
〜物販店舗では、惣菜・パン、生鮮食品、お米・お酒、衣服・ファッション用品の割合が高く、サービス店舗では、理容・美容サービス、クリーニング・修理サービスの割合が高く、買回品よりも最寄品を中心に販売・提供している〜


第2-1-48図 商店街の営業店舗の有無
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 続いて、商店街の歩行者数を見ていく。第2-1-49図は、1日当たりの平均歩行者数を示したものである。歩行者数を把握していない商店街も約1割存在しているが、把握している商店街の歩行者数を見ると、平日、休日とも「100人以上500人未満」が最も多く、500人未満の商店街が6割強を占めている38

38 歩行者の流れを引き付ける集客核を有する商店街は、店舗以外には、最も多くても公共交通の駅・停留所の25.7%であり、3割に満たない。付注2-1-11参照。

 
第2-1-49図 1日当たりの平均歩行者数
〜歩行者数を把握していない商店街も約1割存在しているが、把握している商店街の歩行者数を見ると、平日、休日とも「100人以上500人未満」が最も多く、500人未満の商店街が6割強を占めている〜


第2-1-49図 1日当たりの平均歩行者数
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 こうした地域消費を支える中小小売店の一つである商店街には、どのような来街者がどのくらい時間をかけて買い物に訪れているのであろうか。第2-1-50図は、商店街の来街者の主な客層を示しているが、主な客層は、主婦と高齢者の割合が約8割と突出して高い。
 
第2-1-50図 商店街の来街者の主な客層
〜主な客層は、主婦と高齢者の割合が約8割と突出して高い〜


第2-1-50図 商店街の来街者の主な客層
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 また、来街者の居住地からの所要時間は、「10〜30分圏内」が66.8%、「10分圏内」が63.2%と近隣住民の割合が高くなっている(第2-1-51図)。
 
第2-1-51図 商店街の来街者の居住地からの所要時間
〜「10〜30分圏内」が66.8%、「10分圏内」が63.2%と近隣住民の割合が高くなっている〜


第2-1-51図 商店街の来街者の居住地からの所要時間
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 続いて、こうした来街者は、どのような交通機関を用いて商店街を訪れるのであろうか。第2-1-52図によると、居住地から商店街までの主要交通手段は、徒歩が約9割、自転車が約8割と高い割合を占めている。
 
第2-1-52図 居住地から商店街までの主要交通手段
〜徒歩が約9割、自転車が約8割と高い割合を占めている〜


第2-1-52図 居住地から商店街までの主要交通手段
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 これまで商店街への来街者の多くは、主婦や高齢者で居住地の30分圏内から、徒歩や自転車等により買い物に訪れていることを示してきた。
 一方で、商店街事業者は、自らが販売・提供する財、サービスに対し、来街者からどのような評価を受けているのであろうか。
 第2-1-53図によると、「地域住民・顧客から「ここでしか買えない製品、サービスを提供してくれている」と言われたことがある」と回答した割合が64.0%と最も高い。また、「地域住民・顧客から「生活になくてはならないお店・会社である」と言われたことがある」、「新聞、雑誌、テレビ等で取り上げられたことがある」、「地域住民・顧客から「あなたのお店・会社は、この地域の誇りである」と言われたことがある」との回答も約3割あり、商店街事業者が地域住民・顧客にとって不可欠な存在であると認識されていることが分かる。
 
第2-1-53図 商店街事業者が販売・提供する商品、サービス
〜「地域住民・顧客から「ここでしか買えない製品、サービスを提供してくれている」と言われたことがある」が64.0%と最も高い〜


第2-1-53図 商店街事業者が販売・提供する商品、サービス
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 商店街の経済及び社会への貢献について見ると、商店街、消費者ともに約3割が「生活に不可欠な製品、サービスの提供」で貢献していると認識している。また、商店街では、「地域のイベントや活動への参画」を挙げる割合が高いのに対し、消費者は、「特産品等、地域を代表する製品やサービスの販売」を挙げる割合が高い(第2-1-54図)。
 
第2-1-54図 商店街の経済及び社会への貢献
〜商店街、消費者ともに約3割が「生活に不可欠な製品、サービスの提供」で貢献していると認識している。また、商店街は「地域のイベントや活動への参画」を挙げる割合が高いのに対し、消費者は、「特産物等、地域を代表する製品やサービスの販売」を挙げる割合が高い〜


第2-1-54図 商店街の経済及び社会への貢献
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 次に、消費者に商店街がなくなった場合の影響を聞いた結果を見ると、全ての年代で「活力やにぎわいが失われる」、「買い物が不便な人が出てくる」の順に割合が高くなっており、高齢者ほど、こうした影響を懸念している(第2-1-55図)。
 
第2-1-55図 商店街がなくなった場合の影響
〜全ての年代で「活力やにぎわいが失われる」、「買い物が不便な人が出てくる」の順に割合が高くなっており、高齢者ほど、こうした影響を懸念している〜


第2-1-55図 商店街がなくなった場合の影響
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 これまで見てきたように、中小小売店は、生活必需品を住民に供給する役割を果たすとともに、地域の活力やにぎわいを生み出しており、地域の消費や社会を支えるためになくてはならない存在である。また、今回の震災でも、津波により壊滅的な被害を受けた地域の商店街が早期に営業を再開し、地域住民の生活を支えるなど、その重要性が再認識された。

事例2-1-15 それぞれの店が営業を再開し始め、活気が戻りつつある商店街

 岩手県宮古市の宮古市末広町商店街は、津波による30〜200センチメートルの浸水で道路や店内が泥まみれになり、一時はシャッター通りとなったが、震災1か月後までには半数近く、2か月後には8割の店舗が営業を再開した。
 ある衣料品店が、停電中で真っ暗な店内から運び出した衣類を水洗いして格安で店頭に並べたところ、着の身着のままで避難した被災者の行列ができた。それに刺激を受けた近隣の商店が、電気もつかない電話もつながらない状態にもかかわらず、泥出しの傍ら店頭で様々な商品のワゴンセールを始め、青空市の様相を呈し街に活力がわいてきた。
 商店街振興組合は、数回にわたり炊き出しをする一方で、3月末にはアンケート調査を実施して加盟店の被害把握と要望を取りまとめ、支援策合同説明会の開催や罹災証明の一括申請及び営業再開チラシの発行等を行った。また3か月後の6月11日からは、復興セール・イベントを行い、にぎわいを復活させて町を活気づけようとしている。

事例2-1-16 地域になくてはならない商店街を目指し、地域密着型の取組や情報発信を行う商店街

 鹿児島県鹿児島市の宇宿商店街は、JR 宇宿駅前に広がる商店街である。
 同商店街は、来街者の特徴やニーズをアンケートや聞き取りにより的確に把握し、地域に密着した取組を行っている。例えば、子育て相談や高齢者が集えるコミュニティ施設の設置や、携帯電話を活用した見守り事業や商店街情報の発信、各種イベントを通じた住民登録活動・来街者増加のための活動等を実施している。
 また、同商店街では、商店街の地域貢献をPR するため「商店街消灯実験」を企画・実施した。商店街の街路灯の明かりが街を活気付け、市民が楽しく買い物ができる環境づくりや安心安全なまちづくりに貢献していることが改めて認識され、地域住民から「街の明かりを保っていたのは商店街であり、商店街の明かりがないと、街の雰囲気が寂しくなる。」、「今までは、商店街の存在を当たり前だと思っていたが、改めてその大切さを感じた。」といった声が寄せられた。
 同商店街は、売れる店を並べるだけでなく、地域との密着度を高め、地域住民に愛してもらうことを目指している。また、地域住民の生活必需品を供給するほか、地域の伝統を育むことを役割として掲げており、地域住民の歴史と思い出が詰まっている場所として商店街を発展させていく考えである。
宇宿商店街の夜の街並み(消灯実験時には写真の街路灯も消えた)

事例2-1-17 買い物難民の発生を防止し、高齢者の消費生活を支える組合

 大阪府堺市の泉北桃山台市連マーケット事業協同組合は、泉北高速鉄道栂・美木多駅から徒歩10分の泉北ニュータウン内に位置する組合である。古くから市場として小規模飲食小売店が集積していたが、1999年に組合出資型のスーパーマーケットの形態に変更している。同マーケットでは、仕入は各店舗が行い、収益は組合の収入となり、10日に1回、組合から各店舗へ売上を返済する仕組みとなっている。
 2005年から2010年の5年間の同組合の商圏人口は、17,828名から17,467名へと約2%減少したものの、65歳以上人口は、泉北ニュータウンの入居者の加齢もあり3,304人から4,178人へと約26%増加した。利用客や買い物支援バス利用者を対象に実施した調査も、自宅近くで買い物できずに困っている多くの高齢者の存在が判明し、来店が困難な高齢者等向けの宅配サービスを開始することとした。
 宅配サービスは、2名の店舗職員が他の業務の傍ら電話、FAX で注文を受けて配達を行っている。最初は、自転車により小規模で低費用な配達から始めたが、規模が大きくなったことから、現在では、原動機付自転車に変えている。
 さらに、近年では、顧客管理ができるPOSシステムを導入し、「この顧客は、マグロの切り身なら「刺身」ではなく「ぶつ切り」を好む。」など、過去の売上履歴から顧客の好みを反映した商品を選ぶことで、サービス品質の向上に努めて信頼を獲得してきており、利用客数は徐々に増えつつある。
売場の様子 宅配バイク
 
コラム2-1-7 中小小売店による小売販売額が高い/低い地域

 中小小売業の販売額の割合が高い地域は、どのような特徴を有しているのであろうか。コラム2-1-7図〔1〕は、経済産業省「平成19年商業統計表」の個票を用いることにより、人口10万人以下の都市雇用圏39の中で、小売販売額のうち就業者数が50人以下の事業所の販売額割合が高い都市雇用圏と低い都市雇用圏を示したものである。

39 付注1-2-1参照。

コラム2-1-7図〔1〕 従業者数50人以下の事業所の販売額の割合が高い/低い都市雇用圏

コラム2-1-7図〔1〕 従業者数50人以下の事業所の販売額の割合が高い/低い都市雇用圏

 以下では、このうち従業者数50人以下の事業所の販売割合が最も高い尾鷲都市雇用圏40と最も低い五條都市雇用圏41について、都市雇用圏内の人口や小売販売額の分布を見ていく。コラム2-1-7図〔2〕によると、尾鷲都市雇用圏では、内陸は山林が広がっているため、平地が広がる海岸に沿って人口が分布し、国道42号線とJR 紀勢本線が併走している。JR 紀勢本線の駅も9駅と多く、小売販売額も、尾鷲駅と紀伊長島駅を両端としてこの線上に分散している。一方、五條都市雇用圏では、国道24号線とJR 和歌山線が北西部を横切っている。しかし、尾鷲に比べてその距離は短く、JR 和歌山線の駅は五條駅と大和二見駅と北宇智駅の3駅のみである。南部は国道168号線を軸に自動車交通が中心であり、人口と小売販売額は北西部の鉄道駅の周辺に集中している。

40 尾鷲都市雇用圏は尾鷲市と紀北町で構成される。
41 五條都市雇用圏は五條市で構成される。

コラム2-1-7図〔2〕 尾鷲都市雇用圏、五条都市雇用圏の人口及び小売販売額

コラム2-1-7図〔2〕 尾鷲都市雇用圏、五条都市雇用圏の人口及び小売販売額

 以上を踏まえると、尾鷲都市雇用圏では、人口が分散していることもあり、大規模店舗が出店しにくく、結果的に従業者数50人以下の事業所の販売割合が高い一方、五條都市雇用圏では、一部の地域に人口が集中していることもあり、大規模店舗が出店しやすく、結果的に従業者数50人以下の事業所の販売割合が低いと考えられる。また、1キロメッシュデータを用いて、人口と小売販売額の地区ごとの相関を見ると、その相関係数は、尾鷲都市雇用圏では0.77、五條都市雇用圏では0.50と尾鷲都市雇用圏の方が、五條都市雇用圏に比べて、人口が多い地区ほど小売販売額が高く、人口が少ない地区ほど小売販売額が低い傾向が強い。これは、尾鷲都市雇用圏の居住者の方が五條都市雇用圏の居住者よりも居住地の近隣で買い物を行うことができている割合が高いと考えることができる。
 国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(2006年12月)」によると、2030年の人口は、尾鷲都市雇用圏で2007年の4.3万人から2.6万人、五條都市雇用圏で2007年の3.7万人から2.5万人に大幅に減少し、また、65歳以上人口の割合は、尾鷲都市雇用圏で2005年の32%から2030年には47%へ、五條都市雇用圏でも26%から42%へと上昇することが予想されている。この結果、人口減少による地域需要の収縮と、高齢者による近隣での買い物行動が予想されるため、中小小売業は、地域住民の需要を一層確実に取り込んでいくことが今後の発展の鍵となる42。このような状況は、両都市雇用圏に限ったものではなく、他の地域においても、人口動態、インフラ整備等の地域状況も踏まえて、今後の中小小売業の在り方を考えていくことが重要である。

42 付注2-1-12参照。



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