第2部 経済社会を支える中小企業 

2 中小企業の製品等

 中小企業は、世界に誇れるトップシェアを占める製品や我が国の企業活動、私たちの日常生活に欠かせないものを製造し供給している。
 輸送用機械器具製造業の自動車生産を例にとっても、エンジン部品、駆動・伝達及び操縦部品、懸架・制動部品等の2〜3万点にも及ぶ部品から構成されているため、我が国の中小企業が様々な部品の製造に関与してきており、自動車生産において果たす役割は大きい26

26 付注2-1-10参照。

 以下では、中小企業及び大企業が認識している製品、サービスに関する自社の特徴及び自社が主に事業活動を行う市場について見ていく。第2-1-36図によると、中小企業は、自社の財、サービスについては、「多品種生産提供」よりも「少品種生産提供」、「大量生産提供」よりも「少量生産提供」に近いと回答する割合が高い。続いて、自社の方針については、「価格重視」よりも「品質重視」、「営業重視」よりも「技術重視」に近いと回答する割合が高い。また、市場の財、サービスについては、「一般品」よりも「特殊品」、「消費者向け」よりも「企業向け」と回答する割合が高い。
 
第2-1-36 図 自社の特徴及び自社が主に事業活動を行う市場(製品、サービス)
〜中小企業は、自社の財、サービスについては、「多品種生産提供」よりも「少品種生産提供」、「大量生産提供」よりも「少量生産提供」、自社の方針については、「価格重視」よりも「品質重視」、「営業重視」よりも「技術重視」、市場の財、サービスについては、「一般品」よりも「特殊品」、「消費者向け」よりも「企業向け」と回答する割合が高い〜


第2-1-36 図自社の特徴及び自社が主に事業活動を行う市場(製品、サービス)
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 第2-1-37図は、中小企業自身の製品、サービス、技術について示したものであるが、系列組織への所属の有無にかかわらず、中小製造業の5割超及び中小非製造業の3割超が「取引先企業から頻繁に再受注を受けている」、「取引先企業から「あなたの会社にしかできない」と言われたことがある」と回答しており、取引先企業から、サービス、技術が高く評価されていることが見て取れる。第2-1-14図でも、中小企業の主観的な認識として、自社の経済、社会への貢献として、「産業に不可欠な製品、サービスの提供」の割合が最も多いことを示したが、第2-1-37図のように、客観的な事実としても、系列組織の有無や業種にかかわらず中小企業は取引先になくてはならない、製品、サービス、技術を提供する存在であるということができる。中小企業は、多くの付加価値を生み出し、産業のサプライチェーンを担うなど、我が国の産業の基盤を支えており、今回の震災でも、その重要性が改めて認識された。
 
第2-1-37図 自社の製品、サービス、技術(中小企業)
〜系列組織への所属の有無にかかわらず、中小製造業の5割超及び中小非製造業の3割超が「取引先企業から頻繁に再受注を受けている」、「取引先企業から「あなたの会社にしかできない」と言われたことがある」と回答している〜


第2-1-37図 自社の製品、サービス、技術(中小企業)
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コラム2-1-6 小惑星探査機「はやぶさ」の快挙を支えた中小企業

 2010年6月に小惑星探査機「はやぶさ」が、約7年間の宇宙航行を経て、小惑星「イトカワ」の物質を地球に持ち帰るという世界初の快挙を成し遂げた。「イトカワ」は太陽系が誕生した当時の状態を保っているとされており、様々な元素の同位体比や結晶構造などの解析を通じて、太陽系の形成過程等の解明に迫る成果が得られる可能性があり、今後の研究が期待されている。
 2010年12月には、海江田宇宙開発担当大臣(当時)、髙木文部科学大臣から「はやぶさ」プロジェクトに関わった(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)のはやぶさプロジェクトチームと、それを支えた民間企業や大学からなるはやぶさプロジェクトサポートチームに対して、感謝状が送付された27

27 詳細は宇宙開発戦略本部(首相官邸)のホームページを参照。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/daijin/101202_hayabusa.html

 はやぶさプロジェクトサポートチームを構成する118機関のうち、約4分の1を中小企業が占めている。具体的には、中小企業は、探査機の多くの可動部分の部品に用いる潤滑剤の製造や、サンプル採取装置の試作、弾丸射出装置(プロジェクタ) 用金属加工部品の製造、探査機の中・高利得アンテナの開発・製造等を行っており、我が国の宇宙開発に多大な貢献をした。
 このほか、微粒子を持ち帰ったカプセルの展示会に、全国から50万人を超える来場者が訪れたほか、複数の映画制作会社が「はやぶさ」プロジェクトの映画化に着手すると発表するなど、「はやぶさ」は、現在も社会現象となっている。
 このように、今後も中小企業の持つ技術が、我が国の成長の基盤になることが期待される。
小惑星探査機「はやぶさ」出典:池上章裕

事例2-1-9 アルカリ乾電池の絶縁紙の世界シェア30%、国内シェア60%を誇る企業

 高知県土佐市の廣瀬製紙株式会社(従業員35名、資本金2,000万円)は、主に合成繊維と水を使った湿式不織布28を製造販売する企業である。

28 湿式不織布は、乾電池内部の正極材と負極材が過度に接触しショートすることを防ぐセパレーターとしても使用されている。乾式不織布に比べると高密が高く細孔径が均一な特徴を持つ。

 同社の製品は、他社製品と比較して約1〜2割高価であるが、ショートや液漏れを防ぐといった安全性の面で優位性を持ち、セパレーターの世界シェア30%、国内シェア60%を維持している。同社のセパレーターの売上のうち海外への納品が約8割を占めており、アジア、アメリカ、ヨーロッパへ輸出も行っている。
 同社は、セパレーター以外にも、食品用途の包材、濾過フィルター、名刺、トートバッグの布、文化財の補修用の紙といった様々な紙製品を製造しており、1平方メートル当たり2グラムという世界一薄い紙から様々な重さの製品を作る技術を持っている。
 同社は、創業以来常に世界トップクラスの技術を目指しており、現在でも、二次電池やリチウムイオン電池に合わせたセパレーターやナノファイバー技術を用いたより均一性の高い不織布の研究開発も行っており、技術力の向上に余念がない。
乾電池セパレーター

事例2-1-10 スリム省エネ蛍光灯で、コンビニエンスストアの冷蔵・冷凍ショーケース照明の国内シェア7割を有する中小企業

 神奈川県横浜市のプリンス電機株式会社(従業員83名、資本金4,700万円)は、省エネ蛍光ランプを製造する企業である。
 同社は、1950年の創業で、白熱電球が主流の時代から蛍光ランプの製造をしてきた。やがて蛍光灯が一般家庭にも普及していったが、大手家電メーカーが市場を占有し、中小企業の参入の余地は僅かであった。そこで大手メーカーが扱わない特殊タイプの蛍光灯製造を中核に据えることにし、一般蛍光ランプの管径(太さ)は32.5ミリ・メートルだが、それより細い20.0ミリ・メートルのスリムランプの製造・販売を開始した。2004年には更に細い直径15.5ミリ・メートルの新スリム形蛍光灯を開発した。この新スリム形蛍光灯は、一般蛍光灯に比べ、ガラス使用量を58%削減し、電力使用量も53%省エネとなり、省エネ率、光の質、初期費用等、総合的にLEDと比較しても優位性が十分ある。
 これらの省エネランプは、通路や看板照明、コンビニの冷蔵・冷凍ケース等のように、狭い空間に設置し、常時点灯させるニーズに応えるもので、同社の主力商品として、コンビニケース照明では、国内の7割程度のシェアを占めている。
 また、最近では顧客の幅広いニーズに適応するため、商業施設の棚下照明用LED システムや、冷蔵・冷凍ケース用LED の開発にも力を入れている。
1円玉より小さい管径

事例2-1-11 ポケットティッシュを折りたたむ機械を開発し、ポケットティッシュはもらうものという文化を創り出した企業

 高知県高知市の明星産商株式会社(従業員385人、資本金9,800万円)は、各種ティッシュやマスク等を製造する企業である。
 同社は、和紙を製造する会社に勤めていた創業者により1968年に設立され、アメリカから輸入されたボックスティッシュをヒントに、誰もが手元に持ち運べるポケットサイズに折りたたむ機械を開発製造して、ポケットティッシュはもらうものであるという文化を創った。以来、機械を作れる加工メーカーとして、お客様の要望や困りごとへ対応することで発展してきた。
 同社は、ウェットタイプティッシュの開発や化粧水を含んだティッシュ開発等、医療・医薬品分野に近い製品にも挑戦して市場拡大に取り組んでいる。その技術力や生産能力は、大手企業からも高く評価されており、大手メーカーが販売する高性能立体型マスクのOEM 生産を行っている。ポケットティッシュの需要が大きく落ち込む中、価格競争を避け高品質の追求により、今後とも、パイオニア精神を持って、消費者のニーズに応じた新市場の開拓に挑み続けていくつもりである。
同社開発の折りたたみ機



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