第2部 経済社会を支える中小企業 

2 これまでの変化

●企業数、従業者数の変化
   第1項では、我が国の中小企業の現在の状況を示してきたが、以下では、これまで中小企業がどのような変化を遂げてきたのかについて分析を行っていく。第2-1-17図は、規模別の事業所の数を示したものであるが、中小事業所の数は1991年まで増加した後、減少に転じ、1991年から2006年までに13%減少した。
 
第2-1-17図 規模別の事業所の数
〜中小事業所の数は、1991年まで増加し続けた後、減少に転じ、1991年から2006年までに13%減少した〜


第2-1-17図 規模別の事業所の数
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 また、中小事業所の従業者数は1996年まで増加し続けた後、減少に転じ、1996年から2006年までに9%減少した(第2-1-18図)。
 
第2-1-18図 規模別の事業所の従業者数
〜中小事業所の従業者数は、1996年まで増加し続けた後、減少に転じ、1996年から2006年までに9%減少した〜


第2-1-18図 規模別の事業所の従業者数
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 それでは、中小企業の数や従業者数の変化には、どの業種が寄与しているのであろうか。第2-1-19図は、事業所数の増減を業種別に要因分解したものであるが、1960年代から1980年代には、小売業、サービス業、製造業、建設業を中心に事業所数が増加したが、2000年代以降は、小売業、製造業における事業所数の減少が目立つ。
 
第2-1-19図 中小事業所の数(業種別の寄与度)
〜2000年代以降は、小売業、製造業における事業所数の減少が目立つ〜


第2-1-19図 中小事業所の数(業種別の寄与度)
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 第2-1-20図は、従業者数の増減を業種別に要因分解したものであるが、従業者数も、1960年代から1980年代には、小売業、サービス業、製造業、建設業を中心に増加した。2000年代以降は、小売業、製造業における従業者数の減少が目立つ。
 
第2-1-20図 中小事業所の従業者数(業種別の寄与度)
〜2000年代以降は、小売業、製造業における従業者数の減少が目立つ〜


第2-1-20図 中小事業所の従業者数(業種別の寄与度)
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●製造業の付加価値額の変化
 第2-1-21図は、規模別の製造業の付加価値額を示したものであるが、1980年代には、製造業の付加価値額が増加し、中小製造業も一定の寄与度を示したが、1990年代後半以降、中小製造業の付加価値額は減少傾向である。
 
第2-1-21図 規模別の製造業の付加価値額
〜1980年代には、製造業の付加価値額が増加し、中小製造業も一定の寄与度を示した〜


第2-1-21図 規模別の製造業の付加価値額
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 次に、中小製造事業所の付加価値額の増加率を業種別に要因分解したものを見ていく(第2-1-22図)。1980年代には、製造業の付加価値額は、いずれの業種でも一貫して増加し、中小製造業も一定の寄与度を示した。1990年代以降、中小製造事業所の付加価値額の増加率は、業種を問わず減少に転じる年もあり、それまでの増加傾向は見られなくなった。
 
第2-1-22図 中小製造事業所の付加価値額の増加率(業種別の寄与度)
〜1990年代以降、中小製造事業所の付加価値額の増加率は、業種を問わず減少に転じる年もあり、それまでの増加傾向は見られなくなった〜


第2-1-22図 中小製造事業所の付加価値額の増加率(業種別の寄与度)
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●各種指標
 次に、大企業と中小企業の労働生産性、資本装備率、売上高経常利益率、自己資本比率を見ていく。まず、第2-1-23図は、労働生産性の推移を示したものであるが、中小企業の労働生産性は、1990年代前半までは上昇傾向にあったが、1990年代後半からは横ばいで推移している。
 
第2-1-23図 労働生産性(製造業)
〜中小企業の労働生産性は、1990年代前半までは上昇傾向にあったが、1990年代後半からは横ばいで推移している〜


第2-1-23図 労働生産性(製造業)
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 次に、資本装備率の推移を見ても、中小企業の資本装備率は、1990年代前半までは上昇傾向にあったが、1990年代後半からは横ばいで推移している(第2-1-24図)。
 
第2-1-24図 資本装備率(製造業)
〜中小企業の資本装備率は、1990年代前半までは上昇傾向にあったが、1990年代後半からは横ばいで推移している〜


第2-1-24図 資本装備率(製造業)
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 第2-1-25図は、売上高経常利益率の推移を示したものである。中小企業の売上高経常利益率は、長期的に見れば横ばいで推移しているが、おおむね景気変動に合わせて増減している。
 
第2-1-25図 売上高経常利益率
〜中小企業の売上高経常利益率は、長期的に見れば横ばいで推移しているが、おおむね景気変動に合わせて増減している〜


第2-1-25図 売上高経常利益率
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 また、自己資本比率の推移を見ても、中小企業の自己資本比率は、景気後退の初期に低下したこともあったが、2000年代以降は上昇傾向にある(第2-1-26図)。
 
第2-1-26図 自己資本比率
〜中小企業の自己資本比率は、景気後退の初期に低下したこともあったが、2000年代以降は上昇傾向にある〜


第2-1-26図 自己資本比率
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 以上、労働生産性及び資本装備率、売上高経常利益率、自己資本比率で見る限り、中小企業と大企業の平均の格差は、完全に是正されたとは言い難いが3、労働生産性や資本装備率、自己資本比率は長期的には上昇しており、また、第2-1-7図〜第2-1-10図で示したとおり、これらの指標の分布を見ても、中小企業の中には大企業の平均を上回る中小企業も存在することを示してきた。

3 第2-2-7図〜第2-2-10図では、各年の大企業、中小企業の定義を満たす企業の指標を用いて大企業と中小企業の指標を計算している。このため、例えば、現在中小 企業である企業が、将来大企業になった場合は、その間の変化が中小企業ではなく大企業の指標に反映されてしまうことに注意が必要である。1985年、1995年、 2005年の労働生産性等の分布については、付注2-1-2を参照。

 戦後、我が国経済は高い成長を実現したが、その背景には、本節で見てきたように、中小企業の発展があり、その中小企業が今日の我が国経済、私たちのくらしを形成している4。続く第2節、第3節では、より詳細に、産業を支える中小企業、生活を支える中小企業の実態を示していく。

4 政府では、1999年に中小企業基本法を改正し、大企業と中小企業の二重構造を是正し規模間格差を縮小することから、日本経済の基盤として意欲ある中小企業を支援することに中小企業政策の軸足を移している。コラム2-1-1を参照。

事例2-1-1 時代の変化に応じた業態転換を行い、成長し続ける創業300年の老舗企業

 滋賀県長浜市の大塚産業マテリアル株式会社(従業員117人、資本金2,000万円)は、住宅内装材や自動車部品を製造する企業である。
 同社は、1700年初頭に蚊帳を製造する企業として設立された。大正時代から第2次世界大戦末期までは、様々な物資が不足する中で、厳しい環境下でも研究開発を怠らず、絹で羊毛代用品や真綿の量産技術の開発製造を行うなど、その時代に適応した事業展開を実現してきた。
 戦後もしばらくは蚊帳製造を続けたが、1950年代半ばには、国内の住宅事業が変化し、洋風建築が普及することで蚊帳需要が減少することが予想された。こうした中、同社は、自社の技術を活かせる新たな事業展開を模索し、蚊帳生地を貼った住宅内装用壁紙を開発し、ウォールペーパーとして欧米諸国に広く輸出した。
 1960年代半ばには、自動車の普及を見越し、ポリエチレン・フィルム・ヤーン織物を開発し、車のシートのバネ受け材や、さらにその後日本初となるウレタン一体発泡ヘッドレスト5を大手メーカーと共同開発してきた。

5 袋状にした表皮内にウレタン発泡材を注入・発泡させることで、表皮と一体化した自動車用シートの頭部保護と支えるための部分。

 同社は、時代の変化の中で、主力製品の販売力が落ち込んでいく中でも、研究開発や新製品開発を怠らず、常に顧客や消費者のニーズを捉えて、創業時の蚊帳製造から住宅内装用壁紙や自動車内装材等の開発・生産へと時代の変化に応じて業態転換を行ってきており、創業300年の老舗企業として今日も新たな歴史を刻んでいる。
同社の縫製レスによる自動車用シート素材

事例2-1-2 常に他社に先駆けて新しい試みに取り組む清酒ラベル印刷業界トップの創業約100年の老舗企業

 石川県金沢市の高桑美術印刷株式会社(従業員290名、資本金1億6,800万円)は、清酒のラベル印刷を行う企業である。
 同社は、1912年に名刺や伝票を印刷する会社として設立された。戦後、世間ではまだ珍しかったカラー印刷に取り組み始め、地元の清酒メーカーのラベルをカラー印刷で手掛けた。多色刷りで繊細かつ特殊な技術を要する清酒ラベルに可能性を確信し、本格的に全国の清酒メーカーへ営業を行い、受注を獲得していった。
 また、1950年代半ばには、日本で初めて清酒ラベルに写真製版6を導入し、同業他社との差別化を図った。日本酒の生産・消費量は1970年代前半にピークを迎え、同70年代後半には地方の銘酒が注目を浴びるようになった。こうした中で、個性ある地方の銘酒をPRするために、単なるラベル印刷だけでなく、デザイン性と企画性を高め、瓶の包装紙や外箱、チラシ、パンフレット等を一括して企画・受注・印刷することで販売促進にもつながる事業を始めた。その後、日本酒の生産・消費量が減少する中で、日本酒で培ってきたノウハウを他分野にも応用して、総合的なPR を担う事業として、1997年には、クリエイティブ事業を立ち上げ、WEB や映像コンテンツ等の印刷以外の分野にも進出し、総合的な商品のPR、パッケージング会社へと展開した。

6 写真技術を応用して印刷用の版を作成する方法。

 こうした取組を重ねて、同社は、清酒瓶の製造から販売までを総合的に企画提案する企業に成長し、清酒ラベル印刷の国内シェアも約3割とトップになり、最近では、国産ワインや焼酎等のラベル印刷も手掛けている。
同社がデザインを含めて企画した酒ラベル、包装紙等パッケージ商品

 
コラム2-1-1 中小企業政策の変遷

(1)戦前
 明治政府がヨーロッパ近代産業を移植する殖産興業政策を進めている時期、一方で在来工業(綿業、絹業、窯業、木材加工業等)の窮乏化と分解が進行しており、これに対応するため、1884年に主要産業に対する技術改善の指導(技師の派遣等)と同業組合の設立による製品検査が実施された。その後の資本主義の発展に伴い、中小企業の機械化が進行したが、低賃金を基盤とする過当競争、寡占大企業による搾取、近代的金融システムからの排除等で、経営難に陥った。これに対して、政府は、輸出産業・輸入代替産業の育成、社会秩序の維持の観点から、中小企業政策を講じた。具体的には、工業試験所による技術指導、中小企業の組織化による生産力向上や粗製濫造・投売りの防止、商工組合中央金庫の設立(1936年)、一部府県による信用保証制度の創設(東京都は1937年)等を実施した。その後、戦時経済に入り、中小企業は保護・育成の対象から除外された。

(2)復興期(1945年〜)
 終戦直後の混乱の中で、多くの中小企業が誕生したが、生産資材・資金・技術・経営管理のノウハウの不足、盲目的な投資・生産による過当競争、悪性インフレ等により、大きな困難に直面した。一方、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による財閥の解体、経済力の再集中の規制のため、1947年に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)が制定され、経済の民営化が進められるとともに、経済力集中防止の対抗力の育成等の観点から、健全な中小企業の育成が着目された。1948年には、中小企業庁が設置され、戦後の中小企業政策が本格化した。この時期は、金融、組織化、診断・指導といった「中小企業政策の基本的ツール」が整備された。具体的には、金融面で、戦前に設立された商工組合中央金庫に加え、1949年に国民金融公庫、1953年に中小企業金融公庫が設立されるとともに、信用補完のため、1950年に中小企業信用保険法、1953年に信用保証協会法が制定され、各都道府県の信用保証協会の体制が整備された。また、商工会議所法や中小企業等協同組合法が制定され、組織化が進むとともに、中小企業診断制度の創設や中小企業相談所の設置も行われた。さらに、財務会計のノウハウを向上させた青色申告制度も始まった。

(3)高度成長期〜安定成長期(1955年〜)
 戦後10年を経て、経済活動の水準は、戦前の水準を回復した。一方、冷戦により、経済民営化から経済復興に大きく舵が切られ、競争政策は後退し、1956年に制定された機械工業振興臨時措置法等の業種別の産業振興政策が推進された。この結果、大企業と中小企業の発展速度に差が生じ、生産性・賃金・技術・資金調達面等の諸格差が顕在化するとともに、中小企業は大企業を頂点とする系列に組み込まれ、下請構造が定着化したことから、大企業と中小企業の間の二重構造の問題が顕在化するようになった。こうした中、1957年の中小企業団体の組織に関する法律(団体法)、1960年の商工会等の組織に関する法律(商工会法)の制定により、組織化や診断・指導体制が強化された。
 他方、貿易と外国投資の両面での対外開放が進められる中、「産業構造を高度化し、産業の国際競争力を強化して、国民経済の均衡ある発展が必要」との認識の下、1963年に格差是正を目標とする中小企業基本法が制定された。二重構造解消の焦点は、大企業との間で差が拡大した生産性の向上にあるため、政策の力点は、1963年に制定された中小企業近代化促進法により、近代化・高度化へ移行するとともに、1956年に制定された下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)による下請構造の定着化に伴う取引条件の不利の補正、1966年に制定された官公需確保についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)による政府調達における中小企業の契約の促進等からなる不利の是正策が行われた。1967年には、近代化・高度化のための資金供給と人材育成等を行う中小企業振興事業団が設立された。また、1973年には、小規模企業のための小口金融制度(マル経融資制度)が創設された。この他、1963年には、中小企業の自己資本の安定を図るため、中小企業投資育成株式会社が設立され、倒産が急増した1965年には小規模企業共済法が制定され、小規模企業が廃業等に備えて資金を積み立てる制度を整備した。
 安定成長期には、知識集約化の方向性が強調され、技術、人材、情報等のソフトな経営資源の充実を図ることが必要とされた。一方で、中小企業者の努力目標となる明確なものがなく、業種別組合において成果を挙げることが難しかったこともあり、人材面では、1980年に中小企業大学校が設置され、本格的に研修を行う体制が整備された。この時期には、1973年の第1次石油危機後の環境変化の中、中小企業の事業転換の重要性が認識され、1976年には中小企業事業転換対策臨時措置法(中小企業事業転換法)が制定された。

(4)転換期(1985年〜)
 1985年のプラザ合意後の急激な円高とこれに伴う不況時には、特定の業種やその業種が集積した特定の地域が打撃を受けたことから、中小企業の事業転換が緊急の課題となり、1986年に中小企業事業転換法を改正し、中小企業の事業転換支援が行われた。1991年のバブル経済の崩壊により、現在まで続く戦後最大の構造転換期に突入した。開業率の低下や廃業率の上昇、完全失業率の上昇が生じたため、創業・新事業創出を支援することとしたが、これは業種を定めず、個々の中小企業や個人の創業と研究開発を支援する新たな政策手段の一つと位置づけられた。また、消費者ニーズの多様化、IT 革命、グローバリゼーションの進展等を背景として、規模の格差を問題とする意義の低下、多様性を有した企業の増大、少量多品種への対応等、変化の速い経済環境となり、中小企業が有する機動性・柔軟性が大きな強みと認識された。こうした状況の中、我が国経済の基盤を形成する中小企業に対して、その自助努力を尊重しつつ、きめ細かな支援を行うため、1999年に中小企業基本法が改正され、中小企業政策の抜本的な見直しが行われた。
 2000年には、創業支援や地域における中小企業支援体制の整備等を目的とする新事業創出促進法が制定され、同業種の組合を中心とした支援から、伸びゆく個社を中心とした支援が施策の中心となるとともに、(独)中小企業基盤整備機構のファンド事業による支援も盛んとなり、多様な中小企業の事業活動を支援する手法へと軸足が移っていくこととなる。また、2005年には、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(中小企業新事業活動促進法)が制定され、従来の中小企業の個社の取組支援に加えて、異業種での連携支援(新連携支援)も実施することになった。その後、2006年には、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律(中小ものづくり高度化法)が制定され、我が国製造業の国際競争力を支えるものづくり中小企業の基盤技術の高度化への支援が行われている。さらに、中小企業の経営支援では、従前からの指導に代わって、地域の支援機関を有機的に連携させ、個々の中小企業の抱える多様な経営課題に対処できるような経営支援体制の拡充が図られた。また、中小企業のセーフティネット資金繰り対策として、1998年から2001年にかけて中小企業金融安定化特別保証制度、2008年から2011年にかけて景気対応緊急保証制度が実施された。

コラム2-1-1図 中小企業政策の変遷

 
コラム2-1-2 欧米の中小企業政策

 1.アメリカ
(1)中小企業の定義
 中小企業法(Small Business Act)により、「食物・繊維・家畜の飼育・養殖の業務及び他のあらゆる農業と農業関連産業に従事する企業を含み、他企業から独立して所有・運営され、当該事業分野で独占的な地位を占めていない事業体」とされている。また、中小企業庁により、連邦行政規則に則り、定量的な定義として、過去12か月の被雇用者数又は過去3年間の年平均収入額に基づいて業種ごとに定量的な基準が定められ、加えて「主としてアメリカでビジネスを展開している、又はアメリカの製品・原材料・労働力を使用してアメリカに重要な貢献をしている」等の要件を満たすことが求められている。なお、中小企業統計上では、業種を問わず被用者数500人未満の企業とされており、中小企業の数は、日本の約7倍の2,737万社(2008年)が存在する。

(2)中小企業政策担当部局 
 独立機関として設置された中小企業庁(Small Business Administration)が政策の立案・遂行、広報を担当しているほか、米国輸出入銀行、国立標準技術研究所、国防総省、マイノリティビジネス開発局等が各施策を実施している。中小企業庁助成政策審議局が大統領に報告するために、中小企業白書(The Small BusinessEconomy - A REPORT TO THE PRESIDENT-)が毎年発行されている。

(3)オバマ政権下での中小企業政策
 2010年9月27日に、中小企業の雇用の安定と中小企業の設備投資の底上げを目的とした中小企業雇用法が成立した。主な内容は、以下のとおりである。

コラム2-1-2図  中小企業雇用信用法(Small Business Jobs Act of 2010)の主な内容

2.EU とヨーロッパ諸国
(1)中小企業の定義
 中小企業の定義は、2003年に出されたEU の勧告(2003/361/EC)により、自立した企業(他の単数又は複数の企業に資本又は議決権の25%以上を保有されず、かつ保有していない企業)であれば、従業者数250人未満、かつ、売上高5,000万ユーロ以下又は年次バランスシート(総資産額)4,300万ユーロ以下とされている。なお、中小企業統計上では、業種を問わず従業者数250人未満の企業とされており、中小企業は、日本の約5倍の2,071万社(2008年)が存在する。

(2)中小企業政策担当部局
 欧州委員会の企業・産業総局(Enterprise and Industry Directorate - General of the EuropeanCommission)に設置されている中小企業及び企業家活動部(SMEs and Entrepreneurship Department)が担当している。
 欧州委員会が、EU 及び各国の中小企業の状況を認識するために、「中小企業業績評価(SME PerformanceReview)」(2007年までの「ヨーロッパ中小企業白書(Observatory of European SMEs)」の後継)が企業・産業総局によって、毎年発行されている。

(3)ヨーロッパ小企業議定書(SBA)による中小企業政策
 2008年12月4日に、EU 議会が、法的拘束力のない「ヨーロッパ小企業憲章(The European Charter forSmall Enterprises)」を踏まえて、「ヨーロッパ小企業議定書(Small Business Act for Europe)」に関する決議を採択した。主な内容は、以下のとおりである。
 1. 企業家と家族経営が繁栄し、企業家精神が報われる環境を築く。
 2. 倒産に瀕した正直な企業家は第二の機会をすぐに得られるようにする。
 3.「 Think small first」の原則に沿った諸規則を設定する。
 4. 中小企業のニーズに応える行政機関を設ける。
 5. 中小企業のニーズに行政施策を適合させる。官公需への中小企業の参加機会を推進し、中小企業への各国支援策を利用しやすくする。
 6. 中小企業の金融アクセスを推進し、商取引における適切な支払いへの法的・事業的環境を築く。
 7. 市場統合から生じる機会から中小企業が一層利益を得るのを支援する。
 8. 中小企業での技能の高度化とあらゆる形態のイノベーションの推進を図る。
 9. 中小企業が環境問題を事業機会と変えられるようにする。
 10.各市場成長から中小企業が利益を得られるよう奨励支援する。

 
コラム2-1-3 企業規模と成長率の関係

 中小企業は、大企業と比較して、成長しやすい又は成長しにくい−すなわち、企業規模は、その成長率に影響を及ぼすのであろうか。本コラムでは、中小企業信用リスクデータベース(Credit Risk Database)の製造業の企業18万社を対象に、売上総利益の成長率と従業者数の関係について分析を行う7

7 青山 秀明、家富 洋、池田 裕一、相馬 亘、藤原 義久[2007]を参照。

 コラム2-1-3図〔1〕の立体図及び平面図は、上記の18万社を、従業者規模別に第1群:0〜24人、第2群:25〜49人、…、第12群:275〜299人に分類し、企業群ごとに、2007年から2008年までの売上総利益の成長率8の分布を示したものである。これらの図から、成長率の分布は、従業者数の大きい企業から小さい企業になるに従って、分布の頂上が低く裾野が厚くなっていくことが見て取れる。

8 対数成長率を用いている。対数が1増加することは、実数が10倍になることを意味する。


コラム2-1-3図〔1〕 従業者規模別の各企業群の売上総利益の成長率の分布
〜成長率の分布は、従業者数の大きい企業から小さい企業になるに従って、分布の頂上が低く裾野が厚くなっていく〜

コラム2-1-3図〔1〕 従業者規模別の各企業群の売上総利益の成長率の分布

 この結果を定量的に示すために、売上総利益の成長率の変動の大きさを表す標準偏差を縦軸に、従業者数を横軸にとり、従業者数の平均を丸で、従業者数の分布の範囲を線で示したものがコラム2-1-3図〔2〕である。上述したように、従業者数の大きい企業から小さい企業にかけて、売上総利益の成長率の標準偏差が高くなる傾向にある。これは、従業者数の小さい企業では、成功するチャンスが大きい反面、失敗するリスクも大きい傾向があることを示している。

コラム2-1-3図〔2〕 従業者規模別の各企業群の売上総利益の成長率の標準偏差
〜従業者規模が小さくなるほど、売上総利益の標準偏差が高くなる傾向がある〜

コラム2-1-3図〔2〕 従業者規模別の各企業群の売上総利益の成長率の標準偏差



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