第1部 最近の中小企業の動向 

第4節 電力供給制約の影響

 東日本大震災を受けて、東京電力の原子力発電所、火力発電所、送電設備等が被災し、3月の平日の平均的な電力需要のピーク4,700万キロワットに対して、同社の供給力が震災直後に3,100万キロワットにまで落ち込み、3月14日から28日にかけて計画停電が実施された。ここでは、計画停電の影響を受けた地域の特徴、電力供給制約の中小企業への影響について分析を行う。


●計画停電の影響を受けた地域の特徴
 計画停電は、第1-2-1図〔1〕で見たとおり、首都圏が含め約145万社が立地する地域に影響を及ぼした。第1-2-12図は、東京電力管内都県の企業及び就業者の業種別割合を全国と比較したものである。企業数、就業者数ともに、卸売業、小売業の割合が高く、全国と比べて大きな違いは見られない。
 
第1-2-12図 東京電力管内都県の企業及び就業者の業種別割合
〜企業の業種別割合は、卸売業, 小売業、宿泊業,飲食サービス業、建設業、製造業の順に高く、就業者の割合は、卸売・小売業、製造業の順に高い〜


第1-2-12図 東京電力管内都県の企業及び就業者の業種別割合
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●電力供給制約の中小企業への影響
 東京電力管内の計画停電により、中小企業はどのような影響を受けたのであろうか。まず、計画停電の影響について、業種別に概観していく。製造業では、連続操業が必要な企業を中心に、「生産計画の策定に支障が生じる。」、「操業度が低下する。」、「生産体制の見直しを迫られる。」、「部品の入手が難しくなる。」といった声が聞かれた。小売業、サービス業では、「停電により客足が遠ざかった。」、「営業時間を短縮せざるを得ないために、売上が悪化した。」、卸売業では、「商品の保管が難しくなった。」、運輸業では、「製品出荷量の減少に伴い、荷動きが悪化した。」といった声が聞かれ、計画停電が業種により様々な影響を及ぼした。
 また、計画停電は、東京電力管内に所在していなくても、管内企業と取引を行っている企業に、間接的な影響を及ぼすこととなった。第1-2-13図は、(株)帝国データバンクの「産業調査分析SPECIA」に収録されている管内企業及び管内企業と取引している管外企業の数を示したものである16。これらの企業が全国の企業に占める割合は5割を超え、特に製造業、卸売業では、管内企業と取引している管外企業の数が多く、計画停電の影響が全国的に波及したことがうかがえる。

16 データベースに取引情報が収録されている企業数を集計している。
 
第1-2-13図 計画停電の中小企業への影響と東京電力の管内企業及び管内企業と直接取引を行う管外企業数
〜東京電力の管内企業及び管内企業と直接取引を行う管外企業を合わせると、全国の約5割を占める〜


第1-2-13図 計画停電の中小企業への影響と東京電力の管内企業及び管内企業と直接取引を行う管外企業数


 以上のように、計画停電は、業種によって様々な影響を及ぼすとともに、我が国の多くの中小企業がその影響を受けることとなった。計画停電は、2011年4月8日に原則不実施となったが、今後、夏期にかけて電力の需要抑制が必要となるため、政府は、東京電力・東北電力管内において2011年7月から9月の平日9時から20時までのピーク期間・時間帯の使用最大電力について、大口需要家17、小口需要家18、家庭で均一15%を抑制する目標を設定している19。中小企業白書(2010年版)では、中小企業は、大企業と比べてエネルギー消費の効率改善の余地があることや、投資による省エネルギー(以下「省エネ」という)への取組が進んでいないことなどを指摘したが20、電力需要を抑制しつつも、経済活動の水準を維持すべく、より一層の省エネを推進することが求められる。

17 契約電力500キロワット以上の事業者のことをいう。
18 契約電力500キロワット未満の事業者のことをいう。
19 東北電力においても、太平洋側の火力発電所等を中心に甚大な設備被害が発生し、原子力発電所も安全確保のため停止していることから、今後、電力需給が逼迫することが予想される。
20 中小企業白書(2010年版)p.108参照。

 こうした状況の中で、電力需給緊急対策本部において、夏期の電力需給対策が取りまとめられ、電力需要を抑制するために、中小企業の取組を支援している21

21 コラム1-2-5を参照。

 
コラム1-2-5 夏期の電力需要を抑制するための中小企業対策

 電力需給緊急対策本部では、夏期に向けて電力需給逼迫が見込まれることから、夏期の電力需給対策を取りまとめた。これに沿って、中小企業等の節電の取組を促進するため、業態別の「小口需要家の節電行動計画の標準フォーマット」の周知、個別訪問・説明会の実施、東京中小企業家同友会作成の「中小企業のための節電対策簡易マニュアル」による節電の啓発・情報提供等の支援が行われており、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会においても、会員企業に向けて節電の自主行動計画作成ガイドラインが作成されている(コラム1-2-5図)。

コラム1-2-5図 夏期の電力需要を抑制するための中小企業対策
〜夏期に向けて、電力需要を抑制するためにも、中小企業の取組を支援している〜

【夏期の電力需要を抑制するための支援】
〔1〕 業態別の節電行動計画の作成・実施のための取組例を示した「小口需要家の節電行動計画の標準フォーマット1」の周知。
・工場の取組例:
 生産設備の電源オフ、回転機の空転防止、電気炉、電気加熱装置の断熱強化等
・卸・小売店、飲食店、オフィスビル等の取組例:
 照明の間引きや消灯の徹底、空調の温度設定の引上げや使用エリアの限定等

〔2〕 節電の必要性、取組方法等について情報提供・協力依頼を行うための個別訪問・説明会の実施。

〔3〕 東京中小企業家同友会「中小企業のための節電対策簡易マニュアル2」で、無料の省エネ診断3や省エネ設備の導入支援等の中小企業向け支援制度の紹介。

〔4〕 日本商工会議所4、全国中小企業団体中央会5、全国商工会連合会6、全国商店街振興組合連合会7においても、会員企業に向けて節電の自主行動計画作成ガイドラインが作成されている。

(注)
1.詳細は経済産業省ホームページを参照。http://www.meti.go.jp/setsuden/20110513taisaku/04.pdf
2.詳細は東京中小企業家同友会のホームページを参照。http://www.tokyo.doyu.jp/setuden.pdf
3.詳細は(財)省エネルギーセンターのホームページを参照。http://www.eccj.or.jp/shindan/index.html
4.詳細は日本商工会議所のホームページを参照。http://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2011/0523100432.html
5.詳細は全国中小企業団体中央会のホームページを参照。http://www.chuokai.or.jp/info/setsuden01.pdf
6.詳細は全国商工会連合会のホームページを参照。http://www.shokokai.or.jp/top/html/kigyo/2_104/110530全国連ガイドライン(ver.1).pdf
7.詳細は全国商店街振興組合連合会のホームページを参照。http://www.syoutengai.or.jp/saigaifukkyu/setsuden_guideline.pdf

事例1-2-9 節電で光熱費約15%削減に成功した企業

 東京都千代田区の株式会社久保工(従業員83名、資本金2億円)は、ビル・住宅の建設や不動産活用のコンサルティング、環境緑化等の事業を行っている企業である。
 同社は、2009年より省エネへの取組を開始し、蛍光灯の間引き、こまめな消灯、LED 照明の導入、給湯器の不使用時オフ、空調やエレベーター使用の制限等を行っている。また、環境緑化事業部では屋上緑化用の人工軽量土壌を開発し、建設技術を活かして防水工事から施工まで総合的に行っており、本社ビルにも屋上庭園や菜園、藤の壁面緑化を取り入れ、ヒートアイランド現象の防止や空調負荷の軽減に取り組んでいる。こうした取組の結果、2010年には、2008年と比較して電気料金を約15%削減することができた。
 同社は、今夏に見込まれる電力需給逼迫に対応し、使用電力15%抑制の目標を達成すべく、クールビズの早期実施、空調の設定温度の引上げといった更なる節電に取り組んでいる。
節電のため社員のエレベーター使用の制限を実施



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