第1部 最近の中小企業の動向 

第2章 東日本大震災の中小企業への影響

 2011年3月11日14時46分頃、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の国内観測史上最大の地震が発生した。マグニチュード9.0という強い揺れは、地震のみならず、津波、原子力発電所事故、電力供給制約等の様々な事象を引き起こし、これらが複合的に関連し、中小企業にも広範かつ甚大な影響が生じた。2011年3月23日に内閣府が公表した7道県を対象とした試算結果によると、インフラ等への直接被害額は約16〜25兆円と、阪神・淡路大震災の際に国土庁が試算した直接被害額の約9.6兆円を大幅に上回り、今回の東日本大震災の被害の大きさがうかがえる1。その被害の態様は様々であり、全ての実態が明らかとなっていないが、津波による影響、地震による影響、原子力発電所事故による影響、電力供給制約による影響、その他の全国的な影響に大別して捉えることができる。

1 7道県とは、北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県をいう。
内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議震災対応特別会合資料−東北地方太平洋沖地震のマクロ経済的影響の分析−」を参照。
詳細は、http://www5.cao.go.jp/keizai/bousai/pdf/keizaitekieikyou.pdf

 第1-2-1図〔1〕は、被災地域の企業数等を示したものであるが、今回の震災では、津波の影響を受けた地域(以下「津波被災地域」という)には、約8万社2、地震の影響を受けた地域(以下「地震被災地域」という)には約74万社3、原子力発電所事故の避難区域等4には約8千社5、(株)東京電力(以下「東京電力」という)管内都県には約145万社6が存在している。

2 東日本大震災により、災害救助法を適用した市町村(2011年3月24日時点)のうち、国土地理院が4月18日に公表した「津波による浸水範囲の面積(概略値)について(第5報)」により、津波の浸水を受けた青森県、岩手県、宮城県、福島県の39市町村を集計した。そのうち仙台市については、宮城野区、若林区、太白区を集計した。
3 東日本大震災により、災害救助法を適用した市町村(2011年3月24日時点)のうち、国土地理院が4月18日に公表した「津波による浸水範囲の面積(概略値)について(第5報)」により、津波の浸水を受けた青森県、岩手県、宮城県、福島県の39市町村を除いた市町村及び仙台市青葉区、仙台市泉区を集計した。
4 ここでいう原子力発電所事故の避難区域等とは、原子力災害対策特別措置法に基づいて設定された警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域をいう。
5 原子力発電所事故の避難区域等を含む市町村として、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の全域を集計した。
6 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県を集計した。
 
第1-2-1図〔1〕 被災地域の企業数、製造品出荷額等、商品販売額
〜津波の影響を受けた地域には約8万社、地震の影響を受けた地域には約74万社、原子力発電所事故の避難区域等には約8千社、東京電力管内都県には約145万社が存 在している〜


第1-2-1図〔1〕 被災地域の企業数、製造品出荷額等、商品販売額


 さらに、第1-2-1図〔2〕は、各被災地域をより詳細に特定し、かつ、被災した企業及び事 業所を規模別に分解したものである。これによると、企業数は、津波被災地域で約3万8千社7、地震被災地域で約78万社8、原子力発電所事故の避難区域等で約5千社9、東京電力管内で約136万社10存在し、被災地域においても中小企業が企業数のほとんどを占めていたことが分かる。

7 国土地理院が2011年4月18日に公開した浸水範囲概況図により判明した浸水範囲を含む調査区を集計した。
8 東日本大震災により災害救助法の適用を受けた市町村(2011年3月24日時点)から、国土地理院が2011年4月18日に公開した浸水範囲概況図により判明した浸水範囲を含む調査区を除いた地域を集計した。
9 原子力災害対策特別措置法に基づいて設定された警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域を集計した。
10 栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県の富士川以東を集計した。
 
第1-2-1図〔2〕 被災地域の企業数、事業所数
〜企業数は、津波被災地域で約3万8千社、地震被災地域で約78万社、原子力発電所事故の避難区域等で約5千社、東京電力管内で約136万社であり、被災地域におい ても、中小企業が企業数のほとんどを占めていた〜


第1-2-1図〔2〕 被災地域の企業数、事業所数


 また、第1-2-2図は、青森県、岩手県、宮城県、福島県が把握している商工業等の被害額を示したものであるが、青森県では378億円、岩手県では1,661億円、宮城県では7,300億円、福島県では3,597億円と、工業、商業、観光業全てにおいて、大きな被害が発生した11

11 青森県については、商工会議所・商工会からの報告があった被害額のみを集計している。
岩手県、宮城県、福島県については、工場は、工業統計を基礎として、各地域の被害状況を勘案して推計している。商業は、沿岸市町村の商店(建物・商品)について商業統計を基礎として、各地域の被害状況を勘案して推計している。観光は、沿岸市町村宿泊施設について、建築着工統計(宿泊業用建築物単価)を基礎として、各地域の被害状況を勘案して推計している。
被害状況は公表された時点のものであり、今後変更される可能性がある。

 
第1-2-2図 青森県、岩手県、宮城県、福島県の商工業等の被害額
〜震源に近い各県の震災による経済的被害を見ると、工業、商業、観光業全てにおいて大きな被害が発生したことが分かる〜


第1-2-2図 青森県、岩手県、宮城県、福島県の商工業等の被害額


 以下では、中小企業が震災により受けた具体的な影響について、第1節で津波の影響、第2節で地震の影響、第3節で原子力発電所事故の影響、第4節で電力供給制約の影響、第5節でその他の全国的な影響を示していく。



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