第3部 地域経済と中小企業の活性化 

第3節 商業・コミュニティビジネスにおけるネットワーク

 本節では、地域経済の活性化のための方策を検討していく上で欠かすことができないテーマである中心市街地の商店街を巡る課題を、商店街事業者のネットワークという観点から採り上げる19

19 本節で採り上げる商店街の課題は、中心市街地以外の商店街にも共通する課題であるが、ここでは、とりわけ中心市街地の商店街を対象に分析をすすめる。

 中心市街地は、改正まちづくり三法のもと、これまでの市街地の整備改善と商業の活性化のみならず、街なか居住や都市機能の集積の促進など、多様な都市機能を担うことが期待されている。また、地域住民は地域の商店街を構成している中小店に対し、物販の提供に加え、商品の宅配、一人暮らし高齢者見回りサービス、子育て支援サービス等の地域の多様なニーズに応えるサービスの提供を期待している20。しかしながら商店街事業者だけでは、こうした多様な社会的機能を提供することに限界があるため、商店街が地域の他の主体と連携し、地域住民が求める多様な機能を提供していくことが考えられる。こうした観点から、地域の課題解決型ビジネスに取り組む団体(いわゆるコミュニティビジネス21)との連携が重要である。以下では、中心市街地としての機能の強化に向けた商店街やコミュニティビジネスの連携・ネットワークの現状と課題について分析していく。

20 中小企業白書(2007年版)pp.92〜98参照。
21 コミュニティビジネスという用語に確たる定義があるわけではないが、例えば中小企業白書(2004年版)によれば、「従来の行政(公共部門)と民間営利企業の枠組みだけでは解決できない、地域問題へのきめ細やかな対応を地域住民が主体となって行う事業である。社会貢献性が高い事業であると同時に、ビジネスとしての継続性も重視される点で、いわゆるボランティアとは異なる性格を持っている」とされる。また、その特徴については、「〔1〕地域住民が主体である、〔2〕利益の最大化を目的としない、〔3〕コミュニティの抱える課題や住民のニーズに応えるため財・サービスを提供する、〔4〕地域住民の働く場を提供する、〔5〕継続的な事業または事業体である、〔6〕行政から人的、資金的に独立した存在である、等が挙げられる」としている。pp.104-106参照。


1 商店街を取り巻く現状
 はじめに商店街が直面している経済環境を各種調査・統計をもとに概観すると、非常に厳しい状況にあることが分かる。中小企業庁「平成18年度商店街実態調査」によれば、「繁栄している」、「停滞しているが上向きの兆しがある」と回答している商店街はそれぞれ1.6%、4.8%となっており、「まあまあである」が22.9%、「停滞しているが衰退するおそれがある」が37.6%に達している22。また、小売業の年間販売額、事業所数を従業者規模別に見てみると、中規模、大規模小売業では年間販売額が1988年以降、1999年まで伸びが見られたが、それ以降は頭打ちとなっている。一方小規模小売業の年間販売額は、1988年から1997年まではほぼ横ばいで推移していたが、以降減少に転じ、2004年には1988年の約65%の水準まで低下している。事業所数について見てみると、中規模・大規模小売業は、1988年に比して増加しているが、小規模小売業については、減少傾向となっている(第3-3-40図、第3-3-41図)。

22 内閣府「景気ウォッチャー」においても、商店街・一般小売店の景況感は全体に比して悪い(付注3-3-9)。

 
第3-3-40図 小売業の従業者規模別事業所数の推移
第3-3-40図 小売業の従業者規模別事業所数の推移
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第3-3-41図 小売業の従業者規模別年間販売額の推移
第3-3-41図 小売業の従業者規模別年間販売額の推移
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2 中心市街地商店街事業者のネットワーク
 前項で見てきたように商店街を取り巻く経済環境が非常に厳しい中、商店街が多様な機能を提供すべく活動を展開していくためには自前で対応するのは限界があり、地域の他の主体を巻き込んで活動を行う発想が有効であろう。こうした観点から、以下では中心市街地の商店街事業者による連携活動の現状を分析する。
 (株)三菱総合研究所が実施した「中心市街地商店街事業者の連携に関するアンケート調査」23(以下「商店街アンケート調査」という)によると、商店街組織24として取り組んでいる活動は、第3-3-42図〔1〕のとおり、アーケードや街路灯の商業基盤の維持・管理、イベント、街路の装飾等が多い。一方で、商店街組織に加入している経営者の高齢化、廃業や空き店舗率の増加に伴う商店街組織を構成する店舗数の減少25、チェーン店や大型店の支店が商店街に出店した際にこれら店舗が商店街組織に加入しない傾向にある、という事由から商店街組織の機能が低下してきている中、一部の元気のある商店街では個別事業者が自由に集まり、商店街組織以外の事業協同組合や事業会社、NPO等の組織として地域活性化活動を展開する動きも見られる26。「商店街アンケート調査」によると、こうした取組に参加している商店街事業者は43.4%であり、活動している分野を見てみると、第3-3-42図〔2〕となっている。第3-3-42図〔1〕と比較してみると、商店街組織として行う活動としてはアーケードや街路灯など商業基盤の維持・管理といったハード分野での活動が多いが、商店街組織以外の組織活動としては、イベントや地域づくり・まちづくり活動の他、商業者向けの研修・人材育成といったソフト分野での活動が相対的に目立つ。

23 2007年12月、中心市街地活性化協議会の対象としている地域内に存する商店街事業者、1,527事業者を対象に実施したアンケート調査。回収率19.9%。
24 ここでいう商店街組織とは、〔1〕小売業、サービス業等を営む店舗等が主体となって街区を形成し、〔2〕これらが何らかの組織(商店街振興組合、商店街事業協同組合、任意団体等)を形成しているものをいう。
25 経済産業省「商業統計表」によると、商店街の事業所数は1988年をピークに減少傾向にある(付注3-3-10)。
26 例えば東京都足立区の東和銀座商店街振興組合の組合員有志が出資して設立した株式会社アモールトーワ等。

 
第3-3-42図〔1〕 商店街組織としての活動内容
〜アーケードや街路灯の商業基盤の維持・管理などハード事業を商店街組織として行っている〜
第3-3-42図〔1〕 商店街組織としての活動内容
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 しかしながら、いずれの活動でも子育て支援や高齢者支援といった少子高齢化社会が直面する課題の分野での活動はあまり見られない。こうした取組に参加しているのは、商工会・商工会議所や自治会・町内会といった、地域でそれぞれ明確な役割を担う主体の参加がほとんどであり、専門的なサービスを担えるような主体は参加していないのが現状である(第3-3-43図)。
 
第3-3-42図〔2〕 商店街組織以外の組織としての活動内容
〜イベントや地域づくりなどソフト分野での活動が目立つ〜
第3-3-42図〔2〕 商店街組織以外の組織としての活動内容
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第3-3-43図 商店街組織以外の組織に参加している様々な外部主体
〜商工会・商工会議所や自治会など地域で明確な役割を担う主体が参加している〜
第3-3-43図 商店街組織以外の組織に参加している様々な外部主体
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 中心市街地の活性化に向けて商店街に対して多様な社会的機能が求められる中、こうした地域社会の課題解決を目的とするコミュニティビジネスを商店街機能に取り込んでいくことは、商店街の地域における存在意義を高める上でも重要と考えられる。次項では、コミュニティビジネスの担い手の一つであるNPO(非営利組織)に着目し、現状と課題、地域との連携の状況について分析する。

3 地域づくりの新たな担い手としてのコミュニティビジネス
(1)コミュニティビジネスへの期待の高まり
 従来、高齢者支援サービス、子育て関連サービス、地域づくり・まちづくりといった社会的サービス分野は、行政が主体となって取り組まれてきた分野であるが、地方政府・中央政府を問わず厳しい財政状況の中、こうしたサービスを提供していく上での制約が大きくなっていると考えられる。こうした中、地域社会の課題を解決することを目的とするコミュニティビジネスは、行政による社会的サービスの供給の限界を突破する手段として期待されている。実際、こうしたコミュニティビジネスの担い手の1つの主体である特定非営利活動法人の数は顕著に推移している(第3-3-44図)。
 
第3-3-44図 特定非営利活動法人の認証数の推移
〜毎年約5,000団体近くが新設されている〜
第3-3-44図 特定非営利活動法人の認証数の推移
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 「平成18年度NPO法人の活動に関する調査研究(地方自治体調査)報告書」によると、自治体側としては、5割以上の自治体がまちづくりや環境保全、保健・医療等、子供育成といった分野でNPOへの委託の実施を考えている。また、3割以上の自治体が実施したいと考えている分野は、学術・文化等、地域安全、社会教育であり、幅広い分野で期待が高いことが分かる(第3-3-45図)。
 
第3-3-45図 NPOに業務委託したい分野
〜まちづくりや環境保全、保健、医療等の分野で業務委託の期待が高い〜
第3-3-45図 NPOに業務委託したい分野
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 一方、NPOは個々には脆弱な組織であることが多く、人材や情報などの経営資源も限られている。従って、コミュニティビジネスを地域活性化の担い手として育てていくには、外部の主体との連携を支援、促進していくことが求められる。以下では、NPOの活動体制や外部の主体との連携・協働の状況について見ていく。

(2)NPOの事業活動体制
 まずNPOは、どのような事業活動体制を敷いているのであろうか。(株)三菱総合研究所が実施した「NPOの事業活動と連携に関するアンケート調査」27(以下「NPOアンケート調査」という)によると、事業活動分野は広範にわたっているが、特に「保健、医療又は福祉の増進」、「子供の健全育成」、「まちづくりの推進」といった分野が多くなっている(第3-3-46図)。

27 2007年12月、特定非営利活動法人3,938団体を対象に実施したアンケート調査。回収率24.5%。

 
第3-3-46図 NPOの事業内容
〜事業内容は広範にわたっている〜
第3-3-46図 NPOの事業内容
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 活動のエリアについて見てみると、事業所と同一市区町村内が約5割を占め、狭いエリアとなっている。またNPOのスタッフの居住地は、活動エリアと同一市区町村内が43.4%となっており、市区町村内といった狭いエリア内の人間が地域密着型の事業を行っていることが確認できる(第3-3-47図)。
 こうしたNPOを構成しているスタッフの状況はどうなっているのであろうか。従業員構成を見てみると、常勤・非常勤、有給・無給の状況は第3-3-48図のとおりであり、規模も小さく、非常勤や無給のスタッフが多いことが分かる28

28 代表者の状況についても、非常勤あるいは無給で働く状況が5割を超える(付注3-3-11)。

 
第3-3-47図 NPOの地域性
〜NPOの事業活動エリアは狭く、また多くの従業者は事業所と同一市区町村内に居住しており、地域密着型の活動形態である〜
第3-3-47図 NPOの地域性
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第3-3-48図 従業者の状況
〜NPOの従業者の状況は規模が小さく、非常勤や無給で働く従業者が多くなっている〜
第3-3-48図 従業者の状況
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 こうした状況の中、NPOが活動していく上で必要な人材とはどのような資質を有する者なのだろうか。専門能力のある人材も求められているが、何よりも事業に対する思いや誇りを持つ人材が必要とされている(第3-3-49図)。他方で、NPOで働く人材に対して十分な給与が払えない、人材育成にかける資金的な余裕がないなど、資金的な制約のもと必要な人材を十分に確保できていない可能性がある(第3-3-50図)。
 
第3-3-49図 活動していく上で求められる人材
〜専門的な能力も求められるが、何よりも事業に対する熱い思いを持つ人材が求められている〜
第3-3-49図 活動していく上で求められる人材
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第3-3-50図 人材確保・育成上の課題
〜資金的な理由から人材を確保できていない可能性がある〜
第3-3-50図 人材確保・育成上の課題
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(3)NPOのネットワーク
 次に、コミュニティビジネスを展開するNPOは、どのようなネットワークを形成し、活動しているのだろうか。
 まず事業開始から法人設立までの連携状況を見てみよう。法人設立までのいわゆる準備期間においては、地域でのネットワークづくりを中心に連携が見られる。特に、他のNPOや地域活動団体、NPOの支援機関との連携が目立つ。事業の共同実施といった連携は見られるものの、まだまだ少ない。行政とは事業の受委託での連携も見られる。
 法人設立後は、法人格の取得という社会的評価が加わることで、事業における連携がより活発に行われるようになっており、特に行政との連携の割合が高くなっている。
 それでは、こうした現状を踏まえ、NPOは今後の連携の在り方についてどのように考えているのであろうか。引き続き事業の受委託といった点で行政への期待は高いが、事業の共同実施や資金援助といった点で大企業や中小企業への期待も高くなっている。また、地域でのネットワークづくりや販路開拓・利用者の紹介といった点で地域住民との連携への期待が高まっていることが分かる(第3-3-51図、付注3-3-12)。
 
第3-3-51図 NPOの外部主体との連携状況
第3-3-51図 NPOの外部主体との連携状況
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(4)地域住民から見たNPOとは
 これまで見てきたようにNPOは多様な外部の主体と連携して活動を行っているが、こうした様々な主体のうち、今後地域住民と連携していくことへの期待が高まっていることも分かった。それでは、こうしたサービスを受ける地域住民としては、NPOについてどのように考えているのであろうか。
 (株)三菱総合研究所の「全国消費者意識調査」によれば、NPOの商品やサービスの提供を受けたことがある地域住民の割合は全体の22.2%となっているが、提供を受けた商品・サービスの分野を具体的に見てみると、障害者の生活支援関連や特産品づくり関連分野の割合が高くなっている(第3-3-52図)。NPOの商品やサービスの提供を受けるに当たり重視している点は、信頼感や安心感、事業理念や考え方への共感である(第3-3-53図)。
 
第3-3-52図 NPOの商品、サービスの提供を受けたことがある分野
〜利用経験者は少ないが、障害者の生活支援関連や特産品づくり関連での利用が多くなっている〜
第3-3-52図 NPOの商品、サービスの提供を受けたことがある分野
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第3-3-53図 NPOの商品・サービスを選ぶ際に重視する項目
〜信頼感や安心感を一番重視しているが、事業理念や考え方も重視している〜
第3-3-53図 NPOの商品・サービスを選ぶ際に重視する項目
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 NPOの商品やサービスを利用しやすくするには、どのような条件整備が必要であろうか。同調査では、友人や知人など近親者による利用者評価に加え、テレビ・雑誌等の紹介やこれまでの取引実績の分かることなどが挙がっている(第3-3-54図)。NPO自らが事業理念や活動内容を含めた情報発信をしていくことが活動の幅を広げるためにも必要であるといえるだろう。
 
第3-3-54図 NPOの商品・サービスを利用しやすくなる条件
〜身近な人の意見や、メディアなどの情報があると利用しやすい〜
第3-3-54図 NPOの商品・サービスを利用しやすくなる条件
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4 地域の多様なリソースとのネットワーク形成に向けて
 今後、地域の生活サービスの充実に向けて、商業・サービスやコミュニティビジネスの発展が期待されるところであるが、その担い手である商店街、NPO等はそれぞれの乏しい経営資源の補完に向けた今後の連携活動に対する意欲は少なからず見られている。しかしながら現状では、商店街とNPOとの連携は必ずしも進展しているとはいえない(前掲第3-3-51図)。その理由として、NPOに対する社会的な認知度の不足といったことも大きいと考えられるが、一方で長らく地域コミュニティの核や顔として認知されてきた商店街と違って、個々のNPOはその存在自体が目立ちにくいということが考えられる29。例えば、自治会や同業種組合等の既存団体であれば、その地域における活動実績や活動領域も常識的に理解されやすいものである。ところがNPOについては、何らかの地域とのつながりを持たない限り、その社会的な位置づけや役割をアピールすることも難しい面があると考えられる。加えてNPOの事業スタンスは、営利企業とも異なるものであり、そのことが地域住民にとっても事業者にとっても馴染みのない存在となっている可能性があると考えられる。

29 NPOが外部リソースとの連携に必要なこととして挙げているのは、NPOに対する社会的認知度、理解の向上である(付注3-3-13)。


 一方で、地域の公共的サービスも含めてコミュニティビジネスへの期待は高まっているところであり、地域社会の持続的発展、住民福祉の向上を図る自治体にとっては、新たな担い手としてNPO等の地域社会におけるプレゼンス向上を推進していくことが求められる。その点、中小企業白書(2007年版)において示されているとおり、自治体は商店街等地域の小売・サービス事業者に対して高齢者福祉サービスや児童福祉サービスといった社会的サービス30の担い手として期待していることから、自治体が仲介役となって、商店街とNPOや企業等との連携を促進し、商店街の社会的サービスの拠点化を図っていくことは有意義であるといえる。商店街にとっては、地域住民のニーズに応えた多様な機能を提供し、まちの賑わいを取り戻すといった点で、コミュニティビジネスを行うNPOや企業等にとっては、地域内外からの集客力を持つ「場」で活動することで、認知度の向上、市場規模の拡大等といった点でメリットがあり、相乗効果が期待できる。
 今後の地域づくりには、行政、事業者、NPO、大学等31様々な主体の参画を得ていくことが重要となってきており、その際には、それぞれの考え方の異なる主体を結びつけていくことが必要になる。こうした観点から、地域づくりのリーダーあるいはコーディネーターとして自治体の存在が重要であるが、一方で、それぞれの考え方を互いに伝え合い、認め合っていく姿勢が求められる。その際には、個々の団体情報の受発信に加え、事業の目的を明確にし、成果を共有するといった取組もネットワークの持続的な発展に有効であると考えられる32

30 ここでの「社会的サービス」とは、中小企業白書(2007年版)第2部第2章において、高齢者福祉サービスや児童福祉サービスなど、地域の公共的な課題解決に資するサービス(公共的サービス)と同趣旨で用いている。
31 大学の地域活性化・まちづくりに向けた取組については付注3-3-14参照のこと。
32 この点について商店街事業者も、外部リソースとの連携で最も必要なこととして、関係者間のコミュニケーションの強化を挙げている(付注3-3-15)。


事例3-3-6 商店街を拠点に地域住民の交流の場を提供する「そよかぜ倶楽部」

 デイサービスや訪問介護等の高齢者支援活動を展開している特定非営利活動法人「地域福祉を支える会 そよかぜ」(従業員73名)は、地元の自治体による仲介のもと、銀天町商店街(福岡県博多区)の空き店舗を活用し、高齢者や地域住民の交流拠点施設「そよかぜ倶楽部」を設置している。
 「そよかぜ倶楽部」では、商店街振興組合と連携して、高齢者をはじめとした地域住民向けの各種イベントや各種講座等を開催するほか、休憩や飲食スペースを設けている。また、地域住民による助け合い活動を通じたサービスの充実を図るため、地域通貨「そよかぜ切符」を介した有償制度による高齢者、身体障害者、病人等向けの家事等サポート活動を実施している。同施設には年間3万人以上が訪れるなど、商店街の賑わいの創出にも大きく貢献している。
 同法人は、今後とも「高齢者に優しい商店街づくり」というコンセプトのもと、商店街事業者や地域住民と一体となった活動を展開していく方針である。
 
イベントの開催や地域住民交流の「場」を提供することで、商店街の賑わいづくりに貢献
イベントの開催や地域住民交流の「場」を提供することで、商店街の賑わいづくりに貢献

事例3-3-7 TMOがコーディネーターとなり、多様な主体が連携して中心市街地活性化に取り組む事例

 大阪府北部に位置する箕面市の中心市街地は、大型店スーパー等の相次ぐ撤退から、活気が失われ始めていた。こうした中、箕面市のTMO(中心市街地のまちづくりのマネージメントを行う機関)である「箕面わいわい株式会社」(従業員5名、資本金3,330万円)は、「箕面山七日市」の復活を仕掛け、これをきっかけに中心市街地は再び活気を取り戻してきている。
 「箕面山七日市」とは、地元の瀧安寺が毎月七日に法要「護摩供」をしていたことに由来する。この「箕面山七日市」では、地域の10商店街の事業者が参加し、「七」にちなんだ特典で買い物客を惹き付け、毎月創意工夫を凝らしたイベントで観光客らを魅了している。また、秋の紅葉シーズンに観光客の集中が生じていることから、四季を通じた集客の安定化と箕面駅周辺の商店街への観光客の回遊性を生み出すことを目的として、TMOが「みのお・瀧道 四季のまつり」というイベントを主催し、地域内の商店街との連携の下で実施している。商店街事業者のほか、自治体やNPO等も参加し、地域全体の大きなイベントとなっている。
 以上のとおり、箕面市の中心市街地活性化の取組は、行政との連携を基礎にTMOが中心となり、地域資源としての地域の歴史文化や芸術をコンセプトにソフトなまちづくりを展開している。当該TMOは、50事業に及ぶ各種まちづくり事業を企画・推進しつつ地域内においてお互いに考え方の異なる多様な主体をコーディネートし、地域内のネットワークを強化する役割を担うことを通じ、地域でリーダーシップを発揮することに成功している。
 
「箕面山七日市」振る舞いの光景
「箕面山七日市」振る舞いの光景

事例3-3-8 まちに飛び込んだ研究室が地域資源活用のネットワークの核となった事例

 山口県立大学の水谷由美子教授の研究室は、積極的にまちなかに飛び込み、地域文化を素材にしたファッションの創造を手掛け、産・学・官・民の連携により新産業やまちづくりにかかわるコミュニティビジネス等を創出するネットワークの中核としての活動を展開している。
 水谷教授の専門分野は服飾デザイン、服飾文化であるが、県立大学教授という立場で日頃から山口県庁の教育行政担当の職員と交流してきたことのつながりで、県の文化行政と商工行政の企画立案を担当する職員と知り合った。それがきっかけとなり、「服飾デザインやファッションイベントが地域文化の再発見や中心市街地活性化の起爆剤につがなるのではないか」との問題意識から、山口県と水谷研究室が中心となって、産・学・官連携事業「やまぐち文化発信ショップ Naru Naxeva(なるなせば)」をスタートさせた。同ショップは、チャレンジショップと研究室を兼ね、山口市の中心市街地商店街で空き店舗だった所に入居し、多くの地域住民や地元企業との交流のきっかけとなった。そして、商店主、一般市民、行政職員らが気軽にショップを訪問して、地域文化、まちづくり、新たな事業の構想などを教授や学生と積極的に議論する拠点へと発展していった。
 その後、県による支援が3年間で終了したが、チャレンジショップを中核としたネットワークのおかげで「Naru Naxeva」は、地域の資源を活用した新ビジネス創出の核となる「有限会社ナルナセバ」に生まれ変わった。その活動の拠点は、地元商工会議所の紹介で、山口市が室町時代から大切にしている大内文化の息づく地区内の古民家へ移転した。有限会社ナルナセバは水谷研究室の大学院生が経営し、地元アパレル企業の工場と連携したファッションイベントの開催や受注生産衣料品のプロデュース、地域が行うまちづくりや文化関連イベントの企画参加等の事業を展開している。例えば、地元の農協と連携して農作業用服のファッションショーを開催し、期せずして注文を受けるなど、新たなネットワークが拡がりつつある。
 研究室の小さな取組としてスタートした活動ではあるが、産・学・官・民のネットワークを作り上げるきっかけとして、あえて大学側がキャンパスから市井へと飛び込んだことは、今まで産学連携にかかわる機会のなかった商店街の商店主や農協、一般市民とのネットワーク作りにつながり、まち全体が地域文化資源の活性化に取り組む原動力となっている。有限会社ナルナセバの古民家の近くでは、県立大学を卒業後、留学したり、地元で創作活動をしていた人がユニットを組んで、新たなショップを開くなど、有限会社ナルナセバを中心としたネットワークは新たな発展を見せつつある。
 
イベント「もんぺヌーヴォー・コレクション」の光景
イベント「もんぺヌーヴォー・コレクション」の光景

 第3章 新たな連携やネットワークの形成に取り組む中小企業

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