第3部 地域経済と中小企業の活性化 

第1節 中小企業のネットワークの現状と課題

 中小企業のネットワークとして、かつて日本的経営の特徴の一つとして挙げられていたものは、大企業を頂点とし、下請中小企業が部品の製造等を長期固定的に受注するという「系列」取引関係である。しかし、近年のグローバル化やIT化の進展による環境変化に伴い、このような垂直的なネットワークには変化が生じてきている。特に製造業においては、従来の少数依存の垂直的な下請取引関係からより多くの取引先との水平的な連携も含めた多面的な取引関係へと取引関係が「メッシュ化」してきているとされている1(付注3-3-1)。
 こうした中小企業の水平的な連携のネットワークの拡大は、経営資源に限りのある中小企業が持続的に成長していくために一層重要になっていると考えられる。
 本節では、こうした中小企業の横のつながりに着目し、中小企業が他の企業とともに取り組んでいる事業連携活動2の現状を概観した後、中小企業が研究開発活動を行っていく上での連携先として大きな期待が寄せられている大学や公設試験研究機関等との産学官連携の現状と課題について分析していく。

1 製造業の取引関係のメッシュ化について、より詳しくは中小企業白書(2007年版)第3部第1章を参照のこと。
2 ここでいう事業連携活動とは、企業が自社の独自性を確保しながら(資本提携や合併等によらず)、共有可能な経営資源を共有する目的で、他の企業と共同して行う具体的な事業活動を指すものとする。


1 中小企業の事業連携活動の現状
(1)中小企業の組合による組織化や新連携の状況
 中小企業が他の企業とともに事業連携活動を行う上での形態には様々なものがあるが、その代表的な形態の一つとして、「組合」を設立し、共同事業を行うという形態がある。中小企業組合の数は減少傾向にあるものの、中小企業の数の減少に比して減少傾向は緩やかであり、組合設立による連携へのニーズは根強いことが分かる(第3-3-1図)。また、組合の新設状況と解散状況を見てみると、異業種組合とサービス業組合については新設組合が解散組合を大幅に上回っており、連携の形態が異業種連携型にシフトしてきていることが分かる(第3-3-2図)。
 
第3-3-1図 中小企業組合と中小企業の推移
〜中小企業組合の数は減少傾向にあるものの、中小企業の数の減少に比して緩やかである〜
第3-3-1図 中小企業組合と中小企業の推移
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-2図 中小企業組合の新設・解散状況(5年間)
〜サービス業・異業種組合は新設組合が解散組合を大幅に上回っている〜
第3-3-2図 中小企業組合の新設・解散状況(5年間)
Excel形式のファイルはこちら

 このように異業種連携型の事業連携活動への取組が活発化している中、政府は「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」(平成11年法律第18号)に基づき中小企業の異業種連携を支援する施策(新連携支援)を講じてきている。この新連携支援の制度の利用状況は第3-3-3図のとおりであり、特に相談件数の増加が顕著である。本制度に基づく認定を受けた事業の内容は多種多様であるが、共通している点は、異なる分野の企業が、それぞれの「強み」を持ち寄って連携し、新たな付加価値を創造していることである。
 
第3-3-3図 新連携支援の実績の推移
〜相談件数は顕著な推移を見せる一方、事業化達成率も約6割である〜
第3-3-3図 新連携支援の実績の推移
Excel形式のファイルはこちら

 こうした組合や新連携支援の制度を通じた連携のほか、中小企業は様々な水平的な連携のネットワークを形成し、強化していると思われるが、その実態はどのようなものであり、また、中小企業は連携に取り組む上でどのような課題に直面しているのであろうか。

(2)中小企業の緩やかなネットワークの状況
 (株)三菱総合研究所が実施した「地域中小企業とネットワーク形成に向けた取組に関するアンケート調査」3(以下「地域中小企業アンケート調査」という)をもとに、中小企業と他の企業との事業連携活動の実態や課題を見ていこう。本調査によると、中小企業のうち他の企業とともに事業連携活動に取り組んでいる企業の割合は19.2%となっており、業種別に見てみると、製造業やサービス業で連携している割合が相対的に高い一方、卸売業・小売業は相対的に低いことが分かる4(第3-3-4図)。連携の具体的な内容としては、製造業では共同研究開発や共同生産が多い一方、卸売業では共同販売が突出して多いなど、業種ごとの特性に応じた相違がある5(第3-3-5図)。

3 2007年12月、中小企業基本法の定義に基づく中小企業のうち、農業、林業、漁業、公務(他に分類されないもの)を除く全産業の中小企業10,000社を対象に実施したアンケート調査。回収率16.5%。
4 サンプルが少なく結果の解釈に留意する必要があるが、業種別従業員規模別では、製造業では、従業員規模に関係なく事業連携活動を行っているが、建設業や卸売業、サービス業では、従業員規模が大きくなると事業連携活動を行う企業が多くなるという傾向が見られる(付注3-3-2)。
5 サンプルが少なく結果の解釈に留意する必要があるが、業種別従業員規模別の事業連携活動に取り組む内容は、製造業では従業員規模の大きい企業の方が研究開発を行い、従業員規模の小さい企業の方が共同生産を行う傾向にある。また、卸売業では、従業員規模の小さい企業の方が共同販売を行う傾向にある(付注3-3-3)。

 
第3-3-4図 業種別事業連携活動を行っている企業割合
〜業種によりばらつきが見られる〜
第3-3-4図 業種別事業連携活動を行っている企業割合
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-5図 業種別事業連携活動の内容
〜取組内容は、業種の特性に応じた相違がある〜
第3-3-5図 業種別事業連携活動の内容
Excel形式のファイルはこちら

 事業連携活動を行う相手先について見ると、取引関係や資本関係のない中小企業と連携している例が多く(第3-3-6図)、相手先の所在地は、フェイス・トゥ・フェイスで連携活動ができる同一都道府県内の連携が中心である。しかし、都道府県の枠を超えた連携先としては、隣接しない都道府県の方が隣接する都道府県よりも割合が高くなっている(第3-3-7図)。広域で連携をする場合、パートナーとの物理的な距離が近いことよりも、自社が求めている技術やサービス等を有するパートナーを全国から探すことが重要なためと推測される。
 
第3-3-6図 事業連携活動の相手
〜取引関係や資本関係のない中小企業との連携が多くなっている〜
第3-3-6図 事業連携活動の相手
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-7図 事業連携活動相手の所在地
〜同一都道府県の連携が主流だが、都道府県の枠を超えると全国から連携相手を探している〜
第3-3-7図 事業連携活動相手の所在地
Excel形式のファイルはこちら

 次に中小企業が事業連携活動を行う上で直面している問題点について、連携の実績がある企業とない企業に分けてそれぞれ整理したのが第3-3-8図である。このうち、連携の実績がある企業は問題点として「成果が出るまでに時間がかかりすぎる」、「成果以上に自社負担が大きい」を挙げている企業が多い。また、連携実績の有無にかかわらず、「最適な相手が見つからない」という課題を挙げる企業が多く、マッチング、つなぎ役の重要性がうかがわれる。
 
第3-3-8図 事業連携活動における問題点
〜連携実績のある企業は、十分な成果を早期に上げることが課題となっている。また、連携実績の有無にかかわらず、最適な相手を見つけることが課題となっている〜
第3-3-8図 事業連携活動における問題点
Excel形式のファイルはこちら

2 中小企業の産学官連携の状況
 これまでは企業間の事業連携活動を見てきたが、連携活動の相手としては大学や公設試験研究機関との連携(産学官連携)も注目を集めている。
 企業と大学の共同研究や受託研究の実績を見てみると、年々増加傾向にあるものの、そのうち中小企業の占める割合は全体の約2割程度であり、現状はまだまだ大企業中心である(第3-3-9図)。
 
第3-3-9図 大学と企業の共同・受託研究実績の推移
〜産学連携は増加傾向にあるものの、中小企業の占める割合は全体の約2割程度〜
第3-3-9図 大学と企業の共同・受託研究実績の推移
Excel形式のファイルはこちら

 今後、中小企業による産学官連携を増大させていくにはどのような取組が求められるのだろうか。本項では、(株)三菱総合研究所が行った「地域中小企業アンケート調査」及び「大学と地域中小企業とのネットワーク形成に向けた取組に関するアンケート調査」6(以下「大学アンケート調査」という)をもとに、中小企業側と大学側のそれぞれの取組状況を概観していく。

6 2007年12月、全国の承認・認定TLO(技術移転機関)及び地域共同センター設置の大学の計103校を対象に実施したアンケート調査。回収率47.6%。


(1)産学官連携に向けた中小企業及び大学の取組
 「地域中小企業アンケート調査」によると、産学官連携を行っている中小企業は5.2%であるが、そのうち製造業に属する中小企業の中では1割の企業が産学官連携に取り組んでいる(第3-3-10図)。連携の相手を見てみると、国立大学・私立大学との連携割合が高く、次いで公設試験研究機関となっている(第3-3-11図)7。こうした連携相手の所在地は、企業と同一の都道府県内である割合が高いことから、中小企業の産学官連携は地元の大学や試験研究機関と多く行われている実態が浮かんでくる(第3-3-12図)。

7 中小企業白書(2003年版) 第2-4-26図によると、中小企業にとって産学官連携における相手先は、公設試験研究機関が最も高くなっていることから、以前と比べて大学が連携相手としての地位を増大させている可能性がある。

 
第3-3-10図 業種別産学官連携に取り組む企業割合
〜業種によりばらつきが見られるが、特に製造業では1割の企業が産学官連携に取り組んでいる〜
第3-3-10図 業種別産学官連携に取り組む企業割合
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-11図 中小企業の産学官連携先
〜産学官連携先として、大学が多くなっている〜
第3-3-11図 中小企業の産学官連携先
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-12図 産学官連携相手の所在地(中小企業側)
〜地元の大学や研究機関との連携がほとんどである〜
第3-3-12図 産学官連携相手の所在地(中小企業側)
Excel形式のファイルはこちら

 一方、大学側から見た中小企業との連携の状況はどうか。「大学アンケート調査」によると、調査対象としたTLO(技術移転機関)及び地域共同センターを設置している大学の約9割が中小企業との連携に取り組んだことがあると回答しており、産学連携に占める中小企業の割合も高いことが分かる(第3-3-13図)。
 
第3-3-13図 産学連携に占める中小企業の割合
〜産学連携に占める中小企業の割合は高い〜
第3-3-13図 産学連携に占める中小企業の割合
Excel形式のファイルはこちら

 次に産学官連携の中小企業側の取組内容について見てみると、共同研究開発や新製品開発が多くなっているが、技術相談や情報収集、インターンの受入などのソフト面での連携も行われている8(第3-3-14図)。

8 サンプルが少なく結果の解釈に留意する必要があるが、業種別による産学官連携の取り組み内容には有意な差は見られなかった(付注3-3-4)。

 
第3-3-14図 中小企業の産学官連携の取組内容
〜技術相談やインターンの受入、情報収集といったソフト分野での連携も見られる〜
第3-3-14図 中小企業の産学官連携の取組内容
Excel形式のファイルはこちら

 一方、大学が取り組んでいる活動内容について見てみると、共同研究開発や技術相談の他に、人材教育やマーケティングといった分野への取組も一定程度見られる(第3-3-15図)。こうした取組分野の動向を見ると、特に各種相談や共同研究・共同開発といった分野が近年増加していることが分かる。また、インターンの派遣も活発化してきており、人材交流も活発に行われつつあるといえる(第3-3-16図)。
 
第3-3-15図 大学側の産学連携の取組内容
〜人材教育やマーケティングといった分野での連携も見られる〜
第3-3-15図 大学側の産学連携の取組内容
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-16図 中小企業との連携の動向
〜各種相談や共同研究・開発が増加傾向だが、インターン派遣など人材交流も活発化してきている〜
第3-3-16図 中小企業との連携の動向
Excel形式のファイルはこちら

 このように共同研究・受託研究以外の技術相談等を含めた緩やかな連携を含めれば、特にTLOや地域共同センターといった窓口がある大学では、中小企業との連携が活発であることが分かる。
 それでは、産学官連携に至るきっかけは何であろうか。産学官連携に至るきっかけは、中小企業側について見てみると、自社からの働きかけが中心となるが、国や自治体、行政関連の支援機関や商工会・商工会議所等の地元経済団体の紹介も多くなっている(第3-3-17図)。
 
第3-3-17図 産学官連携に取り組んだきっかけ(中小企業側)
〜自社からの呼びかけが中心だが、支援機関等による紹介も一定程度を占める〜
第3-3-17図 産学官連携に取り組んだきっかけ(中小企業側)
Excel形式のファイルはこちら

 一方大学側について見てみると、産学連携窓口スタッフが仲介者である割合が最も高く、次いで金融機関、国や自治体などの行政関連の支援機関、商工会・商工会議所等の地元経済団体による仲介の割合が高くなっている(第3-3-18図)。
 
第3-3-18図 大学が中小企業と連携する際の仲介者
〜産学連携窓口スタッフの他、金融機関や支援機関、商工会・商工会議所等の地元経済団体による仲介も多くなっている〜
第3-3-18図 大学が中小企業と連携する際の仲介者
Excel形式のファイルはこちら

 産学官連携による成果については、中小企業は、自社の技術レベルの向上に加え、社員の質の向上、学生(新卒者)の確保など人材面での成果も高いことが分かる(第3-3-19図)。
 
第3-3-19図 産学官連携の成果(中小企業側)
〜自社の技術レベルの向上の他、社員の質の向上や学生(新卒者)の獲得など人材面での成果もある〜
第3-3-19図 産学官連携の成果(中小企業側)
Excel形式のファイルはこちら

 他方、大学側の成果はどうであろうか。まず、大学が中小企業と連携する目的は、地域貢献や研究費の確保の他に学生の教育・活性化といった人材育成の目的も多いことが分かる。この目的に対する評価を見てみると、地域貢献や研究費の確保、人的ネットワークの拡大といった分野に関しては評価しているが、学生への実践的テーマの提供や学生の教育・活性化といった分野においては、あまり評価していない。今後はこうした分野でも成果が上がるよう連携をさらに深めていく必要があるだろう(第3-3-20図)。
 
第3-3-20図 中小企業との産学連携における目的と評価
〜学生への実践的テーマの提供や教育といった分野で成果が上げられていない〜
第3-3-20図 中小企業との産学連携における目的と評価
Excel形式のファイルはこちら

(2)今後の中小企業の産学官連携推進に向けた課題
 これまでは産学官連携の取組の状況について、中小企業側と大学側の双方について整理してきた。こうした現状を踏まえ、今後、中小企業の産学官連携を一層推進していくためには、どのような課題があるのだろうか。
 中小企業が産学官連携に取り組む際の問題点を連携実績の有無別に分けて見てみると、連携の実績があると回答した企業は、大学等の研究機関側のニーズの不明確を挙げている。企業側は商品化・事業化という明確な目標を設定できるが、これに比べ大学等の研究機関側の開発への期待、狙いが分かりにくいということが考えられる。より高い成果を実現していくためには、今後こうした点に関するコミュニケーションの強化が必要と考えられる。また、連携実績のない企業は、自社の人手不足や連携すべき機関の情報が入手できないことを挙げている(第3-3-21図)。こうした要因が中小企業の産学官連携の活発化を妨げている可能性がある9

9 大学側は、今後の産学連携を進める上で情報提供の重要性を認識しており、今後の積極的な情報発信により産学連携が活発化することに期待がかかる(付注3-3-5)。

 
第3-3-21図 産学官連携における問題点(中小企業側)
〜産学官連携の実績がない企業は、問題点として自社の人手不足や情報不足を挙げており、こうした要因が中小企業の産学官連携の活発化を妨げている可能性がある〜
第3-3-21図 産学官連携における問題点(中小企業側)
Excel形式のファイルはこちら

 次に、今後、中小企業が大学等の研究機関と連携していく上で仲介者として期待しているのは、連携実績のある企業では、企業ニーズを大学のシーズにうまく合わせてもらうという意味で産学連携の窓口スタッフを、連携実績のない企業では日常の交流範囲で付き合いの深い商工会・商工会議所等の地元経済団体をそれぞれ挙げている(第3-3-22図)。
 
第3-3-22図 産学官連携を拡大していくために期待する仲介者(中小企業側)
〜産学官連携実績のある企業は産学連携窓口スタッフへの期待が高く、連携実績のない企業は、付き合いの深い商工会・商工会議所等の地元経済団体への期待が高い〜
第3-3-22図 産学官連携を拡大していくために期待する仲介者(中小企業側)
Excel形式のファイルはこちら

 一方、大学側はこうした仲介者についてはどのように考えているのだろうか。大学が仲介者として適切だと考えているのは、大学や研究機関の産学連携窓口スタッフが最も多く、次いで金融機関、商工会・商工会議所等の地元経済団体、国や自治体、行政関連の支援機関となっている(第3-3-23図)。
 
第3-3-23図 今後の産学連携を拡大していくために期待する仲介者(大学側)
〜大学窓口スタッフへの期待は高い〜
第3-3-23図 今後の産学連携を拡大していくために期待する仲介者(大学側)
Excel形式のファイルはこちら

 以上のように中小企業側、大学側とも、産学連携窓口スタッフや商工会・商工会議所等の地元経済団体が仲介者として機能することに期待していることが分かる。
 それでは、どのような人材が仲介者には求められているのだろうか。大学側の考えによると、メーカーの研究開発経験者が最も割合としては高いが、商品開発の統括管理経験者や、経営指導やコンサルティング経験者といった、現場をマネジメントする能力を持つ人材が求められていることが分かる(第3-3-24図)。このため、大企業等を定年退職した社員の中にはこうした分野に精通した人材が多数存在することから、こうした企業の退職人材等(新現役人材)を産学連携窓口のスタッフや商工会・商工会議所等の地元経済団体における産学連携窓口スタッフとして活用していくことも有効な方策であると考えられる。
 
第3-3-24図 大学が仲介者として求める人材
〜メーカーの研究開発者が割合としては最も高いが、商品開発の統括管理経験者や経営指導やコンサルティング経験者といった現場でマネジメントする能力を持つ人材が求められている〜
第3-3-24図 大学が仲介者として求める人材
Excel形式のファイルはこちら

3 今後の連携について
 今後の事業展開において、外部の主体との連携に対する中小企業の期待は高い(第3-3-25図)。連携相手としては、地域内の異業種企業や地域内の大学等の研究機関を挙げる企業が多くなっている(第3-3-26図)。これまで見てきたように事業連携活動が拡大してきている中で、既存の連携の枠を越えた、更なる広がりをもたらす相手として地域内の異業種企業や大学等の研究機関が期待されているものと考えられる。
 
第3-3-25図 今後の事業展開での外部リソースとの連携への期待
〜今後の外部リソースとの連携への期待は高い〜
第3-3-25図 今後の事業展開での外部リソースとの連携への期待
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-3-26図 今後の事業展開で連携したい相手
〜既存の連携の枠を超えたさらなる広がりを求めて地域内の異業種企業や大学等研究機関との連携への期待が高い〜
第3-3-26図 今後の事業展開で連携したい相手
Excel形式のファイルはこちら

事例3-3-1 LEDを使って新分野に進出した産学連携事例

 静岡県浜松市のやまと興業株式会社(従業員280名、資本金5,000万円)は、地元の大学や他の企業との連携により新事業を展開している製造業者である。
 これまでの同社の主力製品は輸送用機械部品であり、二輪車用コントロールケーブルで国内の6割のシェアを獲得している。製造設備の内製化や一貫生産体制を採ることにより短納期を実現してきたほか、時代の先を見据え、製品の「選択と集中」を図る事業戦略を展開してきた。そして、創業50周年を機に、産学連携に取り組み、高輝度発光ダイオード(高輝度LED)を用いた新事業を展開している。
 同社は、異業種交流会への参加をきっかけに静岡大学工学部、農学部との連携を開始し、LEDの特徴である単一波長が動植物の育成制御に利用できることを知った。そして、地元の浜松市が生産量日本一を誇るチンゲンサイに着目し、LED光を利用した花芽の通年栽培を可能とする装置の研究開発に取り組んだ。また、大学や農業試験場と連携して装置開発を進める中で、LED光による発芽誘導を行った場合は通常の2倍の栄養価を実現できるとの分析結果も得られた。現在は、当該装置の農家への販売のほか、チンゲンサイの花芽を食べる食文化の普及を通して、販路の拡大を図っている。
 同社は、今後も、更なる飛躍につながる連携先を見つけるべく、異業種交流会や展示会等を情報収集の場としてだけでなく情報発信の場としても捉え、これらに積極的に参加していく考えである。
 
LED光を使った花芽誘導装置
LED光を使った花芽誘導装置

事例3-3-2 ユーザー参加型の新しいeラーニング形態に向けた産学連携事例

 さいたま市浦和区の学びing株式会社(従業員5名、資本金7,415万円)は、クイズを通して企業の商品やサービスに関する情報を提供するウェブサイト「けんてーごっこ」を運営し、eラーニングとインターネット広告の融合を目指している。
 同社は、「楽しみながら学ぶ」というラーニングエンターテイメントを追求する過程で、「けんてーごっこ」を学びコンテンツのプラットフォームとしてより優れたものにしていくためには実証実験を行うことが必要と判断した。そこで、取引金融機関と相談したところ、埼玉県の産学連携支援の拠点である「産学連携支援センター埼玉」を利用することとなった。同センターは全国の大学を対象としたマッチング等を行うために2006年6月に設立された機関であり、同社の場合は地元の埼玉大学の地域共同センターを紹介してもらい、同大学教育学部の野村泰朗教授との共同研究に至った。現在は、インターネット上の仮想空間「セカンドライフ」を活用したモノ作りに関するオンライン学習手法を共同で研究している。
 一般に、産学連携では製造業と大学の工学系の学部との連携によるモノ作り系の研究開発事例が多いが、同社の場合は、大学の教育学部と連携することにより、教育の専門機関としての大学の「知」を活用しながら、ユーザー参加型の新しいeラーニングの形態を模索している事業であり、示唆に富んだ非モノ作り系の産学連携事例である。
 
産学共同で研究中のモノ作りに関するオンライン学習手法
産学共同で研究中のモノ作りに関するオンライン学習手法

 こうした相手との連携の実現に向けて、商工会・商工会議所等の仲介者機関には、連携に関する情報の提供やマーケティング段階でのマッチング機能の強化、連携先とのマッチング機能の強化に対する期待が大きい(第3-3-27図)。一方、地域内とはいえ、幅広い業種の企業、大学等の研究機関のリソースを全て把握、再評価して、それぞれにメリットをもたらすマッチングを実現するのは容易ではなく、また、具体的なマッチングに至らず、単なる交流に留まってしまっても意味がない。
 
第3-3-27図 商工会・商工会議所等の仲介者機関に期待すること
〜連携や助成に関する情報の他、マッチング機能の強化に期待が高い〜
第3-3-27図 商工会・商工会議所等の仲介者機関に期待すること
Excel形式のファイルはこちら

 その点では、地域の中小企業等に新たな展開をもたらす連携活動を支援、促進していくためには、連携のテーマやパートナーを具体的に掲げ、それに基づき意欲ある企業、大学等の参加を募る方法も有効であろう。一定のテーマが具体的に絞れれば、当該分野で国内外にネットワークを有する企業の退職人材等(新現役人材)をうまく活用しながら、地域内のリソースを再評価し、地域内のマッチングから更に地域外とのパートナー確保も含めた全体をコーディネートしていくことも可能となろう。地域の自治体や商工会・商工会議所等がリーダーシップをとって、こうした地域中小企業の連携の広がりを戦略的に支援していくことが期待される。

 第3章 新たな連携やネットワークの形成に取り組む中小企業

前の項目に戻る     次の項目に進む