第3部 地域経済と中小企業の活性化 

第1節 地域の中小企業の動向

 我が国経済は、第1部で見たとおり、地域、業種、企業規模ごとに業況の改善の程度に差異が生じている。本節では、このうち地域ごとの業況の相違に関する認識を深めるため、中小企業の業況感や倒産件数の動向が地域ごとにどの程度ばらついているのかを見ていく。

1 中小企業の業況感から見た地域
 地域ごとの中小企業の業況感の差異を確認するため、中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」を用いて、都道府県ごとに2007年の中小企業の業況判断DI1(前期と比べて「好転した」と回答した企業数から「悪化した」と回答した企業数を引いた値)を見てみよう。これによると、関東から中部、近畿にかけての地域の業況判断DIが他の地域と比してやや高くなっていることが確認される(第3-1-1図)。

1 2007年1-3月期、4-6月期、7-9月期、10-12月期の値(季節調整値)を単純平均したもの。

 
第3-1-1図 都道府県別業況判断DI(2007年平均)
〜地域によっては、都道府県間で業況感にばらつきが生じている地域もある〜
第3-1-1図 都道府県別業況判断DI(2007年平均)
Excel形式のファイルはこちら

 それでは、これらの地域ごとのばらつきは業種間ではどのようになっているであろうか。製造業と非製造業に分けてみた場合、多くの県では製造業の業況判断DIの方が非製造業の業況判断DIより高い傾向にある(第3-1-2図)。製造業に関しては、総じて言えば関東から中国にかけて相対的に高い値となっているが、全体の業況判断DIの地域ごとのばらつきに比べて製造業の業況判断DIの地域ごとのばらつきは大きくなっている。一方、非製造業に関しては、上述のとおり、製造業と比して全体的に業況判断DIが低いが、地域間の差異の程度は製造業の業況判断DIのばらつきに比べて小さい。
 
第3-1-2図 業種別・都道府県別業況判断DI(2007年平均)
〜多くの地域では、製造業の業況判断DIの方が非製造業の業況判断DIより高くなっている。また、ばらつきも製造業の方が大きい〜
第3-1-2図 業種別・都道府県別業況判断DI(2007年平均)
Excel形式のファイルはこちら

 このような製造業と非製造業の相違は、第1部で分析したとおり、輸出や設備投資が堅調に推移しているため、機械関連の製造業の業況が良い一方、家計消費の伸び悩み等を背景として、機械関連以外の製造業や非製造業の業況が相対的に良くないことによるものと考えられる。

2 地域における倒産の動向
 次に、(株)東京商工リサーチ「全国企業倒産白書」に基づき、地域や業種ごとの倒産件数2の動向に焦点を当てる。まず、最近の倒産件数の動向は、2001年をピークに毎年減少傾向にあったものの、2006年に僅かながらも増加し、2007年にはさらに増加している3(第3-1-3図)。

2 「倒産件数」における「倒産」の定義は、(株)東京商工リサーチによる定義に基づいており、「会社更生法」「民事再生法(2000年より集計)」、「和議法(2000年まで集計)」、「商法整理(2006年5月廃止)」、「破産」、「特別清算」、「銀行取引停止」、「内整理」が含まれている。
3 中小企業が倒産件数に占める割合は高く、その数は、2005年12,941件(全倒産件数の99.6%)、2006年13,201件(同99.7%)、2007年14,015件(同99.5%)である。

 
第3-1-3図 業種別倒産件数の推移
〜最近の倒産件数は増加傾向にあり、業種別に見ると建設業の倒産件数が最も多い〜
第3-1-3図 業種別倒産件数の推移
Excel形式のファイルはこちら

 こうした倒産件数の動向を都道府県ごとに分けて見てみると、2007年の倒産件数の対前年比を県ごとに算出した値は第3-1-4図のとおりであり、全国では倒産件数が約6.4%増加しているのに対し、倒産件数が減少している県もあるなど、県ごとに大きなばらつきがある。
 
第3-1-4図 都道府県別倒産件数増減率(2006年〜2007年)
〜都道府県単位で見た倒産件数の増減率のばらつきは大きい〜
第3-1-4図 都道府県別倒産件数増減率(2006年〜2007年)
Excel形式のファイルはこちら

 再度、第3-1-3図に基づき業種別の倒産件数を見ると、公共事業の減少等で厳しい状況にある建設業の倒産件数が最も多い。これを県ごとに分けて見ると、倒産件数全体に占める建設業の倒産件数の割合が大都市圏に比べて地方圏で総じて高く、宮崎県や長崎県では5割に達する4(第3-1-5図)。

4 倒産件数全体に占める製造業の倒産件数の割合と比べると製造業の倒産件数の割合のばらつきは建設業に比べて小さい(付注3-1-1)。地方圏における建設業の厳しい状況がうかがえる。

 
第3-1-5図 都道府県の倒産における建設業の割合(2007年)
〜地方圏における建設業の倒産件数割合は大都市圏に比して高くなっている〜
第3-1-5図 都道府県の倒産における建設業の割合(2007年)
Excel形式のファイルはこちら

 また、県ごとの企業数に対する倒産件数の比率を見ると、東京あるいは大阪などの近畿地方で主に高くなっている(第3-1-6図)。ここで県ごとに企業数に対する倒産件数の比率と廃業率をプロットしてみると、倒産件数の比率と廃業率に一定の相関関係があるように思われる(第3-1-7図)。これは、企業が倒産した後、事業再生に至らなければ、廃業するためと考えられるが、それでは東京や大阪など比較的大都市圏で廃業率が高い理由はなんであろうか。次の節では、分析の焦点を廃業率や開業率に当てよう。
 
第3-1-6図 都道府県別倒産率(2007年)
〜東京及び近畿圏の倒産率が高くなっている〜
第3-1-6図 都道府県別倒産率(2007年)
Excel形式のファイルはこちら
 
第3-1-7図 都道府県別倒産率(2006年)と廃業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)の相関関係
〜倒産率と廃業率は正の相関が見られる〜
第3-1-7図 都道府県別倒産率(2006年)と廃業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)の相関関係

 第1章 地域を支える中小企業の事業再生と小規模企業の活性化

前の項目に戻る     次の項目に進む