第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第2節 中小企業の輸出と生産性

 前節では、我が国の輸出入額や企業の海外展開が増加基調にあることを見てきた。本節では、中小企業の輸出や海外展開の動向を概観しつつ、中小企業によるグローバル化への対応が中小企業の生産性の向上にどのように寄与するのか、といった点を分析するとともに、中小企業が輸出や海外展開に取り組んでいく上での今後の課題を見ていくこととする。

1 中小企業の輸出の動向
 我が国の輸出額が増大する中、第1部で見たとおり、中小企業性製品の輸出額も増大している(前掲第1-1-22図)。また、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によれば、中小企業の売上高に占める輸出額の割合も上昇しており、輸出が中小企業の生産を牽引する力は大きくなっていると考えられる(第2-4-6図〔1〕)。実際、今回の景気回復局面においては、輸出を行っている中小企業の方が輸出を行っていない企業よりも業況が良い(第2-4-6図〔2〕)。
 
第2-4-6図〔1〕 中小製造業における輸出額と対売上高輸出割合の推移
〜輸出額の増加に伴い、中小製造業の売上高に占める輸出割合は増加基調にある〜
第2-4-6図〔1〕 中小製造業における輸出額と対売上高輸出割合の推移
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第2-4-6図〔2〕 中小企業業況判断DIの推移(現在の水準)
〜輸出を行っている中小企業と行っていない企業との間で業況感に格差が生じている〜
第2-4-6図〔2〕 中小企業業況判断DIの推移(現在の水準)
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 次に、輸出を行っている中小企業を規模別・業種別に見てみよう。(株)野村総合研究所が実施した「グローバル化における経営環境の実態に関するアンケート調査」3(以下「アンケート調査」という)によれば、輸出業務を行っている企業の割合は、従業員20人以下の企業では8.5%、21人以上100人以下の企業では14.7%、101人以上300人以下の企業では29.6%となっており4、規模の小さい企業ほど輸出業務を行っているものの割合は小さい(付注2-4-1)。業種別に見ると、化学、金属製品、一般機械、電気機械等の製造業や卸売業を中心に輸出が盛んで、情報通信業や運輸業、小売業、サービス業等の非製造業では輸出を行っている企業が少ないことが分かる(第2-4-7図)。

3 2007年12月、約18,000社の企業を対象に実施したアンケート調査。回収率約10.7%
4 アンケート調査によると、従業員300人以上の企業では69.6%の企業が輸出業務を行っている。

 
第2-4-7図 中小企業における業種別輸出割合
〜卸売を除く非製造業では、輸出割合が製造業に比して低い〜
第2-4-7図 中小企業における業種別輸出割合
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2 中小企業の輸出と労働生産性
 中小企業が輸出業務に取り組むことは、中小企業の労働生産性にどのような変化をもたらすのであろうか。
 第1章では、製造業と卸売業について、労働生産性の水準が高い企業は低い企業に比べて売上高に占める輸出額の割合が高いという相関関係を示した。また、輸出業務を行っている中小企業と輸出業務を行っていない中小企業の労働生産性を経済産業省「企業活動基本調査」からそれぞれ算出すると、前者の労働生産性の水準が後者を上回っており、統計的にも有意である5(第2-4-8図)。
 
第2-4-8図 中小企業の輸出有無別労働生産性(2005年度)
〜輸出を行っている中小企業は、行っていない企業に比して労働生産性が高い〜
第2-4-8図 中小企業の輸出有無別労働生産性(2005年度)
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 ただし、以上の結果からは、中小企業が輸出に取り組むことが当該中小企業の労働生産性を向上させるのか、労働生産性の水準の高い中小企業が輸出に取り組んでいるのか、という因果関係が明らかでない。理論的には、製造業など生産設備の導入等による固定費が大きい業種では、「規模の経済性」が働き、生産量が増大するにつれ、労働者一人当たりの生産量が増大する、すなわち労働生産性が向上するとされる。したがって、輸出によって生産量を増大させることができれば、労働生産性を向上させることができる可能性がある。
 このような理論上の可能性はあるものの、輸出の実施は実際に労働生産性の向上に寄与しているのであろうか。アンケート調査では、輸出業務を行っている中小企業に対し、国内でのみ販売していた時と比較して輸出によって付加価値が増加したのか、減少したのかについて調査している。これによれば、輸出を行っている中小企業のうち付加価値が増加したと答えた企業の割合は4割を超えていることから、輸出が付加価値の増大をもたらし、それにより労働生産性を向上させている可能性が示唆される(第2-4-9図)。
 
第2-4-9図 中小企業での輸出業務による付加価値の変化(国内業務のみの時との比較)
〜輸出業務を行うことにより、4割以上の中小企業が付加価値を増加させた〜
第2-4-9図 中小企業での輸出業務による付加価値の変化(国内業務のみの時との比較)
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 それでは、我が国企業は輸出によって付加価値をどのように増大させているのであろうか。ここでは、輸出している主力製品の種類を「特注品」(特定の顧客の仕様に基づいて製造する製品)と「汎用品」(不特定多数の顧客のニーズに合わせて製造する製品)に分けて考えてみよう。特注品と汎用品のそれぞれについて、輸出を行っている中小企業のうち付加価値が増加したと回答した企業の割合を見ると、汎用品を輸出する企業に比して特注品を輸出する企業の方が高いことがわかる(第2-4-10図)。さらに、特注品または汎用品の輸出業務を行う際の課題として、「海外製品との競争の激化」を挙げた中小企業の割合を見ると、特注品を輸出する企業に比べて汎用品を輸出する企業の方が高くなっている(第2-4-11図)。これは、汎用品に比べて特注品を生産する場合、個々の顧客のニーズに対応した商品を生産することになるため(カスタマイズ)、製品の差別化が行いやすく、特注品の方が差別化による付加価値を獲得できている可能性を示唆している。もっとも、以上で述べた特注品と汎用品との比較はあくまで相対的なものであり、汎用品を生産して輸出する場合でも、技術力等を活かして国内の大手企業や海外の企業の製品との差別化を図り、高い付加価値を創出している中小企業が多数存在することは言うまでもない(事例2-4-1)。
 
第2-4-10図 中小企業における輸出品目タイプ別の付加価値額増加企業の割合
〜汎用品に比して特注品を輸出する企業では、付加価値を高めている企業の割合が高い〜
第2-4-10図 中小企業における輸出品目タイプ別の付加価値額増加企業の割合
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第2-4-11図 輸出に際する課題として、「海外製品との競争激化」を挙げた中小企業の割合
〜特注品を輸出する企業は、相対的に海外製品との差別化を図れている可能性が高い〜
第2-4-11図 輸出に際する課題として、「海外製品との競争激化」を挙げた中小企業の割合
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事例2-4-1 MoMA(ニューヨーク近代美術館)で売上数量第一位を誇るマフラーを製造する小規模企業

 (株)松井ニット技研(従業員8名、資本金1,300万円)は、マフラーやショールといった経メリヤス製造業を営み、繊維産地として知られる群馬県桐生市で1907年に創業した老舗企業である。
 同社は、従来はニット製品の製造を受注する下請事業者であったが、一般に市販されていない特殊アクリル糸を使い、時間と温度を調整しながら染色及び特殊工程を行うことにより、ミンクのような風合いの柔らかなマフラーを開発するなど、技術的に難易度の高い製品作りを得意としていた。
 しかし、東アジア等からの安価なニット製品の流入や国内需要の低迷を受け、下請からの脱却を決意した。折しも、桐生地場産センター主催で開催する「桐生テキスタイルプロモーション」や国内最大の繊維展「ジャパンクリエーション」に毎年出品していたところ、世界から優れたデザイングッズを集めることで有名なMoMA(ニューヨーク近代美術館)のショップのバイヤーの目にとまったことがきっかけとなり、1999年にMoMAブランドでのOEM(相手先ブランドの製品の製造)を開始した。2003年には早くもMoMAショップで同社製品の売上数量が第一位となり、現在まで5年連続第一位を維持するなど高い評価を得ている。
 さらに国内における評価も高まり、全国の美術館やセレクトショップ、百貨店等からの引き合いが多くなってきている。こうした中、同社のブランドで製造・出荷する商品に関しては、同社が価格決定の主導権を持つ場合がほとんどとなっており、高付加価値品としての地位を国内外で築き上げている。同社は、今後も、欧州の美術館やセレクトショップなどへの販路拡大を目指し、営業活動を行っていくとしている。
 
(株)松井ニット技研のニット製品

3 中小企業が輸出で直面している課題
 以上で見てきたとおり、中小企業の輸出は増加傾向にあり、中小企業の労働生産性の向上にも寄与している可能性がある。他方、アンケート調査によれば、現在は輸出業務を実施していない企業の中にも、輸出を「是非ともしたい」・「条件が整備されればしたい」と考えている中小企業が2割弱存在することから6、今後も中小企業の輸出は増加していくと考えられる。業種ごとに見ると、現在輸出を行っている企業の割合が高い一般機械、金属製品等の製造業や卸売業だけでなく、情報通信業等の非製造業においても輸出へのニーズが広がっていることが読み取れる(第2-4-12図)。

6 アンケート調査によると、現在輸出業務を行っていない企業が輸出業務に今後取り組むことを希望しているかどうかについては、「是非ともしたい」が0.7%、「条件が整備されればしたい」が17.0%、「国内業務で手一杯で考えたことがない」が13.6%、「特段希望はない」が68.7%となっている。また、従業者規模別に見ると、従業員20人以下で16.2%、21人〜100人で17.6%、101人〜300人で17.7%、301人以上で24.3%の企業が輸出業務に今後取り組むことを希望しており、小規模な企業においてもニーズがある。

 
第2-4-12図 中小企業における業種別輸出希望割合
〜輸出業務へのニーズは非製造業等にも広がっている可能性がある〜
第2-4-12図 中小企業における業種別輸出希望割合
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 中小企業が輸出業務を行う上で直面している課題については、輸出業務を現在行っている企業が、「海外製品との競争激化」や「為替変動への対応」等の課題を挙げているのに対して、輸出を行いたいとする企業は「優秀なパートナー企業の確保」や「海外現地企業・居住者のニーズの把握」等の課題を抱えている企業が多い(第2-4-13図〔1〕〔2〕)。特に、大企業と比較すると、「優秀なパートナー企業の確保」が障害となって輸出業務を実施できていない割合が高く、大企業に比べて経営資源に乏しい中小企業にとって切実な課題と考えられる。第2-4-14図は、中小企業が輸出に係る課題にどのように対応しているのかを示しているが、「優秀なパートナー企業の確保」という課題については、特に対応をとっていないとする中小企業の割合が4割以上と高くなっており、優秀なパートナー企業の確保への対応策に苦慮している様子がうかがえる7

7 経済産業省では(独)日本貿易振興機構(JETRO)を通じて、輸出支援業務の一環として、海外市場のニーズに関する情報提供だけでなく、グローバルなビジネスパートナー探しをするためのビジネスマッチングサイト"TTPP(Trade Tie-up Promotion Program)"の運営や、海外で専門家を活用して海外企業とのマッチングを支援する事業等を行っている。中小企業が輸出業務を行う際の外部からのサポート役として有用であり、一層の活用が望まれる。

 
第2-4-13図〔1〕 中小企業の輸出業務を実施する際の課題(輸出実施企業)
〜輸出業務を現在実施している企業は、海外製品との競争激化や為替変動への対応を課題として挙げる〜
第2-4-13図〔1〕 中小企業の輸出業務を実施する際の課題(輸出実施企業)
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第2-4-13図〔2〕 中小企業の輸出業務を実施する際の課題(輸出希望企業)
〜輸出業務への希望がある企業は優秀なパートナー企業の確保を課題としている〜
第2-4-13図〔2〕 中小企業の輸出業務を実施する際の課題(輸出希望企業)
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第2-4-14図 中小企業の輸出に係る課題への対応
〜輸出業務への希望がある企業の多くは海外市場のニーズに関する情報収集を行っているが、そのなかでも優秀なパートナー企業の確保を課題に挙げる企業の4割以上が特に対応をとっていない〜
第2-4-14図 中小企業の輸出に係る課題への対応
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4 中小企業によるサービスの輸出
 現在、中小企業の輸出は、中小製造業による財の輸出が中心であるが、第2-4-12図で見たとおり、輸出を行うニーズは製造業のみならず非製造業へと広がっている。そこで、本項では中小企業によるサービスの輸出8について見ていこう。
 そもそも、サービスの輸出とは、どのようなものを指すのであろうか。例えば、我が国を拠点とするコンサルタント会社が外国を拠点とする製造業者に対して電話で助言サービスを提供するといった場合や、我が国を拠点とする旅館が我が国に旅行で来た外国人に対して宿泊サービスを提供する場合、我が国によるサービスの輸出に該当する9

8 本章では、国際収支において居住者が非居住者から受け取るサービスの対価の総額をサービスの輸出額と便宜的に定義して分析を行っている。
9 サービスの国際取引の定義としては、WTOの定義が最も一般的である。WTOでは1995年1月発効の「サービスの貿易に関する一般協定:General Agreement On Trade in Services(GATS)」において、サービスとは政府の権限の行使として提供されるサービス以外の全ての分野における全てのサービスを言うと定めており、その取引形態を以下の4つのモードに分類している(付注2-4-3)。経済産業省「通商白書2007」p159参照。


 我が国のサービスの輸出額は、近年増加傾向となっており、これに伴って我が国のサービス収支は改善傾向にある(第2-4-15図)。その内訳を見ると、輸送収支、旅行収支、その他サービス収支のいずれも輸出額が増大傾向にあるが、その中でも、旅行収支、特許等使用料収支、その他営利業務収支がサービス収支の赤字傾向に歯止めをかけている(第2-4-16図)。その他営利業務収支については、海外拠点における原材料や製品の輸出入に伴う仲介貿易のサービス料を主な収入としており、我が国現地法人の海外展開の活発化に起因しているものと考えられる。また、特許等使用料収支についても、海外現地法人設立や海外における生産機能の拡充を背景に自動車等の輸送機械を中心に我が国企業のロイヤリティー収入が増大しており、特許等使用料収支の改善についても我が国企業の海外展開と連動したものである可能性がある。他方、旅行収支については、日本人の海外旅行における消費が赤字の主因となっている中で、近年訪日外国人数の増加により、赤字が縮小傾向にある10。以上の動向を背景に我が国全体で見ると、サービス収支は改善傾向にあるが、個別に見たとき、サービスの輸出に主に取り組んでいる中小非製造業者は、中小製造業者と同様に付加価値を高めることができているのだろうか。

10 日本銀行 http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0703b.pdf による。

 
第2-4-15図 我が国におけるサービスの輸出とサービス収支の推移
〜サービスの輸出の増大に伴い、近年サービス収支は改善傾向にある〜
第2-4-15図 我が国におけるサービスの輸出とサービス収支の推移
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第2-4-16図 サービス収支改善に対する項目別寄与度
〜旅行収支、特許等使用料収支、その他営利業務収支がサービス収支改善を牽引した〜
第2-4-16図 サービス収支改善に対する項目別寄与度
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 先に第2-4-9図で中小企業の輸出業務による付加価値の変化を見たが、第2-4-17図〔1〕は、このグラフを製造業と非製造業に分けたものである。これによると、製造業と同様に非製造業においても、付加価値額が増加している割合が減少している割合よりも高くなっていることが分かる。また、第2-4-17図〔2〕を見ると、輸出額についても製造業と同様に増加傾向にある。
 
第2-4-17図〔1〕 中小企業における製造業・非製造業別輸出業務に係る付加価値の増減
〜製造業と同様に、非製造業でも輸出によって付加価値が増大している〜
第2-4-17図〔1〕 中小企業における製造業・非製造業別輸出業務に係る付加価値の増減
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第2-4-17図〔2〕 中小企業における製造業・非製造業別輸出業務に係る輸出金額の増減
〜製造業と同様に、非製造業でも輸出金額が増大している〜
第2-4-17図〔2〕 中小企業における製造業・非製造業別輸出業務に係る輸出金額の増減
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 非製造業の中小企業が輸出しているサービスの品質の源泉は何であろうか。第2-4-18図は、自社の優位性やサービスの質の源泉に対する非製造業の中小企業の認識を示したものである。これによると、非製造業の中小企業全体では「地域性を活かしたサービスの提供」を挙げる割合が高い一方で、輸出業務を実施している企業では「企業あるいは製品のブランド力」や「高い営業力、販売力、企画提案力」を挙げる企業が多い。第2章で見てきたように、サービスは財と異なり「無形性」を特徴としていることから、実際に利用するまでその品質を理解しにくい。特に海外の顧客にとっては情報不足等からサービスの品質を前もって適切に把握することが難しい環境にある。そうした環境にある海外の顧客にとっては、既に海外において一定の評価を得ているサービスを提供する企業や、海外の顧客のニーズに合わせたサービスを提案し、情報提供を積極的に行っている企業のサービスを利用する可能性が高いと考えられる。実際、海外からの外国人観光客向けにサービスの提供等を行っている中小企業が、自社のサービスをホームページや代理店を通じて情報提供することで顧客が期待する品質との乖離を防ぎ、生産性を向上させている事例がある(事例2-4-2)。
 
第2-4-18図 中小非製造業の優位性の源泉
〜輸出業務を行う非製造業は、ブランド力や高い営業力・販売力・企画提案力を自社の優位性の源泉としている〜
第2-4-18図 中小非製造業の優位性の源泉
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事例2-4-2 海外からの観光客を迎え入れることにより、生産性の向上に成功したホテル

 熊本県阿蘇市の有限会社阿蘇の司(従業員130名、資本金1,000万円)は、1965年に創業した老舗のホテルであり、阿蘇の豊かな自然を背景に海外からの観光客を多く受け入れており、年間宿泊客数は15万人を数える。
 同ホテルの従来の顧客は国内の観光客であったが、1990年代に入ってからの国内消費の低迷を受けて経営方針を転換し、1996年に海外からの宿泊客を増やすための営業を開始した。特に重点的に営業攻勢をかけた台湾や韓国、香港や中国などの東アジア諸国において、次第に旅行先としての認知度が高まり、現在では海外からの宿泊客が年間宿泊客数の3割にまで達している。
 海外からの研修生をインターンとして受け入れることにより、海外からの観光客に円滑に対応できる態勢を整えている。各国の言語で記述した案内板を数多く設置し、海外からの宿泊客が到着した際には必ず現地の言葉で挨拶を交わす一方、料理や調度品に関しては日本のもので統一するなど、海外の文化を受容する暖かさと日本らしさを兼ね備えたホテルにすることで、宿泊客から高い評価を得ている。また、現地の代理店や英語版のホームページなどを通じて、海外からの顧客に対し、価格やサービスの内容について情報提供をしっかりと行うことにより、顧客が期待するサービスの品質と同ホテルが実際に提供するサービスの水準とのミスマッチを防いでいる。
 海外の顧客を迎え入れるようになったことで、同ホテルは国内観光客の端境期における需要を掘り起こし、稼働率を高めることに成功しているだけでなく、顧客単価も国内の顧客の場合を上回ることもあるなど、稼働率と顧客単価の両面から労働生産性の向上に成功している。今後は、阿蘇地域への滞在型観光を増やすために、より魅力のある同ホテル発のツアーの企画等を通じ、阿蘇地域のプラットフォーム的な役割を果たすことを目標としている。
 
(有)阿蘇の司

 第4章 中小企業のグローバル化への対応

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