第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第1節 ITの普及

1 ITの普及の現状
 近年、パーソナルコンピュータの価格の低下や通信環境の整備等に伴い、ITが日常生活や企業活動で一層浸透してきている。インターネットは9割近くの世帯に普及しており、大規模な企業ではほぼすべての企業がインターネットを活用している(第2-3-1図)。また、第1章で見たとおり、電子商取引の市場規模は拡大している。消費者による電子商取引の利用状況を見ると、「普段店舗で購入していたような物品・サービスを、よりインターネットショッピングで購入するようになった」としている割合が5割に達しており、消費者が電子商取引へとシフトしている実態が確認できる(第2-3-2図)。
 
第2-3-1図 インターネット普及率の推移
〜9割近くの世帯で、インターネットが普及している〜
第2-3-1図 インターネット普及率の推移
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第2-3-2図 消費者における電子商取引の利用状況の変化
〜普段店舗で購入していた物品・サービスを、よりインターネットショッピングで購入するようになった消費者は5割に達している〜
第2-3-2図 消費者における電子商取引の利用状況の変化
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 さらに、情報処理サービスの提供手法も多様化している。情報処理サービスの提供会社から利用者がコンピュータやパッケージソフト4を購入するのではなく、情報処理サービスそのものを専用線やインターネット網を通じて提供を受ける手法(SaaS・ASP)5が広がっている。
 以上のように、ITは広く普及し、企業にとってもより使いやすいものとなっている。

4 「パッケージソフト」とは、汎用的に使用できる既製の市販ソフトを指す。
5 ここでは、「SaaS」及び「ASP」をともに「専用線やインターネット網を通じて情報処理サービスそのものの提供を受けること」として捉える。詳細はコラム2-3-1参照。


コラム2-3-1 SaaS・ASP

 SaaS(Software as a Service)やASP(Application Service Provider)は、情報サービス事業者がインターネットや専用線を通じてオンラインでアプリケーションを提供するサービスのことであり、設定変更や部分的なカスタマイズを行うことによって比較的簡単に利用できる。
 SaaSやASPでは、パッケージソフトや自社開発したアプリケーションソフトを所有して利用する場合と異なり、必要なサービスを従量制または定額制で購入できることから、一般に低コストで利用することができると言われている。また、比較的短期間でアプリケーションの利用が可能になるといった特徴や、社内にITの専門家がいなくても利用ができるといった特徴も有する。このため、比較的低コストで大企業と同等の高度なIT環境を整備することができることから、中小企業のIT化を進めていく上での有望なツールとして期待されている。
 提供されるアプリケーション・サービスとしては、顧客管理や営業支援、会計等のサービスがある。例えば全国商工会連合会からは、ASP方式で帳簿入力や集計等を行うことができる経理システム「ネットde記帳」が提供されている。
 一方、利用企業は業務データをSaaSやASPを提供する事業者に預けることになるため、サービスの品質やセキュリティ対策の状況等について不安を抱いている。そのため、経済産業省ではサービス利用者が安心して利用できるようするために、利用者と提供事業者との間で認識すべきサービスレベル項目や確認事項をまとめた「SaaS向けSLAガイドライン」6を2008年1月に公表している。また、総務省では、適切な情報セキュリティ対策が措置されたサービスの提供を促進するため、提供事業者が実施すべき対策をとりまとめた「ASP・SaaS における情報セキュリティ対策ガイドライン」(2008年1月ASP・SaaS の情報セキュリティ対策に関する研究会)を公表している。

6 SLAとは、サービス内容・範囲・品質等に関する保証基準の共通認識(Service Level Agreement)を指す。

2 ITの普及が中小企業に与える変化
 ITの普及に伴って企業がどのような経営環境の変化を感じているかについてアンケート調査に基づき見ていくと、「販売機会・市場の拡大」といった前向きな回答よりも、「業務スピードの要求増大」や「同業他社との競争激化」といった回答が多く挙げられている(第2-3-3図)。また、中小企業では、「特段の変化はない」との回答が多くなっている。
 
第2-3-3図 ITの普及に伴う経営環境の変化
〜中小企業では、ITの普及に伴う経営環境の変化はなかったと考える企業が多い〜
第2-3-3図 ITの普及に伴う経営環境の変化
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 次に、ITの普及に伴う取引関係の変化について見ると、中小企業の約15%が既存取引先との関係が強まったと回答しているほか、取引先数が「大幅に増加した」、「やや増加した」とする企業の合計が、「やや減少した」、「大幅に減少した」とする企業の合計を上回っている(第2-3-4図)。増加した取引先は、海外を含めて遠方の取引先も多く、ITの活用により地理的な制約を乗り越えてビジネスチャンスを獲得している姿がうかがえる。以上のとおり、ITの普及は中小企業に対してプラスとマイナスの両面の様々な変化をもたらしている。
 
第2-3-4図 ITの普及に伴う、販売先との関係の変化
〜ITの普及に伴い、既存販売先との関係が強化されているうえ、販売先も国内全域を中心に広がっている傾向にある〜
第2-3-4図 ITの普及に伴う、販売先との関係の変化
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 第3章 中小企業によるITの活用

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