第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第6節 中小サービス産業の生産性向上に向けて(まとめ)

 本章では、我が国の経済発展には、中小サービス産業の生産性向上が重要であるという認識の下、サービスの付加価値の向上、サービス産業における取引環境の課題、サービスの生産効率の向上、そしてサービス産業を支える人材の確保・育成という視点で中小サービス産業の生産性向上に向けて必要な取組を見てきた。
 まず、第1節で経済のサービス化の現状、第2節で中小サービス産業の労働生産性の現状を概観した。
 第3節では、サービスの付加価値の向上という視点から、安定した品質のサービスを提供することや、顧客が期待する高い価値のあるサービスを提供することで顧客の評価を高め、他社との差別化を図っていくことが、中小サービス産業が取り組むべき課題であることを指摘した。
 第4節では、サービス産業における取引環境の課題という視点から、サービスの品質や価値に関する情報を顧客に対して十分に提供するなどにより31、顧客の理解を深め、品質や価値を価格へ適切に反映できるよう取り組むことを課題として指摘した。

31 このことは、消費者保護という観点からも重要なことである。


 しかし、サービスの種類によっては、その特性から、事業者において必ずしも客観性をもった情報を提供できるとは限らない。また、サービスの品質や価値の価格反映への妨げとなり、正当な品質や価値に対する競争の阻害要因となりうる一部の業界に見られる取引慣行や慣例も存在する。このような課題に対し、顧客がサービスの品質や価値を正当に評価でき、正当に品質や価値に対する競争がなされるような仕組み作りには、政策的な支援も望まれる。
 また、サービスの生産効率の向上という視点からは、必ずしも画一的な取組ではないが、自社の提供するサービスの内容やその特性を勘案した上で、業務の標準化を進め、業務プロセスの見直しやITを活用した効率化に取り組むことが重要であることが挙げられた。
 第5節では、サービス産業を支える人材の確保・育成という視点から、人材の意欲や能力を高めるための具体的な取組を長期的な視点に立って実施し、高い付加価値を生み出す人材を育成していくことが取り組むべき課題であることを示した。
 これまで、サービスは「無形性」という特性から、品質や価値が顧客において評価し難い場合もあり、品質や価値に対する正当な競争がされにくい環境にあった。また、「同時性」という特性から製造物のように輸入することは難しく、中小サービス産業は中小製造業のように海外の産業との競争に晒されにくい環境にあった。しかし、IT化の進展などに伴って、顧客もサービスの品質や価値に関する情報を入手しやすい環境が整備されつつあり、サービスの事前の選別や国際的な電子商取引によるサービスの輸入も可能となるなど、中小サービス産業の経営環境は大きく変化しつつあり、中小サービス産業の競争も一層激化すると思われる。
 こうした中で、中小サービス産業が生産性を向上させ、我が国の経済成長のエンジンとなっていくためには、本章で見てきたとおり中小サービス産業が取り組むべき課題は多い。個々の中小サービス事業者が単体で解決するには困難な課題も多く、サービス産業全体に共通する横断的な課題や個別の産業特有の課題など多岐にわたっている。
 中小サービス産業の生産性の向上に向けて、本章で見てきた課題に対し、個々のサービス事業者だけでなく、産学官が連携して具体的な取組を進めていくことが急務といえよう。

コラム2-2-1 サービス産業生産性協議会の取組

 本章で分析したとおり、サービス産業を巡る課題は多い。こうした中、産業界が中心となり、多様なサービス産業界が抱える課題に産学官が連携して取り組む場として、2007年5月にサービス産業生産性協議会(代表幹事:牛尾治朗 ウシオ電機株式会社代表取締役会長)が発足した。
 本協議会においては、以下のような取組を行っている。

I.質の高いサービスが適正に評価され、サービスの品質に基づく適正な競争が起こる環境を整備する。
・サービスの品質について消費者に対し適切な情報提供を行うための仕組みとして、産業界による自主的な認証制度等の構築を支援する。
・消費者が業種を越えて、サービスの品質を比較したり、事業者が自らのベンチマークとすることが可能となる指標として、顧客満足度指数(CSI)を開発・導入する。

II.革新的なサービスプロセスの導入を促進し、これを実践する人材を育成する。
・サービスの品質の向上、潜在的なニーズの発掘や新サービスの創出等を実現するため、サービス産業に科学的・工学的な手法を用いる取組を支援する。
・効率化・品質管理のために培われてきた製造業のノウハウをサービス分野に導入している成功事例を発掘することにより、企業が消費者にサービスを提供する際のプロセスの改善を図る。
・人材の流動性が高いというサービス産業の現状を踏まえ、業種内あるいは業種横断的に共通とされるスキルやノウハウを標準化する取組を支援する。これらの能力を適正に評価する仕組みをつくることで、優秀なサービス人材の育成と働く人々の能力向上意欲の増進を図る。

III.多様なサービス産業の実態やニーズを把握し、他の企業の模範となるベストプラクティスを広く紹介する。
・政府のサービス統計の抜本的拡充を踏まえて、必要な調査項目・業種に関する提言を行うと同時に、産業界のニーズ・情報等を政府に提供する。
・サービス産業における先進的な取組を「ハイ・サービス日本300選」として表彰・公表する。そうした模範事例を紹介することで、各業界における進歩的な取組の一層の喚起を図る。

 第2章 経済のサービス化と中小サービス産業

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