第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第2節 中小サービス産業の労働生産性の現状

1 業種別の労働生産性
 第1章で見たとおり、中小サービス産業の労働生産性の水準は大企業に比べて総じて高くない。「中小企業実態基本調査」に基づき産業別に見てみると12(第2-2-4図)、情報通信業や卸売業のほか、サービス業(他に分類されないもの)の中でも対事業所向けサービスの割合が高い業種の労働生産性が高い傾向がうかがえる。一方、小売業や飲食店,宿泊業のほか、サービス業(他に分類されないもの)の中でも対消費者向けサービスの割合が高い産業の労働生産性が低い傾向がうかがえる13 14
 このように中小サービス産業の生産性の水準は業種によって異なるが、これは各業種の特性や市場環境の相違等を反映したものと考えられる。業種間の比較や異なる業種に属する企業の比較を行う際には、この点について十分な留意が必要である。

12 産業分類(中分類)での算出結果は付注2-2-3を参照。
13 不動産業は対消費者向けサービスの割合が高いが、労働生産性は高く、ここでは例外としている。この労働生産性の高さは第1章で述べたとおり、不動産業の資本装備率が非常に高いことに対応している。
14 個々の企業を顧客の属性別に分け、労働生産性を見てみると、対事業所向けサービスの方が対消費者向けサービスよりも労働生産性が高い企業が多い傾向にある(付注2-2-4参照)。

 
第2-2-4図 産業分類別労働生産性
〜不動産業を除き、対事業所向けサービスの割合が高い業種の方が、対消費者向けサービスの割合が高い業種よりも、労働生産性が高い企業の割合が高い〜
第2-2-4図 産業分類別労働生産性
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2 労働生産性に対する認知度
 業種別に見てみると労働生産性にばらつきが見られたが、それでは、サービス産業に属する中小企業の経営者は労働生産性という経営指標をどの程度意識して経営にあたっているのであろうか。経営者が重視している経営指標について見てみると、利益率や売上高といった一般的な指標と比較して、顧客満足度を重要とする企業の割合は高い。一方、労働生産性を重要とする企業の割合は相対的に低い(第2-2-5図)。また、業種別に労働生産性の重視度を見てみると、業種ごとにばらつきがみられるが、労働生産性を重視する業種において実際に労働生産性が高いとはいえない15(第2-2-6図)。

15 労働生産性に対する認知度と労働生産性とには相関は見られない(付注2-2-5参照)。

 
第2-2-5図 重視する経営指標
〜サービス産業において、経営指標としての労働生産性の重視度は他の指標と比較して高くはない〜
第2-2-5図 重視する経営指標
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第2-2-6図 労働生産性の重視度
〜業種により労働生産性を重要視する度合いは異なるが、必ずしも重要視する度合いが高いほど労働生産性が高いとは限らない〜
第2-2-6図 労働生産性の重視度
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3 労働生産性と業況
 次に、労働生産性と業況感の関係について見てみると、労働生産性の水準が高い企業ほど業況感を良いとする企業の割合が高い傾向がある(第2-2-7図)。
 
第2-2-7図 労働生産性と業況感
〜労働生産性が高い企業ほど業況感を良いとする企業が多い〜
第2-2-7図 労働生産性と業況感
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 また、前項において対事業所向けサービスの生産性が対消費者向けサービスよりも高いことを見たが、業況感についても対事業所向けサービスの方が対消費者向けサービスよりも業況感を良いとする企業の割合が高い傾向にある(第2-2-8図)。
 労働生産性という経営指標に対する中小企業の重視度は高くないものの、労働生産性と企業の業績には相関関係があると考えられる。
 
第2-2-8図 サービス業の業況感
〜業況感を「良い」または「非常に良い」とする企業の割合は10%に満たない事業所(法人または個人企業)向けサービス事業者の方が消費者向けサービス事業者より業況感を良いとする企業の割合が高い〜
第2-2-8図 サービス業の業況感
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4 生産性を構成する要素
 前項までで中小サービス産業の労働生産性の現状を概観したが、我が国経済の成長力を高めるため、中小サービス産業の労働生産性を向上させるためには何が必要であろうか。労働生産性の定義16から、その分子である付加価値額の増大を図ることと、労働生産性の分母との関係に着目して生産効率を向上させることが必要と考えられる。
 次節以降では、まず、第3節においてサービスの付加価値の向上に向けた取組を採り上げた後、第4節において生産効率の向上に向けた取組のほか、サービス産業の取引環境といったサービス産業に内在する課題を採り上げていく。第5節では、サービス産業の生産性に影響を与える点で横断的に重要な人材の現状と課題を見ていく。

16 第1章で述べたとおり、労働生産性は、付加価値額を労働投入量(労働時間あるいは労働者数)で割ることで示される。


 第2章 経済のサービス化と中小サービス産業

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