第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第1節 サービス化の進展とサービス産業

1 サービス化の進展
 近年の国内総生産の推移を内閣府「国民経済計算」に基づき見てみると、第三次産業が国内総生産(産業計)に占める割合は、7割弱の水準となっている(第2-2-1図)。また、近年の産業別の就業者の割合を総務省「労働力調査」に基づき見てみると、第三次産業の就業者が占める割合は年々上昇し、7割弱の水準に達している(第2-2-2図)。このようにサービス産業は我が国経済において重要なウェイトを占め、そのウェイトは年々増大しており、我が国経済のサービス化は一層進展している。
 
第2-2-1図 国内総生産(名目)の推移
〜第三次産業が、GDP(産業計)に占める割合は7割弱で推移している〜
第2-2-1図 国内総生産(名目)の推移
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第2-2-2図 産業別就業者比率の推移
〜第三次産業の就業者が、産業全体の就業者に占める割合は増加し続けている〜
第2-2-2図 産業別就業者比率の推移
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 また、第三次産業における中小企業の位置付けを把握する観点から、総務省「事業所・企業統計調査」に基づき、第二次、第三次産業毎に企業数を見てみると、中小企業の総数のうち第三次産業に属する中小企業の数が占める割合は年々増加している1(第2-2-3図)。中小サービス産業の我が国経済における重要性は年々増大していることがうかがえる。

1 企業規模別の従業者数を見てみると、第三次産業の従業者数のうち中小企業の従業者数が占める割合は7割弱となっている(付注2-2-1参照)。

 
第2-2-3図 産業別規模別企業数
第2-2-3図 産業別規模別企業数
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 第1章では我が国経済の成長力を維持・向上させていくためには中小企業の生産性の向上が重要であることを見てきたが、我が国経済のサービス化が進展し、中小サービス産業が我が国経済に占める割合が高いことを踏まえれば、中小サービス産業の生産性の向上が我が国経済の発展の鍵と言えよう。こうした認識の下、本章では、中小サービス産業の生産性の向上に向けた課題や求められる取組について見ていきたい。

2 サービス産業の定義と分類
 前項で我が国経済のサービス化の進展を概観する上でサービス産業を第三次産業として捉えてきたが、サービス産業の捉え方は多様であり、一律の定義は存在しない。例えば狭義には、(旧)日本標準産業分類(平成5年10月改訂)の大分類である「Lサービス業」に分類された業種を指す場合もあるが、本章の分析対象とするサービス産業は、広義のサービス産業から中小企業性の低い産業を除いた業種として捉えることとする。具体的には、日本標準産業分類(平成14年3月改訂)における大分類である、「G電気・ガス・熱供給・水道業」、「H情報通信業」、「I運輸業」、「J卸売・小売業」、「K金融・保険業」、「L不動産業」、「M飲食店,宿泊業」、「N医療,福祉」、「O教育,学習支援業」、「P複合サービス事業」、「Qサービス業(他に分類されないもの)」を包含する広義のサービス産業から、大企業性が高い2、あるいは産業の性格が異なる「G電気・ガス・熱供給・水道業」、「K金融・保険業」及び「P複合サービス事業」3を除いた範囲をサービス産業として分析していく4

2 電気・ガス・熱供給・水道業については、企業ベースの従業者数で見た場合、大企業が85.6%を占める。また、金融・保険業についても、大企業が84.4%を占める。付属統計資料3表を参照。
3 複合サービス事業とは、中分類単位では郵便局及び協同組合で構成される産業分類である。
4 ただし、次節以降において中小サービス産業の労働生産性の分析に用いた「中小企業実態基本調査」においては、医療,福祉及び教育,学習支援業が調査対象に含まれていないことから、労働生産性の分析には当該業種は含まれない。また、「サービスの生産性向上に関する実態調査」においても、医療,福祉及び教育,学習支援業が調査対象に含まれていないことから、当調査を用いた分析においては当該業種は含まれない。


 また、本章では、サービス産業を業種横断的かつ体系的に捉えて分析していくため、その顧客の属性に着目してサービス産業を対事業所向けサービスと対消費者向けサービスに分類して見ていく。この分類を行うのに当たり、中小企業庁「サービスの生産性向上に関する実態調査」5(2007年11月)及び(株)野村総合研究所「商品・サービス品質向上の取組に関するアンケート調査」6(2007年11月)において個々の企業が回答した主な顧客の属性を集計し、その結果に基づき各産業の主な顧客が消費者であるか、事業所であるかによって分類を行った。その結果、おおむね、情報通信業、運輸業、卸売業及びサービス業(他に分類されないもの)7は対事業所向けサービスの比率が高い業種であり、小売業、不動産業、飲食店,宿泊業、医療,福祉及び教育,学習支援業は対消費者向けサービスの比率が高い業種であることが分かる8
 さらに、対消費者向けサービスについては、消費者がサービスを受ける目的に応じて生活関連サービス9及び余暇関連サービス10に分類して分析を行っていく。

5 付注4参照。
6 産業分類(大分類)H〜Q(ただし、K金融・保険業、P複合サービス事業を除く。)に属する法人企業10,000社を対象に実施したアンケート。回収率17.0%。
7 サービス業(他に分類されないもの)は、全体では対事業所向けサービスの比率が比較的高かったが、中分類82〜84については対消費者向けサービスの割合が高いため、次節における生産性の分析においては、区分している。
8 産業分類(中分類)との対比は付注2-2-2を参照。
9 アンケート調査において提供する主なサービスの属性について「生活に関連したサービス」と回答した企業を生活関連サービスとした。
10 アンケート調査において提供する主なサービスの属性について「余暇に関連したサービス」と回答した企業を余暇関連サービスとした。


3 サービスの特徴
 広義のサービス産業は前項で見てきたように多様な業種で構成されるが、製造業など物財を扱う他の産業とは異なる特性を共通して有する。サービスに特有の基本特性として、「無形性(目に見えない)」、「同時性(提供と同時に消滅)」といったものを挙げることができる11。「無形性」とは、サービスとして提供されるものが、行為や運動、機能、情報といったものであり、例えば製品という有形物を産み出す製造業とは性格を異にしている。また、「同時性」とは、生産と消費が同時に発生するということであり、例えば貯蔵や在庫が可能となる製造物と性格を異にしている。
 これらの特性は、多種多様なサービス産業の特徴や実態を理解する上で重要な要素であり、以下の節でも度々言及することとなる。

11 サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会の報告書「サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて」(2007年4月)では、サービス産業の特性として、「無形性(目に見えない)」、「同時性(提供と同時に消滅)」のほか、「新規性・中小企業性」を挙げている。


 第2章 経済のサービス化と中小サービス産業

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