第1部 2007年度における中小企業の動向 

第2節 中小企業の景気動向

 これまで見てきたように、2007年度に中小企業は原油価格の高騰や改正建築基準法の施行後の建築着工件数の減少などの大きな外生的ショックに直面することとなった。本節では、中小企業の景況感、倒産件数、利益率、設備投資、資金繰り、雇用が、現在の景気回復局面においてどのように推移し、2007年度に原油価格の高騰等の影響が生じる中で、どのような動きを示したのかについて見ていこう。

景況感と倒産の動向
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(以下「短観」という)によれば、中小企業の業況判断DIは、2002年第1四半期を底に、製造業が主導する形で改善を続けてきたが、2007年になって弱い動きが続いている(第1-1-8図)。さらに、日本銀行「短観」では扱わない資本金2千万円未満の企業を含め、中小企業約1万9千社を対象にした中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」によると、小規模企業を含めた中小企業全体では、景況感はより厳しく、業況判断DIは2006年4-6月期から2008年1-3月期までの8四半期連続で緩やかに低下を続けている(第1-1-9図)。
 
第1-1-8図 我が国の企業の業況判断DIの推移
〜2007年になって、中小企業の業況感は弱い動きが続いている〜
第1-1-8図 我が国の企業の業況判断DIの推移
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第1-1-9図 我が国の中小企業の業況判断DIの推移
〜小規模企業を多く含む中小企業景況調査においても、景況感は足下で悪化している〜
第1-1-9図 我が国の中小企業の業況判断DIの推移
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 次に、中小企業の倒産件数の動向を見ると、現在の景気回復局面に入った後の概ね3年間は前年同期比で減少していたが、2006年頃から増加に転じている(第1-1-10図)。業種別では、小売業の倒産件数が2005年に前年同期比での増加に転じ、その後、建設業と卸売業が2006年から、製造業が2007年から増加の傾向を示すようになった8

8 付注1-1-3参照。

 
第1-1-10図 中小企業倒産件数と増減率
〜現在の景気回復局面に入った後の概ね3年間は前年同期比で減少していたが、2006年頃から増加に転じている〜
第1-1-10図 中小企業倒産件数と増減率
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利益率
 第1-1-11図において示されているように、資本金1千万円以上1億円未満の企業と資本金1千万円未満の企業の売上高経常利益率は、2002年からの景気回復局面において緩やかに改善しているものの、資本金1億円以上の大企業との利益率の差は拡大している。とりわけ資本金1千万円未満の小規模な企業の利益率は低迷しており、資本金1億円以上の大企業との売上高経常利益率の差は、1992年度から2001年度の10年間では平均2.1%であったが、2002年度から2006年度の5年間は平均3.6%に拡大している。2006年度には、その差は4.3%に拡大し、過去30年間での最大の値となっている。
 
第1-1-11図 規模別売上高経常利益率の推移
〜資本金1千万円未満の企業の利益率は低迷しており、資本金1億円以上の大企業との差は拡大している〜
第1-1-11図 規模別売上高経常利益率の推移
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 このように中小企業の利益率は、伸び悩んではいるものの、緩やかに上昇してきたことにより、中小企業の財務状況は改善してきた。また、中小製造業の設備過剰感が解消し、2004年頃からは過剰と不足がほぼ拮抗する水準で推移するようになったため、中小企業の設備投資は2004年頃から活発化した(第1-1-12図)。さらに、2006年になると設備投資対キャッシュフロー比率が大きく上昇していることから、キャッシュフローの改善幅を超えて設備投資が積極的に行われたと考えられる。しかし、2007年に入ってからは、中小企業の業況の悪化等を背景として、設備投資対キャッシュフロー比の低下、中小企業の生産・営業用設備投資DIにおける過剰感の増大等が見られた。
 
第1-1-12図 中小企業の設備投資の推移
〜中小製造業の設備過剰感が解消し、2004年頃からは過剰と不足がほぼ拮抗する水準になり、中小企業の設備投資は活発化〜
第1-1-12図 中小企業の設備投資の推移
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資金繰り
 今回の景気回復局面における資金繰りの動向については、総じて見れば、2006年まで改善を続けてきたが、2007年度に入ってから弱含んでいる(第1-1-13図)。
 
第1-1-13図 中小企業の資金繰りの推移
〜2007年度に入ってからは、原油価格の高騰の影響等を背景とした中小企業の業況の悪化のため、資金繰りの弱含みが見られた〜
第1-1-13図 中小企業の資金繰りの推移
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 同図によれば、2002年からの企業収益の増加によって、中小企業の財務状況は改善し、有利子負債残高償還年数は2002年第2四半期の16.1年をピークに減少に転じ、2004年第1四半期までのわずか7四半期の間に11.9年まで低下している。こうした中、中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」の中小企業の資金繰りDIも2002年から2005年にかけて改善し、中小企業の長期資金借入難易度DIも大幅に改善した。しかし、2007年度に入ってからは、原油価格の高騰の影響等を背景とした中小企業の業況の悪化のため、資金繰りの弱含みが見られた。
 また、金融機関の中小企業向け貸出残高についても、金融機関の不良債権比率の低下による財務健全化や中小企業の業況改善を背景に、2006年以降、増加傾向を示していたが、足下では中小企業の業況の悪化等を背景に弱含んでいる(第1-1-14図)。
 
第1-1-14図 中小企業向け貸出残高の推移
〜貸出残高は2006年から前年同期比で増加に転じていたが、足下では弱含んでいる〜
第1-1-14図 中小企業向け貸出残高の推移
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雇用
 今回の景気回復局面における雇用の動向については、総じて見れば、2002年以降、有効求人倍率は上昇、失業率は低下を続けてきた。しかし、2007年後半から、有効求人倍率は若干の低下傾向を示し、失業率の低下も足踏み状態となっており、雇用情勢は厳しさが残る中で改善に足踏みが見られる(第1-1-15図)。足下の新規求人数の推移を事業所の従業員規模別で見ると、従業員5〜29人の小規模な事業所を中心として新規求人数が減少している一方(第1-1-16図)、従業員300人以上の事業所においては、2007年以降も新規求人数が横ばいで推移しており、大企業と中小企業の景況感の差が雇用の面にも色濃く反映されていることが読み取れる。
 
第1-1-15図 有効求人倍率と完全失業率の推移
〜2002年以降、有効求人倍率は上昇、失業率は低下を続けてきたが、2007年後半から、有効求人倍率は若干の低下傾向を示し、失業率の低下も足踏み状態となっている〜
第1-1-15図 有効求人倍率と完全失業率の推移
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第1-1-16図 規模別新規求人数の推移
〜2007年以降、小規模な事業所を中心に新規求人数は減少している〜
第1-1-16図 規模別新規求人数の推移
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 中小企業の雇用情勢に関し、日本銀行「短観」の雇用人員判断DIを見ると、2002年第1四半期から大企業と中小企業のいずれも低下を続け、2005年には「不足」が「過剰」を上回る状態となっているが、中小企業のDIは2007年に入って下げ止まりの動きが見られる。また、中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」を見ても、「短観」と同様に2002年から中規模企業と小規模企業のいずれも雇用の不足感が強まる傾向が見られるが、足下では雇用の逼迫に一服感が見られる(第1-1-17図)。
 
第1-1-17図 雇用の過不足感の推移
〜大企業、中小企業ともに、雇用人員の「不足」が「過剰」を上回る状況が続いていたが、足下では雇用の逼迫にも一服感が見られる〜
第1-1-17図 雇用の過不足感の推移
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 第2節 中小企業の景気動向

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