第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第5節 「仕事と育児の両立」の現状

 第4節までは、若年者が安定した収入を得るために必要な雇用問題について考察してきたが、ここからは、もう一つの重要な課題である「仕事と育児の両立」について考察していきたい。
 「子どもを産み育てやすい社会」を実現するために、仕事と育児の両立を図ることは、安定した雇用・収入を確保することと並んで重要なことである。
 しかし現状では、働く夫婦が子どもを持った場合、育児の負担は過度に母親側に寄っていると言えよう。
 例えば、育児休業の取得状況でみた場合、厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(2004年度)によると、在職中に出産した者又は配偶者が出産した者に占める育児休業取得者について、女性は70.6%、男性は0.56%であった。また、この章の冒頭に掲げた第3-3-1図で見たように、出産1年前に就業していた女性のうち約7割が退職している。そのような中で、女性の年齢階級別の労働力率を見てみると、出産・育児期の30代前半を中心に女性の労働力率が落ち込む、いわゆる「M字カーブ」と呼ばれる曲線を描いている(第3-3-31図)。

 
第3-3-31図 主要国の年齢別女性労働力率
〜日本では、30歳代で女性労働力率が落ち込む〜

第3-3-31図 主要国の年齢別女性労働力率
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 この時期に退職した女性の退職理由を見ると、結婚・育児の割合が64.5%と大半を占めている(第3-3-32図)。しかし、これらの者は結婚・育児のために望んで仕事を辞めているのかというと、全くそうは言えないのである。同図を見ると、結婚・育児を理由として退職した25〜34歳の女性無業者のうち、就業意欲のある者の割合は63.3%と極めて高くなっている。すなわち、実に3分の2に近い女性は、育児をしながら働く環境さえ整っていれば、労働市場に参加してくる可能性があるのである。

 
第3-3-32図 25歳から34歳の女性無業者の退職理由
〜結婚・育児を理由とした退職が約6割〜

第3-3-32図 25歳から34歳の女性無業者の退職理由
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 ところが、出産・育児を機にいったん退職してしまうと、極めて再就職をしにくい現状がある。厚生労働省「出生前後の就業変化に関する統計」によると、出産1年前に就業していた女性のうち、いったん離職した後で再就職しているのは、わずか18%程度23に過ぎない(本章冒頭の第3-3-1図〔2〕参照)。また後述するように、この再就職しているという場合にも、パート等として復帰している率が高く、中核的な正社員として復帰するのは極めて難しいという状況がある(後掲第3-3-36図参照)。

23 厚生労働省「出生前後の就業変化に関する統計―人口動態職業・産業別統計と21世紀出生児縦断調査のリンケージ分析―人口動態統計特殊報告」(2004年)を基に作成した。


 このような現状は、働きたいと思っている母親にとって酷であると同時に、就労意欲も能力もある人材を十分に活用していないという意味で、社会全体にとっても損失ではなかろうか。
 実際、個人として「自己実現」が図れていないという点では、実のところ男性についても同様なのである。
 男性の場合には逆に、子育てに参加したくても、仕事と育児の両立が難しいために十分参加できない、という障壁が見てとれる。
 男女共同参画白書(2005年版)によると、父親の約半数(51.6%)は、仕事等と家事育児を同等に重視したいと希望している。しかし現実には、仕事等と家事育児を同等に重視できている人は25.9%に留まっている(第3-3-33図)。

 
第3-3-33図 父親の子育ての優先度
〜仕事等と家事や育児を同等に重視できている父親は約3割〜

第3-3-33図 父親の子育ての優先度
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 育児に費やす時間でみた場合、総務省「社会生活基本調査」(2001年)によると、夫婦と6歳未満の子どものいる世帯における週全体の平均育児時間は、夫が約25分、妻が約3時間となっており、夫の育児参加時間は妻に比べて非常に短い。
 つまり、男性の場合は仕事が過度に忙しい、子育てのために労力を割くことに職場の理解が得られない等の理由から、希望しているほど育児の時間を取れない現状がうかがえるのである。
 仕事と育児の両立ができるよう環境を整えていくことは、男女を限らず、社会全体にとって必要な取組だと言えるだろう。
 そこで、以下では、特に中小企業における仕事と育児の両立状況に着目して分析していきたい。

 第5節 「仕事と育児の両立」の現状

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