第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第6節 第2章のまとめ

 ここまでで、高齢化社会の到来に伴い中小企業が抱える「事業承継」および「技能承継」の問題について論じてきたが、それぞれの要点について、以下にまとめることとしたい。

1.事業承継部分のポイント
・中小企業経営者のうち、95%程度は自分の後も他者に事業を引き継ぎたいという希望がある。
・中小企業の事業承継が難しいのは、単に経営権(社長のポスト)を譲っただけでは十分でなく、会社の所有権(株式等の資産)も承継しないと経営が安定しづらい点である。
・現時点で55歳以上の事業承継を希望する中小企業経営者のうち、既に後継者を決めているのは半数に満たず(約49%)、15%程度は後継者の候補者すら見当たらない状態にある。
・既に後継者が決定している企業は、後継者の7割以上(約71%)が経営者の子息・子女である。事業承継について十分な準備ができている企業は少数に留まっており、その内容としても後継者教育や周囲の理解を得るなどの経営環境の整備が中心で、相続対策などの税務面、法制面に取り組んでいる企業の割合は少ない。
・候補者がいるとしている企業は、その中から後継者を選定する要因として「経営能力の高さ」を重要視しており、その傾向には子息の有無等で大きな違いはない。
・現時点で後継者を決めていない企業(候補者がいる企業といない企業を含む)は、最終的に後継者を決められなかった場合には「社外から経営者を招聘する」とする割合が高いが、実際には実現可能性が危ぶまれる。社外から後継者が見つからなかった場合には、事業売却も有効手段の1つである。
・M&A等の事業売却による承継には、従業員の雇用を確保できるなどのメリットがあるが、企業文化の問題や経営者の心理的抵抗感などが課題となる。
・中小企業のM&Aは、企業のコア・コンピタンスが明確であり、一定の収益・資産を確保していれば、従業員10人程度の小規模企業でも活用できる事業承継手段である。
・中小企業のM&A市場は、一般に友好的M&Aであり、かつ、売却価格よりも売買される事業部門の従業員の雇用が優先されるという、人情味の強い「ウェットな市場」である。

2.技能承継部分のポイント
・高齢層従業員の退職問題(いわゆる2007年問題)は、マイナス面がクローズアップされやすいが、企業にとってはプラス面、マイナス面の両方とも同程度ある。ただし、マイナスの影響として「技能承継」問題を挙げている企業の割合は多い。
・技能承継は一般にどの業種・職種にも起こる問題であるが、技術の高度化やグローバルな競争圧力等の影響で、モノ作りの現場において特に取組に困難が生じる可能性はある。
・企業が既存の体制内で行える取組は、「高齢層の再雇用による現状の技能の保持」、「社内におけるOJTなどのための意識的人材配置」、「IT化、マニュアル化などによる技能の形式知化」の3点がメインとなる。
・だがそもそも、大半の企業が技能承継の最大の課題として挙げるのは、近年、若年層を思いどおりに雇用できていないことである。企業は募集に際して平均1.7種類の採用方法しか活用しておらず、人材調達方法の多様化は1つの解決策となり得る。

 第6節 第2章のまとめ

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