第3部 日本社会の活力と中小企業 

第5節 中小企業の就業者

 グローバル化による海外企業との競合や景気の低迷により企業では継続的にコスト削減努力が求められている。一方で少子化の影響や2010年までに団塊世代が退職することなどから、優秀な人材を確保することが経営戦略上ますます重要になってきている。
 このような経営環境の変化を受けて大企業を中心に、企業の人材の管理について変化が生じている。基本的には長期雇用を維持しながら賃金・処遇の制度は年功的要素を縮小し成果や能力を重視する方向に変更する企業が多く26、また、パートタイマーや派遣従業者などの非正社員を活用し正社員の採用を抑える企業も見られる。


26 厚生労働省「平成16年労働経済白書」による。


 また、総務省「就業構造基本調査」によれば転職希望率(転職を希望する者の有業者に対する割合)は上昇傾向にあり(第3-2-22図)、今後、雇用が流動化し労働市場を通じた人材の動きが増加してくれば、中途採用によって人材を得ることが多い中小企業にとっては人材獲得の機会が拡大し、優秀な人材を採用するチャンスが増大する可能性がある(第3-2-23図)。しかし、中小企業が必要な人材を確保することは容易なことではない。中小企業ではどのような人材が就業しているのだろうか。ここでは中小企業における就業者について見ていこう。

 
第3-2-22図 転職希望率の推移
〜転職を希望する者は増えている〜

第3-2-22図 転職希望率の推移〜転職を希望する者は増えている〜
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第3-2-23図 入職者の内訳(一般労働者)
〜規模が小さい企業では転職入職者の割合が高い〜

第3-2-23図 入職者の内訳(一般労働者)〜規模が小さい企業では転職入職者の割合が高い〜
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1.人材確保の課題

(1)就業先の選択理由

 中小企業と大企業とでは、平均的には労働条件に差がある。例えば、厚生労働省「賃金構造基本調査」で賃金の水準について見ると、従業員規模によって格差があることが分かる(第3-2-24図)。また、同じく厚生労働省の「就労条件総合調査」で特別休暇制度がある企業の割合を見ても規模が大きい企業の方が割合が高くなっており、福利厚生の水準についても格差がある(第3-2-25図)。

 
第3-2-24図 企業規模別男性の賃金
〜企業の規模によって賃金水準に格差がある〜

第3-2-24図 企業規模別男性の賃金〜企業の規模によって賃金水準に格差がある〜
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第3-2-25図 特別休暇制度がある企業の割合
〜規模が大きい企業の方が特別休暇制度を設けている割合が高い〜

第3-2-25図 特別休暇制度がある企業の割合〜規模が大きい企業の方が特別休暇制度を設けている割合が高い〜
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 だが、就業者が勤務先を決める理由を見てみると、このような賃金の多寡や福利厚生の水準は、必ずしも就業先を決める決定的な要因にはなっていない。「就業意識調査」から就業者が現在の勤務先で働くことを決めた理由を見てみると、割合が高い順に「やりたい仕事ができるから」(32.2%)、「通勤が便利だから」(30.7%)、「地元の企業だから」(23.2%)となっており、「賃金がよかったから」(14.7%)や「福利厚生が充実しているから」(7.0%)の割合は高くはない(第3-2-26図)。

 
第3-2-26図 勤務先を決めた理由
〜「やりたい仕事ができるから」が勤務先を決める大きな理由〜

第3-2-26図 勤務先を決めた理由〜「やりたい仕事ができるから」が勤務先を決める大きな理由〜
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 賃金や報酬よりも自己実現や生活を重視する個人意識・価値観の変化を背景にして、就業者は賃金だけでなく仕事の内容や拘束される時間(余暇の多寡)など、賃金以外の状況をも踏まえて勤務先を決定していると考えられる。
 勤務先を決める要因が1つでない以上、就業者がどういったことを求めて勤務先を決めるかを適切に判断し、自社では賃金以外にも何を提供できるかを考えることが重要になってくる。自社が何を提供できるかは言い換えれば自社で働く魅力は何かということである。人材確保のためには、まず、自社で働くことの魅力を把握しておくことが必要となる。

 第5節 中小企業の就業者

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