第2部 経済構造変化と中小企業の経営革新等 

(4)中小企業への資金供給者

 以下では中小企業への資金供給者としての金融機関、その中でも企業に対する影響力が大きいメインバンクについて見てみよう。第2-2-17図は従業員規模別にメインバンクの業態を示したものである。従業員規模が大きい企業ほど大手行をメインバンクとしている割合が高く、逆に従業員規模が小さい企業ほど地域金融機関6をメインバンクとしていることが分かる7


6 以降、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合をまとめたカテゴリーを「地域金融機関」と呼ぶ。
7 付注2-2-1では、従業員規模別の取引銀行数について従業員規模が小さい企業ほど取引銀行数が少ないことを示している。


 
第2-2-17図 メインバンクの業態(従業員規模別)
〜従業員規模が大きい方が大手行をメインバンクとしている企業の割合が高く、従業員規模が小さい企業は地域金融機関をメインバンクとしている割合が高い〜

第2-2-17図 メインバンクの業態(従業員規模別)〜従業員規模が大きい方が大手行をメインバンクとしている企業の割合が高く、従業員規模が小さい企業は地域金融機関をメインバンクとしている割合が高い〜
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 以上の分析をまとめると、中小企業金融の特性は、〔1〕資金調達の大半を借入金に依存している、〔2〕従業員規模が小さい企業ほど、円滑な借入れを行えていない企業の割合が高い、〔3〕金利が高く、保証(人的担保)提供をしている割合が高いなど大企業に比べ借入条件が悪い、〔4〕提供している担保のほとんどが不動産である、〔5〕地域金融機関が重要な地位を占めている、ということになる。
 このような、大企業に比べ中小企業が資金調達をする際に困難を生ずる大きな原因として、貸手が借り手の質や、借りた後の行動を正確にモニタリングすることが難しいため、貸手と借り手の間に生じる「情報の非対称性8」が指摘されており、中小企業が円滑に資金調達を行うためにはこの「情報の非対称性」を緩和することが必要不可欠である9


8 「情報の非対称性」はStiglitz and Weiss(1981)ほか多くの研究者が指摘しており、「中小企業白書(2003年版)」でも指摘をしている。
9 根本(2005)では中小企業金融が有する情報問題として「情報の非対称性」以外に企業の成功可能性を事前に予測できないという「情報の不確実性」、評価できないリスクや将来の不確実性を事前に想定した完全な条件付き契約を締結することができないという「契約の不完備性」を指摘している。


 このため不動産担保だけでは「情報の非対称性」によるリスクがカバーしきれなくなっている状況下では、不動産担保以外の手段により「情報の非対称性」の緩和をすることが金融機関等に求められている。
 次節以降では、この中小企業金融において存在する「情報の非対称性」を緩和し中小企業への円滑な資金調達が行われるための手法として、〔1〕長期の継続的な取引による定性情報(いわゆるソフトインフォメーション10)の収集により、情報の非対称性を緩和するリレーションシップレンディング、〔2〕借り手の質等を母集団となるデータから統計的に算出した倒産確率によって推定するクレジットスコアリングモデル、〔3〕借り手自体より、情報の非対称性の深刻でない売掛金、在庫といった資産の価値に基づいて融資を行う、アセットベーストレンディング(資産担保貸出)について検証していく11


10 Cole,Goldberg,and White(1999)、Stein(2002)などによると情報はソフトインフォメーション(定性情報)とハードインフォメーション(定量情報)に分けられる。
11 Berger and Udell(2002)は中小企業金融における融資手法として〔1〕フィナンシャル・ステイトメント・レンディング、〔2〕アセット・ベースト・レンディング、〔3〕クレジット・スコアリング、〔4〕リレーションシップ・レンディングの4つを取り上げている。


 第1節 中小企業を取り巻く金融環境と中小企業金融の特性

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